ROSSINI LA SCALA DI SETA

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最新更新 2026年07月17日

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GIOACHINO ROSSINI

LA SCALA DI SETA






初演 1812年05月09日 ヴェネツィア,サン・モイゼ劇場
First performance Venezia, Teatro San Moisè, 09 May 1812

台本 ジュゼッペ・フォッパ
Libretto Giuseppe Foppa

原作 フランソワ=アントワーヌ=ウジェーヌ・ド・プラナールの、ピエール・ガヴォ《絹のはしご》のための 台本 1808年
Original Libretto by François-Antoine-Eugène de Planard for Pierre Gaveaux's Opéra-Comique L'Échelle de soie 1808

《絹のはしご》はロッシーニがヴェネツィアのサン・モイゼ劇場のために書いた3作目のファルサ(1幕立ての笑劇)である。初演当時はあまり人気が出なかったが、近年ではむしろ5作のロッシーニのファルサのうち最も人気が高い作品になっており頻繁に上演されている。

作曲

オペラ作曲家ロッシーニの活動初期の拠点は、ヴェネツィアのサン・モイゼ劇場だった。まだオペラの実績のなかった18歳のロッシーニは、1810年11月3日、この劇場での《結婚手形》でオペラ作曲家としてのデビューを飾った。これは12回の公演と上々の結果を残せた。
彼を抜擢した劇場興行主アントーニオ・チェ―ラはロッシーニに次作を依頼、その《幸せをもたらす策略》は1812年1月8日に初演され、2月11日のシーズン終了までに14回、その年の春のシーズンで再演、さらには秋のシーズンにボローニャのコルソ劇場 Teatro del Corso で上演(その後も1828年ごろまで各地でしばしば上演された)という大成功を収めた。

チェ―ラは若いロッシーニの成功を喜び、《幸せをもたらす策略》初日の翌日1月9日付でボローニャのロッシーニの母アンナに宛てて、ロッシーニを絶賛する手紙を送っている。
[…] 私は あなたに 昨晩 あなたの最愛の息子が ファルサ《幸せをもたらす策略》を上演したことを 急ぎ報告します;それは 不評になるどころか 真の熱狂で、観客は 序曲から フィナーレの幕切れまで 熱狂して、なんて素晴らしい音楽なんだ! とずっと 声を上げていました。ファルサの終演後に彼は舞台に呼び出されて 滅多にない、まったく純粋な、そうそう振り撒くことのない 心からの喝采を受けました。私はあなたに申し上げますが、あなたが あなたの胎内から 今から数年のうちに イタリアの誇りになるであろう若者を 生み出したことを あなたは 誇らしく思うことになるでしょう そして チマローザは 死んだのではなく、彼の霊感は ロッシーニに伝えられたのだ という話が 聞かれるようになるでしょう。私は また 私が ファルサ3作に関して 彼と契約したことを あなたに 知らせます 春に1作、秋に1作、カーニヴァルに1作。
[...] m'affretto ad annunziarLe, che jeri sera andò in scena il suo diletto figlio con la farsa L'inganno felice; non fù incontro ma vero furore, mentre il Pubblico si entusiasmò dalla Sinfonia sino al fine del finale, gridando sempre oh che bella musica! finita la farsa chiamato sul Palco a ricever li sinceri aplausi non soliti a dispensar che di rado, con tutta sincerità. Le dico, che può andar gloriosa l'avere dato dal suo seno un giovane che da qui a poch'anni sarà un ornamento dell'Italia e si sentirà che Cimarosa non è morto, ma il suo estro passato in Rossini. Le annunzio pure che L'hò scritturato per tre farse una in Primavera, una in Autunno, ed una in Carnevale.


チェーラの言うファルサの新作3作は、春のシーズンが《絹のはしご》、秋のシーズンが《成り行き泥棒》、そしてカーニヴァルシーズンが《ブルスキーノ氏》になる。

1812年3月14日、フェラーラで《バビロニアのチーロ》(四旬節の向けに旧約聖書から題材をとった宗教的オペラ)を初演する。

それからロッシーニはヴェネツィアに移った。3月24日付でヴェネツィアからボローニャの母アンナに宛てた手紙で、彼は春の新作ファルサについて書いている。彼は、カンタレッリ、デ・グレチス、モネッリ、タッチが出演予定であることを書いた後、台本についてこう述べている。

台本は ロッシのものになると思います 私が受け取った フォッパの台本は 一座に合っていませんし、私の音楽にも合っていません。
Il libro credo sarà di Rossi mentre quello che ho trovato di Foppa non lo trovo adatato per la compagnia ne per la mia Musica.
【1】


しかし実際には春の新作ファルサ、つまり《絹のはしご》の台本はフォッパが書いたものである。ロッシーニはロッシを台本作家に希望したものの実現しなかったわけだが、この時彼が難色を示した台本が《絹のはしご》だったのかそれとも別のものだったのかは分からない。

この手紙の頃、ロッシーニは先に一仕事している。3月30日にサン・モイゼ劇場でジュゼッペ・モスカ Giuseppe Mosca 《失望した志願者たち I pretendenti delusi》(あるいは 当ての外れた求婚者たち かもしれない) 1811年 ミラノ初演 が上演されたのだが、そこでオドワルド伯爵を歌うラッファエーレ・モネッリのために差替えアリア Alla gloria un genio eletto を書いた。モネッリは《幸せをもたらす策略》初演 のベルトランドであり、来るべき《絹のはしご》 初演 のドルヴィルでもある。これはロッシーニとモネッリが親しい仲だった証拠と言えるだろう。

4月27日付でロッシーニは再び母に手紙を書いており、そこには 仕事でそれまで手紙を書けなかったこと と、自分の音楽はいつも通り美しく、仕事が上手くいくことを願っている、といったことが書かれている。つまり初演12日前のこの頃には音楽がほぼ書き上がっていたと思われる。

1 GIOACHINO ROSSINI LETTERE E DOCUMENTI VOLUME Ⅲa, pp. 6-7
2 ibid. pp. 11-12

初演

《絹のはしご》の初演は、1812年5月9日、ヴェネツィア サン・モイゼ劇場で行われた。
当時のサン・モイゼ劇場でのファルサは2本立てが基本で、この時も《絹のはしご》の前に ステーファノ・パヴェージ Stefano Pavesi 1779―1850 の《マルカントーニオ氏 Ser Marcantonio》 1810 ミラノ 初演 の第1幕が上演された。

ドルモン
Dormont
ガエターノ・デル・モンテ
Gaetano Del Monte
テノール
tenore

ジューリア
Giulia
マリア・カンタレッリ
Maria Cantarelli
ソプラノ
soprano

ルチッラ
Lucilla
カロリーナ・ナーゲル
Carolina Nagher
ソプラノ
soprano

ドルヴィル
Dorvil
ラッファエーレ・モネッリ
Raffaele Monelli
テノール
tenore

ブランザック
Blansac
ニコラ・タッチ
Nicola Tacci
バス
basso

ジェルマーノ
Germano
ニコラ・デ・グレチス
Nicola De Grecis
バス
basso



ガエターノ・デル・モンテは四半世紀近くの長きに渡り、主として脇役テノールとして活動した人物。記録に残る最古の出演は1808年カーニヴァルシーズンのアンコーナ。1811年のカーニヴァルシーズンからヴェネツィアを拠点とし、エレテーニオ劇場、サン・モイゼ劇場、サン・ベネデット劇場、サン・ルカ劇場で活動した。その後もフィレンツェなど各地の劇場で歌い、最後の出演記録は1832年10月のボローニャ、《泥棒かささぎ》のイザッコとピッポだった。サン・モイゼ劇場での《絹のはしご》初演 1812 のドルモント、《成り行き泥棒》 1812 のドン・エウゼービオ、《ブルスキーノ氏》 1813 の息子ブルスキーノと警察分署長を創唱した。

マリア・カンタレッリについての情報はあまり多くない。1811年にデビュー。しばらくはミラノ、ヴェネツィア、フィレンツェ、ジェノヴァ、トリノなど北部中部イタリアで活動。1817年にはバルセロナのサンタ・クレウ劇場に出演。その後フィレンツェ、パルマ、リヴォルノなどで活動した後、1820年にはナポリのヌオーヴォ劇場に出演。その後1830年頃まで北部中部イタリアで活動。《絹のはしご》初演はデビュー後まだ1年強という若手だった。ロッシーニのオペラの初演に出演したのはこの時だけだが、後にロッシーニのオペラのヒロインを数多く歌った。

カロリーナ・ナーゲルについては情報は多くない。記録に残る最古の出演は、1809年、ベルガモの 市 いち のシーズン(8、9月と思われる)。1812年5月から1813年2月までヴェネツィアのサン・モイゼ劇場に出演、この間に 《絹のはしご》初演 1812 のルチッラ、《成り行き泥棒》 1812 のエルネスティーナ、《ブルスキーノ氏》 1813 のマリアンナを創唱した。エルネスティーナやマリアンナにはアリアが与えられていないが、ルチッラには脇役アリアがある。

ラッファエーレ・モネッリ 1782―1859 は1810年代の前後に活動したテノール。フェルモ(Fermo マルケ州、ペーザロから海岸沿いに南東に120kmほどの町)生まれ。生地で学び、ここで1806年にデビュー。パドヴァ、ジェノヴァ、ヴェネツィア、フィレンツェなど北部中部イタリアで活動したが、大劇場にはほとんど出演していない。サン・モイゼ劇場には1811年9月から1812年春にかけて、さらに1813年春に出演。その際に、《幸せをもたらす策略》 1812年初演 のベルトランド、《絹のはしご》 同年5月初演 のドルヴィルを歌った。
なお2歳下の弟、サヴィーノ・モレッリ 1784―1836 もテノールで、彼は《泥棒かささぎ》 1817年 ミラノ初演 のジャンネット、《ブルグントのアデライデ》 1817年 ローマ初演 のアデルベルトだった。

ニコラ・タッチは20年も長く活躍したバス。最古の出演記録は1809年夏、フィレンツェ。1812年5月、サン・モイゼ劇場での《絹のはしご》初演でブランザックを、さらに翌1813年に《ブルスキーノ氏》のフィリベルトを創唱。ジェノヴァ、トリノ、フィレンツェで活動した後、、1820年10月からローマを拠点とし、1824、ヴァッレ劇場でのドニゼッティ《当惑した家庭教師》初演で事実上のタイトルロール ドン・グレゴーリオを創唱。その後はパレルモなどで活動、最後の出演記録は1832年秋、フィレンツェ。

ニコラ・デ・グレチス 1773― の最も古い出演記録は1796年のカーニヴァルシーズンにローマで催されたスポンティーニ《女たちの片意地》初演のブロントローネ伯爵。1802年以降ジェノヴァやトリノなど北イタリアの都市で活動。1805年3―6月にはミラノ、スカラ座に出演。その後はローマのヴァッレ劇場やフィレンツェのココメロ劇場などで歌った。1810年秋からヴェネツィア、サン・モイゼ劇場に出演、ここでロッシーニ《結婚手形》 1810 のスルック、《絹のはしご》 1812 のジェルマーノ、そして《ブルスキーノ氏》 1813 のガウデンツィオを創唱した。非常に多くのオペラの初演に参加しており、その中にはサヴェーリオ・メルカダンテの出世作《エリーザとクラウディオ》 1821 ミラノ スカラ座 でのトリコタツィ侯爵も含まれる。最後の出演記録は1826年、ローマ。

アドリア海県新聞 Giornale Dipartimentale dell'Adriatico 1812年5月12日号に初日の公演評が載った。

このファルサには 先のカーニヴァル・シーズンの 彼のファルサ【1】の 三重唱や その他多くの曲に匹敵する 迸りの一節がない、しかし 全体としては 大いに上出来である、とりわけカンタレッリ夫人のアリア【2】、そして モネッリ氏のアリア【3】、そして重唱曲のストレッタ【4】は 常に 観客を だしぬけに 喝采へと かき立て そして 突き動かす何かの魔法を 帯びている: そして 他の何よりも この作品の あらゆる他の箇所に優る うっとりさせるようなフィナーレ。[…]カンタレッリ夫人は アリアと デ・グレチス氏との二重唱で 喝采を受けた。モネッリは ドルヴィルのアリアで 文句のつけようもなく 歌った。それゆえ デ・グレチスは まったくのばか者というわけではなかった、というのも 彼は もったいつけたかったからだ【5】。[…]
Non v'ha in questa farsa un pezzo di getto ch'eguaglj il suo terzetto, e tant'altri della farsa dello scorso Carnevale, ma v'ha in tutti assai dei buono, massime dell'aria della sig. Cantarelli e del sig. Monelli, e le strette de' pezzi concertati ognor rivestite di quel magico che improvvisamente stuzzica e trasporta lo spettatore agli applausi; e piu di ogni altra cosa il delizioso finale che supera ogni altra parte di questo bel lavoro. [...] La sig. Cantarelli venne applaudita nell'aria e al duetto con il sig. De Grecis. Monelli nell'aria di Dorvil ha superiormente cantata la bell'aria sua. Quanto all'azione di ognuno non v'ha in generale gran adito al lazzo. De Grecis &egarave; non pertanto un perfettissimo sciocco, che vuol darsi aria d'importanza.


総じて好評で、特にフィナーレは絶賛しているほどだが、それでも1月の《幸せをもたらす策略》には及ばない、という論調である。その理由はこの引用箇所より前に指摘されており、フォッパの台本が 【チマローザの】《秘密の結婚》を完全に模倣した題材を扱っている aver trattato un soggetto ch’e una perfetta imitazione del Matrimonio segreto 、そのため目新しい興味を呼び起こしていない non destano interesse di novita.からだというのだ。台本については後述する。

《絹のはしご》はパヴェージ《マルカントーニオ氏》の第1幕との2本立てで5月9、14、19、21日と上演された後、《幸せをもたらす策略》との2本立てに変わって5月23、26、28、30日、6月2、4、9、11日の8回上演された。
ロッシーニは5月29日付で母アンナに宛てた手紙で5月23日 土曜日の公演について報告しているのだが、自作の2本立てになったことと、《幸せをもたらす策略》が今回も熱狂を巻き起こしたとは書いても、《絹のはしご》については少なくとも直接の言及はない。【6】
このことから、《絹のはしご》は、新聞評にあるように程々の好評ではあったけれども、1月の《幸せをもたらす策略》の大成功によってロッシーニの新作ファルサに大いに期待していたヴェネツィアの観客を満たすほどではなかったようである。

その後の《絹のはしご》の公演は僅かしかない。クリティカルエディションの解説には 1813年 セニガッリア(この町のオペラシーズンは夏にあったので、夏だと思われる)、1821年 シエナ、1825年 リスボン が挙げられている。その他に1823年 バルセロナでの上演が分かっている。【7】
再演が初演直後に限れば1回しかないことから、当時の《絹のはしご》の評価が窺える。

1 《幸せをもたらす策略》。
2 第6番 ジューリアのアリア。
3 第3番 ドルヴィルのアリア。
4 第4番 四重唱の Allegro vivace
5 伊和辞典では darsi (arie d')importanza もったいをつける とある。デ・グレチスがジェルマーノをまったくの愚かな召使いではなく少々気取った人物に演じたことを述べている。
6 GIOACHINO ROSSINI LETTERE E DOCUMENTI VOLUME Ⅲa, pp. 14-15
7 当時の出版台本には会場が Teatro dell'Ec.ma. Citta di Barcellona バルセロナのこの上なく優れた町の劇場 とあるが、これはサンタ・クルス劇場 Teatro de la Santa Cruz (今日のプリンシパル劇場 Teatre Principal)のこと。

20世紀以降の上演

《絹のはしご》が20世紀前半に上演されたかどうかは、よく分からなかった。ファルサのような小規模なオペラは記録に残らないような小オペラ団の公演があっても不思議ではない。
20世紀後半における最初の重要な公演は、1952年5月26日、フィレンツェ五月音楽祭でのもの。フィレンツェ五月音楽祭の公式サイトで検索をかけると出る公演記録によると、ドルモンが ヴァリアーノ・ナターリ Valiano Natali、ジューリアが マリア・マンニ・ヨッティーニ Maria Manni Jottini、ルチッラが リリアーナ・ポーリ Liliana Poli、ドルヴィルが ニコラ・モンティ、ブランザックが フランコ・カラブレーゼ Franco Calabrese、ジェルマーノが レナート・カペッキ Renato Capecchi。指揮と演出は エミーディオ・ティエリ Emidio Tieri、舞台と衣装は マリオ・キアーリ Mario Chiari。会場はフィレンツェ市立劇場の音楽小劇場 Piccolo Teatro di Musica。ヨッティーニら出演歌手の多くはフィレンツェの 歌劇場総合訓練所 Centro di Avviamento al Teatro Lirico の出身者たちだったという。この公演は大成功を収め、《絹のはしご》復活の大きな礎になった。

この公演の好評を受けて、フィレンツェでは1954年9月21日に再演があった。Leonardo Pinzauti 著 Storia del Maggio によると、ジューリアがより高名な ヴィルジニア・ゼアーニ Virginia Zeani に代わったものの、モンティ、カラブレーゼ、カペッキ、指揮のティエリなどは留任。会場は同じく音楽小劇場。

1961年2月、ミラノ スカラ座の小劇場 ピッコラ・スカラ Piccola Scala で公演があった(ペルゴレージの 奥様女中 / 奥様になった召使い女、フィオラヴァンティの 田舎の女歌手たち との3本立て)。公演記録によると、ドルモンが アンジェロ・メルクリアーリ Angelo Mercuriali、ジューリアが グラツィエッラ・シュッティ Graziella Sciutti、ルチッラが チェチーリア・フスコ Cecilia Fusco、ドルヴィルが ルイージ・アルヴァ Luigi Alva、ブランザックが フランコ・カラブレーゼ Franco Calabrese、ジェルマーノが セスト・ブルスカンティーニ Sesto Bruscantini。指揮は ブルーノ・バルトレッティ Bruno Bartoletti。演出は コッラード・パヴォリーニ Corrado Pavolini。公演は2月6、10、12、17、19日。

1962年頃にはローマでオペラ映画(音声を先に録音してそれに合わせてスタジオ内のセットで演技を収録)が製作された。ドルモンが マンリオ・ロッキ Manlio Rocchi、ジューリアが グラツィエッラ・シュッティ Graziella Sciutti、ルチッラが マルゲリータ・リナルディ Margherita Rinaldi、ドルヴィルが フェルナンディーノ・ヤコプッチ Fernandino Jacopucci、ブランザックが ボリス・カルメリ Boris Carmeli、ジェルマーノが フェルナンド・リ・ドンニ Fernando Li Donni。フランコ・フェッラーラ Franco Ferrara 指揮 ローマ・フィラルモニカ管弦楽団 Orchestra Filarmonica di Roma。
映像は YouTube に上がっている。またこの音声部分が RCA からLPレコードで発売され、これは長らく《絹のはしご》の実質的に唯一の録音だった。

《絹のはしご》の1960、70年代の上演については調べがつかなかった。

1988年9月、ロッシーニ・オペラ・フェスティヴァル ROF でクリティカルエディションを使用した最初の上演があった。公演記録。出演者などはリンク先を。これは大成功を収め、これが《絹のはしご》の上演が盛んになるきっかけになったのは間違いない。この公演はCDでも発売され、世にこの作品の真価を知らしめた。ROFではこのプロダクションは1990年と1992年に歌手や指揮者を変えて再演された。
ROFでは2000年にイタリアの俳優、ルカ・デ・フィリッポの新しい演出で上演された。公演記録。しかしこれは演出が評判にならず、再演もなかった。
2009年、ダミアーノ・ミキエレット演出の新制作で上演された。公演記録。これはミキエレットらしい斬新な舞台が評判となった。映像も収録された。このプロダクションは歌手や指揮者を変えて2011年に再演された。公演記録。同様に2026年にも再演される予定。公演案内。なおこのプロダクションは2013年9月、ミラノ スカラ座でも上演された。公演記録。
※普請中※

参考までに1986年から2000年までのイタリア内での上演の概要を列挙する。
1986年12月 ルーゴ Lugo ロッシーニ劇場 Teatro Rossini
1988年9月 ROF
1990年8月 ROF
1992年7月 マチェラータ音楽祭
1993年3月 レッジョ・エミーリア
1996年11月 ピサ
1996年12月 コセンツァ
1997年9月 ボローニャ
2000年8月 ROF

楽譜

《絹のはしご》の自筆総譜は長らく行方不明だったが、スウェーデン人ルドルフ・ニーダール Rudolf Nydahl 1882―1973 が個人所蔵しており、現在は 音楽文化振興財団 Stiftelsen Musikkulturens Framjande、通称 ルドルフ・ニーダール・コレクション の所蔵となっている。ニーダールがどのようにしてこの楽譜を入手したのかは不明である。
この自筆総譜の序曲の最初のページには、1855年7月4日、パリでロッシーニ自身が自分の書いた楽譜であることを認めている。
基本的にこの自筆総譜に従って、1988年にクリティカルエディション総譜が作られ、そして出版された。

台本

前述の通り、《絹のはしご》は初演直後からチマローザの《秘密の結婚》との類似性がとやかく言われた。これはある意味で当然であり、別の意味では正しい認識ではない。

フォッパの《絹のはしご》の台本は、ピエール・ガヴォ Pierre Gaveaux 《絹のはしご L'Échelle de soie》のためのフランソワ=アントワーヌ=ウジェーヌ・ド・プラナール François-Antoine-Eugène de Planard の台本を元にしている。これは1808年8月22日、パリ、オペラ=コミックで初演された。
フォッパはド・プラナールの台本に大筋で忠実にファルサの台本を書いており、登場人物名も6人中4人はフランス語役名をイタリア語化したままである。つまりイタリアオペラの台本としては、通常のフランス語劇からの翻案物という以上に直でフランス的なものである。
一方《秘密の結婚》の台本の原作は、父ジョージ・コルマン George Colman The Elder 1732―1794 とデイヴィッド・ガーリック David Garrick 1716―1779 による喜劇『内密の結婚 The Clandestine Marriage』である。これは1766年にロンドンで初演された。
その2年後、パリで『内密の結婚の翻案物《ソフィー Sophie》(歌の入る芝居。音楽はジョゼフ・コーオ(コーハウト) Josef Kohaut)が上演された。プラナールの台本はこの流れを汲んでいる。
つまり、《秘密の結婚》も《絹のはしご》も、どちらの台本も『内密の結婚』を源流としており、言わば遠戚関係にあるので、展開が似ているのは当然だが、しかし《絹のはしご》は《秘密の結婚》の焼き直しではない。むしろ、後述する通り、フォッパはどうにかして《秘密の結婚》との類似から逃れようと努力した跡が見られる。

さて《絹のはしご》の台本には少々奇妙な点がある。
物語の主役であるブランザックにはアリアが与えられていない一方で、間抜けな召使いジェルマーノは全編で活躍しアリアが与えられている。さらに脇役のルチッラにも簡単なものとはいえアリアが与えられている。
主役であるはずのブランザックにアリアが与えられず、召使い役の方がアリアもあって活躍する。《絹のはしご》の台本は作劇的にバランスがおかしいとも言える。

原作であるプラナールの台本では召使い トマ Thomas はそれほど活躍するわけではない。作品の中央に置かれたアンサンブルにはトマは加わっておらず三重唱である。ファルサではジェルマーノを含めた四重唱になったばかりか、彼が非常に目立つつくりになっている。その他の箇所においてもオペラ=コミックの台本ではトマは標準的な脇役の召使いである。これと比べると、ファルサでのジェルマーノはずっと役回りが重要で、かつ強烈な性格の持ち主だ。

実のところ《絹のはしご》初演で歌った二人のバッソブッフォのうち、ジェルマーノのニコラ・デ・グレチスが40歳くらいの経験豊富な充実期であったのに対し、ブランザックのニコラ・タッチは彼より一世代下の若い新進だった【1】。 《絹のはしご》初演から8か月半後に初演された《ブルスキーノ氏》では、デ・グレチスが主役のガウデンツィオを、タッチが脇役フィリベルトを受け持っており、これが妥当な役の割り振りだろう。二人の格の違いは明白である。タッチが人気バッソブッフォとして活躍するのはもう少し後、1820年代のことである。

実は当時のサン・モイゼ劇場で最も人気の高いバッソブッフォは、大ベテラン、ルイージ・ラッファネッリ Luigi Raffanelli 1752―1821 だった。《絹のはしご》初演の1か月半ほど前の3月21日に60歳を迎えたこの偉大なバッソブッフォは、1806年秋から1813年春までサン・モイゼ劇場を拠点にして活躍していた。
ところが1812年は春夏秋と他劇場も含め出演記録が見当たらない。体調不良だったのか詳しい事情は不明だが、いずれにせよ《絹のはしご》の制作が始まった頃にはラッファネッリを起用できないことが明らかだったと思われる。
それを踏まえて台本が書かれたわけだが、起用できる二人のバッソブッフォのうち、普通であれば、経験豊富なバッソブッフォのデ・グレチスを伊達男ブランザックに、新進のタッチを召使いジェルマーノに充てそうなものを、しかし《絹のはしご》では逆にされた。つまり、台本制作の段階で、ジェルマーノを大きく拡大して活躍させることになった。

ここに台本作家フォッパの目論見が見えるような気がする。プラナールの台本をそのままファルサにしたら、名高い《秘密の結婚》と酷似してしまうのは避けられないし、それによってフォッパが批判されるのは明らかだった。
そこでプラナールの台本ではそれほど活躍しなかった間抜けな召使いを拾い上げ、第1バッソブッフォのデ・グレチスに宛てて、大きく拡大することで、差別化を図ったのではないだろうか。
この見立てが正しければ、ロッシーニはフォッパの発案に大いに乗っただろう。定型が出来上がってしまっている伊達男ブランザックよりも、型破りではちゃめちゃな召使いジェルマーノの方が、ロッシーニにとってはずっと面白い役で、音楽の作り甲斐があったと思えたろう。

1 初演時の出版台本にはデ・グレチスとタッチは 第一滑稽役たち Primi Buffi と一括りにされている。

あらすじ

全1幕
パリ近郊のドルモンの館。朝。ブランザックとの婚約が決まったジューリアに、召使いのジェルマーノが花嫁の教訓を垂れようとしつこくつきまとうので、ジューリアは不機嫌になる。ジェルマーノを追い払ってほっとしたのも束の間、今度は従妹のルチッラが、後見人のドルモンが呼んでいると知らせに来る。ジェルマーノも戻ってくるので、ジューリアはイライラして二人を部屋から追い出す。
実はジューリアは、部屋の中に密かに結婚した夫のドルヴィルを隠していた。ドルヴィルは、友人のブランザックがジューリアの婚約者になったことに気が気でない。二人は真夜中の再会を約束し、ドルヴィルはバルコニーから垂らした絹のはしごを使って去って行く。
そんなこととは知らないドルモンは、すぐにでもジューリアとプランザックを結婚させようと考えている。ルチッラはプランザックに気があるので残念がる。ジューリアは、この結婚を阻むにはプランザックとルチッラを結婚させるに限ると思い付き、ジェルマーノを利用しようと呼びとめる。ジューリアはジェルマーノに思わせぶりに言い寄り、プランザックとルチッラの様子を監視するように命じる。
プランザックが館に到着。しかも彼は偶然出会ったドルヴィルを結婚の証人として連れて来てしまう。なんとか結婚を阻止したいドルヴィルは、ジューリアは後見人の言いなりで花嫁になるだけで、ブラシザックを愛してはいない、と挑発する。しかし優男のプランザックは、ジューリアなら陥落してみせるさ、と白身満々。しかもその様子を見てもらおう、とドルヴィルを部屋の片隅に隠す。ドルヴィルは、見てやろうと言いつつも、不安に駆られ、ジューリアが裏切らないことを願う。そして部屋の片隅に隠れる。ジェルマーノも別の場所に隠れてプランザックの様子を覗う。プランザックは現れるやジューリアを熱烈に口説きだす。ジューリアは彼がルチッラに相応しい紳士かどうか見極める必要があるので、彼の女好きを咎めつつも彼になびくふりをする。これを脈ありと見たプランザックは、自分が誠実な男であることを強調する。このやりとりにドルヴィルはジューリアが心変わりしたと誤解する。嫉妬するドルヴィルの様子を不審に思ったジェルマーノは、ジューリアにドルヴィルがいることを伝えようとする。ドルヴィルが出て来てジューリアに嫌味を言う。そして三人はジェルマーノに怒りをぶつける。
プランザックは、ルチッラも口説き出し、彼女は喜ぶ。
夜になり、ジェルマーノが灯かりを消しに回っていると、自分の部屋に入ろうとするジューリアが、真夜中の達引きが心配だと呟くのが聞こえる。ジェルマーノは、逢引きの相手がブランザックだと早合点する。ジューリアは逢引きが見つかったら危険だとためらっている。彼女の部屋にジェルマーノが忍び込もうとするが見つかってしまい、窓閉めは必要ないと追い返される。
ジェルマーノは、ジューリアとプランザックが逢い引きすると思い込んで大喜び。だが彼は眠気を催し寝入ってしまう。そして寝言で「ジューリアが真夜中にプランザックと逢引する」と呟く。それを当のプランザックが耳にして仰天。ジェルマーノを起こして詳細を聞き出す。プランザックは、ジューリアは内気なので召使いに伝言させたのだな、と都合よく考え、夜中に外から彼女の部屋に忍び込むことにする。一方、ジェルマーノから逢引きの件を耳にしたルチッラは、好奇心を刺激され、様子を伺うためにジューリアの部屋に隠れる。次いでジェルマーノも部屋に忍び込み、テーブルの下に身を潜める。
真夜中。不安げに待つジューリアのもとに、絹のはしごを昇ってドルヴィルがやって来る。隠れているジェルマーノは、逢引きにやって来だのがブランザックではなくドルヴィルだったことに驚き喜ぶ。二人が軽く言い争いをしていると、今度はプランザックがやって来る。やむなくジューリアはドルヴィルを隠す。呼んでいないとプランザックに怒るジューリア。しかしプランザックは絹のはしごがかかっていたと答える(ジューリアがしまい忘れていた)。ジューリアはプランザックを部屋から追い出そうとするが、そこに絹のはしごに気付いたドルモンがやって来る。ドルモンが部屋のあちこちを探すと、まずルチッラが、次にブランザック、そしてジェルマーノが見つかる。ドルモンは今すぐプランザックと結婚するようジューリアに証書への署名を迫る。すると隠れていたドルヴィルが現れ、自分がジューリアの夫だと白状する。カンカンに怒るドルモン。しかしプランザックもルチッラと結婚すると言い出すので、ドルモンも折れ、2組の結婚が決まってめでたく幕となる。

音楽

序曲
ロッシーニの初期のファルサの序曲では最もよく知られている曲。序奏を前に落いたソナタ形式。
序奏には3小節の導入がある。Allegro vivace 4/4 ハ長調。たった3小節の第1ヴァイオリンとヴィオラ(第3小節だけ)による音楽だが、《絹のはしご》と言えばこの箇所を真っ先に思い浮かべるほど強い印象を与える。
序奏は Andantino 4/4 ハ長調。木管群フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットとホルンによる優美なアンサンブル。
主部も速度、拍子、調性とも変化がないが、受ける印象は明らかに異なる。第1主題は軽快に動く陽気なもの。第2主題は弦の刻みに乗って木管群が様々な表情を見せる。ところでロッシーニのオペラの序曲では第2主題の後にコデッタ(小結尾)が非常に充実していて、ここがいわゆる ロッシーニクレッシェンド になることが多いのだが、《絹のはしご》の序曲ではコデッタはまだそれほど充実していない。またロッシーニ(に限らないが)のオペラの序曲では展開部を欠くことが多いが、《絹のはしご》の序曲では第2主題の提示の後にもう一度第2主題が扱われており、これは短い展開部と言えそうだ。
それから第1主題、第2主題が再現されて、コーダで締め括られる。

全1幕

第1番 導入
導入 は 急 / 緩 / 急 の三部構成。この箇所は原作オペラ=コミックにはなく、フォッパが新たに書き加えたもの。冒頭場面でジェルマーノを強く印象付ける意図があるのだろう。
急 Va sciocco, non seccarmi,は Allegro vivace 4/4 ヘ長調。台本には明記が無いが時間は早朝6時前、まだ恋人ドルヴィルを小部屋に隠していて焦り苛立つジューリアと、厚かましく花嫁の教訓を垂れようとするジェルマーノが、オペラブッファらしい音符の詰まった歌で応酬する。伴奏はしばしばくさび型スタッカートがついていてピリピリした空気を醸している。
ジェルマーノを追い出してようやく一人になったジューリアは、ほっとして短い歌 Son pur sola, alfin respiro. を歌う。緩 Andantino 4/4 変イ長調。速度が落ちた上に、ヘ長調から変イ長調へと短3度移調して雰囲気ががらりと変わっている。美しい歌でジューリアの本来の性格を示しつつも、伴奏は切れ切れで、時々第1ヴァイオリンの16分音符の流れが入り、ジューリアの落ち着かない不安な心情も描かれている。
急 Cugina, cugina!.. は Allegro 4/4 ヘ長調。ルチッラに再びジェルマーノが加わり、結局さっきよりも混乱した三重唱になってしまう。ジェルマーノの早口が凄まじい。

第2番 ジューリアとジェルマーノの二重唱
緩 / 急 の二部構成の二重唱。
緩 Io so ch'hai buon core, は Andante giusto 2/4 イ長調。ジューリアの思わせぶりな言葉の艶めかしい音楽を、ジェルマーノが同じように歌い重なっていく、偽の愛の二重唱。
経過区 Allegretto 4/4 ニ長調。すっかり乗せられたジェルマーノは熱を帯びるが、ジューリアが本来の目的を伝えると、臨時記号で短調に触れて彼は意気消沈する。ここは《ひどい誤解》 1811年 ボローニャ初演 の第1幕 第7番 ガンベロットのアリアの Allegro、Questa... の素材を更生している。
急 Oh quanto son grata は Vivo 2/2 イ長調。これも、同じようで微妙に異なる歌詞を、同様の音楽で、まずジューリアが、次いでジェルマーノが歌っていく。
緩 も 急 もよくできた音楽ではあるが、強いて言えば乗せられてから落とされたジェルマーノの哀れさ滑稽さが今一つで、さすがのロッシーニもまだ未熟だったと思わされる。

第3番 レチタティーヴォとドルヴィルのアリア
レチタティーヴォを前に置いた 緩 カンタービレ / 急 カバレッタ のアリア。
緩 カンタービレ Vedro qual sommo incanto は Andantino 4/4 変ホ長調。伸びやかに始まってから装飾歌唱が増えていく。
Allegro vivace にテンポが上がって テンポ・ディ・メッゾ。両ヴァイオリンが16分音符で動き回り、表向き平然としつつも内心穏やかでいられないドルヴィルの様子が浮かび上がっている。
そのまま 急 (Ah se per te m'accendo, になる。愛の神に懇願するドルヴィルは必死だが、それを軽快な音楽で描いているのがロッシーニらしい。
ロッシーニは次作《成り行き泥棒》以降、テノールのアリアの難易度が上がり、容易には歌えないものが多くなるのだが、この《絹のはしご》のドルヴィルのアリアはそこまで技術的には難しくない。音楽的にも瑞々しさがあって、このアリアは比較的人気の高いものである。

第4番 四重唱 前半の締め括りとなる規模の大きなアンサンブル。7つの部分からなる。
Si che unito a cara sposa は Moderato 4/4 ハ長調。ジューリアを口説くブランザックが主で、それにジューリアの反応と隠れているドルヴィル、ジェルマーノの呟きが挟まれる。第1ヴァイオリンの上行音形が繰り返され、場の緊張感を醸している。
続く I voti unanimi, la tenerezza, は、ジューリアが愛を受け入れたふりをする偽りの愛の二重唱に、同じ素材でドルヴィルとジェルマーノが絡む。Allegro 4/4 ハ長調。カノン風の絡みが面白い。ここは《ひどい誤解》 第1幕 第10番 第1幕フィナーレ の Un poco più mosso の小三重唱 Mi brilla l'anima per il contento, の素材を更生している。
最初の音楽が戻り、ジェルマーノがジューリアに隠れているドルヴィルを示す。ここは実質的に経過区。
出て来たドルヴィルはジューリアに Con lei me ne consolo, と嫌味を言う。速度、拍子、調性とも変わって Andante 3/4 変ホ長調。16小節だが、裏切られたと思い込んだドルヴィルの心の傷みが細かい音符で印象付けられている。
これに対してジューリアは一瞬苛立つ。Che ardire! che imprudenza!.. がすぐに冷静さを取り戻す。Allegro moderato 4/4 変ホ長調。
Allegro vivace 4/4 ハ長調の軽快な音楽 Io stesso l'ho condotto, に変わる。ここではジューリア、ドルヴィル、ブランザックがジェルマーノに怒りをぶつける形でアンサンブルが発展する。この重唱は初期のロッシーニの音楽でも特に傑作である。聞く者の処理能力を超えたスピードと切り替わりによって、歌詞だの展開だのはほとんど分解してしまい、歌とオーケストラによって 混乱 が非具象的表現にまで至っている。
最後に Più mosso にテンポが上がって締め括られる。

第5番 ルチッラのアリア Sento talor nell'anima。脇役のためのアリア・ディ・ソルベート / シャーベット・アリア。Allegro 2/2 ト長調。ちょうど100小節。前半の歌詞音楽が後半の後に繰り返されることで緩やかなA / B / A’の三部構成のアリアになっている。短いが溌剌とした印象のアリアで、ピッコロ2本が恋にウキウキした乙女心を表す。このアリアは2か月前にフェラーラで初演された《バビロニアのチーロ》 第2幕の開幕の合唱 Si bell'alma soccorrete の素材を更生して発展させたもの。そしてロッシーニは後に《イタリアのトルコ男》 1814年 ミラノ 第1幕 第1番 導入 の冒頭でこのアリアの素材を更生している。

第6番 レチタティーヴォとジューリアのアリア
レチタティーヴォを前に置いた 緩 カンタービレ / 急 カバレッタ の二部構成のアリア。
レチタティーヴォは8小節と短いが、後見人ドルモンがブランザックとの結婚を急がせることへの不安が漂っている。最終和音はイの短三和音。
緩 カンタービレ Il mio ben sospiro e chiamo は Andante affettato 4/4 ヘ長調。ドルヴィルを待つジューリアの気持ちがゆったりと少しばかり悲し気に歌われる。甘いコールアングレの独奏と夜風を思わせる2本のフルートが美しい。ジューリアが son costretta a palpitar. と歌うところで巧みな進行で音楽に陰りが入るのが絶妙。
Allegro にテンポが上がり、テンポ・ディ・メッゾ(中間部)。部屋にドルヴィルがいることに彼女は動揺し混乱する。
急 カバレッタ Un pochetto più mossarello 4/4 ヘ長調。Un pochetto più mossarello ほんの少し より 動きのある 動きのある という微妙な速度指示をしている(mossarello は mosso の縮小形)。弦群の4分音符の連なりがジューリアの心臓の鼓動を模写し、彼女の不安の高まりを表している。
このアリアは、初演のカンタレッリ(前述の通り彼女はまだデビュー後1年強の若手だった)の力量を配慮してか決して難易度は高くないものの、全曲の中でも情感の美しさでは随一で、笑い溢れる笑劇の中にしっとりとした潤いを与えている。

第7番 ジェルマーノのアリア
基本的に 緩 カンタービレ / 急 カバレッタ の二部構成のアリアだが、途中でジェルマーノが眠りこけるという少し風変わりなものである。
緩 カンタービレ Amore dolcemente は Andante 4/4 ホ長調。ほろ酔いのジェルマーノはご機嫌に歌い始め、進むに連れ音符が込み入って来る。いい気分になって来ると今度は眠気を催し、歌は途切れ途切れになり、第1ヴァイオリンとヴィオラが気だるそうな下行音形を執拗に繰り返す。
寝入ったところでブランザックが現れる。Allegro。
テンポが戻ると、寝言のジェルマーノとブランザックの二重唱のようになる。
Allegro vivace のテンポ・ディ・メッゾ。
急 カバレッタ Quando suona mezzanotte は Più mosso 4/4 ホ長調。いかにもバッソブッフォが捲し立てる早口の滑稽なアリア。ちなみに冒頭の主題を導くホルン独奏の最後でホ音が2オクターブ下に落ちるという冗談音楽のような荒業がある。なおロッシーニはこの素材を《新聞》 1816 ナポリ初演 第1幕 第2番 ポンポーニオのカヴァティーナ に更生している。

第8番 フィナーレ
大雑把に 緩 ジューリアとドルヴィルの逢引きの場面、外からのブランザックの歌、急 ジューリアとブランザックの場面、ドルモンが現れ一気に物語が解決する場面、締めのアンサンブル という作り。
緩 Dorme ognuno in queste soglie, は Andante giusto 6/8 ニ長調。夜のしじまとドルヴィルを待つジューリアの期待感が 6/8 の滑らかな音楽で描かれている。
外からブランザックの歌 È mezzanotte!.. が聞こえて来る。Andantino 2/4 変ロ長調。第2ヴァイオリンのピッツィカートがギターの爪弾きを思わせるセレナーデ調の歌。柔らかく広がる歌はアリアのないブランザックにとって一番の聞かせどころである。途中でジューリアとドルヴィルのやり取り Allegro 4/4 変ロ長調 が挟まる。
ドルヴィルが小部屋に隠れる。E mi posso o ciel frenar!... は Allegro 4/4 変ロ長調。ブランザックが部屋の中に入る Che fortuna impreveduta! の音楽は《ひどい誤解》第1幕 第1番 導入の Allegro、Foste davver sollecito を更生している。ジューリアはピリピリと怒っているが(第1ヴァイオリンとしばしばフルートが彼女のイライラを表している)、ブランザックは彼女が誘って来たと思っているのでしばしばゆったりとした伴奏で余裕を見せる。後半ではジェルマーノとドルヴィルが加わり、勢いのある冴えた四重唱になる。
Allegro 3/4 ヘ長調 に変わり、Finir convien la scena,。ドルモンまでもが騒ぎを聞きつけて絹のはしごを上って来る。隠れていた人たちが姿を現し、ジューリアとドルヴィルの(そしてルチッラとブランザックの)結婚をドルモンが許すまでを手際よく進めている。
最後に締めの唱和 Quando amor si fa sentire で愛の神の力を讃える。Allegro 4/4 ニ長調。ちょっとずっこけたような後奏も秀逸。

ロッシーニはこの《絹のはしご》の後、9月にミラノ スカラ座で《試金石》を大成功させ、その経験と自信から一段二段の成長を見せることになる。逆に言うと《絹のはしご》はロッシーニの駆け出し時代の初々しさ瑞々しさがまだ残っている作品で、それを含めて十分に良く出来た佳作である。たしかにここでのロッシーニの音楽にはまだ のびしろの余地がある のだが、それは後のロッシーニと比べての話であり、フィナーレやドルヴィルのアリアなど際立って優れた音楽もある。また原作がフランスのオペラ=コミックの台本であることから、ファルサにありがちな強引な展開が少ないのもありがたい。近年非常に頻繁に上演されているのも当然だろう。

対訳付き音楽設計図

登場人物

ドルモン
Dormont,
【ジューリアの】 後見人
Tutore
テノール
tenore

ジューリア
Giulia,
被後見人の女
Pupilla
ソプラノ
soprano

ルチッラ
Lucilla,
ジューリアの従妹
Cugina di Giulia
ソプラノ
soprano

ドルヴィル
Dorvil
テノール
tenore

ブランザック
Blansac

バス
basso

ジェルマーノ
Germano,
ドルモンの召使い
Servitore di Dormont
バス
basso


舞台は パリの近辺の田園地帯の、ドルモンの家で 起こる。
La Scena segue in Campagna nelle vicinanze di Parigi, in Casa di Dormont.

日本語訳は極力文学的色づけをしない直訳にしてある。
歌詞とト書きは基本的に アンデルス・ウィクルンド Anders Willund 校訂のクリティカルエディション総譜に記載されているものに従っている。

Sinfonia
Allegro vivace
4/4
C major
Andantino
4/4
C major
(Andantino)
4/4
C major
N. 1
Introduzione

Giulia
Lucilla
Germano
Allegro vivace
4/4
F major
(SCENA Ⅰ)
(Il teatro rappresenta l'appartamento di Giulia. Una porta nel fondo e due gabinetti ai lati. Sul davanti, una porta vetrata che conduce ad un poggiuolo. Dirimpetto, una porta a griglia che guida ad una stanza. Queste due porte debbono essere situate faccia a faccia dello spettatore. Una tavola coperta da un tappeto, un burò, sedie)(舞台は ジューリアの 居室を 表している。奥に一つの扉 そして 両側面に 2つの 小部屋。正面に、ガラスをはめた 扉 それは バルコニーに 通じている。反対側に、格子窓のある扉 それは 【別の】 部屋に 導く。これらの 2つの 扉は 観客の 差し向かいに 位置している【≒ これらの 2つの 扉は 観客の方を 向いている】。テーブルカバーに覆われたテーブル、机、椅子)

(Giulia, e Germano, poi Lucilla)(ジューリア、ジェルマーノ、それから ルチッラ)

GIULIAジューリア
(inquieta)(そわそわと)
Va sciocco, non seccarmi,行きなさい ばか者め、私を うんざりさせるで ない、
qui sola vo restar.私は ここに 一人で いたい。

GERMANOジェルマーノ
(con flemma)(冷静さを もって)
Pazienza un pochettino,ほんの少し 辛抱を、
lasciatemi parlar.私に 話 させなさい。

GIULIAジューリア
Da te non voglio nulla.君から 私は 何も 望んでいない。
M'hai tu ben ben capito, bestia?君は 私【の言うこと】を よくよく 分かったか、愚か者よ?

GERMANOジェルマーノ
Flemma, flemma.冷静さを、冷静さを。
(con riso sciocco e malizioso)(馬鹿っぽい そして 意地悪い 微笑みをもって)
Capisco che vicina私は 理解している まさに
a prendere marito夫を 得 【↑】ようとして
avete, o padroncina,あなたが ああ 若女主人よ、
un po' di convulsione.少し 激発を 【↑】持っている 【↑↑↑】ことを【≒ ああ 若女主人よ、あなたが もうすぐ 夫を 迎える にあたって 少々 落ち着かないでいる ことを 私は 分かっている】。
Un poco di lezione少しの 教訓を
perciò vi voglio dar.だから 私は あなたに 与えたい。

GIULIAジューリア
(inquietandosi sempre [di] più e passeggiando)(ますます 手ひどく 落ち着きを失って そして そして 歩き回って)
Non voglio sentir niente!私は 何も 聞きたくない!

GERMANOジェルマーノ
(andandole dietro)(彼女に ついて行って【≒ 彼女に 付きまとって】)
Un savio colla barba ...顎髭のある 賢人が…

GIULIAジューリア
Diventi impertinente!君は 無礼に なっている!

GERMANOジェルマーノ
m'ha detto già mille anni...私に言った もう 千年 前に…
che ognun che si marita誰でも その者は 結婚する
va a caccia di malanni!..不幸を 探しに 行くのだ 【↑】と!…

GIULIAジューリア
Scioccone. Non seccarmi.ばか者め。私を うんざりさせるで ない。

GERMANOジェルマーノ
Non vo' che andiate in collera,私は 望んでいない あなたが 立腹する ことを、
saprò poi terminar.要するに 私は 【話を】 終える 術を知っているだろう【≒ だから 私は 話を 短く切り上げよう】。

GIULIAジューリア
Che dica che abbia detto君が 言ったことが 何を 意味するか【≒ 君が 何を 言ったにせよ】
a me non preme un zero.私には 何一つ 気にかからない【≒ 私には どうでもいい】。
Non farmi andar in collera,私を 立腹 させるで ない、
va via, non mi seccar.立ち去りなさい、私を うんざりさせるで ない。

GERMANOジェルマーノ
(parte)(去る)
e due gabinetti ai lati.
gabinetto は、伊和辞典には 執務室,応接室、さらには 便所 など様々な意味が載っているが、要するに 何らかの用途のための小部屋 のことである。ここでは限定せず 小部屋 で訳す。

un burò
burò はフランス語 bureau がイタリア語化したもの。bureau には 机 の意味と 事務所 の意味があるが(そして後者が英語に転じている)、この場合は 机。引き出しのある、手紙や書類を書くための机。

Che dica che abbia detto
この dica < dire は 意味する で採った。

Andantino
4/4
A-flat major
GIULIAジューリア
Son pur sola, alfin respiro.やっと 私は 一人で ある、ついに 私は 息をつく【≒ ようやく 私は ほっとできる】。
S'allontani il caro oggetto.私の 愛する 対象が 遠ざかるように【≒ 私の 愛する 人が ここを 離れねば】。
Deh corona un dolce affettoお願いだから 愛情のこもった 情愛に 冠を被せなさい【≒ 愛情に満ちた思いの 願いを叶えておくれ 】
se pur senti amor pietà.愛の神よ もし おまえが なおも 哀れみを 感じている ならば。
Allegro
4/4
F major
<(S'avvia al gabinetto alla destra. Alla voce di Lucilla, che sorte, retrocede precipitosamente)(右側の【= 下手の】 小部屋に 近付く。ルチッラの声に、その者は 外に出る【≒ 舞台に 現れた ルチッラの声に】、大急ぎで 後退する)

LUCILLAルチッラ
Cugina, cugina!..従姉よ、従姉よ!…

GIULIAジューリア
Un'altro malanno!..もう一人の 厄介な人が!…

LUCILLAルチッラ
Vi dice il tutore,後見人が あなたに 言っている、
che in sala venghiate.あなたが 広間に 来る ように と。

GIULIAジューリア
Verrò... verrò...私は 行こう… 私は 行こう…
ma prima n'andate.しかし その前に あなたが ここから 行きなさい。

GERMANOジェルマーノ
(esce correndo)(走って 出る)
Padrona, padrona...女主人よ、女主人よ…

GIULIAジューリア
Qui ancora scioccone!..ここに また ばか者が!…

GERMANOジェルマーノ
Mi manda il padrone...主人が 私を 呼びにやらせている …

GIULIAジューリア
Ho inteso, son lesta...私は 理解した、私は 素早い【≒ すぐに 行く】…
Ma prima un affareしかし その前に 用事を
compir vo' alla presta.私は 急いで 終了し たい。
Andate voi altri;君たちは 行きなさい;
verrò, non capite!私は 行こう、君たちは 理解しないのだ【≒ 分からないのか】!
Uscite, finite,出なさい、【私の 苛立ちを】 終えなさい、
mi sento inquietar.私は 苛立っているのを 感じている。
(Oh cielo, quest'alma(ああ 天よ、【↓】私の この 魂を
mi fan palpitar.)彼らは 震え させている。)

LUCILLA E GERMANOルチッラ と ジェルマーノ
Andiam.行こう。
Lasciate l'affare,用事を 止めなさい、
di poi finirete.それから あなたは 後で 【用事を】 終えるだろう。
Andiamoci insieme,いっしょに 行こう、
gran cose saprete.重大な ことを あなたは 知るだろう。
Via via colle buone,さあ さあ おとなしく、
non state a gridar.大声を出し ていないで。

GIULIAジューリア
Andate, verrò,行きなさい、私は 行こう、
non capite, sì!君たちは 理解していない、そうだ!
Uscite, finite,出なさい、終えなさい、
mi sento inquietar.私は 苛立っているのを 感じている。
(Ah quest'alma(ああ 【↓】私の この 魂を
mi fan palpitar.)彼らは 震え させている。)

LUCILLA E GERMANOルチッラ と ジェルマーノ
(Quei detti, quel foco(あの 言葉が、あの 情熱が【≒ あの 言い方が、あの 興奮が】
mi fan sospettar.)私を 疑わ せる。)

LUCILLAルチッラ
Venite,来なさい、

GERMANOジェルマーノ
Andiamo,行こう、

GIULIAジューリア
Vi seguo,私は 君たちの 後を追う、

GERMANOジェルマーノ
il padrone,主人が、

LUCILLAルチッラ
vi chiamo,私は あなたを 呼び出している、

GIULIAジューリア
male...嫌だけど…

GERMANOジェルマーノ
colle buone, non serve gridar.おとなしく、大声を出すことを 用いずに。

([Lucilla e Germano] partono dalla porta del fondo, che vien chiusa da Giulia)([ルチッラと ジェルマーノは] 去る 奥の 扉から、それは ジューリアによって 閉じられる)
che in sala venghiate.
venghiate = veniate、venire の接続法現在2人称親称複数形もしくは敬称単数複数形 の異形。

Andate voi altri;
voi altri = voialtri、voi の強調。

Via via colle buone,
colle buone は colle buone maniere の maniere を省略したもの。直訳すると 良いやり方で,良い作法で。実際には 丁寧に,礼儀正しく,行儀よく のような意味になる。この場合は おとなしく といった意味合い。

male...
この male は嘆きを表す言い方。この場合は、どの訳語を充てるかはともかく、ジューリアの 行きたくない という気持ちが出たもの。

colle buone, non serve gridar.
ジェルマーノは何度も non state a gridar. と言っているが、この一箇所だけ non serve gridar. と言っている。servire + 不定詞 という用法はあまり見ないが、―することを用いる だろう。

[Recitativo] Dopo l'Introduzione

4/4
(C major)
SCENA Ⅱ第2場

Giulia e Dorvilジューリアと ドルヴィル
(Giulia, chiusa la porta, apre il burò e ne trae una scala di seta, indi passa al gabinetto, e n'esce Dorvil)(ジューリアは、扉を 閉めて、机を 開けて そして そこから 絹のはしごを 引き出して、それから 小部屋に入る そして そこから ドルヴィルが 出て来る)

GIULIAジューリア
Siamo sicuri. Uscite;私たちは 安全だ。出て来なさい;
caro Dorvil sollecito partite.愛する ドルヴィルよ すぐに 去りなさい。

DORVILドルヴィル
O ciel! così presto!ああ 天よ! そんなに 早くに!

GIULIAジューリア
Un giorno intero丸一日が
vi par poco?あなたには 僅かに 思われるのか?

DORVILドルヴィル
Un momento.一瞬だ。

GIULIAジューリア
Eh! al solito poggiuoloえー! いつものように バルコニーに
(gli dà la scala di seta, e poi va ad aprire la porta vetrata)(彼に 絹のはしごを 手渡す、そして それから ガラスをはめた 扉を 開けに 行く)
questa scala attaccate, che vi serveこのはしごを 結わえ付けなさい、それは あなたに 役に立つ
per venirmi a trovar, e tosto andate.私に 会いに来る ために、そして すぐさま 行きなさい。

DORVILドルヴィル
Ah! con quanto martir!ああ! なんと多くの 苦痛と共に!

GIULIAジューリア
Perché?どうして?

DORVILドルヴィル
A momentiすぐに
dee venire quel Blansac例の ブランザックが 来るに 違いない
destinatovi in sposo dal tutore.後見人によって あなたの 花婿に 定められた。

GIULIAジューリア
Essendo vostra moglieあなたの 妻で あるのだから
ei non mi può sposar.彼は 私と 結婚することは できない。

DORVILドルヴィル
Ma quando pensoしかし 私が 思い起こす 時
alle espression d'amante愛する男の 表情を
ch'egli sarà per farvi...彼が あなたに するところで あろう【≒ 彼が あなたに するであろう 求愛の 顔つきを 私が 思い浮かべると】…

GIULIAジューリア
E che? gelosoいったい 何を? 嫉妬している
siete tuttora? E maiのか あなたは 相変わらず? そして 決して
scaccerete da voi questa mania?あなたから 振り払えないであろうか その 妄想を?
Non basta ch'io mi sia dinanzi all'araこと足りないのか 私が 祭壇の 前で
fatta segretamente a voi consorte?密かに あなたの 配偶者に なった 【↑】だけでは?
Verrà la buona zia col cui consenso善良な 叔母が 来るだろう その人に 許されて
v'ho sposato in segreto. Del tutore私は あなたと 密かに 結婚した。後見人の
per opra sua lo sdegno cederà,怒りは 彼女の おかげで 折れるだろう、
e tutto allora in bene finirà.そして その時には すべてが うまい具合に 終わるだろう。

DORVILドルヴィル
E intanto?そして その間は?

GIULIAジューリア
A mezzanotte真夜中に
con il solito mezzo della scalaいつもの はしごの 手段で【≒ いつものように はしごを 用いて】
a trovarmi verrete,あなたは 私に 会いに 来るだろう、
e allo spuntar del giorno partirete.そして 日の 現れることで あなたは 去るだろう【≒ 日の出とともに あなたは ここから出て行くだろう】。
Tutt'oggi, con periglio今日は ずっと、危険 のために
che il tutor se ne accorga,後見人が このことに 気付く という【≒ 後見人が このことに 気付く 危険が あったので】、
meco vi tenni. Egli or mi chiama: dunque私は あなたを 私と一緒に 置いておいた: そういうわけで
senz'altro indugio andate,さらなる 遅滞 なしに 行きなさい、
ed alla mezzanotte ritornate.そして 真夜中に 戻りなさい。

DORVILドルヴィル
Ubbidisco, ma ancora私は 従う、しかし まだ
non son le sei...6時で ない…

GIULIAジューリア
(vivamente)(激しく)
Ogni cosaあらゆることを
vuoi rovinar[e]?君は 台無しにし たいのか?

DORVILドルヴィル
No, no. Vado, mia sposa.いいや、いいや。私は 行く、私の妻よ、
(va al poggiuolo, attacca per di fuori la scala e scende)(バルコニーに、行く、外側に 向かって はしごを 結わえ付けて そして 下りる)


SCENA Ⅲ第3場
(Giulia, poi Dormont e Lucilla)(ジューリア、ドルモンと ルチッラ)
(Giulia dopo avere ritirata dal poggiuolo e rimessa nel burò la scala di seta, e chiusa la porta vetrata)(ジューリア バルコニーから 引き戻って そして 机の中に 絹のはしごを 戻した 後に、そして ガラスをはめた 扉を 閉じる)

GIULIAジューリア
Egli è sceso... respiro!彼は 下りた… 私は ほっとしている!
(va ad aprire)(開けに 行く)
Apriam la porta.扉を 開けよう。
A tempo egli è partito. Ecco il tutore.遅れずに 彼は 去った。そら ここに 後見人が。

(escono Dormont e Lucilla)(ドルモンと ルチッラが 出る)

DORMONTドルモン
(un po' risentito)(少し むっとして)
Per bacco! Tutto il giornoなんとまあ! 一日中
perché chiusa nel vostro appartamento?どうして あなたの 居室の中に 閉じこもっていたのか?
Pensate che a momenti考えなさい すぐに
ritorna qui Blansacここに ブランザックが 再び現れる 【↑】ことを
destinatovi in isposo.あなたに 花婿に 定められた。

LUCILLAルチッラ
(vivacemente)(快活に)
E com'è bello,そして 彼は なんと 美しく、
amabile, elegante, allegro...感じの良く、上品で、朗らかな 【↑】ことか…

DORMONTドルモン
E basta,だが もう結構、
or non marito voi.今は 私は あなたを 嫁がせるのでは ない。

LUCILLAルチッラ
(mortificata)(気落ちして)
Lo so purtroppo!私は そのことを 分かっている 残念ながら!

GIULIAジューリア
Vi supplico, signore... troppo presto私は あなたに 懇願する、叔父よ… あまりにも 早く
concluso avete.あなたは 【縁談を】 まとめ上げている。

DORMONTドルモン
Anzi sia fatto, e lesto.それどころか 遂行されるように、そして 手早く【≒ それどころか 済ませるのだ、それも 早く】。


SECNE Ⅳ第4場
Detti e Germano前の場の人たち そして ジェルマーノ

GERMANOジェルマーノ
(frettoloso dal fondo)(奥から 大急ぎで)
Signor padron, signor padron...主人の旦那よ、主人の旦那よ…

DORMONTドルモン
Ch'è stato?何が あったのか?

GERMANOジェルマーノ
C'è il signor di... come diavol si chiama?...なんとか氏がいる… いったい 彼は なんと 呼ばれているのか?…
Aspettate che vada a domandargli待ちなさい 私が 彼に 尋ねに 行くのを
il suo nome...彼の 名前を 【尋ねに行くの】…
Per andare行こうとする

DORMONTドルモン
(trattenendolo)(彼を 引き留めて)
È Blansac sicuramente.疑いなく 彼は ブランザックだ。

GERMANOジェルマーノ
Signor sì, un nome in ac... Blasac!...主人よ そうだ、アクを含む名前… ブラザクだ!…

DORMONTドルモン
Stordito!粗忽者め!

LUCILLAルチッラ
(Che gioia!)(なんという 喜びだ!)

GIULIAジューリア
(Che imbarazzo!)(なんという 窮状だ!)

DORMONTドルモン
Vo ad incontrarlo.私は 彼を 出迎えに 行く。
(a Giulia)(ジューリアに)
Voi pensate al modoあなたは やり方について 考えなさい
di ricever lo sposo degnamente.花婿を 立派に 迎える。
(parte)(去る)

LUCILLAルチッラ
(Voglio andarlo a vedere destramente.)(私は 抜け目なく 彼に 会いに 行きたい)
(parte)(去る)

GERMANOジェルマーノ
Vado anch'io, servo suo...私も 行く、彼の 召使いだ【≒ 彼に 仕える】…

GIULIAジューリア
(imbrogliata a Germano, e come per parlargli, ma s'astrae e parla seco medesima fantasticando)(混乱して ジェルマーノに、そして 彼に 話し掛ける ように、しかし 自らの 気分を転じて、そして 彼女自身に 話す 夢見ながら【≒ 【出て行こうとする】ジェルマーノに 動揺して、そして 彼に 話し掛けようとして、しかし 思い直して そして ぼんやりと 独り言を 言う】)
Ferma... senti...止まりなさい… 聞きなさい…

GERMANOジェルマーノ
Son qua.私は ここに いる。

GIULIAジューリア
(passeggiando e Germano le va dietro osservandola)(歩き回って そして ジェルマーノは 彼女を じっと見ながら 彼女の 後ろを 歩く)
(Per liberarmi(私を 解放するために
da questo sposo qual util progettoあの 花婿から なんと 助けるになるような 目論見が
mi passa per la testa!)私の頭に 閃いている 【↑】ことか!)

GERMANOジェルマーノ
Onde, signora?...なぜ 【私を 呼び止めたのか】、主人の女よ?…

GIULIAジューリア
(Capisco, che a Lucilla mia cugina(私は 分かっている、私の 従妹の ルチッラに
piace molto Blansac.)ブランザックが 大いに 気に入られている 【↑】ことを。)

GERMANOジェルマーノ
Non ho capito私は 理解しなかった
neppur una parola...一言 さえも…

GIULIAジューリア
(Se impegnarlo potessi(もし 私が 彼に 約束を取り付けることが できるならば
a sposarla in mia vece...私の代わりに 彼女と 結婚するように…
(guardando Germano)(ジェルマーノを 見詰めながら)
la sciocchezza【↓】この男の 馬鹿さ加減が
di costui può giovarmi.)私に 役に立つ かもしれない。)

GERMANOジェルマーノ
Ma parlateところで あなたは 話しているのか
con me o con il muro?私と それとも 壁と?

GIULIAジューリア
(artifiziosamente)(わざとらしく)
Caro il mio Germano!...愛する 私の ジェルマーノよ!…

GERMANOジェルマーノ
(con riso sciocco)(間の抜けた 微笑みを もって)
Caro... oh perdono alla sua gran bontà!..愛する… ああ 彼女の 大きな 親切心に 許しを【≒ あんな 過分な 素敵な 言葉なんて ご勘弁を】!…
Cosicché... se si può...それで… もし できれば…

GIULIAジューリア
Sentimi qua.ここで 私【の言うこと】を 聞きなさい。
vuoi rovinar[e]?
ジューリアはドルヴィルに対して基本的に 敬称 voi を用いているが、ここでは思わず 親称 tu を用いて怒っている。

Vado anch'io, servo suo...
servo suo はジューリアに向かって言っている。彼の 召使いだ ≒ 彼に 仕える と言って立ち去ろうとしている。

mi passa per la testa!)
passare per la testa 思いつく,(考えが)ひらめく

N. 2
Duetto [Giulia-Germano]

Giulia
Germano
Andante giusto
2/4
A major
GIULIAジューリア
Io so ch'hai buon core,私は 知っている 君が 善良な 心を 持っている ことを、
che m'ami davvero;君が 私を 本当に 愛している ことを;
e un pegno d'amoreそして 愛の 証を
io bramo da te.私は 君から 熱望している。

GERMANOジェルマーノ
Ah cara padrona,ああ 愛する 女主人よ、
se amor mi chiedete,もし あなたが 私に 愛を 求める ならば、
oh quanto voleteああ 【↓】それについて あなたが 望む ところのものを
ne avrete da me.あなたは わたしから 受け取るだろう。

GIULIAジューリア
(Per altro ci vuole(だがしかし 必要である
giudizio e prudenza!)分別と 慎重さが!)

GERMANOジェルマーノ
(Non trova parole,(彼女は 言葉を 見つけ【られ】ない、
cotanto è in ardenza!)彼女は それほどに 激情に ある!)

GIULIAジューリア
(Se a lei si fa sposo,(もし 彼女の【= ルチッラの】 花婿に 彼が【= ブランザックが】 なる ならば、
che sorte per me!)私にとって なんという 幸運だ!)

GERMANOジェルマーノ
(Se dice davvero,(彼女が 本気で 言っている ならば、
che sorte per me!)私にとって なんという 幸運だ!)
緩 / 急 の二部構成の二重唱。
緩。

(Non trova parole,
前後の流れからすると、ここの主語は 私の心は のように思われるが、しかしその手掛かりは見当たらない。

Allegretto
4/4
D major
GERMANOジェルマーノ
(vivamente)(熱烈に)
Via chiaro spiegate...さあ はっきりと 説明しなさい…

GIULIAジューリア
(con artifiziosa riserva)(わざとらしい ためらいを もって)
Mi manca il coraggio...私には 勇気が 足りない…

GERMANOジェルマーノ
(incalorendosi sempre [di] più)(ますます 興奮して)
Son qui, comandate...私は ここに いる、命じなさい…

GIULIAジューリア
Sei pronto?君は 用意ができて いるか?

GERMANOジェルマーノ
Sì, prontissimo.はい、この上なく用意できている。

GIULIAジューリア
Disposto?覚悟しているか?

GERMANOジェルマーノ
Ah, dispostissimo.ああ、この上なく覚悟している。

GIULIAジューリア
Sei pronto?君は 用意ができて いるか?

GERMANOジェルマーノ
Prontissimo, ardentissimo.この上なく用意できている、この上なく熱くなっている。

GIULIAジューリア
(lo piglia a sé e gli parla in aria del più gran segreto)(彼を 自分の方に 掴む そして 彼に 話す この上なく 重大な 秘密の 様子で) 
Attento ti bramo私は 君に 切望する 注意するように
all'ospite ognora:客に対して【= ブランザックに対して】 常に:
e se mia cuginaそして 私の 従妹が
con esso talora彼に 時々
fa un poco le carte少し カードを 配る【↑↑】かどうか【≒ ルチッラが 時々 ブランザックに 話し掛ける かどうか】
saper vo' da te.私は 君から 知りたい。

GERMANOジェルマーノ
(mortificato)(気落ちして)
Io!..私が!…

GIULIAジューリア
Tu caro mio...君が 私の愛する男よ…

GERMANOジェルマーノ
Io... grazie... pulito!私が… ありがとう… きれいにされた【≒ どういうことなのか よく分かった】!
Volete?..あなたは 望むのか?…

GIULIAジューリア
Sì, sì.そうだ、そうだ。

GERMANOジェルマーノ
ho capito...私は 理解した…
(Credea la bragiola(私は 思った ステーキを
avere sul piatto,皿の上に 持っている と、
ma oimè venne il gatto,しかし 悲しいかな 猫が 来た、
e via la sgraffiò.)そして それを 奪い去った。)
(affettando vivacità)(生気を 装って【≒ 陽気な 振りをして】)
Oh in somma poichéああ 結局
son uomo di spirito,私は 生気に満ちた 男 【↑】だから、
andrò... sentirò...私は 行こう… 聞こう…
e tutto dirò.そして あらゆることを 言おう。
経過区。

fa un poco le carte
fare le carte にはいろいろな意味があるが、この場合は (トランプなどの)カードを配る の意味だと思われる(インターネット上の古い伊英辞典に fare le carte は deal (at) cards とある)。その上で カードを配る という表現で 話し掛ける,言い寄る などの意味で用いていると思われる。

Io... grazie... pulito!
pulito と男性形なのでこれはジェルマーノのことを指している。おそらく chiaro のような意味合いで用いられていると思われる。

(Credea la bragiola
bragiola = braciola ブラチョーラ、イタリアのステーキの一種。詳しくは検索を。

son uomo di spirito,
この di spirito は spiritoso 生気に満ちた,元気のよい と理解した。

Vivo
2/2
A major
GIULIAジューリア
Oh quanto son grataああ なんと 私は ありがたく思っている ことか
a tanto buon core!これほど 善良な 心に。
Gran prove d'amore大きな 愛の 証を
t'attendi da me.私から 君に 期待しなさい。

GERMANOジェルマーノ
Oh quanto son gratoああ なんと 私は ありがたく思っている ことか
a tanto buon core!これほど 善良な 心に。
(ironico)(皮肉を込めて)
Gran prove d'amore大きな 愛の 証だ
son queste per me!これらは 私にとって!

(Giulia entra in un gabinetto, e Germano parte dal fondo)(ジューリアは 小部屋に 入る、そして ジェルマーノは 奥から 去る)
急。

[Recitativo] Dopo il Duettop di Giulia e Germano



4/4
(C major)
SCENA Ⅴ第5場
Blansac, Dormont, Dorvil, (un servitore)ブランザック、ドルモン、ドルヴィル、(召使い)

BLANSACブランザック
Oh senza cerimonie... di buon core...ああ 堅苦しさ なしに【≒ お構いなく】… 心から…
grazie... ma ov'è la sposa?ありがとう… ところで 花嫁は どこに いるのか?

DORMONTドルモン
Giulia è certo allo specchio, ma a momentiジューリアは 確実に 鏡の 前にいる、けれども すぐに
sarà qui.彼女は ここに 来るだろう。

BLANSACブランザック
Alla campagna田舎では
non servon tante smorfie. Or fin che viene,たくさんの 媚びは 役に立たない【≒ 田舎では 見た目など 気にしなくてもいい】。ところで 彼女が 来る まで、
conoscete Dorvil in quest'amicoこの 友 ドルヴィルと 知り合いなさい
che vi presento.その者を 私は あなたに 紹介する【≒ 私が あなたに 紹介する 私の友 ドルヴィルと 知り合いになってほしい】。

DORMONTドルモン
(civiltà con Dorvil che vi corrisponde ecc.)(ドルヴィルに 礼儀正しく その者は それに 応える 等々)
Il suo nome m'è noto.彼の名前は 私に 知られている。

BLANSACブランザック
Lo trovai qui dappresso, e testimonio私は 彼に ここの 近くで 遭遇し、そして
lo vo' del mio contratto.私は 彼を 私の契約の 【↑】証人に 望んでいる。

DORVILドルヴィル
(Buono!)(結構だ!)

BLANSACブランザック
Doman sia fatto.明日 それが なされるように。

DORMONTドルモン
E doman si farà. Vo a dar degli ordini,そして 明日 それは なされるだろう。私は 行く 指示を 与えに、
e Giulia ad affrettar.そして ジューリアを 急がせに。

BLANSACブランザック
(affettatamente)(気取って)
Ve ne scongiuro.そのことについて 私は あなたに 懇願する。

DORMONTドルモン
Tutto compito fia, state sicuro.すべては 成し遂げられる だろう、安心しなさい。
parte (col servitore)去る(召使いと 共に)


SCENA Ⅵ第6場
(Blansac, e Dorvil)(ブランザック、そして ドルヴィル)

DORVILドルヴィル
(Distoglierlo tentiam da queste nozze.)(この結婚式から 彼を 翻意させることを 試みよう)
E che? Tu ti mariti?何だって? 君は 結婚するのか?

BLANSACブランザック
Qual sorpresa!なんという 驚きだ【≒ 驚いただろう】!

DORVILドルヴィル
So che il tuo core è instabil tanto.私は 知っている 君の心が 大いに 変わりやすい ことを。

BLANSACブランザック
(in aria romanzesca)(現実離れした 様子 で【≒ 夢現の様子で】)
Voglio fissarlo divenendo il più fedele,私は それを【= 心を】 定め たい 最も 誠実な、
il più tenero sposo.最も 優しい 花婿に 【↑】なることによって。

DORVILドルヴィル
Odi in segreto.内密に 聞きなさい。
Fai la più gran pazzia sposando Giulia.君は ジューリアと 結婚することによって この上なく 大きな 馬鹿げた行為を している。

BLANSACブランザック
Perché?どうして?

DORVILドルヴィル
(marcatamente)(強調して)
Ho le mie ragioni.私は 私の 理由を 持っている【≒ 私には 理由が ある】

BLANSACブランザック
Qual tuono maiいったい どのような
misterioso è questo?意味深長な 【↑】口調なのか これは?

DORVILドルヴィル
(in aria di gran confidenza)(大きな 秘密の話の 様子 で【≒ 極めて 内密に】)
Per Parigiパリ中で
si dice già che Giulia si fa sposaジューリアは 花嫁になる と もう 言われている
solo per ubbidire al suo tutore,ただ 彼女の 後見人に 従う ため だけに、
ma non perché ti stimi o porti amore.彼女が 君を 尊敬している あるいは 君に 愛情を 抱いている からでは なく 【↑↑】と。

BLANSACブランザック
Ah cospetto! son punto.ああ これは驚いた! 私は 傷つけられた。
(vivissimamente)(この上なく 熱烈に)
Ella non m'ama?彼女が 私を 愛して いない だって?
io non saprò piacere a lei? tu stesso私が 彼女に 好かれる ことは できないだろう だって? 君 自身が
giudicar ne dovrai. All'entusiasmoそのことについて 判断す べきだろう。熱狂に
io sono già d'averti ritrovato.私は ある まったく 君と 再び会って【≒ 私は 君と 再会したことに 本当に 大喜びしている。】。

DORVILドルヴィル
Perché?どうして?

BLANSACブランザック
(pensa)(考える)
Per riparare la mia gloria私の 名誉を 元に戻す ために
qui presente ti vo' di mia vittoria.私は 君が 私の勝利に 居合わせるよう 望む。

DORVILドルヴィル
(Quest'è proprio superba!)(この男は 本当に 尊大だ!)

BLANSACブランザック
Ma potrebbeだが
Giulia in presenza tuaジューリアは 君の 居ることに
avere dei riguardi... e allor... ci vuole慎重を 抱く 【↑↑】かもしれない【≒ ジューリアは 君がいると 気にする かもしれない】… その時は… 必要である
un ripiego...方策が…
(apre la porta con griglia)(格子窓の ある 扉を 開く)
osserviamo...【ここを】 注意深く見てみよう…

DORVILドルヴィル
(con rabbia segreta)(密かな 怒りを もって【≒ 気付かれないように 怒って】)
(Il mio espediente(私の 方策は
proprio in bene è riuscito!)本当に 上手く 成功した!

BLANSACブランザック
Ottimamente!この上なくとても良い!
Asconditi qui dietro e osserva tuttoここの 後ろに 隠れなさい そして すべてを 注意深く見なさい
per doverne stupir.そのことについて 驚くに 違いない ために。
Oh senza cerimonie... di buon core...
di buon cuore = di (tutto) cuore 心から。どちらも ringraziare と共に用いられることが多い。

Alla campagna
設定に書いてあるように、ドルモンの館はパリ郊外にあり、それほど田舎なわけではない(原作台本では館の近くに林 petit bois があると書かれている)。ここをブランザックが田舎扱いしているということは、彼がまったくのパリの都会の人間であることを示唆している。

N. 3
[Recitativo ed Aria Dorvil]

Dorvil
Recitativo che procede l'Aria Dorvil


4/4
(E-flat major)
DORVILドルヴィル
Tu vuoi?..君は 望むのか?…

BLANSACブランザック
Va lesto.素早く 行きなさい。
Vedrai, godrai...君は 見るだろう、君は 心から喜ぶだろう…

DORVILドルヴィル
Eh lascia...やれやれ 放っておきなさい…

BLANSACブランザック
Quai riserve?どのような 留保が【≒ 何が 気に入らないのか】?

DORVILドルヴィル
(Sì, conosciamo il cor di Giulia a fondo.)(そうだ、ジューリアの心を 深く 知ろう)

BLANSACブランザック
Ebben, che dici?それで、君は 何と 言うのか?

DORVILドルヴィル
Il tuo desir secondo.君の 欲求に 私は 従う。
(Sì, conosciamo il cor di Giulia a fondo.)
conoscere a fondo 深く知る。a fondo で 徹底的に の意味になる。

[Aria Dorvil]

Andantino
4/4
E-flat major
Vedrò qual sommo incanto私は 見よう、どのような至高の魔力が
di femmina nel petto女性の 胸の 中に
rechi un novello affetto,新たな 情愛を 引き起こす のか、
o un lusinghiero ardor.あるいは 喜ばしい 熱情を 【引き起こす のか】。
緩 カンタービレ。

di femmina nel petto
ロッシーニがこの箇所の4行を 2行+2行 で扱って音楽を付けているため、2行目が1行目にかかるように理解されがちだが、台本を読む限りはフォッパはこの2行目を3行目にかかるように書いていると理解するのが妥当だろう。そうすると1行目の sommo incanto 至高の魔力 は ブランザックが女を口説くこの上なく力強い魔力 といった意味に採れる。そして Vedrò はドルヴィルがブランザックに対して 見てやろうじゃないか,お手並み拝見 のような少々挑発的な意味合いを帯びる。

Allegro vivace
4/4
E-flat major
(Bramo l'istante e il temo.)(私は 【その】瞬間を 熱望している しかし 【同時に】 私は それを 恐れている。)
Curioso è l'accidente...それは 奇妙な 偶発事件だ【≒ この 試みは 興味深い】…
(Ah che in pensarvi io fremo...)(ああ あなたを【= ジューリアを】思いながら 私は 震えている…)
Ti credo assai possente:君は【= ブランザックは】 大いに 活力があると 私は 思っている:
del tuo trionfo io stesso私 自身が 君の勝利の
sarò qui ammiratore.賛美者に ここで なるだろう。
テンポ・ディ・メッゾ。

ドルヴィルの言葉がブランザックに対して言っている場合と心の中で言っている場合が交錯していることに注意。
(Allegro vivace)
4/4
E-flat major
(Ah se per te m'accendo,(ああ 私は おまえに よって【= 次行 愛の神に よって】 燃え上っている のだから、
deh non tradirmi amore.)お願いだから 私を 裏切るでない 愛の神よ。)
Curioso è l'accidente...それは 奇妙な 偶発事件だ【≒ この 試みは 興味深い】…
(Ah che in pensarvi io fremo...)(ああ あなたを【= ジューリアを】思いながら 私は 震えている…)
Ti credo assai possente:君は【= ブランザックは】 大いに 活力があると 私は 思っている:
del tuo trionfo io stesso私 自身が 君の勝利の
sarò qui ammiratore.賛美者に ここで なるだろう。
(entra nella porta a griglia e si chiude)(格子窓の付いた 扉の 中に 入り そして 身を潜める)
急 カバレッタ。

(Ah se per te m'accendo,
ドルヴィルはジューリアに対して基本的に2人称敬称 voi を用いているので、この2人称親称 te はジューリアを指しているのではない。もちろんブランザックでもない。したがってこの te は次行の amore 愛の神 を指していると考えるべきである。ちなみにフォッパはこの8か月半後に初演された《ブルスキーノ氏》の台本作家でもあるが、そこでも第1番 導入 の冒頭で amore を 愛の神 の意味で用い、tu おまえ で命令するというよく似た表現を用いている。

[Recitativo] Dopo l'Aria Dorvil


4/4
(C major)
SCENA Ⅶ第7場
(Dorvil nascosto. Blansac, poi Germano, indi Giulia)(ドルヴィル 隠れて。ブランザック、それから ジェルマーノ、その後に ジューリア)

BLANSACブランザック
Io non so conquistare un cor di donna?私が 女の心を 勝ち取る 術を知らない と?
Un Blansac! impossibile!ブランザックが! ありえない!

(esce Germano, e non veduto, si ferma indietro in osservazione presso un gabinetto)(ジェルマーノが 出る、そして 見られずに、後ろで 立ち止まる 小部屋の傍で 注意深く見るために)

GERMANOジェルマーノ
(Eccolo qui, osserviamo,(そら ここだ、注意深く見よう、
e a servir la padrona incominciamo.)そして 女主人に 仕えるのを 始めよう。)
(entra nel gabinetto e si fa vedere a suo tempo)(小部屋の 中に 入る そして 然るべき時に 姿を 表す)

BLANSACブランザック
Son punto, e la vedremo.私は 傷ついた、そして 彼女に 会おう。

GIULIAジューリア
(esce Giulia concentrata in se stessa)(ジューリアが 出る 彼女自身に 没頭して【≒ 思い耽って】)
(Sì, voglio che Blansac sposi Lucilla,(そうだ、私は 望んでいる ブランザックが ルチッラと 結婚する ことを、
e in tal guisa allontano il mio periglio.)そして そのようにして 私は 私の危機を 払いのける 【↑】ことを。)

DORVILドルヴィル
(aprendo un poco a Blansac che se gli trova vicino)(【扉を】 少し ブランザックに対して 開けて その者は 彼の 傍に いる)
(Mi sembra assai pensosa.)(彼女は とても 物思いに耽っている ように 私には 見える。)

BLANSACブランザック
(Taci.)(黙って。)

GERMANOジェルマーノ
(osservando Dorvil)(ドルヴィルを 注意深く見て)
(Oh bella!ああ なんてことだ!
un altro lì in gabbiotto!)もう一人の男が あそこで 鳥籠の中に!)

GIULIAジューリア
(Ma conosciamo in prima s'egli è tale(しかし まずは 知ろう 彼が
da renderla felice.)彼女を 幸せに する 【↑】ほど 【↑】かどうかを。

BLANSACブランザック
(scoprendosi)(身を晒して)
Ah bella Giulia,ああ 美しい ジューリアよ、
posso offrirvi una volta i voti miei!私は もう一度 あなたに 私の 願いを 申し出る ことができるのだ!
N'è rapita quest'alma!私の 魂は あなたによって 恍惚とされている!
Ma perché mai celarvi a chi v'adora?しかし いったい なぜ あなたは 隠れるのか あなたを 熱愛する者から?

GIULIAジューリア
Voi supponete d'essere un amanteあなたは 仮定している
tenero!優しい 【↑】恋人であると【≒ あなたは 自分が 優しい 愛する男だと 思っている】!

BLANSACブランザック
Tenerissimo.この上なく 優しい。

GIULIAジューリア
Con vostra buona grazia non vi credo.あなたの 善良な 寛大さをもって【≒ あなたの許しを頂けるならば,失礼ながら】 私は あなたを 信用していない。

BLANSACブランザック
Quest'è un ingiusto oltraggio.それは 不当な 侮辱だ。

GIULIAジューリア
Voi voleteあなたは 望んでいる
piacere a tutte, e, s'ho da dirvi il vero,すべての女たちに 好かれることを、そして、もし 私が 真実を 言わ なければならない ならば【≒ 正直に 申し上げれば】、
non mi sapete interessar.あなたは 私の 興味を引く 術を知らない。

DORVILドルヴィル
(Va bene!)(いいぞ!)

GERMANOジェルマーノ
(Ma perché mai quell'altro fa bao bao?)(しかし いったい どうして あの もう一人の男は ワンワン 吠えているのか【≒ どうして あの もう一人の男は 呟いているのか】?)

BLANSACブランザック
Signora!..婦人よ!…

GIULIAジューリア
Ognun vi taccia di leggero.誰もが あなたを 軽薄だと 非難している。

BLANSACブランザック
Ah che più non lo sono. È l'incostanzaああ 私は もう そのような者では ない。移り気は
dell'età mia il difetto, ma i suoi dritti私の 【若い】 年齢の 過ちだ、しかし その【= 次行の 理性の】 正しさを
su me ragion riprende.理性が 私に 諭している。
Finché libero io fui correr potei私は 自由 だった ので 私は 駆け【回】る ことができた
di bella in bella, ma se d'esser fido美女から 美女へと、しかし もし 誠実になる と
ad una degna sposa io giurerò相応しい 花嫁に 私が 誓うであろう ならば
lei sola eternamente adorerò.彼女 だけを 永遠に 熱愛するだろう。

GIULIAジューリア
Dite davvero! voiあなたは 本気で 言っているのだ! あなたは
così parlando m'incantate.そのように 話して 私を 魅惑している。

DORVILドルヴィル
(Ohimè!(ああ!
che vuol dir questo?)このことは 何を 意味しているのか?)

GERMANOジェルマーノ
(Oh bella! si rimescola!)(これは凄い! 彼は 動揺している!)

GIULIAジューリア
(Egli mi par sincero, e di Lucilla(彼は 誠意があるように 私には 思われる、そして ルチッラの
può far la sorte.)運命を 彼は 決める ことができるだろう【≒ 彼は ルチッラを 幸せに することが できる】。)

BLANSACブランザック
(Ella di già s'accende.)(彼女は 早くも 燃え上がっている。)

GIULIAジューリア
E voi certo?..それで あなたは 確信しているのか?…

BLANSACブランザック
Ah qual dubbio! egli m'offende!ああ なんという 疑いだ! それは【= 疑いは 男性名詞単数】 私の 感情を害している。
e si fa vedere a suo tempo)
farsi vedere 自らを見させる= mostrarsi, apparire 姿を現す。farsi + 不定詞 の使役の表現だが、これはほぼ慣用表現化している。

un altro lì in gabbiotto!)
格子窓のある扉の向こうにいるドルヴィルを 鳥籠の中 と捉えた表現。

N'è rapita quest'alma!
この場合の ne は da voi に相当する。受動態の ―によって da - のうちいくつかの場合を ne で受ける。

Con vostra buona grazia
buona grazia = buonagrazia 礼儀正しさ,親切さ。con vostra buonagrazia は直訳すると あなたの 心優しい 厚意を もって で、もし あなたが よろしければ という意味になる(se non vi dispiace とほぼ同義)。この場合は 失礼ですが のような意味合い。

(Ma perché mai quell'altro fa bao bao?)
bao bao = bau bau 犬の鳴き声 ワンワン。

N. 4
Quartetto [Giulia - Dorvil - Blansac - Germano]

Giulia
Dorvil
Blansac
Germano
Moderato
4/4
C major
BLANSACブランザック
Sì che unito a cara sposaそうだ 愛する 花嫁と 結ばれて
io sarò fedele ognor.私は いつまでも 誠実に なろう。

DORVILドルヴィル
(A qual barbaro cimento(なんという 残酷な 試練に
or si trova questo cor!)今 この心は ある 【↑】ことか!

GIULIAジューリア
Ah ch'io temo che sinceroああ 私は 懸念している
non sia il voto dell'amor.【あなたの】 愛の 誓いが 誠意あるものでは ない のではないか 【↑】と。

GERMANOジェルマーノ
(Qui v'è sotto un qualche imbroglio,(ここは なにか 厄介な事情の 下に ある【≒ ここは なにか ややこしい状況下に ある】、
qui v'è troppo mal umor.)ここに 過度の 不機嫌が ある【≒ あそこに とても 機嫌の悪い人が いる】。)

BLANSACブランザック
Sì che a lei sarò costante.私は 本当に 彼女に【= 花嫁に】ずっと 誠実で いよう。

GIULIAジューリア
Sempre fido!ずっと 誠実な!

BLANSACブランザック
Sempre amante...ずっと 愛する者だ…

DORVILドルヴィル
(Ma davver che se la dura(しかし 彼が 【これ以上】 頑張る ならば 本当に
io fo qui bella figura.)私は ここで 良い印象を与える【だろう】。)

GIULIAジューリア
Lo giurate.そのことを 誓いなさい。

BLANSACブランザック
Il giuro ancor私は もう一度 誓う
di tutti i sposi sarò il miglior.私が 全ての 花婿 よりも より優れる であろう と。
qui v'è troppo mal umor.)
mal umore = malumore 不機嫌,焦燥。ドルヴィルのこと。

(Ma davver che se la dura
durarla 頑張る,耐え忍ぶ,持ち堪える。

io fo qui bella figura.)
fare bella figura = fare buona figura は 好印象を与える,成功する の意味。反語表現と思われるが、フォッパがここをどう意図して書いたのか分からない。ただ状況から察するに、ドルヴィルが隠れていた小部屋から飛び出して… ということなのだろう。

Allegro
4/4
C major
GIULIA E BLANSACジューリア と ブランザック
I voti unanimi, la tenerezza,全員一致の 誓いよ【≒ 二人の誓いよ】、優しさよ、
gioie, desiri, piaceri, ebbrezza!喜びよ、憧れよ、楽しみよ、陶酔よ!
ah quest'è un'anima felicitar.ああ それが 魂を 喜ばせるものだ。

DORVILドルヴィル
(Bravi si serrano, vadano avanti;(たいした奴らが 接近している、続けるがいい;
godano pure de' loro incanti,彼らの 魅せられた状態を どうぞ 楽しみなさい、
ma tutto in aria farò volar.)しかし 私は すべてを 宙に 飛ば すだろう。

GERMANOジェルマーノ
(Quel si rimescola, quello riscaldasi...(あの人は【= ドルヴィルは】 動揺している、あの男は【= ブランザックは】 興奮している…
ah qui di certo v'è uno sconcerto...ああ ここには 確実に 混乱が ある…
voglio la storia diciferar.)私は 出来事を 解読し たい。)
Bravi si serrano
bravi は いいぞ! という掛け声かもしれないが、 brav'uomi のことで、かつ反語表現だと理解した。たいした奴ら と訳す。この serrarsi は accostarsi 接近する の同義と理解した。

voglio la storia diciferar.)
diciferare = deciferare 解読する。

Primo Tempo
4/4
C major
GERMANOジェルマーノ
(accostandosi a Giulia, ed accennando ov'è Dorvil)(ジューリアに 近付いて、そして ドルヴィルが いる ところを 示して)
Padrona, è lì...女主人よ、彼が あそこに いる…

GIULIAジューリア
(fissando Blansac)(ブランザックを じっと見つめて)
È lì, lo vedo.彼は あそこに いる、私は 彼を 見ている。

GERMANOジェルマーノ
(incalzando il lazzo)(おどけた動作を 急き立てて【≒ 大げさな 身振りで】)
No, no, ch'è lì...いいや、いいや、彼が あそこに いる と…

GIULIAジューリア
Ch'è lì... sei matto!誰が あそこに いるって… 君は 頭がおかしい!

GERMANOジェルマーノ
È lì dico!彼が あそこに いる と 私は 言っている!

GIULIAジューリア
Ma chi?いったい 誰が?

BLANSACブランザック
(Blansac apre la porta e n'esce Dorvil. Sorpresa ecc.)(ブランザックは 扉を 開ける そして そこから ドルヴィルが 出る。驚き 等々)
(a Dorvil in aria di trionfo)(ドルヴィルに 勝ち誇った 様子で)
Sei già scoperto. Avanti.君は もう 見つけられた。入りなさい。
Dimmi, chi porta i vanti?私に 言いなさい、誰が 栄光を 持っているのか?
Andante
3/4
E-flat major
DORVILドルヴィル
(ironico)(皮肉を込めて)
Con lei me ne consolo,あなたについて 私は 喜んでいる、
amabile signora.愛らしい 婦人よ。
Quei dolci affetti teneriあの 優しい 甘い 情愛を
si goda lieta ognora.常に 愉快に 楽しむがいい。
Esempio è il suo bel coreあなたの 素晴らしい 心は 模範だ
di vera fedeltà.真の 誠実さの。
Con lei me ne consolo,
ここでドルヴィルはジューリアに対する2人称敬称に voi ではなく lei を用いている。lei の方がよそよそしい。人前だからということもあるだろうが、普段より相手と距離を取る印象もある。
me ne consolo
直訳すると 私は喜んでいる(ne はほぼ冗語))
Allegro moderato
4/4
E-flat major
GIULIAジューリア
Che ardire! che imprudenza!..なんという 厚かましさだ! なんという 軽率な行動だ!
(Freniamci.)(自制しよう)
(a Blansac)(ブランザックに)
Ei come qua?彼は なぜ ここに?
(Freniamci.)
これは自分に対して言っているのだろう。ジューリアは勝手に覗き見して誤解したドルヴィルに一瞬苛立ったものの、自制しよう と冷静になっている。

Allegro vivace
4/4
C major
BLANSACブランザック
(come sopra)(上と 同様に【≒ 勝ち誇った 様子で】)
Io stesso l'ho condotto,私 自身が 彼を 連れて来た、
e il volli testimonioそして 彼に 証人に 望んだ
di mia felicità.私の 幸せの。

(ognuno tirando a sé Germano che si mostra imbarazzatissimo)(皆それぞれが ジェルマーノを 自分の方に 引き寄せる その者は この上なく困惑した 様子を見せる)

DORVILドルヴィル
Insolente e chi t'ha detto無礼な【奴め】 それで 誰が 君に 言ったのか
ch'io colà mi stava ascoso?私が 向こうで 隠れている と?

GERMANOジェルマーノ
Compatite mio signore,大目に見なさい 私の 貴君よ、
per istinto io son curioso.衝動的に 私は 好奇心をもった。

BLANSACブランザック
Dimmi un po' chi t'ha ordinatoちょっと 私に 言いなさい 誰が 君に 命令したのか
metter man ne' fatti miei?私の 行為に 手を 置くように【≒ 私の することに 首を突っ込むように】 と?

GERMANOジェルマーノ
V'assicuro che l'ho fatto私は あなたに 請け合う そのことを 私が した と
sol per dare gusto a lei.ただ 彼女を 満足させる ために。

GIULIAジューリア
Io che c'entro se ciascuno私が 何と 関係があるのか それぞれが
qui di te si chiama offeso?ここで 君のせいで 腹を立てたと 言明している 【↑】のに【≒ 皆が 君に 腹を立てていると はっきり言っているのに、私に 何の関係が あるというのか】?

GERMANOジェルマーノ
Padroncina, perdonate,若女主人よ、容赦しなさい、
avrò forse mal inteso.私は おそらく 悪く 理解したのだろう【≒ たぶん 私は 誤解して いたのだろう】。

DORVILドルヴィル
Insolente.無礼な奴め。

GERMANOジェルマーノ
Compatite.容赦しなさい。

BLANSACブランザック
Dimmi un poco.ちょっと 私に 言いなさい。

GERMANOジェルマーノ
Ma pazienza,どうか 辛抱を。

GIULIAジューリア
Io che c'entro.私が 何と 関係があるのか。

GERMANOジェルマーノ
padroncina,若女主人よ、

DORVILドルヴィル
Insolente.無礼な奴め。

GERMANOジェルマーノ
perdonate,容赦しなさい、

GIULIAジューリア
Ignorante.無作法な奴め。

DORVILドルヴィル
Insolente.無礼な奴め。

GERMANOジェルマーノ
perdonate,容赦しなさい、
ma pazienza miei signori...どうか 辛抱を 私の 貴君たちよ…

BLANSACブランザック
Dimmi un poco.ちょっと 私に 言いなさい。

GERMANOジェルマーノ
veh che caso indiavolato!..まったく なんという 悪魔に取りつかれた 状況だ【≒ なんという 厄介な 状況だ↑】!…
Vi dirò la mia ragione...あなたたちに 私は 私の 言い分を 言おう…
bella mancia che ho pigliato!..なんと 素晴らしい 祝儀を 私は 取った ことか!
ah la testa in confusioneああ 混乱した 頭が
traballare or qui mi fa.今 ここで 私を ふらつかせている。

DORVILドルヴィル
(a Germano)(ジェルマーノに)
Tu sei causa bestia matta!..君が 原因だ 頭のおかしい 愚か者め!…
(a Giulia e Blansac)(ジューリアと ブランザックに)
Tutto chiaro ho ben sentito...すべては 明らかだ 私は よく 聞いた…
(a Germano)(ジェルマーノに)
Per te ognuno è in convulsione...君によって 各々が 発作に ある【≒ 皆 混乱に陥っている】…
(a Giulia)(ジューリアに)
Pienamente ho ben capito...私は 完全に よく 理解した…

BLANSACブランザック
(a Germano)(ジェルマーノに)
Tu sei causa bestia matta!..君が 原因だ 頭のおかしい 愚か者め!…
(a Dorvil)(ドルヴィルに)
Pria si sente, pria s'intende...まず 聞く、まず 理解する【≒ まず 話を 聞きなさい、まず 事態を 理解しなさい】…
(a Germano)(ジェルマーノに)
Per te ognuno è in convulsione...君によって 各々が 発作に ある【≒ 皆 混乱に陥っている】…
(a Dorvil)(ドルヴィルに)
Sempre ben non si comprende...いつでも よく 理解するわけではない…

GIULIAジューリア
(a Germano)(ジェルマーノに)
Tu sei causa bestia matta!..君が 原因だ 頭のおかしい 愚か者め!…
(a Dorvil)(ドルヴィルに)
Pria si sente, pria s'intende...まず 聞く、まず 理解する【≒ まず 話を 聞きなさい、まず 事態を 理解しなさい】…
(a Germano)(ジェルマーノに)
Per te ognuno è in convulsione...君によって 各々が 発作に ある【≒ 皆 混乱に陥っている】…
(a Dorvil)(ドルヴィルに)
Sempre ben non si comprende...いつでも よく 理解するわけではない…

GERMANOジェルマーノ
Ma pazienza miei signori...けれども 辛抱を 私の 貴君たちよ…
veh che caso indiavolato!..まったく なんという 悪魔に取りつかれた 状況だ【≒ なんという 厄介な 事件だ↑】!…
Vi dirò la mia ragione...あなたたちに 私は 私の 言い分を 言おう…
bella mancia che ho pigliato!..なんと 素晴らしい 祝儀を 私は 取った ことか!

GIULIA, DORVIL, BLANSAC E GERMANOジューリア,ドルヴィル,ブランザック と ジェルマーノ
Ah la testa in confusioneああ 混乱した 頭が
traballare or qui mi fa.今 ここで 私を ふらつかせている。
metter man ne' fatti miei?
mettere le mani 両手を 置く で 干渉する,関わる などの意味になる。ここでは mettere il naso 首を突っ込む と同義と理解した。

sol per dare gusto a lei.
dare gusto = soddisfare 満足させる。第2番 二重唱でジューリアからブランザックを監視するよう言いつけられたことを遂行する という意味。

Io che c'entro se ciascuno
entrarci ―と関係がある,―に関与している。

veh che caso indiavolato!..
veh = ve' veder の命令形2人称単数 vedi の語尾省略形で、見ろ や 注意しろ(bada と同義)の意味で用いられるが、この場合はその意味のない強調の語。まったく で訳す。

bella mancia che ho pigliato!..
mancia は使用人に与える チップ のこと。ジェルマーノはジューリアの言いつけに従ったのだからご褒美が貰えるはずだったのに…、という反語。

Più mosso
4/4
C major
GIULIA, DORVIL E BLANSACジューリア、ドルヴィル と ブランザック
Tu sei causa bestia matta!..君が 原因だ 頭のおかしい 愚か者め!…
Per te ognuno è in convulsione...君によって 各々が 発作に ある【≒ 皆 混乱に陥っている】…
Ah la testa in confusioneああ 混乱した 頭が
traballare or qui mi fa.今 ここで 私を ふらつかせている。

GERMANOジェルマーノ
Ma pazienza miei signori...けれども 辛抱を 私の 貴君たちよ…
Vi dirò la mia ragione...あなたたちに 私は 私の 言い分を 言おう…
Ah la testa in confusioneああ 混乱した 頭が
traballare or qui mi fa.今 ここで 私を ふらつかせている。

(Giulia e Germano partono)(ジューリアと ジェルマーノは 去る)
[Recitativo] Dopo il Quartetto
4/4
(C major)
SCENA Ⅷ第8場
Blansac e Dorvilブランザックと ドルヴィル

BLANSACブランザック
(vivamente)(激しく)
Va là, presto, va là! del mio trionfo行きなさい、急いで、行きなさい! 私の 勝利で
riempi tutto Parigi.全パリを いっぱいになさい【≒ パリ中に 私の 勝利を 報せなさい】。

DORVILドルヴィル
Io...私が…

BLANSACブランザック
Te ne spiace?君には そのことについて 不快に感じられるのか?

DORVILドルヴィル
Anzi ne ho gusto, e corro sul momentoむしろ それについて 私は 楽しみを 持っている、そして すぐさま 急いで向かう
a darti lode. (O gelosia, o tormento!)君に 称賛を 与え に。(ああ 嫉妬だ、ああ 苦悩だ!))
parte (dal fondo)去る(奥から)


SCENA Ⅸ第9場

Blansac e Lucillaブランザックと ルチッラ

BLANSACブランザック
Ora andiamo dal tutor...さて 後見人の ところに 行こう…
(esce Lucilla)(ルチッラが 出る)
Vaga Lucilla voi qui?美しい ルチッラよ あなたが ここに?

LUCILLAルチッラ
Credea trovarvi mia cugina...私は 思っていた そこで【= この部屋で】 私の 従姉を 見つける と…
io vado ...私は 行く…

BLANSACブランザック
Deh! un istante. Mi sembrateお願いだから! 一瞬【だけ】。あなたは 私には 思われる
molto più bella.もっと ずっと 美しいと。

LUCILLAルチッラ
Oh adesso mi burlate!ああ あなたは 今 私を からかっている!

BLANSACブランザック
Parlo da senno.私は 本気で 言っている。

LUCILLAルチッラ
E mia cugina?それでは 私の 従妹は?

BLANSACブランザック
E comeそれで どうして
vicino a voi d'altra beltà si puoteあなたの 傍で 別の 美女を
rammentare o parlar?思い出すことや 語ることが 【↑】できるというのか?

LUCILLAルチッラ
Che dite mai?あなたは いったい 何を 言っているのか?
Forse che mia cugina?..もしかして 私の 従姉は?…

BLANSACブランザック
Essa è adorabile,彼女は 愛らしい、
ma non è sola in cui beltà s'accolga.しかし 一人では ない その者に 美が 含まれるのは【≒ 美を 備えた 女性は 一人ではない】。
V'è qualch'altra...誰か 別の女が いる…

LUCILLAルチッラ
Signore,貴君よ、
arrossir voi mi fate.あなたは 私の 顔を赤く させている。

BLANSACブランザック
Ebben, più caraそれでは、さらに かわいらしく
vi rende quel rossor.あなたを している その 赤面が。

LUCILLAルチッラ
Cara! A chi mai?かわいらしい だって! いったい 誰に対して?
Priva di merti, io temo che la vostra長所を 欠いて【≒ 私には 良いところなど ないというのに】、 私は 心配している あなたの
eccedente bontà a riguardo mio私に関する 過剰の 優しさが
ingannare vi possa.あなた【の目】を 惑わせることが できる 【↑↑】のではないかと。

BLANSACブランザック
Oh quanto maiああ なんと この上なく
felice sì saria幸せに 本当に 私は なるであろうに
arrivando a piacervi!あなたに 気に入られる ことになれば!

LUCILLAルチッラ
Veramente,実を言えば、
non ho crudele il core,私は 酷い むごい 心を 持って いないし、
né mi duole goder l'altrui favore.他の人の 好意を 享受することを 悔やみ もしない【≒ 誰かからの 好意を 受け入れて 後悔することも ない】。
N. 5
Aria Lucilla

Lucilla
Allegro
2/2
G major
Sento talor nell'anima私は 時々 魂の 中に 感じる
un dolce movimento,甘い 心の動きを、
che lusinghiero e teneroそれは 媚びて そして 優しく【≒ それは 魅惑的に そして 優しく】
mi va parlando in sen.私の 胸の 中で 語っている。
Allor se un caro sposoもし その時 愛する夫を
avessi al fianco mio,私が 私の 隣に 有する 【↑】ならば
quanto nel cor desio私が 心の中で 切望する ことが
saria compito appien.完全に 達成さ れるだろうに。
(parte)(去る)
前半の歌詞音楽が後半の後に繰り返されることで緩やかなA / B / A’の三部構成のアリアになっている。
[Recitativo] Dopo [l']Aria Lucilla

4/4
(C major)
SCENA Ⅹ第10場
Blansac, poi Germano (con lume)ブランザック、それから ジェルマーノ(灯りをもって))

BLANSACブランザック
Bellissima! il casetto è proprio nuovo!この上なく素晴らしい! 状況は まさに 新奇だ!
Cerco una bella, e due qui ne ritrovo.私は 一人の 美女を 得ようとして、そして それの 二人をここで 見つけている。
(esce Germano)(ジェルマーノが 出る)

GERMANOジェルマーノ
Signore.貴君よ、
(posa il lume sul burò)(机の 上に 灯りを 置く)

BLANSACブランザック
Cosa vuoi?君は 何を 望んでいるのか?

GERMANOジェルマーノ
La compagnia一行が
è già rientrata nel salone.もう 広間に 戻った。

BLANSACブランザック
Han detto彼らは 言ったのか
che ad avvertir mi venga?君が 私に 知らせに 行くようにと【≒ 彼らから 私に 知らせに行くように 言われたのか】?

GERMANOジェルマーノ
Signor no:貴君よ いいえ:
ma non importa. Allor che si sta soloしかし それは 重要ではない。一人で いる 時には
si prova noia... ma... oh sì, sì...退屈を 覚える ものだ… しかし… ああ そうだ、そうだ…
(con riso sciocco)(間の抜けた 笑い をもって)
vicino alla signora Giulia ... mi capite...ジューリア嬢の 傍では… あなたは 私【の言っていること】を 理解しているか…
è vero? si sta bene, anzi benone.本当か? 【ジューリア嬢の 傍では あなたは】 気分が良い 、それどころか とても気分が良い。

BLANSACブランザック
Ah bravo! hai dello spirito. Vedeteああ たいした奴だ! 君は 少しばかり 機知を 備えている。分かりなさい
come si vanno calunniando gli uomini!いかに 人々が 中傷しているか を!
Dicono che sei sciocco!彼らは 言っている 君が 馬鹿だ と!

GERMANOジェルマーノ
(in aria di goffo complimento)(ぎこちない 誉め言葉の 様子で)
Oh signor mio!...ああ 私の 貴君よ!…
Grazie... voi siete buono...ありがとう… あなたは 親切だ…

BLANSACブランザック
(ridendo)(笑って)
Addio, addio.さようなら、さようなら。
parte (dal fondo)去る(奥から)


SCENA ⅩⅠ第11場
Germano soloジェルマーノ一人

GERMANOジェルマーノ
E ognun mi dice sciocco! E anche Tognettaそれで 誰もが 私を 馬鹿だと 言っている って! それで トニェッタ も
se fo all'amor con lei... me ne dispiace...私が 彼女を 【↑】口説く 時には 【そう言っているのか】… 残念だ…
Oh finiamo le ciarle. Si fa notte.ああ 無駄話を 止めよう。夜に なる。
Chiudiam porte e finestre...扉と 窓を 閉めよう…
(sbadiglia)(あくびする)
Ho bevuto un pochetto...私は ほんの少し 酒を飲んだ…
Cominciamo da questo gabinetto.この 小部屋から 始めよう。
(entra nel gabinetto alla sinistra, lasciando il lume sul burò)(左側の【= 上手の】 小部屋の 中に 入る、机の上に 灯りを 置いたままにして)


SCENA ⅩⅡ第12場
Giulia, poi Germanoジューリア、それから ジェルマーノ

GIULIAジューリア
Sollecitiam perché Blansac si sposi急かそう ブランザックが 結婚する ように
domani a mia cugina. E quel Dorvil明日 私の 従妹と。そして あの ドルヴィルは
qui trattenersi? Ah perché un sol momento,ここに 留まっているのだろうか? ああ どうして 一瞬だけでも
almeno alla sfuggita,ともかくも 急いで、
non potei favellargli!彼と 話すことが できなかったのか?
Ma appieno il torto suo conoscerà,しかし 彼は 完全に 彼の 誤りを 理解するだろう、
e per forza perdon mi chiederà.そして しかたなく 私に 容赦を 乞うだろう。

GERMANOジェルマーノ
(uscendo, trattenendosi in disparte e parlando da sé, non veduto da Giulia, che parla sempre astratta assai)(出て、離れて 留まって そして 独り言を言って、ジューリアから 見られずに、その者は ずっと とても 上の空で 話す)
Qui ancor la padroncina...ここに また 若女主人が…

GIULIAジューリア
Ma nol potrà ottenereけれども 彼は そのことを 達成 できないだろう
se non a mezzanotte...真夜中でなければ…
or sotto il mio balcon forse m'attende.今 私の バルコニーの 下で おそらく 彼は 私を 待っている。

GERMANOジェルマーノ
(Sotto il balcon!)(バルコニーの 下で!)

GIULIAジューリア
Sarei私は
troppo crudel, se a luiあまりに 酷 むご い かもしれない、もし 彼に
negassi il randevù.逢引きを 私が 断る 【↑】ならば。

GERMANOジェルマーノ
(Il randevù! picciole bagatelle!)(逢引き だって! 些細な 取るに足らぬことだ!)

GIULIAジューリア
Egli è geloso, è vero,彼は 嫉妬している、それは 本当だ、
ma d'un amor sinceroしかし 【↓】そのことは 真摯な 愛の
quest'è prova fedel... ma vicina忠実な 証 あかし だ… しかし
è già la mezzanotte.もう 真夜中が 【↑】近い。

GERMANOジェルマーノ
(La mezzanotte!)(真夜中!)

GIULIAジューリア
Al punto時点に【≒ 時間通りに】
egli è già di venir. Dunque attacchiamo彼は すぐに 来る。では 結わえ付けよう
la nostra scala sul balcon[e] e andiamo.私たちの はしごを バルコニーに そして 行こう。
(s'incammina al burò poi si ferma con riflessione)(机の方に 歩き出す それから 熟考をもって 立ち止まる)
E il povero Blansac!そして かわいそうな ブランザックは!

GERMANOジェルマーノ
Blansac?... ah! intendo.ブランザック だって?… ああ! 私は 理解した。
È l'amico aspettato...彼が 待たれている 友人だ【≒ 彼が 彼女が 待っている 男だ】…
ora capisco tutto.今こそ 私は すべてを 理解している。
Ah bravo! hai dello spirito. Vedete / come si vanno calunniando gli uomini!
Vedete 以下は観客に向けての言葉と理解した。ちなみに原作台本では
Et je vois qu'on te calomnie.
そして 私は 彼らが 君を 中傷していることに 気付いている。
とある。

E ognun mi dice sciocco! E anche Tognetta
トニェッタ Tognetta はジェルマーノが思いを寄せている娘のようである。第15場でさらに言及される。

se fo all'amor con lei... me ne dispiace...
fare all'amore con qlcu. 人を口説く。

che parla sempre astratta assai)
astratto は辞書では 抽象的な,観念的 とあるが、動詞 astrarre には古い用法で (注意、関心を)そらす という意味があり、そこからここでの astratta は 関心が逸れている ≒ 上の空で という意味だと思われる。

negassi il randevù.
randevù フランス語 rendez-vous 会う約束 をイタリア語化した語。逢引き と訳す。

egli è già di venir. Dunque attacchiamo
この gia は fin d'ora と同義 今から,すぐに。

N. 6
Recitativo [ed Aria] Giulia

Giulia

4/4
(C major)
GIULIAジューリア
Ma se mai,しかし もし、
ora che il mio tutore私の 後見人が
è in sì gran movimentoあれほどに 大きな 心の動きに ある 【↑】今となっては
o sospetta o discopre... Ah! qual cimento!彼が 疑う 【↑↑↑】ならば それとも 彼が 発見する 【↑↑↑】ならば 【≒ しかし 今 私の 後見人が あれほど 苛立っているとなると もし 彼が 怪しんだり 気が付いたりしたら】… ああ! なんという 試練だ!
è in sì gran movimento
この movimento は 心の動き。この場合は 苛立ち を意味している。フォッパは《ブルスキーノ氏》の台本で movimento という語をト書きで2回使っており、どちらの場合も状況に応じて意味が異なっている。

[Aria]

Andante affettato
4/4
F major
Il mio ben sospiro e chiamo私の 最愛の人を 私は 待ち望んでいる そして 呼び求めている
vita e speme a questo core;この心の 命と 希望である 【私の 最愛の人を】;
e fra l'ombre del timoreそして 不安の 闇の 中で
son costretta a palpitar.私は 心臓がどきどき せざるをえない【≒ 私の心臓は 激しく鼓動するばかりだ】。
Il mio ben sospiro e chiamo
この sospirare は 他動詞 待ち望む。

Allegro
4/4
F major
Ma si vada...さて 行こう…
(accorgendosi di Germano che fa vista d'entrare nell'altro gabinetto)(ジェルマーノに 気付いて その者は 別の 小部屋の中に 入ろうとしている)
qui che fai?..ここで 君は 何をしているのか?…
Vai a chiuder?.. Ti dispenso..閉めに行くのか?… 私は 君を 【その仕事から】 免除する【≒ 君は やらなくていい】…
(osservando verso la porta del fondo)(奥の扉の方を じっと見て)
Vien qualcun... Chi sarà mai?..誰かが 来る… いったい 誰 だろう?…
È il tutor sicuramente!..疑いなく 後見人だ!…
Gli dirai... (cresce l'imbroglio...)君は 彼に 言うだろう… (混乱が 増す…)
Tu va' pur... (confusa, incerta,君は どうか 行きなさい… (当惑して、躊躇って、
io mi sento lacerar.)私は 引き裂かれるのを 感じている。)
Ma si vada...
si + 接続法現在三人称単数形 は ―しよう という仲間あるいは自分自身に対しての勧誘の命令のような意味になることがある。これはジューリアが思い耽りから我に返って さあはしごをバルコニーに結わい付けに行こう と独り言を呟いている。

(accorgendosi di Germano
このト書きは、クリティカルエディション総譜では Ma si vada... に並行して付けられている。一方初演時の出版台本では1行目の次に置かれている。1行目の Ma si vada... の時点ではジューリアはジェルマーノがいることに気付いていないと思われる。それから彼女は彼が部屋にいることに気付いて qui che fai?.. と言っている。したがって このト書きは Ma si vada... と qui che fai?.. の間に入っていると考えるべきだろう。ここではそのように表記する。

che fa vista d'entrare nell'altro gabinetto)
fare vista di 不定詞 = fingere di 不定詞 ―するふりをする だが、この場合はおそらく ―しようとする の意味で用いられていると思われる。


Un pochetto più mossarello
4/4
F major
(Quanto pena un'alma amante!(どれほど 愛する心は 苦しんでいる ことか!
Quanto costa un vero amar!)どれほど 真の 愛は 【苦労を】要することか!)
(confusa, incerta,(当惑して、躊躇って、
io mi sento lacerar.)私は 引き裂かれるのを 感じている。)
(entra nel gabinetto a sinistra e si chiude)(左側の【= 上手の】 小部屋に 入る そして 身を潜める)
[Recitativo] Dopo l'Aria Giulia
4/4
(C major)
SCENA ⅩⅢ第13場
Germano, (poi Blansac)ジェルマーノ、(それから ブランザック)

GERMANOジェルマーノ
Brava: vada, si serva...いいぞ: 行くがいい、【≒ 続けなさい】、自助するがいい【≒ 頑張りなさい】
che grand'uom che son io! Scoperto ho il tutto.私は なんと 偉大な 人間なんだ! 私は すべてを 見出した。
È chiaro, è indubitabile, è sicuro.それは 明らかだ、疑問の余地がない、確実だ。
Qui il signor di Blansacここに ブランザック氏が
deve venire a mezzanotte! buono!夜中に 来るに 違いない! 素晴らしい!
un randevù! va bene.逢引きだ! 結構だ。
Vengano adesso a dirmi che son sciocco?彼らは 今 私が 馬鹿だと 私に 言いに 来るというのか?
È un randevù al signor Blansac, sì, sì...ブランザック氏との 逢引きだ、そうだ、そうだ…
E la causa di tutto questo...そして この すべての 原因が…
(pensa un poco)(少し 考える)
Bravo Germano! Ho ben capito il resto.いいぞ ジェルマーノよ! 残りは 十分に 私は 理解した。
Brava: vada, si serva...
servirsi にはいろいろな意味があるが、この場合は 自分で努力する,自助する の意味。

Vengano adesso a dirmi che son sciocco?
主語は 彼らは で訳したが、第10場でブランザックが言った gli uomini を受けている。
N. 7
Aria Germano

Germano
Andante
4/4
E major
GERMANOジェルマーノ
Amore dolcemente愛の神よ 甘美に
tu prima accendi il core;おまえは まず 心を 燃え上がらる
poi crescer fai l'ardoreそれから 熱情を 大きく させる
e a delirar si va.すると 人は 狂乱状態に なろうとする【≒ 誰もが 正気を失っていく】。
Perciò la padroncina...だから 若女主人は…
(sbadiglia e siede a canto alla tavola)(あくびをする そして テーブルの 角に 座る)
Che sonno! stamattina...なんという 眠気だ! 今朝…
volea... pensiamo un poco...彼女は 望んだ… 思い起こそう…
che io... facessi il gioco...私が… 【彼女の】 思惑どおりに動く ことを…
se l'altro... che si sa!..もし もう一人の男が… 何を 知っているのだ!
che io... facessi il gioco...
fare il gioco di qlcu. 人の利益になるように動く,人の思惑どおりに動く。ジューリアからブランザックを常に注視するよう命じられたことを指す。

Allegro
4/4
E major
(mezzo s'addormenta)(半ば 眠る)
(esce Blansac)(ブランザックが 出る)

BLANSACブランザック
Giulia dov'è?..ジューリアは どこに いるのか?…
(fermandosi un poco indietro)(少し 後ろで 立ち止まる)
oh coluiああ この男は
seduto lì che fa?あそこに 座って 何を しているのか?
Primo Tempo
4/4
E major
GERMANOジェルマーノ
(mezzo stordito dal sonno)(眠気で 半ば ぼんやりして)
Sì... la signora Giulia ...そうだ… ジューリア嬢は…

BLANSACブランザック
(interessandosi ad ascoltare senza muoversi)(身を動かすこと なく 聞くことに 興味を示して)
Che?何だって?

GERMANOジェルマーノ
Ha dato... il randevù...彼女は 与える… 逢引きを…

BLANSACブランザック
Il randevù!..逢引きを!…

GERMANOジェルマーノ
a Blansac...ブランザックに…

BLANSACブランザック
A me!..私に!…

GERMANOジェルマーノ
stanotte...今夜…

BLANSACブランザック
E che?いったい 何が?
Sogna? è finzion? sappiamo!彼は 夢見ているのか? それは 虚構なのか? 知ろう!
Germano!ジェルマーノよ!
(lo scuote)(彼を 揺する)
Allegro vivace
4/4
E major
GERMANOジェルマーノ
(s'alza impetuosamente ed impaurito)(激しく そして 驚いて 立ち上がる)
Chi va là!..誰が そこに 行くのだ!…
Ah, voi... è presto ancora.ああ、あなたか… まだ 【真夜中には】 早い。

BLANSACブランザック
Che dici in tua malora!君は 君の 破滅で 何を 言っているのだ【≒ 何を 訳のわからないことを 言っているのだ】!

GERMANOジェルマーノ
(ridendo e rassicurato)(笑って そして 安心して)
Eh nulla... sono un sciocco...えー 何もない… 私は 愚か者だ…

BLANSACブランザック
Via parla, parla allocco!..さあ 話しなさい、話しなさい 馬鹿め!…

GERMANOジェルマーノ
(puntigliato)(片意地に)
Io allocco!..私が 馬鹿だって!…
Attento e ve la spiffero気を付けなさい そうしたら あなたに 私は そのことを 軽々しく口外する
tal quale la sarà.それが そのように なるだろう ように【≒ 私は あなたに どうなるであろうかを 暴露する】。
Che dici in tua malora!
この malora は精神状態の 破滅 すなわち 混乱 や 狼狽 を指す。

Attento e ve la spiffero
この場合の attennto は state attento 気を付けなさい の動詞を省略したもの。

Più mosso
4/4
E major
Quando suona mezzanotte【時計が】 真夜中を 告げる 時
voi dovete venir qua;あなたは ここに 来なくては ならない;

(Blansac è stupito assai)(ブランザックは とても 驚く)

e una scala la padronaそして はしごを 若女主人は
per salir vi calerà!あなたが 上るために 下ろすだろう!
(accennandogli la porta vetrata)(バルコニーの ガラスをはめた 扉を 彼に 示して)
Poi entrato che sareteあなたが 入っただろう 後には
poi direte, poi farete...それから あなたは 話すだろう、それから あなたは するだろう…
Io non cerco i fatti vostri,私は あなたの 行為を 追求しない、
e sarà quel che sarà!そして なるようになるだろう!
Su via ditemi bravissimo!さあ 私に この上なく優れていると 言いなさい!
argutissimo, bravissimo!この上なく頭が切れると、この上なく優れていると!
Della vostra bella sorteあなたの 素晴らしい 運命を
mi consolo in verità.私は 本当に 喜んでいる。
(parte dal fondo)(奥から 去る)
Poi entrato che sarete
poi entrato che sarete = poi che sarete entrato。poi che は poiché と同じ (時間的に)―の後に。

[Recitativo] Dopo l'Aria Germano
4/4
(C major)
SCENA ⅩⅣ第14場

(Blansac, poi Dormont, Lucilla, e Germano)(ブランザック、それから ドルモン、ルチッラ、そして ジェルマーノ)

BLANSACブランザック
Cosa? come? a me Giulia un randevù?なんだって? どういうことだ? 私に ジューリアが 逢引きを?
e non mel dice?.. ora capisco!.. brava!しかも 私に そのことを 言わずに?… 今 私は 理解している!… 素晴らしい!
che donnesca finezza!なんと 女らしい 繊細さだ!
Perché n'ha certo un poco di timore彼女は 疑いなく そのことについて 少し 気遣いを 持っているので
me lo fa dire dal suo servitore.彼女の 召使いから そのことを 私に 言わせたのだ。
Ma che vorrà mai dirmi?しかし 彼女は いったい 何を 私に 言い たいのか?
Ah che certo l'è natoああ 確実に 彼女に 生じたのだ
qualche gran accidente...何か 重大な 偶発事件が…
Vien mezzanotte! Io sono impaziente.真夜中よ 来い! 私は 辛抱できない。

(escono i suddetti)(先に述べた人たちが【= ドルモント ルチッラが】 出る)

DORMONTドルモン
Perché spariste? Già s'è ritiratoあなたは どうして いなくなったのか? もう 帰った
Dorvil l'amico vostro. Un poco troppoあなたの 友人 ドルヴィルは。少し あまりにも
perseguitate Giulia.あなたは ジューリアを 追跡し 【↑】過ぎだ【≒ あなたは 少々 ジューリアを 追いかけまわし 過ぎている】。

LUCILLAルチッラ
E quest'è vero.そして それは 真実だ。

BLANSACブランザック
Io l'ho cercata invano.私は 彼女を 虚しく 捜した【≒ 私は 彼女を 捜したが 見つからなかった】。

DORMONTドルモン
Eh eh, la troveremo,やれやれ、彼女を 見つけよう、
e il contratto doman soscriveremo.そして 明日 契約書を 書こう。
Ritiriamoci tutti.皆 床に就こう。

LUCILLAルチッラ
Immantinente.即座に。

BLANSACブランザック
Bella Lucilla addio.美しい ルチッラよ さようなら。
(A mezzanotte! o qual ardore è il mio!)(真夜中に! ああ なんという 激しい情熱だ 私のものは【≒ 私の 情熱は なんと はげしいことか】!)
parte (dal fondo)去る(奥から)

DORMONTドルモン
Tu seguimi o Germano.君は 私に ついて来なさい ああ ジェルマーノよ。
(segue Blansac)(ブランザックの 後を追う)

GERMANOジェルマーノ
Servo.私は 仕える【≒ ご用命のままに】。
【(ルチッラに)】
Gran novità!重大な 知らせだ!

LUCILLAルチッラ
Cos'è successo?何が 起きたのか?

GERMANOジェルマーノ
Vostra cugina in questo appartamentoあなたの 従姉が この 居室で
a mezzanotte ha dato un randevù...真夜中の 逢引きを 与えた…

LUCILLAルチッラ
A chi?誰に?

GERMANOジェルマーノ
Al signor Blansac.ブランザック氏に。

LUCILLAルチッラ
Come!なんということ!

GERMANOジェルマーノ
Ma zitto!しかし 黙って!
Fate com'io, tacete, o nascerà私が 【する】ように しなさい、黙っていなさい、さもないと 生じるだろう
qualche diavol...なにか 大騒ぎが…

DORMONTドルモン
di dentro内側から【≒ 舞台裏から】
Germano!ジェルマーノ!

GERMANOジェルマーノ
(via correndo)(走って 去る)
Son qua.私は ここに いる【≒ 只今】。

LUCILLAルチッラ
Qui per Giulia Blansac! Sentir potessi!..ここに ジューリアを求めて ブランザックが! 私が 聞くことが できるなら!…
Faccio per imparare...私は 学ぼうとしている【≒ 私は 知りたい】…
Ho una smania... vien gente...私は 興奮を 抱いている… 人が 来る…
Ascondiamoci lì dentro prestamente.素早く あそこの 中に 隠れよう。
(entra nella porta a griglia, e si chiude)(格子窓の付いた扉の中に 入る、そして 身を潜める)


SCENA ⅩⅤ第15場
Germano (solo)ジェルマーノ(一人)

GERMANOジェルマーノ
Buono! non c'è persona. Un randevù:いいぞ! 誰も いない。逢引きだ:
e s'io piglio Tognetta per la manoそして もし 私が トニェッタの 手を 取るなら
mi regala per solito un schiaffone?彼女は いつものように 私に 平手打ちを お見舞いするのだろうか?
Eh! il signor di Blansac mi può insegnareえー! ブランザックの旦那が 私に 教えることが できる
il mestiere, e da lui voglio imparare.手並みを、そして 彼から 私は 学び たい。
Qui bisogna nascondersi... ma dove?ここで 隠れる 必要がある… しかし どこに?
Gnaffe! sotto la tavola.誓って【≒ こりゃいい】! テーブルの下だ。
Che gusto sarà il mio!なんという 楽しみだ 私のものは!
Imparerò, e doman vo' che Tognetta私は 学ぶだろう、そして 明日 私は 望んでいる トニェッタが
trovi caro e carino il suo Germano...彼女の ジェルマーノが いとしく そして かわいいと 気付く 【↑】ことを。
Apron la porta... a noi. Sotto, pian piano.彼らが 扉を 開いている… 頑張ろう。下に、慎重に慎重に。
(si nasconde sotto la tavola)(テーブルの下に 隠れる)
Perché n'ha certo un poco di timore
この timore は 気遣い で訳したが、ジューリアがブランザックに直接逢引きについて伝えるのは不躾ではないかと 不安 に思うこと。そのためジェルマーノを介して伝えた とブランザックは理解したわけである。

qualche gran accidente...
この accidente はおそらく 心の乱れ のような意味で用いられていると思われる。

Ritiriamoci tutti.
ritirarsi 撤退する には状況によって 眠りに行く andare a dormire,寝床に行く andare a letto の意味にもなる。

qualche diavol...
diavol は diavolio 大騒ぎ の語尾母音省略形。

Gnaffe!
1746年フィレンツェ刊のイタリア語の辞書では Gnaffe は Spezie di giuramento, ed e lo stesso, che A fe. 誓いの種類、誓って と同じ とある。しかしここではそうした意味は失われて、間投詞的に用いられているようである。流れにそって こりゃいい! と訳す。

Apron la porta... a noi. Sotto, pian piano.
a noi は a voi 頑張れ の1人称での言い方 頑張ろう。noi だが単複どちらでも使える。

N. 8
Finale

Giulia
Lucilla
Dorvil
Dormont
Bransac
Germano
Andante giusto
6/8
D major
SCENA ⅩⅥ第16場

(Detti nascosti. Giulia dal suo gabinetto, poi Dorvil, indi Blansac. Giulia va a chiudere la porta dal fondo)(前の場の人たち 隠れて。ジューリア 小部屋から、それから ドルヴィル、その後に ブランザック。ジューリアは 奥の 扉を 閉めに行く)

GIULIAジューリア
Dorme ognuno in queste soglie,誰もが 眠っている この敷居の中では【≒ この館では 誰もが 眠っている】、
ma qualcun veglia in giardino.しかし 誰かが 庭で 眠らないでいる。
Il momento è già vicino,瞬間が もう 近い、
e la scala vo' calar.そして はしごを 私は 下ろし たい。
(trae dal burò la scala, e va ad attaccarla al poggiuolo)(机から はしごを 引き出す、そして それを 据え付けに バルコニーに 行く)

GERMANOジェルマーノ
(facendosi vedere a suo tempo dietro la tavola)(テーブルの 後ろで 然るべき時に 自分に 見させて)
(S'incomincia per mia fé.)(始まっている 私の 名誉に 懸けて【≒ 間違いなく 始まったぞ】。 )

GIULIAジューリア
Perché attendere si fa?..どうして 待た せるのか?
(al poggiuolo)(バルコニーで)
Zitto... è desso...静かに… 彼だ…
(chiamando sottovoce)(小声で 呼んで)
Siete voi?あなたか?

DORVILドルヴィル
(dal di fuori)(外から)
Sì, son io...そうだ、私だ…

GERMANOジェルマーノ
(Cominciamo.(始めよう。
Or a scuola ce ne andiamo.)今こそ 学校に 行こう【≒ 今 授業が 始まった】。)

DORVILドルヴィル
(Dorvil comparisce e scende)(ドルヴィルが 現れる そして 【バルコニーから】 降りる)
Posso alfine ...ついに 私は 【あなたに 再会することが】 できる…

GIULIAジューリア
In pria chiudete.まず 【扉を】 閉めなさい。

(Dorvil chiude la porta vetrata)(ドルヴィルは ガラスをはめた 扉を 閉める)

GERMANOジェルマーノ
(Come! qui il signor Dorvil!(なんだって! ここに ドルヴィル氏が!)
Veh! veh! due randevù!)おや! おや! 2つの 逢引きだ!

DORVILドルヴィル
Di vedervi io tutto ardea...あなたに会うことに 私は すっかり 燃え上っていた…

GIULIAジューリア
Uomo ingrato, e core aveste恩知らずの 男よ、それで あなたは 心を 持っていたのか
di suppor ch'io fossi rea!推測する 私が 不道徳な女だと【≒ あなたは 私が 浮気者だと 思っていたのか】!

DORVILドルヴィル
Ma se intesi...しかし 私が 聞いた 以上は…

GIULIAジューリア
E che intendeste?それで あなたは 何を 聞いたのか?
Finsi allor...あの時 私は 【求愛に応える】 ふりをしていた…

(si batte alla porta vetrata, per di fuori)(【誰かが】 ガラスをはめた 扉を 叩く、外の方で)

ciel!..天よ!…

DORVILドルヴィル
Fu battuto!叩かれていた!
(si volgono tutti due ed ascoltano)(二人とも 身体を向けて そして 聞く)

GERMANOジェルマーノ
(Va benone! vien l'altro amico.)(とてもいいぞ! もう一人の 友の男が 来る。)

DORVIL E GIULIAドルヴィル と ジューリア
Ascoltiamo...聞こう…

(si replica la battuta)(叩くことが 繰り返される)

Si batte ancora!...また 叩いている!…

DORVILドルヴィル
(torbido assai)(非常に 混乱して)
Che vuol dir?...それは 何を 意味しているのか【≒ あれは どういうことなのか】?

GIULIAジューリア
(agitatissimo)(この上なく落ち着かず)
Che brutto intrico!(なんと 悪い ごたごただ!)

GERMANOジェルマーノ
(Oh che scuola io vado a far.)(ああ なんという 学校に 私は 通おうと しているのだ。)
(S'incomincia per mia fé.)
per mia fé 私の名誉 / 信用 / 信念に懸けて。つまり自らの確信を言い表しており、誓って,たしかに,本当に などの意味になる。ここでは 間違いなく で訳す。

(Oh che scuola io vado a far.)
fare scuola にはいくつかの意味があるが、この場合は明らかに 学校に通う,入学する,学びに行く のような意味だろう。

Andantino
2/4
B-flat major
BLANSACブランザック
(dal di fuori)(外から)
È mezzanotte!..真夜中だ!…
oggetto amabile可愛らしい 対象よ
deh vien quest'animaお願いだから この魂を
a consolar.慰めに 【↑】来なさい。
È mezzanotte!..真夜中だ!…
Allegro
4/4
B-flat major
DORVILドルヴィル
(avviandosi incollerito alla vetrata)(かっとなって ガラスをはめた 【扉】に 向かう)
È Blansac!..ブランザックだ!…

GIULIAジューリア
Quale imprudenza!なんという 軽率な行動だ!

DORVILドルヴィル
Vo' punir la sua insolenza!...私は 彼の 無礼を 罰し たい!…

GIULIAジューリア
(accennandogli il gabinetto alla sinistra)(左側の【= 上手の】 小部屋を 示して)
Qui celatevi un istante...一瞬 ここに 隠れなさい…

DORVILドルヴィル
Voi volete!...あなたは 望むのか!…

GIULIAジューリア
Lo dovete,あなたは そのことを しなくてはならない、
(ve lo costringe)(そこに 彼を 【入るよう】 強いる)
o si va a precipitar.さもないと 破滅する ことになる。
o si va a precipitar.
この場合の andare a + 不定詞 は ―することになる。

Primo Tempo
2/4
B-flat major
BLANSACブランザック
(come sopra)(上と 同様に)
È mezzanotte!..真夜中だ!…
Oggetto amabile.可愛らしい 対象よ。
È mezzanotte!..真夜中だ!…

4/4
B-flat major
GIULIAジューリア
【(ドルヴィルに)】
Entrate.【小部屋に】 入りなさい。
Entrate 全体(8分音符3つ)にフェルマータが付けられている。

Allegro
4/4
B-flat major
DORVILドルヴィル
E mi posso o ciel frenar!...そして 私は ああ 天よ! 自制することが できるのか!…
(entra per forza nel gabinetto)(いやいや 小部屋に 入る)

GIULIAジューリア
Può sentirlo il mio tutore,私の 後見人が このことを 聞く かもしれない、
che vicina ha qui la stanza...その者は ここの 近くに 部屋を 持っている…
qui ci vuole ardire e core,ここでは 大胆が そして 勇気が 必要だ、
convien tutto cimentar.私は あらゆることを 試練にさらさ なければならない。
(apre la porta vetrata, che resta aperta. Blansac scende ed entra)(ガラスをはめた 扉を 開ける。ブランザックが 【バルコニーから】 降りて そして 【部屋に】 入る) 

GERMANOジェルマーノ
(O che scuola, che lezione,ああ なんという 学校だ、なんという 授業だ、
quanto vado ad imparar!)どんなにたくさん 私は 学ぼうと しているのだ!)

BLANSACブランザック
(con brio)(生気に 満ちて)
Che fortuna impreveduta!なんという 思わぬ 幸運だ!
Tanto osato non avrei...私は あまり 思いきってしたくなかったのだが…

GIULIAジューリア
(risentita assai)(大いに 怒って)
Qual ragion v'ha qui guidato!どんな 理由が あなたを ここに 案内した のだ!
io saperlo ben vorrei!私は そのことを よく 知り たい。

BLANSACブランザック
Resto assai maravigliato!私は 大いに 驚かされて いる!

GIULIAジューリア
Su parlate.さあ 話なさい。

BLANSACブランザック
Io...私は…

GIULIAジューリア
Sì, via spiegate.そうだ、そら 説明しなさい。

BLANSACブランザック
Io ne vengo al randevù.私は 逢引きに 来ている。

GIULIAジューリア
Chi vel diede!誰が あなたに そのことを 知らせたのだ!

BLANSACブランザック
Bella! voi.なんてことだ! あなたが。

GERMANOジェルマーノ
(Oppur io.)(あるいは 私が)

GIULIAジューリア
Freneticate!あなたは 狂気に駆られている!

BLANSACブランザック
Per la voce di Germano...ジェルマーノの 声を 介して…

GERMANOジェルマーノ
(Ahi!)(あっ!)

GIULIAジューリア
Di Germano!ジェルマーノの!

BLANSACブランザック
Vi calmate,落ち着きなさい、
e quel tenero pudore...そして その 感じやすい 恥じらいを…

GIULIAジューリア
Oh finiamola signore!ああ 止めよう 貴君よ!
Chi vi rese sì insolente?誰が あなたを それほどに 図々しく したのか?

BLANSACブランザック
Chi? la scala ivi pendente.誰だって? はしごが そこに かかっている。

GIULIAジューリア
(Ah! levarla m'ho scordato!)(ああ! それを 上げるのを 私は 忘れていた!)

BLANSACブランザック
Deh poiché fui qui chiamato,お願いだから 私は ここに 呼ばれた のだから、
oltraggiarmi è crudeltà.私を 侮辱することは 残酷な行為だ【≒ 私に 恥をかかせるなんて 無慈悲だ】。

GIULIAジューリア
Qui nessuno v'ha chiamato,誰も あなたを ここに 呼んでいない、
del destino è crudeltà.それは 運命の 残酷な行為だ。

DORVILドルヴィル
(Qui nessuno l'ha chiamato,(ここには 誰も 彼を 呼んでいない、
del destino è crudeltà.)運命の 残酷な行為だ。)

GERMANOジェルマーノ
(Ah quell'altro era chiamato!(ああ あの もう一人の男が 呼ばれたのだ!
ho sbagliato come va.)私は それが どう 進行するのか 間違えた【≒ 私は 事態の進行を 誤解していた】。
Allegro
3/4
F major
SCENA ULTIMA最終場
(Detti. Dormont, che comparisce in berretta da notte un po' alla volta dal di fuori del poggiuolo, poi scende)(前の場の人たち。ドルモン、その者は 現れる ナイトキャップを 被って 外側から 少し【ずつ】 バルコニーに 向かって、それから 【部屋に】降りて)

GIULIAジューリア
Finir convien la scena,茶番を 終える 必要がある、
sbrigatevi, e scendete...急ぎなさい、そして 下りなさい…

DORMONTドルモン
Oh lode al ciel, ci sono!ああ 天に 称賛を、私は ここに いる【≒ ここに 着いたぞ】!

GIULIAジューリア
(al sommo della paura alla voce di Dormont)(ドルモンの 声に 不安の 絶頂で)
Ah!..ああ!…

BLANSACブランザック
(si nasconde nell'altro gabinetto)(別の 小部屋に 隠れる)
Zitto, non temete.静かに、怖がるでない。

GIULIAジューリア
Oh ciel!ああ 天よ!

DORMONTドルモン
Ah ah! stupite?ハハ! あなたは 驚いたかね?
(con riso sardonico)(冷笑的な 笑いを 持って【≒ せせら笑って】)
Non era atteso, no, è vero?それは【= 私が 来ることは】 予期されなかった、そうだ、本当だろう?

GIULIAジューリア
Signor...叔父よ…

DORMONTドルモン
Non serve fingere.装うのは 役に立たない【≒ 知らぬふりをしても 無駄だ】。
La scala e il canterinoはしごと 歌手が
scoperta han già ogni cosa.既に あらゆることを 暴いた。
(in gran collera apre la porta con griglia ov'è rinchiusa Lucilla)(大いに 怒って 格子窓のある 扉を 開く そこに ルチッラが 閉じ篭っている)
Fuori costui!この男め 外に出なさい!

LUCILLAルチッラ
(correndo fuori timidamente)(おずおずと 外に 走って)
Son qui...私が ここに…

GIULIA, DORMONT E GERMANOジューリア、ドルモン と ジェルマーノ
Oh bella! chi può intenderla?ああ なんてことだ! 誰が 彼女【の行動】を 理解 できるのか?

DORMONTドルモン
Estrema è la mia collera!私の 怒りは 甚だしい!
Altri ci debbon essere...別の男たちが いるに 違いない…
Vediamo un po'...少し 見よう…
(apre la porta del gabinetto e n'esce Blansac)(小部屋の 扉を 開ける そして そこから ブランザックが 出る)

BLANSACブランザック
Son qui...私が ここに…

DORMONTドルモン
(a Lucilla)(ルチッラに)
E che garbuglio è questo?それで これは どんな めちゃくちゃなのか?

LUCILLAルチッラ
Io seppi da Germano,私は ジェルマーノから 知った
che quivi a mezzanotte真夜中に ここで
seguiva un randevù,逢引きが 起こる 【↑】と、
e venni ad imparar.そして 私は 学びに 来た。

GERMANOジェルマーノ
(Ahi! che son fritto!)(ああ! なんて 私は 窮地に陥っているのだ【≒ 私は もはやこれまでだ】! )

DORMONTドルモン
Un randevù! benissimo!逢引き! たいへん結構!
(a Giulia risolutamente)(ジューリアに 決然と)
Ora sposarlo subito今 すぐに 彼と 結婚することを
vorrete voi medesima.あなた 自身が 望んでいる。
Tiriamo innanzi il tavolo...テーブルを 前に 引き寄せよう…
(tira in qua la tavola e si scopre Germano che resta in ginocchio e mal coperto dal tappeto che gli cade a ridosso)(テーブルを こちらに 引き寄せる すると ジェルマーノが 覆いを取られる その者は 跪いて いる そして テーブルカバーで 拙く 覆われている それは 彼の 防御物に 落ちている【≒ 彼は 彼を 隠すように落ちた テーブルカバーを 不格好に 被っている】)

GERMANOジェルマーノ
Ahi! che ci son!..あっ! 私が ここに いる!…

GIULIA, DORVIL E BRANSACジューリア、ドルヴィル と ブランザック
Germano!ジェルマーノだ!

DORMONTドルモン
Un altro! Lì che fai!もう一人の男が! 君は そこで 何を しているのだ!

GERMANOジェルマーノ
(Germano si leva timidamente)(ジェルマーノは おずおずと 起き上がる)
Sapea che qui dovea私は 知った ここで
seguire un randevù,逢引きが 起こる 【↑】はずである 【↑】ことを。
e venni ad imparar.それで 私は 学びに 来た。
(rimette il tappeto)(テーブルカバーを 再び置く【≒ 再び テーブルカバーを 被る】)

DORMONTドルモン
(minaccioso a Germano e Lucilla)(ひどい剣幕で ジェルマーノと ルチッラに)
I conti avremo a fare!私たちは 勘定をしなければならない だろう【≒ 後で この始末をつけないと いけない だろう】!
(cava una carta e la mette sul tavolino)(書類を 引き抜き そして それを テーブルの 上に 置く)
Frattanto soscriviamo.そうしている間に【≒ その前に】 署名しよう。

GIULIAジューリア
(Or qui convien parlare.)(今 ここで 話す 必要がある。)
Signor...叔父よ…

DORMONTドルモン
(risolutissimo a Giulia)(この上なく決然と ジューリアに)
Vostro maritoあなたの 夫が
senza ritardo...遅滞なく…

DORVILドルヴィル
(esce animosamente e si mette a canto di Giulia)(勇敢に 出る そして ジューリアの 隣に 身を 置く)
È qui.彼が【= ジューリアの 夫が】 ここに。

DORMONTドルモン
Un altro! in quanti siamo!もう一人の男が! 私たちは 何人なのだ!

BLANSACブランザック
Ah! ah! quest'è un portento!ハ! ハ! これは 驚嘆だ!
Un randevù in duecento!200の 逢引きだ!

DORMONTドルモン
(a Dorvil incollerito)(ドルヴィルに 激怒して)
Spiegatevi.説明しなさい。

DORVILドルヴィル
(con nobile fermezza)(気高い 意志の強さを もって)
Di Giuliaジューリアの
sono il marito...夫だ 私は…

DORMONTドルモン
Voi!あなたが!

GIULIAジューリア
Perdono oh mio tutore,容赦しなさい ああ 私の 後見人よ、
causa di tutto è amore.愛の神が すべての 原因だ。
La buona zia per lettera心優しい 叔母が 手紙で
(cava una lettera e la dà a Dormont che la scorre e se la ritiene)(手紙を 引き抜く そして それを ドルモンに 与える その者は それを 通読する そして それを 持っている)
il nodo ci ha permesso.【夫婦の】絆を 私たちに 許可した。
Sposar chi non amava愛していなかった者と 結婚することは
non erami concesso.私には 認められなかった。
Voi troppo fiero... ah voiあなたは あまりにも 残酷だ… ああ あなたは
dovete perdonar.寛大に扱う べきだ。

DORMONTドルモン
L'ardire eccede...厚かましさの 度が過ぎる…
(accennando Blansac)(ブランザックを 示して)
e lui?...それでは 彼は?…

BLANSACブランザック
(con molto brio)(とても 快活に)
Lucilla io sposerò,私は ルチッラと 結婚しよう、
e tutto aggiusterò.そうすれば 私は すべてを 丸く収めるだろう。

DORMONTドルモン
Lucilla.ルチッラは。

LUCILLAルチッラ
(raccomandandosi)(願って)
Ah sì!ああ もちろん!

BLANSACブランザック
(a Dormont accennandogli Lucilla)(ドルモンに 彼に ルチッラを 示して)
Vedete?あなたは 見たか?

GIULIA, LUCILLA, DORVIL E GERMANOジューリア、ルチッラ、ドルヴィル と ジェルマーノ
Perdon!許しを!

DORMONTドルモン
Quel che volete;好きなように【しなさい】;
non serve più gridar.もう 怒鳴ることは 役に立たない。
Frattanto soscriviamo.
soscrivere = sottoscrivere 署名する。

(cava una lettera e la dà a Dormont che la scorre e se la ritiene)
クリティカルエディション総譜でも初演時の出版台本でも e se la ritiene とあるが、クリティカルエディションピアノ伴奏譜では e la ritiene と se が落ちている。ない方が意味が採りやすい。この ritenere は実質 tenere の意味である。

Allegro
4/4
D major
GIULIA, LUCILLA, DORVIL, DORMON, BLANSAC E GERMANOジューリア、ルチッラ、ドルヴィル、ドルモン、ブランザック と ジェルマーノ
Quando amor si fa sentire愛の神が 声を上げる 時
troppo egli è nei cor possente;彼は 【人々の】 心の中で 非常に 力強くなる;
si contrasta inutilmente,虚しく 逆らう【≒ 逆らっても 無駄なこと】、
vince ognora il suo poter.いつでも 彼の 力が 勝つ。
Quando amor si fa sentire
この amore を受けた次行の egli は基本的に人を受けての主語 彼は なので、amore は人の姿を持った 愛の神 だと理解するのが妥当だと思われる。
farsi sentire 直訳 自らを感じさせる,自らを聞かせる にはいくつかの意味があるが、この場合は 声を上げる,自分の考えを主張する。

参考資料

Edizione Critica delle Opera di Gioachino Rossini Volume 6 La Scala di Seta / A cura di Andres Wiklund / Partitura / Fondazione Rossini Pesaro / 1991

Gioachino Rossini La Scala di Seta Riduzione per canto e pianoforte condotta sull'edizione critica della partitura edita della Fondazione Rossini di Pesaro a cura di Andres Wiklund / 2003 / ISMN M-041-34555-0 / ISBN 88-7592-702-2

GIOACHINO ROSSINI LETTERE E DOCUMENTI VOLUME Ⅱ / FONDAZIONE ROSSINI PESARO / 1996

GIOACHINO ROSSINI LETTERE E DOCUMENTI VOLUME Ⅲa / FONDAZIONE ROSSINI PESARO / 2004

Dizionario Rossiniano / Eduardo Rescigno / Biblioteca Universale Rizzoli / 2002 / ISBN 88-17-12894-5 / 9788817128940

NAXOS
CD
8.660314-15
730099031479
DormontRemy Burnenstenore
GiuliaClaudia Urrusoprano
LucillaMeagan Sillmezzosoprano
DorvilMichele Angelinitenore
BlansacEugenio Di Lietobasse
GermanoEmmanuel Francobaritono

Kraków Philharmonic Orchestra
José Miguel Pérez-Sierra

Offene Halle Marienruhe, Bad Wildbad, Germany
20 July 2021

ドイツ、バート・ヴィルトバートでの ヴィルトバートでのロッシーニ Rossini in Wildbad での2021年の録音。この音楽祭の常としてインターネット上での公演情報は既に無くなっているが、インターネット上の音楽誌Online Musik Magazinの2021年のこの音楽祭の公演案内によると、公演は7月9、16、22日。同誌のこの公演の評によると、コロナ禍での公演だったので会場は本来はクアパーク内の日光浴場での野外公演の予定だったが、公演直前の突然の豪雨のため急遽もう一つの公演会場であるハレ・マリエンルーエ(中心部から少し離れたところにあるようだが詳細不明)に変更されたという。そのためか、この録音は例年と異なり公演のライヴ録音ではなく、公演の合間の録音ためのものだったようで、拍手は全曲の後だけ、それもあまり大人数ではない(関係者だろうか)。ロッシーニ財団のクリティカルエディションを使用。
ジェルマーノのエマヌエル・フランコ(メキシコ ティフアナ生まれ)が歌表現そして早口も達者で最も聞き応えがある。ドルヴィルのミケーレ・アンジェリーニ(イタリア系米国人)は既に若手ロッシーニテノールとして評判を高めていた頃で、ここでも安定した歌が聞ける。ジューリアのクラウディア・ウルル(イタリア人)は美声で技術も悪くないが、彼女はまだ歌手活動を初めてすぐだったようでさすがに生硬さが感じられる。ブランザックのエウゲニオ・ディ・リエートはかなりぼんやりした歌で。
ホセ・ミゲル・ペレス=シエラの指揮は上々、特に第4番 四重唱 の Allegro vivace や 第8番 フィナーレ の終盤のスピード感は素晴らしい。ただオーケストラがファルサのような音楽にはまったく不慣れなようで、細かいところの表情が素っ気ないのが気になる。
カット無し。

DVD
OPUS ARTE
OA 1075 D
809478010753
DormontDaniele Zanfardinotenore
GiuliaOlga Peretyatkosoprano
LucillaAnna Malavasimezzosoprano
DorvilJose Manuel Zapatatenore
BlansacCarlo Leporebasse
GermanoPaolo Bordognabasso

Orchestra Haydn di Bolzano e Trento
DirettoreClaudio Scimone

RegiaDamiano Michieletto
Scene e CostumiPaolo Fantin
LuciAlessandro Carletti

Teatro Rossini, Pesaro, Italy
August 2009

2009年のロッシーニ・オペラ・フェスティヴァルでの公演の収録。公演記録によると公演は8月10,13,16,18日。
ダミアーノ・ミキエレットの演出が大変素晴らしい。舞台は現代の高級マンションの2階の部屋。舞台上には実寸の設計平面図のようなものが書かれており、その上に家具などはあるが壁や扉はなく(あるようにパントマイムで演じられる)、そして背景一面の傾けられた巨大な鏡によって観客は舞台を上から 覗き見 ることができる。重要なことは設定そのものより、この設定の中で登場人物がたいへん生き生きと歌い演じていること。200年近く前の《絹のはしご》を現代的な活気のある喜劇に蘇らせている。具体的なことを書くときりがないので止めるが、4年後に、基本的にファルサを取り上げることはないスカラ座がこれを上演してたいへん好評だったというだけでも伝わるだろう。
ブランザックのカルロ・レポーレが歌に演技にたいへんに素晴らしい。後述の追加アリアはかなり難易度の高い音楽だが、演技をしながらこれを見事に歌っている。ジューリアのオリガ・ペレチャチコは20代末の伸び盛りの頃。まだちょっと声が若く固い時があるものの、容姿演技も含めこの演出のヒロインにピッタリ。ドルヴィルのホセ・マヌエル・サパータはだいぶもっさりした冴えない恋人でジューリアとの対比そのものが笑える。歌も悪くはないが高い声が荒れ始めているのが気になる。パオロ・ボルドーニャが演じているジェルマーノは、当時人気だったテレビコメディの中に登場するフィリピン人召使いに模されており、イタリア人は彼が登場するだけで受けていた。バッソブッフォにしては声に柔軟性がないのが気になるが、演技では大活躍している。
指揮は御大クラウディオ・シモーネ、この時74歳で、さすがに現代的な舞台にあまり合っていない気がするものの、長年ロッシーニを盛り立てて来たベテランの腕はたしかにある。
なおこの公演では 第4番 四重唱 と第5番 ルチッラのアリア の間に休憩が置かれ、後半の頭にロッシーニの演奏会用アリア Alle voci della gloria を据えている。これは1813年、ヴェネツィアの貴族 フィリッポ・グリマーニ Filippo Grimani のために書かれた曲。レチタティーヴォとアリアから成る曲からアリアだけ取り出し、かつ gloria を amore に変えて用いている。もちろんこれは本来ブランザックにアリアがないことからの追加であるが、物語的にも音楽的にも異質なのは否めない。ただミキエレットはこれを逆手にとって、後半が始まる前、ブランザック役の歌手が本来作品に無いアリアを歌い出して、休憩中だった他の歌手たちやスタッフたちを戸惑わせる、という演出にしている。これはよほどのロッシーニアンでなければ意味が分からない仕掛けだろうが、分からずとも、分かればなお面白い寸劇になっている。なおこの挿入のために第8場全部と第9場の頭のレチタティーヴォがカットされている。他にもレチタティーヴォに僅かなカットあり。

CD
BONGIOVANNI
GB 2316/7-2
8007068231621
DormontAndrea Carbonitenore
GiuliaGaia Matteinisoprano
LucillaSilvia Vajentemezzosoprano
DorvilSamuele Simoncinitenore
BlansacAndrea Saribasse
GermanoMario Cassibasso

Orchestra I Solisti di Fiesole
DirettoreGiovan Battista Varoli

Teatro Comunale di Castiglion Fiorentino, Italy
December 2001

2001年12月、カスティリオン・フィオレンティーノでの公演のライヴ録音。ただし曲の後に拍手が入る場合と無い場合があり、後者はおそらく総練習などの別の際のものではないかと思われる。
カスティリオン・フィオレンティーノは中部イタリアのど真ん中に位置する町で、アレッツォの南15kmほど、人口1万3千人程度の丘上の町。かつては北西に位置するフィレンツェや西のシエナ、南東のペルージャなどとの交易中継点だったという。
いわば田舎公演なので、出演者に国際的に有名な歌手はほとんどおらず、ブレイク前のマリオ・カッシ(この月に28歳になる)くらい。個々の力量はあまり高くはなく、明らかに力不足の人もいる。一方で総座席数335、平土間に限れば130席という馬蹄形小劇場でのイタリア人たちによる舞台上演は、大劇場でのファルサでは味わえないイタリアらしい娯楽の味がある。ジョヴァン・バッティスタ・ヴァローリのキリキリした指揮もあってかなり荒っぽいながら熱の入った上演で、終演後は大喝采が湧き上がっている。
カット無し。

CD
claves
CD 50-9219/20
DormontFulvio Massatenore
GiuliaTeresa Ringholzsoprano
LucillaFrancesca Provvisionatomezzosoprano
DorvilRamón Vargastenore
BlansacNatale de Carolisbasse
GermanoAlessandro Corbellibasso

English Chamber Orchestra
ConductorMarcello Viotti

Rossly Hill Chapel, London, UK
13-15 October 1992

Claves社のロッシーニのファルサ全集の一つ。商業セッション録音。
ドルヴィルのラモン・ヴァルガスが素晴らしい。ちょうど国際的に名が知られるようになった頃で、まだロッシーニもしばしば歌っていた。軽やかだが芯のある声がいい。ブランザックのナターレ・デ・カロリスとジェルマーノのアレッサンドロ・コルベッリはともに見事に歌っているが、セッション録音だと少々真面目な歌い口になるのは否めない。ジューリアのテレーザ・リングホルツは、レチタティーヴォでのイタリア語の捌きも含め、一段下がる。
マルチェッロ・ヴィオッティの指揮は特筆するほどではないが、オーケストラがこうしたファルサには明らかに不慣れそうにしているのをよく引っ張ってはいる。
レチタティーヴォにいくらかのカットが入っているほか、第6番 ジューリアのアリアの終わり近くに4小節のカットが入っている。

DVD
EURO ARTS
2054978
8802425467858
DormontDavid Griffithtenore
GiuliaLuciana Serrasoprano
LucillaJane Bunnellmezzosoprano
DorvilDavid Kueblertenore
BlansacAlberto Rinaldibasse
GermanoAlessandro Corbellibasso

Radio-Sinfonieorchester Stuttgart
Gianluigi Gelmetti

Schlosstheater Schwetzingen, Schwetzingen, Germany
6-8 May 1990

1990年5月、ドイツ、シュヴェツィンゲンのシュロステアター Schlosstheater(城劇場 の意味)での公演の収録。
ここでもジューリアのルチアーナ・セッラが素晴らしく、抜群の存在感を示している。ジェルマーノのアレッサンドロ・コルベッリも歌に演技にたいへん素晴らしい。ただ彼の知的な演技だとジェルマーノがあまり愚か者っぽく見えないのが贅沢な不満。デイヴィッド・キューブラーはロッシーニもよく歌ったテノールで決して悪くないものの、声に余裕がなく精一杯で、そのためかドルヴィルのアリアのカバレッタを端折っている。アルベルト・リナルディはロッシーニルネサンスより一世代前のバリトンでまた伊達男にはやや年齢を感じさせてしまうが、演技は良い。
ジャンルイージ・ジェルメッティの指揮はここでもたいへんに充実している。
ミヒャエル・ハンペの演出はここでも台本をよく読みこんだ上での伝統的舞台作り。総じて良く出来た舞台ではあるが、それでも時々彼の方向性とファルサの性格のズレが見られる。例えば四重唱でジューリアに裏切られたと思い込んだドルヴィルが、ブランザックが彼女に与えたネックレスを引き千切る(それも部屋にブランザックがいるのに)ような演出は、場を著しくシリアスにしてしまって音楽を損ねている。
ドルヴィルのアリアのカバレッタの後半をカット。レチタティーヴォにいくらかのカットあり。またフィナーレでジューリアが叔母について言及する台詞が違う台詞に変えられている。

CD
OPERA RICORDI FONIT CETRA
RFCD 2003
8003614070836
DormontOslavio Di Credicotenore
GiuliaLuciana Serrasoprano
LucillaCecilia Bartolimezzosoprano
DorvilWilliam Matteuzzitenore
BlansacNatale De Carolisbasse
GermanoRoberto Coviellobasso
Orchestra del Teatro Comunale di Bologna
DirettoreGabriele Ferro

Auditorium Pedrotti, Pesaro, Italy
September 1988

1988年 ロッシーニ・オペラ・フェスティヴァル ROF の公演のライヴ録音。公演記録。公演は9月2,4,6,8日に行われた。これが自筆譜に基づいたクリティカルエディションによる初めての上演だった。
これはROFの歴史の中でも特筆すべき公演の一つ。硬質で良く響く声と高い技術力が圧倒的なルチアーナ・セッラ、軽やかで高音を自在に操りそしていかにも気の弱そうなウィリアム・マッテウッツィ、伊達男バリトン役ならもってこいのナターレ・デ・カロリス、さらには前年にデビューしたばかりのまだ駆け出しだったチェチーリア・バルトリ(これが今のところ彼女の唯一のROF出演)といずれの役も高水準。ジェルマーノのロヴェルト・コヴィエッロは5年前に比べて遥かに成長してアリアで大喝采をもらっている。ガブリエーレ・フェッロの指揮も初期のロッシーニの魅力を存分に繰り広げている。
レチタティーヴォにいくらかのカットあり。

DVD
OPUS ARTE
OA F4023 D
809478040231
DormontTullio Panetenore
GiuliaCarmen Lavanisoprano
LucillaTiziana Tramontimezzosoprano
DorvilErnesto Palaciotenore
BlansacMario Chiappibasse
GermanoRobert Coviellobasso


Orchestra della RTSI
Marc Andreae

Stage DirectorFilippo Crivelli
Set DesignPeter Bissegger
Costume designFranca Zucchelli

Plazzo dei Congressi, Lugano, Swizerland
1983

1983年、スイス、ルガーノでの上演の収録。観客の入った舞台上演の収録だが、会場のパラッツォ・デイ・コングレッシ(会議会館)はスイス・イタリア語放送管弦楽団の本拠地で、歌劇場ではない。
イタリアの名演出家、フィリッポ・クリヴェッリによる舞台は、基本的に伝統的な舞台作りで、今となってはかなり古めかしさもあるものの、細かいところまでよく目が行き届いている。館は部屋が左右にあり3層構造、間に階段を挟んでおり、舞台を立体的に使って効果を上げている。黙役の召使いが数人おり、トニェッタと思しき侍女もいる。
歌手は良し悪しある。ジューリアのカルメン・ラヴァーニは若い頃は娘役を得意としたソプラノで、ここでも声の良さと歌唱演技の良さが際立っている。ただ彼女はこの数年後にはヴェルディソプラノに転向しており、既にファルサのヒロインには少々重めの声なのは否めない。ドルヴィルのエルネスト・パラシオはロッシーニルネサンス最初期のロッシーニテノール。今となっては装飾歌唱の捌きは大雑把だし高い音をしばしば回避していたりと不足もあるが、その限りではまずまず良く歌っている。マリオ・キアッピは1970年代を中心に活躍したバス。この中では一番のベテランで、ジェルマーノのような伊達男を歌い演じるには貫禄があり過ぎてまるで父親のようだ。ジェルマーノのロベルト・コヴィエッロは1955年生まれ、後にバッソブッフォとしてかなりの活躍する人だが、この収録時には28歳くらいと若手でさすがにまだ固い。彼は1988年ROFでの《絹のはしご》でもジェルマーノを歌っている。
1983年の収録でさすがに画質音質とも古めかしいのが一番の難。
第7番 ジェルマーノのアリアの Andante に8小節、Più mosso に8小節のカットが入っている。また第3番 ドルヴィルのアリアの前のレチタティーヴォがほとんどカットされている。さらに第10場のレチタティーヴォはほとんどカットされているなど、レチタティーヴォにいくらかのカットが入っている。






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