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最新更新 2025年07月21日
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GIOACHINO ROSSINI
LA CAMBIALE DI MATRIMONIO
初演 ヴェネツィア,サン・モイゼ劇場 1810年11月3日
First performance Venezia, Teatro San Moisè, 03 November 1810
台本 ガエターノ・ロッシ
Libretto Gaetano Rossi
原作 カミッロ・フェデリーチ Camillo Federic の5幕の喜劇『結婚手形 La cambiale di matrimonio』 1790 ヴェネツィア、およびそれに基づいた カルロ・コッチャ Carlo Coccia 《為替手形による結婚 II matrimonio per lettera di cambio》 1807 ローマ のための ジュゼッペ・ケッケリーニ Giuseppe Checcherini による台本。
Original
《結婚手形》は、ロッシーニの初の興行オペラであり、これが事実上の最初のオペラである(これより前にロッシーニは《デメートリオとポリービオ》を書いているが、彼自身はオペラを書いている認識はなかったと証言している)。初演時ロッシーニはまだ18歳。《結婚手形》は若書きの作品ではあるが、それでも十分傑作と言い得るだけの充実した作品である。
作曲
《結婚手形》の作曲に関する情報は非常に少ない。特に制作や初演の情報は極端に乏しい。
一応ロッシーニ自身の回想は残されているのだが、それは初演から半世紀近くたった頃に作曲家フェルディナント・ヒラー Ferdinand Hiller 1811―1885 に語ったものに基づいている。ヒラーはこれを Plaudereien mit Rossini などの著作で披露している。
長いので要約する。
13歳のロッシーニは、シニガリア Sinigaglia(現代では セニガッリア Senigallia と呼ばれる、ペーザロとアンコーナの間に位置する町)のオペラシーズンにマエストロ・アル・チェンバロ(歌唱指導をする伴奏ピアニスト)として働いていた。プリマドンナのアデライデ・カルパノ Adelaide Carpano は音楽的センスに欠けており、稽古でカデンツァを和声的におかしく歌った。ロッシーニは彼女を指導したものの、公演でも彼女は音を外して歌ったので、ロッシーニは笑いを堪えることができず、それにつられて観客も笑い出した。激怒したソプラノは、彼女の保護者である非常に裕福なヴェネツィア紳士に、ロッシーニが観客を焚きつけたと訴えた。彼はロッシーニを呼び出し、「私の大事なアーティストをからかうならば、牢獄に放り込むぞ」と厳しく叱責した。けれどもロッシーニが自分の正当性を説くと、ヴェネツィア紳士も納得し、むしろロッシーニを気に入った。そして将来オペラを書けるようになったら、自分に頼めば依頼をしようと請け合った。ヴェネツィア人紳士とはフランチェスコ・カヴァッリ Francesco Cavalli という人物だった。彼は後にフェニーチェ劇場の支配人を務め、その時に《タンクレーディ》が初演されている。
もう一つ情報がある。これもずっと後年の証言だが、アルカンジェロ・ボッコリ Arcangelo Boccoli というセニガリア聖堂の楽長を務めた人物の証言で、これはジュゼッペ・ラディチョッティ Giuseppe Radiciotti の書いたロッシーニの評伝で紹介されている。これも要約する。
ロッシーニの両親は、ソプラノのローザ・モランディ Rosa Morandi とその夫ジョヴァンニ・モランディ Giovanni Morandi と知り合いだった。1810年夏、モランディ夫妻がヴェネツィアへ向かう途上、ロッシーニ一家が住むボローニャに滞在した際、ロッシーニの母アンナは彼らを訪問し、息子が音楽が上達したので、オペラを書いて上演できるようにしてほしい、と希望を伝えた。モランディ夫妻は快諾した。その秋、ヴェネツィアのサン・モイゼ劇場では5人の作曲家による5つのファルサが上演される予定だったが、5人目のドイツ人作曲家が消えてしまい、興行主が途方に暮れていた。モランディ夫妻はロッシーニのことを思い出し、興行主の同意を取り付けて、ロッシーニにすぐに来られるか打診した。ロッシーニはすぐさまヴェネツィアに向かい、ガエターノ・ロッシの台本を受け取ると、数日の間に音楽を書いた。
後述するように、ローザ・モランディは《結婚手形》初演のファンニである。彼女が自分が歌う予定のファルサが飛んでしまわないように、知人の息子ロッシーニを紹介した、というのは、あり得そうな話である。
ともかくも、この二つの逸話は、全面的に信用するわけにはいかないが、かといってこれらを覆すだけの情報もない。多くの誤りがあるであろうことを承知したうえで、受け入れるしかない。
《結婚手形》が初演された時のサン・モイゼ劇場の興行主は、カヴァッリではなく、アントーニオ・チェーラ Antonio Cera だった。チェーラとロッシーニは《ブルスキーノ氏》までの5つのサン・モイゼ劇場でのファルサで関係があった。つまり、仮にカヴァッリからの何らかの関与、助言があったかもしれないにせよ、実績のない若いロッシーニを抜擢したのは実際にはチェ―ラのはずである。
なお 5人目のドイツ人作曲家 は、ヨハン・カスパール・アイブリンガー Johann Caspar Aiblinger 1779―
1867 ではないかと推測されている。
ここで素朴な疑問となるのが、興行主が、いかに出演予定のプリマドンナから推薦があったであろうとはいえ、またいかに急場を凌ぐためとはいえ、まったく実績のない18歳の若者をボローニャからヴェネツィアまで呼び寄せてファルサを1作書かせる決断ができるだろうか、ということである。興行主にとってはこれはかなり危うい賭けになる。
そこから、チェ―ラは既にロッシーニを何らかのかたちで知っていたのではないか、という推測がなされることもある。これを裏付ける証拠はほとんどないが、ロッシーニが《結婚手形》初演より前にヴェネツィアを訪れていた形跡はある。
第一に、《結婚手形》初演の約1年前の1809年11月にロッシーニがヴェネツィアを訪れていることが、ロッシーニが通っていたボローニャの音楽学校 Liceo filarmonico の記録から分かっている(11月24日付、その数日前にボローニャを発ったと思われる)。しかしこれについてはこれ以上の情報はない。
第二に、先のヒラーとの会談で、ロッシーニはヴェネツィアでジョヴァンニ・シモーネ・マイル Giovanni Simone Mayr = Johann Simon Mayr の1幕のオペラに立ち会ったと述べている。
私が 私の小オペラを上演したよりもさらに前に 私は ヴェネツィアで シモーネ・マイルの1幕のオペラの初演に立ち会った。ご存知の通り、マイルは当時 時の人で、ヴェネツィアで おそらく20作のオペラの公演で大成功を収めた。それにもかかわらず、その晩の観客はその夜、彼が 素性の知れない、見知らぬ若造であるかのように、想像を絶する粗暴な言動で 取り扱った。
Noch ehe ich meine erste Operette gegeben, wohnte ich in Venedig der ersten Auffuhrung einer einactigen Oper von Simon Mair bei. Sie wissen, Mair war damals der Held des Tages, er hatte in Venedig vielleicht zwanzig Opern mit dem grosten Erfolge aufgefuhrt. Trotz alledem behandelte ihn das Publicum an jenem Abende, als sei er ein hergelaufener, unwissender Bursche man macht sich keinen Begriff von einer solchen Rohheit.
クリティカルエディションの校訂者エレオノーラ・ディ・チンティオは、その序文の解説で、マイルがサン・モイゼ劇場で上演した3つのオペラを検討しているが、いずれもロッシーニが語った条件には合っていなかった(詳しくは序文を)。なにぶん数十年後の回想なので、ロッシーニが記憶違いをしていても不思議はない。
したがって、ロッシーニが《結婚手形》より前にヴェネツィアを訪れていたという確証はない。とはいえ、仮説としては十分あり得ることだろう。ただこれ以上は、新しい資料が発見されない限り分からない。
前述の通り、ボッコリは、ロッシーニが《結婚手形》を『数日で作曲した lo musicò in pochi giorni』と述べている。これはさすがに誇張だろうが、依頼の経緯から作曲に要せる日数が少なかったことは間違いないだろう。実際、後述するように、序曲は2年前に書いたものをほぼそのまま更生している。
ボッコリはもう一つ、リハーサルでのトラブルも伝えている。
最初の稽古で 出演者の何人かが 、もし 彼らのパートに いくらかの変更が なされなければ そして オーケストラの伴奏が 軽くされなければ 歌わないと 抗議した、彼らが言うには とても大きな音が 時々 彼らの声を 圧倒し出す というのだ。
Alla prima prova alcuni degli attori portestarono di non cantare, se non si fosse fatta qualche modificazione nelle loro parti e non si fosse alleggerito l'accompagnamento dell'orchestra, che essi dicevano tanto fragoroso da sopraffare talvolta la loro voce.
ロッシーニは部屋で悔し泣きしたものの、すぐ気を取り直して、モランディ夫妻の経験と知識を頼りに、劇場の慣習と歌手たちの要求に応じて楽譜を自ら進んで手直しした、という。
18歳の新人オペラ作曲家であればいかにもありそうな試練だ。ただ《結婚手形》は自筆譜もスケッチなども失われており、この手直しがどのようなものだったかは分からない。
ただ、この件と関連するかどうかは分からないが、ローマのサンタ・チェチーリア国立音楽院が所蔵する筆写譜には、第2番 ファンニとエドワルドの二重唱の冒頭 Allegro grazioso の末尾部分の、より長く手の込んだ音楽の異稿が存在する。これはロッシーニがリハーサル期間に楽譜を簡潔に短く手直しした前の状態ではないかと推測されている。この異稿はクリティカルエディションでは補遺に収録されている。
初演
《結婚手形》の初演は、1810年11月3日、ヴェネツィアのサン・モイゼ劇場で行われた。
トビア・ミル
Tobia Millルイージ・ラッファネッリ
Luigi Raffanelliバス
basso
ファンニ
Fannìローザ・モランディ
Rosa Morandiソプラノ
soprano
エドワルド・ミルフォルト
Edardo Milfortトンマーゾ・リッチ
Tommaso Ricciテノール
tenore
スルック
Slookニコラ・デ・グレチス
Nicola De Grecisバス
basso
ノルトン
Nortonドメニコ・レモリーニ
Domenico Remoliniバス
basso
クラリーナ
Clarinaクレメンティーナ・ラナーリ
Clementina Lanari ソプラノ
soprano
ルイージ・ラッファネッリ 1752―1821 は、1790年代から引退する1815年まで極めて活発に活動したバッソ・ブッフォ。トスカーナのピストイアの生まれ。確認できる最初期の出演記録は 1774年のカーニヴァル・シーズンに生地のアッカデミア・デイ・リズヴェリアーティ劇場 Teatro dell'Accademia dei Risvegliati でのニッコロ・ピッチンニ《抽象的なもの L'astratto》のドン・ティモテオ。以降フィレンツェ、リヴォルノ、プラートなどトスカーナの諸都市で活動。さらに活動はイタリア各地に広がった。1789年、ラッファネッリはパリに移り、1792年までムッシュ劇場 Théâtre de Monsieur で絶大な人気を博した。イタリアに戻ってからはヴェネツィアを本拠地にしつつ、ローマやミラノ、あるいは中都市でも活動した。記録に残る最後の出演は1815年。その前年の1814年にスカラ座の舞台監督(演出家)に就任、この地で1821年に亡くなった。ラッファネッリは極めて卓越した歌役者だったと伝えられており、それは彼が様々なオペラの初演に出演していることからも理解できる。ロッシーニのオペラの初演では、いずれもサン・モイゼ劇場で、この《結婚手形》 1810 のトビア・ミル、《幸福な間違い》 1812 のタラボット、《ブルスキーノ氏》 1813 の父ブルスキーノ を歌った。《結婚手形》初演時には58歳という当時としてはかなりの大ベテランで、彼が上演の核になっていたことは間違いない。
ローザ・モランディ 1782―1824 はセニガッリアの生まれ。作曲家、声楽教師のジョヴァンニ・モランディ Giovanni Morandi 1777―1856 に才能を見出され、後に結婚。1805年春にはフィレンツェのペルゴラ劇場で歌っていることが分かっている。1807年8月17日、ミラノ、スカラ座でのマイール《一方でも他方でもなく Né l'un, né l'altro》でリヴィア夫人を歌う(まだセコンダドンナだったという)。1810年のカーニヴァ―ルシーズンにはローマのヴァッレ劇場に出演、この劇場はその後も度々出演している。その年の秋からヴェネツィアのサン・モイゼ劇場でプリマドンナを務めるようになり、《結婚手形》初演に出演する。その後もトリノ、ローマ、ジェノヴァなどで活動。1814年にはパリに進出、ロッシーニ《アルジェのイタリア女》のイザベッラやモーツァルト《フィガロの結婚》のスザンナなどを歌った。イタリアに戻って以降はセリアなどでも活躍し、1819年、ヴェネツィアのサン・ベネデット劇場では、ロッシーニ《エドワルドとクリスティーナ》初演のクリスティーナを、マイヤベーア《ロクスバラのエンマ》初演のタイトルロールを歌った。初演以外でも、《泥棒かささぎ》のニネッタ、《オテッロ》のデズデーモナ、《イタリアのトルコ男》のフィオリッラ、《マティルデ・ディ・シャブラン》のタイトルロールなど、ロッシーニの多くのオペラでヒロインを歌った。まだ現役だった1824年5月、ミラノで《タンクレーディ》再演の準備中に急逝。前述の通りロッシーニの父母と知り合いで、ロッシーニの商業デビューを後押ししたことで、単なるロッシーニ初期のプリマドンナという以上の重要性を持つ人物である。
トンマーゾ・リッチについては情報が乏しい。1803年にフィレンツェで活動した後、1805年から1809年にかけてナポリを拠点にし、主としてヌォーヴォ劇場での脇役テノールとして活動。その後ローマのヴァッレ劇場を経て、1810年秋からヴェネツィア、サン・モイゼ劇場で主役テノールに収まったばかりだった。1820年までは北イタリア諸都市で活動していた。その後出演記録が途絶え、最後に名前現れるのは1828年6月、ジェノヴァ。
ニコラ・デ・グレチスは1773年生まれとされる。最も古い出演記録は1796年のカーニヴァルシーズンにローマで催されたスポンティーニ《女たちの片意地》初演のブロントローネ伯爵。1802年以降ジェノヴァやトリノなど北イタリアの都市で活動。1805年3―6月にはミラノ、スカラ座に出演。その後はローマのヴァッレ劇場やフィレンツェのココメロ劇場などで歌った。彼も1810年秋にヴェネツィア、サン・モイゼ劇場に出演したばかりで、ここでロッシーニ《結婚手形》 1810 のスルック、《絹のはしご》 1812 のジェルマーノ、そして《ブルスキーノ氏》 1813 のガウデンツィオを創唱した。非常に多くのオペラの初演に参加しており、その中にはサヴェーリオ・メルカダンテの出世作《エリーザとクラウディオ》 1821 ミラノ スカラ座 でのトリコタツィ侯爵も含まれる。最後の出演記録は1826年、ローマ。
当時のサン・モイゼ劇場でのファルサは2本立てが基本で、《結婚手形》も最初の2公演、11月3、6日はジュゼッペ・フォッパ Giuseppe Foppa 台本、ジュゼッペ・ファリネッリ Giuseppe Farinelli 作曲 《判断を急ぐでない Non precipitare i giudizi》と併せて上演された。おそらく《判断を急ぐでない》は不評だったのだろう、この後は、このサン・モイゼ劇場の秋のシーズンで最も当たった作品、ピエトロ・ジェネラーリ《アデリーナ》 1810年9月15日初演 との2本立てに変わり、11月14、15、17、19、22、23、24、28、29日、そして12月1日、と合計12回上演された。
12回も上演されたのならば《結婚手形》の評判は良かったはずだが、残念なことに初演時の新聞評などは見当たらない。
《結婚手形》初演の評判については、台本作家ロッシの自伝でごく簡単に回想されている。
ロッシーニは、サン・モイゼ劇場でのあるファルサにおいて、ロッシの詞で誕生し、始動した それには 極めて好評な3曲があった。
Nasceva Rossini, e cominciò con parole di Rossi, in una farsa a S. Moisè ch'ebbe tre pezzi fortunatissimi.
この3曲がどれを指すのかは分からない(とはいえそのうちの1曲はおそらく、ヒロインであり恩人であるモランディのためのファンニのアリアだったに違いない)。全8曲のうち3曲が極めて好評だったということは、残りの5曲はいくらか好評だったかあまり好評でなかったか不評だったかということになる。ここから《結婚手形》の初演はほどほどの成功だったと推測することも可能だが、ロッシのこの簡単な記述からはそこまで読み取るのは無理があるだろう。
初演後の上演、20世紀以降の上演
《結婚手形》は、なにせまだ無名の新人オペラ作曲家のデビュー作だったので、初演後の各地への広がりは限定的だった。
クリティカルエディションの解説には、《結婚手形》のロッシーニの生前の上演が掲げられている。それによると、初演直後の公演は、1811年4月トリエステ、同年6月20日 パドヴァ、同年7月 ヴィチェンツァ、これだけである。ロッシーニの名声が高まった後になって、1815年2月 クレモナ、1816年4月26日 バルセロナ と上演されている。
1820年4月、ナポリ、ヌォーヴォ劇場で、4月16、17、19、20日と2本立てで上演された。これにはロッシーニが関わっている可能性がある。
オーストリア初演は、一般的に 1834年10月2日 ケルントナートール劇場 とされている。ヨハン・クリストフ・グリュンバウム Johann Christoph Grünbaum によるドイツ語訳詞 カナダからの花婿 Der Bräutigam aus Canada での上演。ただしクリティカルエディションによると、ウィーンのオーストリア国立図書館に、1823年12月25日付で検閲から上演許可を得た《結婚手形》の手書き台本(これもグリュンバウムの独語訳)が所蔵されているという。しかし上演された形跡がまったく見当たらず、許可の後に上演されたかどうか分からないという。
スペイン初演は、1816年4月26日 バルセロナ。
ドイツ諸国やフランスでの初演などは調べが付かなかった。
20世紀以降の初の上演は、1910年4月23、24日、ヴェネツィア、ラ・フェニーチェ劇場での公演。初演100周年を記念して初演地ヴェネツィアで上演されたもの(ただしラ・フェニーチェ劇場では《結婚手形》はこれが初めてだった)。出演者などはリンク先を。
イタリアではこの後しばらく散発的に上演があった。
詳細の分かっている公演を一つ紹介すると、トリノでは、トリノ劇場 Il Teatro di Torino(トリノの主要劇場だったが1942年12月の空爆で破壊された) で、1927年5月5、7、10、19日の4回上演があった。劇場の活動を紹介するサイトに詳細な記録が載っている。2本立てで、前半がフランコ・アルファーノの新作喜劇《貴婦人インペリア Madonna Imperia》(バルザックの 美しいインペリア La belle Imperia を基にしている)の世界初演、後半が《結婚手形》。出演者はリンク先を参照。公演プログラムのPDFもダウンロードできる。
英語圏での初演は遅かった。
合衆国初演(北米初演)は、1937年11月8日、ニューヨーク州 ニューヨークシティ、44番街路劇場。この劇場は歌劇場ではなく、様々なタイプの舞台を提供した劇場だった。
英国初演は、1954年4月23日、ロンドン、サドラーズ・ウェルズ劇場。ちなみにスコットランド初演は、1984年5月22日、パース。
カナダ初演は、おそらく1959年8月20、21、22日、ヴァンクーヴァーのブリティッシュ・コロンビア大学 The University of British Columbia 略称 UBC での学生公演。指揮は ジョージ・シック George Schick (プラハ生まれで米国に移住、METの指揮者も務めた)。演出は ロバート・ジル Robert Gill。以上は UBC Library が公開している情報に基づく。
日本初演は、1970年、ローマ室内歌劇場の来日公演の際の上演と思われる。6月19日、大阪、フェスティバルホール、6月24、27日、東京文化会館大ホール。大阪公演があったことで分かるように、大阪万博に関連する催しの一つだった。公演プログラムによると、《婚約手形》の題で、チマローザ《宮廷楽師長》との2本立て。トビア・ミルが レナート・チェーザリ Renato Cesari、ファンニが チェチーリア・フスコ Cecilia Fusco、エドワルド・ミルフォルトが アルヴィニオ・ミシアーノ Alvinio Misciano および エドワルド・ヒメネス Edoardo Gimenez、スルックが セスト・ブルスカンティーニ Sesto Bruscanitini、ノルトンが アッティーリオ・ブルキエッラーロ Attilio Burchiellaro および ジョルジョ・ガッティ Giorgio Gatti、クラリーナが ジャンナ・アマート Gianna Amato および エレナ・ジーリオ Elena Zilio。レナート・ファザーノ 指揮 ヴィルトゥオージ・ディ・ローマ。演出は サンドロ・セクイ Sandro Sequi。ちなみに ヴィルトゥオージ・ディ・ローマ のコンサートマスターはフェリックス・アーヨだった。
NHKアーカイヴスによると、NHKでは1970年6月20日に抜粋をテレビ放送、これは前日6月19日の大阪公演で間違いない。クラリーナは ジーリオ。一方1970年6月28日に教育テレビで全曲放送され、アーカイブではこれも大阪公演としているが、21年後の1991年11月4日に衛星第2で全曲が放送された際には6月24日の東京公演になっていたという。エドワルドは ミシアーノ、ノルトンが ブルキエッラーロ、クラリーナが アマート。どちらが正しいのかは分からない。
この頃より後になると、《結婚手形》の上演は盛んになり、とても追い切れなくなる。
《結婚手形》は、ロッシーニ18歳の若書きとはいえ十分によくできたオペラで、とはいえ歌はまだ難易度が高くなく(特にテノール)、またオーケストラも小編成で、ロッシーニの名を掲げて上演するには比較的容易だったことがあるだろう。
2022年にエレオノーラ・ディ・チンティオ校訂の《結婚手形》クリティカルエディションが刊行された。これを用いた初の上演は、2022年11月24、26日、オマーン、マスカット王立歌劇場。ROFとの提携公演で、舞台はROF2020年公演のローレンス・デイル演出を用いている(この時の楽譜はRICORDIの旧版を用いていた)。
ROFでの《結婚手形》クリティカルエディションを用いた初上演は、2025年8月の公演の予定。
原作、台本
ロッシは基本的に、カミッロ・フェデリーチ Camillo Federici 1749―1802 本名 ジョヴァン・バッティスタ・ヴィアッソロ Giovan Battista Viassolo の5幕立ての喜劇『結婚手形 La cambiale di matrimonio』 1790 ヴェネツィア に基づいて台本を書いている。またそれに基づいた カルロ・コッチャ Carlo Coccia 《為替手形による結婚 II matrimonio per lettera di cambio》のための ジュゼッペ・ケッケリーニ Giuseppe Checcherini による台本も加味しているという。《為替手形による結婚》はコッチャの初のオペラで、1807年11月4日 ローマ ヴァッレ劇場で初演されたが、失敗に終わった。
ロッシの《結婚手形》の台本はフェデリーチの《結婚手形》を大きく圧縮、縮小している一方で、たとえばスルックがミルに宛てた手紙の文面などは概ねフェデリーチの文面を踏襲している。
フェデリーチは1780年代頃にはたいへんに人気のある劇作家だった。彼の作風は、18世紀イタリアで最も人気の高い喜劇作家カルロ・ゴルドーニ 1707―1793(《為替手形による結婚》初演当時はまだ存命だった)の影響下にあり、貴族や特に成金(傲慢で金にうるさい)への批判精神を受け継いでいる。原作でもオペラでも、トビア・ミルがゴルドーニのコンメディア・デラルテにおけるパンタローネに相当する。
新大陸から嫁探しにやって来たスルックは、ミルに対置される人物で、一見すると風変わりだが善良かつ正しい判断ができる人物に描かれている。加えてスルックには度胸があり、結婚に反対するファンニとエドワルドだけでなく、縁談(= 商取引)の反故に激怒するミルからも脅されても、怯むことがない。ヨーロッパより未開で野蛮なはずの新大陸の植民地からやって来た奇妙な人物の方がずっと立派で理性的、文化的な振舞いをしていることから、という批判が、フェデリーチの原作からロッシーニのオペラにまでを貫く精神である。
ロッシの台本では、ファンニ(フェデリーチの原作では エウジェーニア Eugenia)とエドワルド(同じく テオドリコ Teodorico)が拡大されている。これはオペラにおけるソプラノとテノールの重要性に応じたものだろう。一方で、ミルの妻と、テオドリコの叔父オドワルド・ヴェスト Odoardo Vest が省かれている。後者は第2番の二重唱の後のレチタティーヴォで一回だけ言及されている。
あらすじ
全1幕
トビア・ミルの館の部屋。召使いのノルトンとクラリーナが、ミルの娘ファンニの結婚について噂話をするが、ノルトンの呼ぶ声に中断してしまう。
ミルが現れる。慣れぬ世界地図に難儀しながら、彼は少し前に手紙の届いた友人の居る場所、カナダとロンドンの距離を測ろうとするものの、うまくいかない。ノルトンが新たな手紙を届ける。これもカナダに住む裕福な友人スルックからのものだった。彼はミルに『注文』した『商品』を受け取るために自らロンドンを訪れ、既に船は港に着き、もうすぐ到着すると書いていた。ミルはファンニにこのことをまったく相談しておらず、娘を『商品』扱いするので、ノルトンは驚き呆れる。
ファンニと恋人のエドワルド・ミルフォルトが愛を語り合っている。二人は愛し合っているのだが、エドワルドは裕福ではなく、ファンニは父に彼を紹介できずにいる。エドワルドは数日中にやって来るはずの叔父に二人の結婚の仲介を期待しているが、ファンニはその前に謎の男が来るという話を聞いたと不安がる。
ノルトンが二人に、ファンニが結婚することになったと告げ、本に挟まれたスルックの手紙(これが契約書および手形になっている)を読ませる。二人はあまりのことに愕然とする。
そこにミルがやって来て、見知らぬ男がいるのをいぶかしむ。ノルトンはエドワルドは新しい会計係であると誤魔化す。ミルは娘にスルックからの手紙を手渡し、間もなくやって来る異国の男に渡すように命じる。
風変わりな格好をしたスルックが現れ、私はヨーロッパの風習を知っていると言葉とは裏腹に、奇妙な言動で人々を混乱させる。
二人になると、ファンニはスルックに、ミルからの手紙を渡す。スルックは、花嫁候補がファンニであることを知る。彼女はスルックに、『手形』を取り下げるよう願う。スルックはその理由を尋ねるが、彼女は けれども! ma! と言葉を濁す。エドワルドが現れ、カナダに帰るよう、手形を諦めるよう、そしてこの件をミルに言わないよう要求する。ついには、ファンニはスルックの目を引き抜くと、エドワルドはスルックを刺すと、二人で脅し出すので、スルックは困惑する。
ノルトンもクラリーナもファンニに同情している。ノルトンはやって来たスルックに、ファンニが『抵当に入れられた』ことを明かす。入れ替わりに現れたミルにスルックは、ファンニは気に入っているが結婚したくはない、と告げる。『商談』を破約にされたミルは怒り出し、約束を守れと迫るが、スルックは賠償金を払うと答える。すると今度はミルがスルックに決闘を持ち掛ける。スルックは、父親まで… と呆れ、興奮するミルを横目に、早く船に乗って無事に帰国しようと思う。
ファンニとエドワルドが状況を嘆いている。そこにスルックがやって来て、二人が愛し合っていることを理解する。そして彼は手形をエドワルドに裏書し(手形の裏側に署名などをして譲渡すること)、さらにエドワルドを相続人に指定すると約束する(契約に基づき、ファンニと結婚するには支払いが必要なため)。ファンニは喜びを爆発させる。
ミルは自分で言い出した決闘に怖気づいている。その様子を見たスルックは、本気で決闘するつもりはないが、ミルをからかいながら表に出ようとする。ファンニとクラリーナが二人を止める。なおも戦うと言い張るミルに、エドワルドは、死ぬ前に手形の履行、つまり支払いと『商品』であるファンニの受け取りをミルに求める。手形が裏書されたことを知ったミルは、激怒して拒むものの、スルックに、1年後には孫という『利益』をもたらすと説得され、さらにファンニ、エドワルド、クラリーナ、ノルトンの懇願もあって、ついにミルも折れて二人の結婚を認める。一同の喜びで幕となる。
音楽
作曲時間が限られていたこともあるだろうが、序曲はロッシーニが前年1809年に、ボローニャの音楽学校 Liceo musicale di Bologna で学んでいた時に作曲した シンフォニア 変ホ長調 をいくらか手直しして用いている。17歳ごろの作品であるにもかかわらず、このシンフォニアはたいへんに良い出来で、それはこの曲が《結婚手形》から7年後の1817年に、様々に手直しされたとはいえ《ブルグントのアデライデ》の序曲に用いられていることからも分かる。なおロッシーニは翌年の次作《ひどい誤解》でも同じ序曲を用いていると推測されている(トロンボーン2つが追加されている)。
第1番 導入 [N. 1] Introduzione は、大雑把に 冒頭のノルトンとクラリーナの場面、ミルのアリア、ノルトンとクラリーナが加わっての三重唱 という作り。冒頭のノルトンとクラリーナの場面 Non c'e il vecchio sussurrone: は Allegro 4/4 ハ長調。オーケストラの生き生きした音楽には間違いなくロッシーニの個性が感じられる。ミルのアリアは緩 カンタービレ/急 カバレッタ の作り。緩 カンタービレ は Moderato 4/4 ハ長調。概ね同じ伴奏音型の繰り返しに語り口調の歌を乗せた音楽だが、ミルが poi, poi それから からハ短調に振って、世界地図を前に途方に暮れるミルの姿を浮かび上がらせているのは見事。急 カバレッタ Ah, non combinasi la longitudine... は Allegro 2/2 ハ長調。素朴ながら勢いのあるカバレッタ。ノルトンとクラリーナが戻る経過区 Ecco una lettera per voi, signore. Allegro giusto 4/4 ハ長調 の後、ストレッタの三重唱 Ma riflettete... considerate... (Allegro giusto) 4/4 ハ長調 もキリリとした音楽。
第2番 ファンニとエドワルドの二重唱 Duetto [Fanni-Edoardo] は 緩 カンタービレ/急 カバレッタ の作り。緩 カンタービレ Tornami a dir che m'ami, は Andante grazioso 2/4 イ長調。定型に従いつつ、ロッシーニの瑞々しい感性が既に見て取れる。なおこの部分はクリティカルエディションでは旧版より14小節程長く、逆に言うと旧版では冒頭のエドワルドの歌が14小節ほどカットされている。中間部はなく、そのまま急 カバレッタに入る。Propizio accolga amore Allegro 4/4 イ長調。沸き立つような軽快な音楽がロッシーニの愉悦を醸す。
第3番 スルックのカヴァティーナ Cavatina Slook は 緩 カンタービレ/急 カバレッタ の作り。緩 カンタービレ Grazie... grazie... は Andante grazioso 2/4 イ長調。緩 といっても 2/4 なので実際には 急 に聞こえる。冒頭の景気の良い音楽はロッシーニアンならば聞き覚えがあるはずで、ロッシーニは次作《ひどい誤解》第1幕 第2番 ブラリッキオのカヴァティーナで更生した後、さらに《イタリアのトルコ男》第1幕 第1番 導入 でのプロスドーチモの登場の音楽に更生、これで良く知られている。つまりこのカンタービレは既にオペラブッファ作曲家ロッシーニの水準に到達したものだ。このカンタービレは Prima il padron di casa で二分されており、後半の冒頭の音楽は後に《新聞 La Gazzetta》 1816 ナポリ の第1幕 第2番 ドン・ポンポーニオのカヴァティーナ Co' 'sta grazia の途中に更生している。急 カバレッタ Benedetta sia la nostra は Pi&uggrave; mosso 4/4 ハ長調。これは前半(概ね カバレッタの導入 になっている)と後半 Donne belle, donne care, に分かれており、後半が実質的なカバレッタ。ロッシーニらしいきびきびとした楽しい音楽。ここも次作《ひどい誤解》 第2幕 第16番 ガンベロットのアリア のカバレッタの che per te sta riserbata に更生される。
第4番 三重唱 Terzetto は、2幕もののオペラブッファの第1幕フィナーレに相当する比較的規模の大きい曲。まずファンニとスルックの二重唱で 緩/急、エドワルドが入ってアリオーソのような歌を披露し、その後に長い中間部があって、最後にストレッタ という作り。二重唱の 緩 Darei per si bel fondo は Maestoso 4/4 ニ長調。音楽はどこかぎこちなく、スルックとファンニの歌は微妙に異なっていて、すれ違う二人の心情が描かれている。急 Per carita, signora,は Allegro 4/4 ニ長調。苛立ちつつファンニに結婚を促すスルックと、決して応じられないファンニは、並行しない二重唱に至る。エドワルドが現れる。Quell'amabile visino, は Andantino 6/8 変ロ長調。美しい旋律をたっぷりと歌う魅力的な音楽だが、これは嵐の前の静けさのようなもの。この後 Allegro 4/4 変ロ長調/ニ長調 の中間部で、スルックとエドワルド+ファンニの対立が深まる。ストレッタ Non mi piacete, non pretendete, は Allegro mosso 3/4 ニ長調。手の込んだアンサンブルではないにせよ、十分スリリングだ。
第5番 クラリーナのアリア Aria Clarina、Anch'io son giovine, は Allegro 4/4 変ロ長調。いわゆるアリア・ディ・ソルベット Aria di sorbetto シャーベット・アリア、脇役のアリア。単一構成、技術は平易で、音域も五線の下のホ音から上のト音までに収まっている。制約のある中でしかしこれは十分よくできた音楽で、フルートとの掛け合いが美しい。
第6番 ミルとスルックの二重唱 Duetto [Mill-Slock] は、急/緩/急のつくり。急 Dite presto, dove sta は Allegro vivace 2/2 ト長調。ミルが早口で捲し立て、スルックはそれをゆっくりとかわす。緩 Quest'e un procedere は Allegro moderato 3/4 ト長調。今度はミルは理詰めでスルックに迫る。両者は同様な音楽でやり合う。続くレチタティーヴォでミルはスルックに手袋を投げつけて決闘を申し込む。急 Ecco il guanto: v'aspetto fra un'ora, は Allegro 4/4 ト長調。後のロッシーニなら間違いなく早口の応酬に仕立てであろう状況だが、18歳のロッシーニのこの節度ある音楽もよい。
第7番 ファンニのアリア Aria Fanni は、このオペラの音楽的頂点だろう。急/緩/急 のつくり。Come tacer, come frenare i moti は Allegro 4/4 イ長調。これは9小節の短いシェーナ。急 Vorrei spiegar il giubilo は Allegro giusto 4/4 イ長調。スルックがエドワルドに手形を裏書したことでファンニが喜びを爆発させる。ただし26小節と短く切り上げられ、音楽も特筆するほどではない(Oh Dio! でト音にナチュナルが付くのはハッとさせられるが)。緩 Un soave e nuovo incanto は Andante 4/4 イ長調。これはしっとりと美しい音楽だが、これも12小節しかない。中間部 Ah, se amor voi conosceste, は Allegro 2/2 イ長調。その後に聞き覚えのある 急 Ah, nel sen di chi s'adora, になる。(Allegro) 2/2 イ長調。ロッシーニはこの音楽を後に何度も更生しており、主要なものだけでも、《イタリアのトルコ男》第1幕 第6番 フィオリッラとドン・ジェローニオの二重唱のカバレッタ (Con marito di tal fatta,、これをそっくり更生した《新聞》第1幕 第6番 リゼッタとポンポーニオの二重唱のカバレッタ Con i padri di tal fatta、両作の間に《セビリアの理髪師》第1幕 第7番 ロジーナとフィガロの二重唱のカバレッタ Ah tu solo, amor, tu sei で用いている。作曲家がその最初期の作品に後の傑作の一節が見て取れるという例は他にもあるが、これだけはっきり現れているのは珍しいだろう。ロッシーニの早熟の天才ぶりを裏付ける証拠だ。
※普請中※
対訳付き音楽設計図
登場人物
トビア・ミル
Tobia Mill,商人
negozianteバス
basso
ファンニ
Fannì,彼の娘
di lui figliaソプラノ
soprano
エドワルド・ミルフォルト
Edardo Milfortテノール
tenore
スルック
Slook,アメリカ人の商人【注1】
negoziante americanoバス
basso
ノルトン
Norton,ミルの会計係
cassiere di Millバス
basso
クラリーナ
Clarina,ファンニの小間使い
cameriera di Fannìソプラノ【注2】
soprano
注1 この americano は概ね 北米の の意味。台本からスルックはカナダ人であることが分かる。カナダは1763年から1867年まで自治権のない英国領だった。
注2 クラリーナの最高音はト音で、メッゾソプラノが受け持つことも多いが、一方で低音域も与えられておらず(最低音はホ音)、さらにアリアの音域は概ねト音記号の五線の上半分なので、メッゾソプラノの声が求められているわけでもない。基本的にはソプラノが歌って然るべきだろう。
日本語訳は極力文学的色づけをしない直訳にしてある。
台詞、ト書きなどは、エレオノーラ・ディ・チンティオ校訂の《結婚手形》クリティカルエディションに従っている。
| Sinfonia | Andante maestoso 4/4 E-flat Major |
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| Allegro vivace 2/4 E-flat Major |
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| ATTO UNICO | |||
| [N. 1] Introduzione Clarina Mill Norton |
Allegro 4/4 C Major |
(SCENA PRIMA)第1場 (Sala nella casa di Mill, semplicemente elegante, che comunica a vari appartamenti. Un tavolino con occorrente per iscrivere, sedie)(ミルの家の広間、簡素な 優雅な、それ【= 広間】は様々な住居に通じている。小テーブル 登録するために必要なもののある、椅子) (Norton dalla porta di mezzo. Clarina che traversa la scena)(ノルトン 中央の扉から。クラリーナ その者は舞台を横切る) NORTONノルトン Non c'è il vecchio sussurrone:年老いた 口うるさい人は【= ミル】 いない: resta meco un po', Clarina.私と一緒に ちょっと 留まりなさい、クラリーナよ。 CLARINAクラリーナ Poco ancor la padroncinaすぐに また 小女主人【= ファンニ】が a chiamare può tardar,【私を】呼ぶのに 私は 遅れる かもしれない、 a chiamare non può tardar.【私を】呼ぶのに 私は 遅れることが できない。 NORTONノルトン Ma intanto qui tra noi...しかし 今のところ ここで 私たちの間で… CLARINAクラリーナ Dimmi presto ciò che vòi.急いで 私に 言いなさい 君が 【言い】たいことを。 NORTONノルトン Quando Miss si farà sposa?お嬢様は いつ 花嫁に なるであろうか? CLARINAクラリーナ È lontana ancor la cosa.状況は まだ遠い。 NORTONノルトン (con mistero)(秘密を もって【≒ 意味ありげに】) Non sai tutto!君は すべてを 知らない【君は よく 分かっていないのだな】! CLARINAクラリーナ (curiosa)(興味を抱いて) E tu che sai?それでは 君は何を知っているのか? NORTONノルトン Nuove grandi!重大な情報を! CLARINAクラリーナ E cosa mai?それで それは いったい 何なのか? NORTONノルトン Sappi...知りなさい… CLARINAクラリーナ Ebben!...それで!… NORTONノルトン Sappi...知りなさい… CLARINAクラリーナ Ohimè! il padroneああ! 主人が già si sente a sussurrar.既に 囁いているように 感じる【≒ ミルが もう ぶつくさ言っているような 気がする】。 Vieni presto a dirmi il resto,急いで来なさい 私に残りを言うために、 devi tutto a me spiegar.君は すべてを 私に説明しなくてはならない。 NORTONノルトン Ohimè! il padroneああ! 主人が già si sente sussurrar.既に 囁いているように 感じる【≒ ミルが もう ぶつくさ言っているような 気がする】。 Verrò presto a dirti il resto,私は 急いで行こう 君に 残りを言うために。 non mi posso or più spiegar.今は 私はさらに 説明することが できない。 (si dividono entrando)(入って 立ち去る) |
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| Moderato 4/4 C Major |
(SCENA Ⅱ)第2場 (Mill in veste da camera, berretto da notte, che porta con una mano un mappamondo e nell'altra tiene una bussola, esaminandoli)(ミル 部屋着を身に着けて、ナイトキャップ【を身に着けて】、その者は 片手に 世界地図を 持ち そして 別の【手】に 方位磁針を、それらを 調べて) MILLミル Chi mai trova il dritto, il fondoいったい 誰が 表側を 見つけるのか、下を【見つけるのか】 a cotesto mappamondo?この世界地図で【≒ 世界地図の どっちが表で、 どっちが下なのか いったい 誰が 分かるというのか】? Chi m'insegna il come e il quando誰が 私に教えるのか、どうやって そして いつ di piantar la calamita,磁石を 据えるのかを、 e la bussola adoprando,そして 方位磁針を 使って、 chi m'insegna a navigar?誰が 私に 教えるのか 航海することを? (siede e legge un libro, poi confronta con la bussola e il mappamondo)(座る そして 一冊の本を読む、それから 方位磁針と 世界地図を 調べる) Cento gradi in latitudine...緯度で 100度… cento e venti in longitudine...経度で 120度… al Nord-Est. al Sud-Ovest,北東へ、南西へ、 poi l'elevazion del polo...それから 極の高度【≒ 北緯】… qui la linea, e le terziere...ここに【子午】線、そして 三分された区画【≒ グレートブリテン島】… l'equatore colle sfere.球体を伴った 赤道【≒ 南半球と 北半球の 境界である 赤道】。 Dall'America in Europaアメリカから ヨーロッパへと vo' ben bene calcolar.私は よく よく 測りたい。【≒ アメリカから ヨーロッパまでの 距離を 私は 正確に 測りたい】 (s'impazienta calcolando, e s'alza)(測りながら いらいらする、そして 立ち上がる) |
Chi mai trova il dritto, il fondo dritto = diritto 表側 poi l'elevazion del polo... l'elevazione del polo 極の高度 とは、天球(空を見上げた時の仮想の球体。地平線で区切られるので実質半球になる。詳しくは検索を)における天の極の高度のこと。以下北半球の場合で説明すると、極の高度は地平線の北点と天の北極(ほぼ北極星の位置)の作る角度であり、つまり真北を向いた時に北極星を見上げる仰角である。これは観測地点の北緯と等しい(北極星の高度が35度ならばそこは北緯35度)。したがってここでの l'elevazion del polo は 北緯 を意味していると思われる。 qui la linea, e le terziere... 舞台がロンドンであるので linea 線 は 子午線 で間違いないだろう。イタリア語で子午線は meridiano だが linea di longitudine 経度の線 も使われる。 一方 le terziere (複数形)についてはよく分からない。伊和辞典には男性名詞で (中世小都市の)行政上三分された区画おのおの とある。各国語訳でもここを明確に訳しているものはない。これも物語がロンドンであることを念頭に置き、複数形であることを考えると、三分された区画 とは、イングランド、スコットランド、ウェールズで三分されているグレートブリテン島を指しているのではないかと考えた。 l'equatore colle sfere. sfere が複数形なので、これは 赤道によって区切られた 北半球と南半球(半球 emisfero)を指すと理解した。両半球を伴った赤道 ≒ 南半球と北半球を区切る 赤道。 |
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| Allegro 2/2 C Major |
Ah, non combinasi la longitudine...ああ、経度が 一致しない… mi vado a perdere in latitudine...私は 経度で 迷いつつある… il polo abbassasi, manca la linea... 極が 下がる【≒ 北緯が 低い】、線が 欠けている【≒ 日付変更線が ない】…、 la calamita perde il magnetice...磁石は 磁力を 失っている… Oh, mi confondo col mappamondo,ああ、私は 世界地図で 混乱している、 e della bussola non so che far.そして 方位磁針で 何をするのか 私は 知らない。 |
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| Allegro giusto 4/4 C Major |
NORTONノルトン (escendo)(出て【≒ 登場して】) Ecco una lettera per voi, signore.ここに あなたへの 手紙が、旦那様よ。 MILLミル Mi rompe il calcoli, gran seccatore! 彼は【= ノルトンは】 私の計算を つぶしている、大きな邪魔者め! CLARINAクラリーナ (escendo)(出て) Serva umilissima, signor padrone.この上なく恭順な 召使いの女だ、主人である旦那様。 MILLミル Tu mi fai crescere la confusione.君は 私の混乱を 大きくさせている。 NORTONノルトン Avrei da dirvi...私は あなたに 言わ無ければならないのだが… CLARINAクラリーナ Vorrei parlarvi. 私は あなたに 話したいのだが。 MILLミル Deh, non mi state più a tormentar.おねがいだから、私を もう 悩まさせないでくれ。 (s'alza arrabbiato)(怒って 立ち上がる) |
Serva umilissima, signor padrone. serva umilissima は実際には丁寧な挨拶。第3番の後のレチタティーヴォを参照。 |
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| (Allegro giusto) 4/4 C Major |
CLARINA E NORTONクラリーナ と ノルトン Ma riflettete... considerate...けれども 熟慮しなさい… よく考えなさい… saper dovete... non v'alterate:あなたは 知らなくては ならない… かっとなるでない: questa la lettera dal nuovo mondo.これは 新世界からの 手紙だ。 (Che uom collerico! che s'ha da far!)(なんと 怒りっぽい男だ! 何を しなければ ならないのだ!) No, non vi state ad inquietar.いいえ、苛立つでない。 MILLミル Ma via, tacete... oh mi seccate!さあ あっちへ行け、黙りなさい…ああ 君たちは 私を 煩わせている! M'interrompete... se seguitate!君たちは 私を 妨げている… もし 君たちが 続けるならば! Questi... la lettera... il mappamondo...この人が… 手紙が… 世界地図が… Non ho più cerebro... vo' ad impazzar,私は もう 頭脳を 持っていない… 私は 頭がおかしくなりたい、 andate al diavolo... non vo' ascoltar.消え失せろ… 私は 聞きたくない。 |
速度、拍子、調 いずれも前から変化はないが、ここからストレッタに入るので区切りを入れる。 なおいくつかの筆写譜ではここに Più mosso の指示があり、旧版ではそれが採用されているが、クリティカルエディションでは採用されていない。 |
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| [Recitativo] Dopo l'Introduzione |
4/4 (C Major) |
NORTONノルトン Ma, signor, questa letteraところで、旦那様、この手紙を la portò un marinaioあなたに 持って来た 船員が che vien dalle colonie.その者は 植民地から 来ている。 MILLミル Ed io sto appuntoそれで 私は ちょうど esaminando quanta è la distanza調べていたところだ 距離が どのくらいなのか dalle colonie a noi. vediamo:植民地から 私たちまで。【手紙を】 見よう: (prende la lettera e riconoscendo il carattere con allegria)(手紙を 取り そして 筆跡を 認識して 上機嫌で) ah! è sua,ああ! 彼のものだ【= 彼の手紙だ】、 del mio corrispondente americano.私の アメリカの取引先の。 (l'apre e legge)(それを 開ける そして 読む) NORTONノルトン (Qualche altra commissione da uomo strano.(なんらかの 別の 依頼だ 外国の男からの。 Se sapessi, Clarina!...)もし 君が 知っているのなら、クラリーナよ!…) MILLミル (allegrissimo)(この上なく陽気に) Come! come!なんだって! なんだって! Egli stesso in persona!... Oh che fortuna!...彼自身が 自ら!… ああ なんという 幸運だ!… Presto... l'affare è fatto.急ごう… 事は 済んだ【≒ 問題は 解決した】。 NORTONノルトン (Quasi indovino.)(私は ほぼ 推測している)【≒ だいたい 分かった】 CLARINAクラリーナ (E che? diventa matto?)(いったい 何が? 彼は 気が狂ったのか?) MILLミル (allegrissimo)(この上なく陽気に) Norton, l'amico è qui: sbarca a momenti:ノルトンよ、友が ここに いる: 彼は すぐ 下船する: mi scrive dal vascello... egli in persona彼は 船から 私に 書いている… 彼は 自ら vuol trattare il negozio,商取引を 扱うことを 望んでいる、 veder la mercanzia.商品を 見ることを 【望んでいる】。 NORTONノルトン Ma proprio...しかし 本当に… MILLミル Presto,すぐに、 Clarina, va' ad aprir l'appartamentoクラリーナよ、居室を 開けに 行きなさい che guarda sul giardin, tutto sia lesto.それは 庭園に 面している、すべては 手早く。 Senti! di' alla mia figlia che si metta聞きなさい! 私の娘に 言いなさい 着るように と un abito da festa, va'.祝典のための服を【≒ 晴れ着を】、行きなさい。 (Clarina parte. Mill chiama uno dopo l'altro i servi, che nomina, compariscono, e partono, ricevuto l'ordine)(クラリーナは 去る。ミルは 一人ずつ 召使いたちを 呼ぶ、その者を 彼が 指名する【≒ ミルは、指名した召使いたちを 一人ずつ呼んで】、彼ら 現れる、そして 去る、指示を 受けて) Isacchetto!イザッケットよ! la mia carrozza bella... Salomone!私の 美しい馬車を… サロモーネよ! l'abito da visite... Lorenzo!訪問用の服を… ロレンツォよ! per uno, o due di più. Cresci tre piatti.一人前の、それとも さらに 二人前を。3皿の料理に 増やしなさい。 Bisogna farsi onore con un uomo一人の男に 歓待する 必要がある così particolar:これほどに 特別な【男に】: Norton, è ver?ノルトン、それは 真実だろ【≒ そうだろ】? NORTONノルトン (seccamente)(素っ気なく) Sì, un vero originale.はい、本来の 真実だ【≒ 当然のことだ】。 MILLミル E la lettera avuta l'altro giorno!そして 別の日に 受け取った手紙が! Eh! che ingenuità! che sentimenti!えー! なんという 純真さだ! なんという 感情だ! che buona fede! È un vero e raro trattoなんという 善良な信頼だ! 本当に そして 稀な 物腰だ della semplicità del secol d'oro,黄金時代の 純真さの【物腰だ】、 che in questa età di ferro più sorprende,それは 【今の】この 鉄の時代に さらに 人を驚かす、 né più si trova.【そして それは】 もう ない。 NORTONノルトン È come la s'intende.それは それが【≒ 時代が】 理解されている 通りだ。 MILLミル Par che ne dubitate: Ma sentite:君たちは そのことを 疑っている ように思われる:しかし 聞きなさい: (cava una lettera)(手紙を 引き抜く) l'ho letta mille volte, e la ritrovo私は 手紙を 千回 読んだ、そして 私は 認めている それが sempre d'uno stil raro, affatto nuovo.いつでも 稀な文体で、まったく 新しい と、 (legge)(読む) Signore et caetera. Ho risoluto di formare una compagnia matrimoniale: qui non c'è qui non c'è ditta che mi convenga, perciò sul primo vascello che partirà per queste colonie speditemi una moglie delle seguenti forme e qualità.貴殿よ 云々。私は 決心した 結婚の連れを 作ると: ここには 上述の女は いない その者は 私に 相応しい、そこで 最初の船に乗せて それは この植民地に向かって 離れるであろう 私に 妻を 発送しなさい 次の 格好の そして 品質の【≒ 私は 結婚相手を 見付けることを 決心した: この地には 私にふさわしい 結婚相手は いない、そこで カナダへと出港する予定の 次の船で 後述するような容姿と性格の妻を 発送してほしい】。 Ah! che intavolamento!ああ! なんという 取り掛かりだ【≒ なんという 交渉の始め方だ】! NORTONノルトン (ironico)(皮肉を込めて) Sorprendente!驚くべき! MILLミル Eh! questo è ancora niente.えー! これは まだ 重要ではない。 (segue a leggere)(読み続ける) Qualunque sia la dote non serve. Sia d'estrazione onesta: non passi i trent'anni: Sceglietela di buona figura, esaminate bene le proporzioni: un bell'occhio, una pasta dolce, colore omogeneo, e senza minima macchia nella reputazione: item di temperamento sano e robusto, per resistere ai colpi del mare e alla forza del clima, perché non vorrei restarne senza, appena acquistata, e ricorrere a nuova provvista.持参金が どうであろうと それは 必要ではない。彼女は 誠実な家柄の生まれであるように: 30歳を 超えていないように: 優れた容姿の 彼女を 選びなさい、釣り合いを よく調べなさい: 美しい目、優しい気質、同種の色、そして 評判には 極めて僅かな汚点が ない: 同様に 健康な そして 丈夫な 体質、海の打撃に そして 気候の強さに 持ちこたえるために、なぜなら 私は 彼女なしに なることを 望まないからだ、手に入れてすぐに、そして 別の在庫に 訴えることを【≒ 持参金は どのようなものであれ 必要ない。彼女は 良い家柄の出であること: 30歳を 超えていないこと: 容姿端麗な女性が 選ばれること、均整の取れた体格かどうか よく調べられること: 美しい目、穏やかな性格、我々と同種の肌の色【≒ 白人】、そして 評判には 一切 悪い点がないこと:同様に 【大西洋航海で 船が】 大波に襲われても 【カナダの】厳しい気候に 晒されても 耐えられるだけの 健康で丈夫な身体の持ち主であること、というのも 私の妻になってすぐ 彼女を 失いたくないし、また 別の人を 求めたくないからだ】。 NORTONノルトン (Si può sentir di peggio!)(もっとひどいことを 聞けるとは!) MILLミル Ah! che esattezza! Veh che precisione!ああ! なんという 正確! ほら なんという 的確! Ma il miglior capo è poi la conclusione.だが より適切な項目は それから 結末だ。 (segue a leggere)(読み続ける) Arrivandomi ben condizionata, come sopra, colla presente lettera per marca, o con copia legalizzata, a scanso d'equivoci, io m'impegno di far onore alla firma e sposare chi la presenterà, a due giorni data, od anco a vista, come meglio et cet[era], e salutandovi, addio. Io Slook del Canadà.私に よく 条件付けされた女が 届くならば、上述の通り、引換券として この手紙、あるいは 公的に証明された写しをもって、取り違いを避けることのために、私は 保証する 署名から生じる責任を果たすことを そして 結婚することを それ【= 手紙 もしくは その写し】を 提出するであろう人と、2日後払いで、あるいは 一覧払でも、より良いように【≒ 十分に 条件に適った女性が 私の元に到着したならば、上述の通り、別人と間違えることを避けるために、証書であるこの手形 もしくは その公的に証明された写しをもって、私は 署名から生じる支払を履行し、それを 提出する人と、2日以内に、あるいは 即座に どちらか良い方で 結婚することを 保証する】 云々、そして あなたに 挨拶をして、さようなら。私 カナダのスルック。 (ripone la lettera in un libro ch'è sul tavolino)(手紙を 本の中に 戻す それは 小テーブルの上に ある) NORTONノルトン E voi dunque pensate?それで あなたは そういうわけで 考えているのか? MILLミル Di servirlo:彼に 仕えることを【≒ 彼の求めに 応じることを】: anzi l'ho già servito, e appena arrivaそれどころか 私は 既に 彼に 仕えている、そして 彼が 到着するや否や gli faccio presentare la cambiale私は 彼に 手形を 提出させる dalla mia stessa figlia.私自身の娘から。 NORTONノルトン Da Miss Fannì?ファンニ嬢から? MILLミル Da lei: che meraviglia?彼女から だ: なんと 素晴らしいこと ではないか? NORTONノルトン E se non le piacesse?それで もし彼女にとって 彼が 好みの人で なかったら? MILLミル Deve piacerle: oh sì.彼女にとって 彼は 好みの人であるに 違いない: ああ そうだ。 NORTONノルトン Ma, s'ella avesse!...しかし、もし 彼女が 持っているならば!… MILLミル Cosa ha d'aver?彼女が 何を 持っているはずだと? NORTONノルトン Ma...けれども… MILLミル Ma voi mi seccate:まったく あなたは 私を うんざりさせる: sempre in contradizion!いつでも 反対だ! NORTONノルトン Ma...しかし… MILLミル Basta, andate.もうたくさんだ、行きなさい。 (Norton va per partire)(ノルトンは 去ろうとする) E il nuovo computista?..それで 新しい会計係は?… NORTONノルトン Non l'ho ancor stabilito.私は 彼を まだ 決めていない。 MILLミル Fate presto:急ぎなさい: avrem molto da fare in questi giorni.私たちは するべき たくさんのことを 持っている この日に【≒ 今日 私たちは とても 忙しい】。 Ah, che non vedo l'oraああ、なんと 私は 待ち焦がれていることか d'abbracciare il mio caro americano!私の 親愛なる アメリカ男を 抱き締めることを! Oh che raro consorteああ なんと 卓越した 配偶者が tocca a mia figlia! oh che piacer! che sorte!私の娘のものに なることか! ああ なんという 喜びだ! なんという 【幸】運だ! (via)(去る) NORTONノルトン Povera miss Fannì! ma spero ancora気の毒な ファンニ嬢よ! だが まだ 私は 期待している che il caro americano親愛なるアメリカ男が avrà d'Europa fatto il viaggio invano.虚しく ヨーロッパの旅を するであろう 【↑】ことを【≒ 親愛なるアメリカ男の ヨーロッパ旅が 無駄足になるであろうことを】。 (via)(去る) |
Ma, signor, questa lettera スルックの手紙の投函について、オペラの台本では分かりづらいので、原作でどうなっているか紹介する。スルックはミルにまずカナダから5月6日付の手紙で花嫁を発注しており、しかし直接自分で商取引に臨むことを決意し、10日後つまり5月16日に出航、手紙を運ぶ船がロンドンに到着した2日後に彼もロンドンに到着した。そして8月20日のこの日に再びミルに手紙を出して、これから向かうと連絡した。ミルがノルトンから受け取った手紙は、スルックが船から送った手紙。 ミルが 私は 手紙を 千回 読んだ l'ho letta mille volte と言っているのは、カナダから送った手紙、後者ではスルックはまだ渡英するつもりでなかったので、妻を 私に 発送しなさい speditemi una moglie と書いている。 Norton, l'amico e qui: sbarca a momenti: sbarca a momenti おそらくスルックは検疫のために船の中で数日隔離されていて、その間に手紙を送ったのだろう。当時は伝染病予防のために港に到着した船を隔離検疫するのが一般的だった。 Mill chiama uno dopo l'altro i servi, uno dopo l'altro 他の者の後に一人 ≒ 一人ずつ。 Isacchetto! Isacchetto Isacco の縮小形。イザッコ君。 Ah! che intavolamento! intavolare が (交渉などを)始める,取りかかる の意味なので、intavolamento は (交渉などの)取り掛かり という意味だと思われる。スルックがまるで商談のように妻探しを求めていることを指す。 Qualunque sia la dote non serve. フェデリーチの原作では、スルックからの手紙に Quanto alla dote , accetto tutto: su questo punto sono indifferente... 持参金に関しては、私は すべてを 受け入れる: この点について 私は 無関心である… とある。オペラの台本での accetto tutto は、おそらくミルが持参金を出さないと申し出たことに対して、スルックが応じたということだろう。 colore omogeneo, colore omogeneo は一般的に 均質な色 つまり ムラのない色 の意味で用いられるが、ここでは女性の見た目について述べられているので、同種の色 つまり 肌が白い,白人 の意味で理解した。この箇所はフェデリーチの原作にはない。 item iem ラテン語 同様に。事柄を列挙する時に用いられる。これも商業で良く用いられる用語。またスルックが教養の高い人物であることが伺われる。 non vorrei restarne senza ne = di lei。つまり non vorrei restare senza di lei 彼女なしで いたくない。 e ricorrere a nuova provvista. provvista 在庫,備え。この nuovo は(新しい ではなく) 別の。nuova provvista 別の在庫。この ricorrere は(手段に)訴える。ricorrere a nuova provvista で 別の在庫に訴える、つまり 別の品を求める といった意味になる。なお provvista には商業用語で 引当金 の意味もあり、それで訳せないこともない。 io m'impegno di far onore alla firma fare onore alla firma 署名から生じる責任を果たす,署名した以上支払を履行する。ミルの読んだ手紙にあるように、スルックは花嫁を受け取ると同時にそれに対する支払をする契約をしている。 a due giorni data, 商業用語で、a ... giorni data …日後払い。 od anco a vista, a vista すぐに,即座に の意味だが、商業用語では 一覧払い つまり手形を提示するとその時点で支払いが発生することを意味する。 Da lei: che meraviglia? この che meraviglia? は普通の疑問文ではなく、感嘆文 Che meraviglia! なんて素晴らしいのだ! を疑問の形で言っていると理解した。 Ma, s'ella avesse!... もし 彼女に 恋人がいる場合は と言いかけている。 Ma voi mi seccate: ミルはノルトンに対して常に2人称単数敬称 voi を用いている。 |
| [N. 2] Duetto [Fannì-Edoardo] Fannì Edoardo |
Andante grazioso 2/4 A major |
(SCENA Ⅲ)(第3場) (Fannì ed Edoardo, presi a mano amorosamente)(ファンニと エドワルド、愛情を込めて 手を取【り合】って) EDOARDOエドワルド Tornami a dir che m'ami,繰り返して 言いなさい 君は 私を 愛していると、 che sarai fida ognor.君は ずっと 誠実であるであろう と、 Calma, mio bene, i palpiti静めなさい、私の最愛の人よ、動悸を d'un barbaro dolor.酷い苦悩の。 FANNÌファンニ Sarò qual più mi brami,私は 君が 私に 最も 熱望している ものに なるだろう、 quale t'amai finor.私が 今まで 君を 愛した ように。 Per te m'accese l'anima,君に 【↓ 愛の神は】 私の魂を 燃やした a te la serba amor.愛の神は 君に それを 取っておいている【≒ 】。 EDOARDOエドワルド E sarai mia...それで 君は 私の女に なるだろう… FANNÌファンニ Lo spero.私は そのことを 期待している。 EDOARDOエドワルド E allor felici!...そして その時には 【私たちは】 幸せだ!… FANNÌファンニ Oh quanto!ああ どれほどに! FANNÌ E EDOARDOファンニ と エドワルド Qual delizioso incantoなんと うっとりさせるような 魅惑 è un corrisposto amor!なのだ 報いられた 愛は! |
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| Allegro 4/4 A major |
Propizio accolga amore情け深く 愛の神が 受理するように il nostro giuramento;私たちの 誓いを; e renda alfin contentoそして 最後に 満足を【≒ 喜びを】 与えるように il tenero mio cor.愛情のこもった 私の心に。 |
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| [Recitativo] Dopo il Duetto [Fannì-Eduardo] |
4/4 (C major) |
EDOARDOエドワルド Sì, cara mia, speriam: fra pochi giorniそうだ、私のいとしい女よ、期待しよう: 数日中に arriverà mio zio: tutto m'aspetto私の叔父が 到着するだろう: 私は すべてを 期待している dall'amor suo per me.私への 彼の愛から。 FANNÌファンニ Ma questo uomoしかし この男は ch'oggi aspetta mio padre! Certi suoiその者は 今日 私の父が 待っている! なにがしかの 彼の equivoci discorsi...はっきりしない話を【≒ 今日 私の父が 待っている 男がいる! 彼について 何か よく分からない 話を していた】… EDOARDOエドワルド E quando noiそして 私たちが siamo d'accordo!...同意した 【↑】時に!…n(SCENA Ⅳ)(第4場) (Norton e detti)(ノルトンと 前の場の人たち) NORTONノルトン Avete voi veduto君たちは 会ったかい il signor Mill?ミル氏に? FANNÌファンニ No ancor: cos'è avvenuto?いいえ まだ: 何が 起きたのか? Perché così agitato?どうして それほどに 取り乱しているのか? NORTONノルトン Brutte nuove:悪い知らせだ: Però non vi smarrite.けれども 途方に暮れるでない。 Voi siete fatta sposa.あなたは 花嫁に なった。 FANNÌファンニ Oh Dio!ああ 神よ! EDOARDOエドワルド Che dite?あなたは 何を 言うのか? FANNÌファンニ Ma come?けれども どうやって? EDOARDOエドワルド E chi è costui?そして その男は 誰なのか? NORTONノルトン C'è, c'è...【ここに】 ある、ある… (cerca nel libro e trova la lettera che porge ad Edoardo)(本の中を 探す そして 手紙を 見付ける それを エドワルドに 手渡す) leggete...読みなさい… il contratto nuzial, e poi ridete.結婚の契約書を、そして それから 笑いなさい。 (Leggono tutti e due dando segni d'affanno e rabbia)(二人とも 読む 不安と 怒りの 様子を 見せて) FANNÌファンニ Oh mio Edoardo!ああ 私のエドワルドよ! NORTONノルトン Ah, che ne dite!ああ、そのことについて 君たちは 何を 言うのだ! EDOARDOエドワルド Io fremo:私は 震える: ed in questa maniera?...そして このやり方で? NORTONノルトン All'uso proprio di negozio, e come商取引の 特有の習慣だ【≒ まさに 商取引の流儀だ】、そして まるで se Miss fosse una ballaお嬢様は 梱包された荷物のようだ di mercanzia.商取引の。 EDOARDOエドワルド Ma questa volta fallaしかし 今回は 間違いだ la sua speculazion.彼の取引は。 FANNÌファンニ Non posso ancora私は まだ credere che mio padre arrivi a questo信じることが 【↑】できない 私の父が この segno a sagrificarmi.程度 【↑】に【≒ これほどに】私を 犠牲にするに【↑】するに至る 【↑】とは。 SCENA Ⅴ第5場 (Mill di dentro, e detti)(ミル 内部から【≒ 舞台裏から】、そして 前の場の人たち) MILLミル Presto, presto:急いで、急いで: FANNÌファンニ Ah, ch'è lui! se ti vede!ああ、彼だ! もし 彼が 君を 見るならば! MILLミル (più vicino)(より 近くで) pronti tutti.皆 準備に。 EDOARDOエドワルド Che far!どうしよう! FANNÌファンニ Poveri noi!哀れな 私たち! MILLミル (escendo)(入って) Norton... Fannì... qua ognun...ノルトン… ファンニ… ここに 皆… (vedendo Edoardo e sospettoso e con impeto)(エドワルドを見て そして 疑ってかかって そして 激情をもって) Chi siete voi?あなたは 誰だ? che fate? che volete? in questa casa?何を しているのか? 何を 望んでいるのか? この家で? con qual fin? con qual vista?どのような目的で? どのような 見ることで【≒ どのような 意図で】? FANNÌファンニ (confusi)(【二人とも】 混乱して) Egli!...彼は!… EDOARDOエドワルド Signore...旦那様… NORTONノルトン È il nuovo computista.彼は 新しい 会計係だ。 MILLミル (guardandolo)(彼を じろじろ見て) Troppo giovane... e poi troppo moderno.あまりに 若い… そして その上 あまりに 当世風だ。 NORTONノルトン Peggio pel suo carattere.彼の性格には いっそう悪い。 EDOARDOエドワルド Sono pronto私は 用意がある a uniformarmi agli usi vostri.私を あなたの習わしに 合わせる【≒ 私は いつでも あなたの流儀に 合わせることができる】。 MILLミル Bravo!素晴らしい! Ha una fisonomia che... non c'è male:彼は 顔付きを 持っている それは… 悪くない: Norton v'istruirà.ノルトンが 彼を 教育するだろう。 FANNÌファンニ (Respiro.)(私は 息をつく【≒ ほっとした】) MILLミル Intantoとりあえず tieni, mia figlia cara: fra momentiさあ、私のいとしい娘よ: 瞬間の間に【≒ すぐに】 arriverà persona forastiera,外国の人物が 来るだろう、 gli farai buona ciera, e gli darai君は 彼の 美味しい 蜜に なりなさい、そして 彼に 手渡しなさい queste lettere...この手紙を… (Mill prende la lettera dal libro, la piegerà, e, cavandone un'altra, la dà a Fannì)(ミルは 本から 手紙を 取る、それを たたむだろう、そして、別のものを 引き抜いて、それを ファンニに 手渡す) FANNÌファンニ E chi è? Ma io... ma poi...それで 彼は 誰なのか? しかし 私は… けれども それから… MILLミル La tua fortuna è fatta... ah! la carrozza...君の運命は 決まった… ああ! 馬車だ… egli è qua: vo a incontrarlo; servitori.彼が ここに いる: 私は 彼を 出迎えたい; 召使いたちよ。 (escono Servi e Agenti)(使用人たちと 職員が 出る) abbasso... qua... su... fuori. Ah, lo vedrete...下に… ここに… 上に… 外に。ああ、君たちは 彼に 会うだろう… Fannì, allegra!ファンニよ、陽気に! (parte co' servi allegrissimo)(去る 使用人たちと共に この上なく陽気に)(parte co' servi allegrissimo) FANNÌファンニ (fremente)(震えて) Ah, soffrir non so...ああ、私は 耐えることが できない… NORTONノルトン Prudenza!思慮深さを【≒ 落ち着いて】! EDOARDOエドワルド Lascia operare a me.私に 行動させなさい【≒ 私に 任せなさい】。 FANNÌファンニ Ma che farai?けれど 君は 何を するつもりなのか? EDOARDOエドワルド Fidati a un cor che t'ama, e lo vedrai.信頼しなさい 心に それは 君を 愛している、そして 君は それを【= 心を】 見るだろう。 |
arriverà mio zio: tutto m'aspetto この zio 叔父 は、原作に登場するオドワルド・ヴェストの名残だと思われる。彼はテオドリコ(オペラでのエドワルドに相当)の叔父で、原作では重要な役回りである。⇒ 原作、台本。《結婚手形》の物語は喜劇の原則どおり一日で終わり、数日中 fra pochi giorni に来るはずの叔父は現れない。 dando segni d'affanno e rabbia) dare segni di ql.co. ―の気配を見せる,―の様子を見せる, se Miss fosse una balla balla 輸送用に布で包まれたり縄で結わかれたりした荷物。 credere che mio padre arrivi a questo / segno a sagrificarmi. a questo segno これほどに con qual fin? con qual vista? vista は視力,視界 などの意味があるが、この con qual vista? は 何を見に来たのか というような意味だと思われる。 tieni, mia figlia cara: fra momenti tieni は tenere 保つ の命令形2人称単数親称 だが、このように2人称単数親称に対して呼びかける場合は ほら,そら,ねえ といった意味になる。フランス語の tiens < tenir と同様。 (escono Servi e Agenti) agente は 代理人(英語の agent) などの意味だが、ここではこれが動詞 agire 行動する,実行する の現在分詞と同形であることから 働く人 つまり 使用人 と同様の意味で用いられていると理解し、職員 で訳した。 abbasso... qua... su... fuori. Ah, lo vedrete... abbasso から fuori までは使用人たちへの指示。 |
| N. 3 Cavatina Slook Slook Fannì Clarina Edoardo Norton |
Andante grazioso 2/4 A major |
(SCENA Ⅵ)(第6場) (Vari Servitori che precedono Slook, vestito a capricciosa caricatura, ma grave: altri gli si inchinano: egli entra imbrogliato, difendendosi dagli Agenti e da Mill che cercano levargli il cappello e il bastone, e vogliono baciargli le mani, che ritira)(いろいろな 召使いたち その者たちは スルックに 先行する、【スルックは】 風変わりな 物笑いの種 風に 服を着て【≒ 奇妙で滑稽な 服を着て】、しかし 威厳のある: 彼は もつれて 入る、職員たちと ミルから 身を守って その者たちは 彼の 帽子とステッキを 取り除こうと 努める、そして 彼の両手に キスしようとする、それらを【= 両手を】 彼は 引っ込める ) SLOCKスルック Grazie... grazie...ありがとう… ありがとう… Troppo presto, adagio, dico:速すぎる、ゆっくりと、私は 言う: quieti un po', che complimenti!少し 静かに、なんという 挨拶だ! M'imbrogliate, buone genti:君たちは 私を こんがらがらからせている、親切な人々よ: pian vi dico, piano, fermi, piano.ゆっくりと 君たちに 私は 言う、ゆっくりと、じっとしていて、ゆっくりと。 Non vo' avanti... son confuso...私は 先へ 【進むのを】 望んでいない… 私は 混乱している… so ancor io d'Europa l'uso.私も ヨーロッパの風習を 知っている。 Flemma addunque, ed incomincio,だから 冷静さを、それから 私は 始める、 come va, a complimentar.それが 行われるように、祝うのを【≒ そうしたら 私は 君たちの習わしのように 挨拶を始めよう】。 (si ritira alla porta, si rimette il cappello in testa, e poi se lo leverà inchinandosi con semplice caricatura)(扉に 後ろへ下がる、帽子を 頭に 戻す、そして それから それを 持ち上げる お辞儀して 素朴な 物笑いの種で【≒ 気取らずに しかし 笑いを誘うように】) FANNÌ, CLARINA, EDOARDO E NORTONファンニ,クラリーナ,エドワルド と ノルトン (Che figura! che maniere!(なんという 容姿だ! なんという 物腰だ! Mi fa ridere e arrabbiar!)彼は 私を 笑わせる そして 怒【らせる】!) MILLミル (Che innocenza! che maniere!(なんという 純真だ! なんという 物腰だ! Mi fa ognor più innamorar!)彼は 私を いつでも さらに 魅了させる!) SLOCKスルック Prima il padron di casaまず 家の主人に saluto, bacio, abbraccio.私は 挨拶する、キスをする、抱擁する。 Lo stesso cordialmente,同じことを 心から、 colle signore io faccio...貴女たちに 私は する… (va per abbracciarle e si ritirano)(彼女たちを 抱擁しようとする そして 彼女たちは 後ろに下がる) Come? non s'usa forseどうしてか? ことによると 【↓】抱擁する 習慣がないのか le donne qui abbracciar?女性たちは ここでは? Ohimè! che usanza incomoda!ああ! なんという やっかいな 慣習だ! che brutto conversar!なんという ひどい つきあいだ! |
che brutto conversar! この conversare は 動詞 会話する,お喋りする が名詞化したもので、conversare には つきあう,交際する の意味もある。 |
| Più mosso 4/4 C major |
Benedetta sia la nostra神の祝福を受けるように 私たちの innocente libertà!純真な自由が! Sanfason tra noi si mostra格式張らずに 私たちの間で 見せよう cuor aperto, amica faccia:開けっぱなしの心を、友人にふさわしい 顔を: sì si bacia, sì s'abbraccia,そうだ キスをしよう、そうだ 抱擁しよう、 né s'offende l'onestà.誠実さが 傷つけられないように。 |
Sanfason tra noi si mostra sanfason フランス語、正しくは sans façon 格式ばらないこと,気取らずに。スルックがここでフランス語を用いているのは、北米のかなり部分が長くフランスの植民地だった(ヌーベルフランス)ことを思い起こさせる。 |
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| (Più mosso) 4/4 C major |
Donne belle, donne care,美しい女性たちよ、親愛なる女性たちよ、 più buonine per pietà.お願いだから より 心優しく。 Non mi fate ritornare私を 戻らせるでない senza gusto in Canadà.楽しみなしに【≒ 失意のうちに】 カナダに。 Benedetta sia la nostra神の祝福を受けるように 私たちの innocente libertà!純真な自由が! |
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| [Recitativo] Dopo la Cavatina di Slook |
4/4 (C major) |
SLOOKスルック Sicchè dunque istruitemi: non voglioそれでは さあ 私に 教えなさい: 私は 望んでいない far cattive figure: a quel che vedo悪い印象を 与えることを: 私が見るものにおいては in Europa v'è in tutto affettazione.ヨーロッパでは すべてにおいて 気取りが ある。 FANNÌファンニ (Caro l'american!)(親愛なる アメリカ人だこと!) MILLミル Dite benone.あなたは たいへんよく 言っている【≒ あなた言うことは もっともだ】。 Viva pure la bellaどうぞ 万歳 素晴らしい semplicità d'America!アメリカの純真さ! SLOCKスルック (segnando Fannì)(ファンニを 指差して) Chi è quella誰なのか あの piccante signorina?辛い【≒ ピリッとした ≒ 魅力的な】お嬢さんは? MILLミル Vi pare? Essa ha una lettera彼女は あなたに 【そう】 思われるか? 彼女は 手紙を 持っている per voi di raccomandazione.あなたへの 推薦の【≒ 彼女は あなたへの 推薦状を 持っている】。 SLOCKスルック La servirò con tutto il cuore.私は 彼女に 奉仕しよう すべての心で。 EDOARDOエドワルド (Io fremo.)(私は 震える。) FANNÌYファンニ (Chetati.)(落ち着きなさい。) SLOCKスルック E voi per me trovaste ancoraそして あなたは まだ 見つけていなかったのだ 私について nessun capo a proposito!なんの 相応しい頭も【≒ あなたは まだ 私について 適切な考えを 見いだせなかったのだ】! MILLミル Anzi speroいやむしろ 私は 期待している che appena voi la mostra visto avrete,あなたが 商品見本を 見るであろうや否や、 tutto conchiuderete.あなたは すべてを まとめるだろう【≒ あなたは 商取引を 成立させるだろう】。 SLOCKスルック Tanto meglio!なおさら結構! Un bravo negoziante優秀な商人は dev'esser spicciativo.迅速でなければ ならない。 MILLミル Ora spicciate今こそ 手早く済ませなさい là quella signorina: Norton, accompagnate,あのあそこのお嬢さんを: ノルトンよ、連れ立って行きなさい、 il computista a' suoi doveri.会計係を 彼の職務に。 (poi sorridendo a Slook)(それから スルックに 微笑んで) Servitela, mi preme.彼女に 奉仕しなさい、それが 私には 気にかかっている。 SLOCKスルック Volontieri.喜んで。 MILLミル (segnando alla destra)(右の方に 指さして) È quello il vostro appartamento.あれが あなたの居室だ。 (parte)(去る) SLOCKスルック Grazie.ありがとう。 EDOARDOエドワルド (piano e presto)(小声で そして 急いで) (Oh Fannì! in quale stato mai son io!)(ああ ファンニよ! 私は いったい どのような状況に あるのだ! NORTONノルトン (ad Edoardo)(エドワルドに) Andiam.行こう。 EDOARDOエドワルド (stringendo forte la mano di Slook, e co' denti stretti)(スルックの手を 強く 握り締めて、そして 締まった歯をして【≒ 顔をこわばらせて】) Signor americano, addio.アメリカ男氏よ、さようなら。 (parte con Norton)(ノルトンと共に 去る) SCENA Ⅶ第7場 (Slook e Fannì)(スルックと ファンニ) SLOCKスルック dietro ad Edoardo)(エドワルドの後ろで) Servo! proprio in Europaごきげんよう! まったく ヨーロッパでは usan dei complimenti strani, e nuovi.彼らは 奇妙な挨拶を 使う、そして 新奇な【挨拶を】。 FANNÌファンニ (Ecco il momento decisivo.)(さあこれは 決定的な瞬間だ。) SLOCKスルック Intanto,ともあれ、 sbrighiam la signorina;お嬢さんを 手早く片付けよう。 (si ferma a guardarla giovialmente)(彼女を にこやかに 見るために 立ち止まる) ha un certo che... così... proprio è bellina.彼女は なにか… あのように… まさに 彼女は かわいい。 FANNÌファンニ (Io non vo' certo esser la prima.)(私は もちろん 最初の女に なりたくない【≒ もちろん 私から 先に 話しかけたくはない】) SLOCKスルック Tace!彼女は 黙っている! che sia decenza! Cominciamo noi.なんという 慎みだろう! 私たちは 【対話を】 始めよう。 (se le accosta e riverisce)(彼女に 近付く そして 挨拶する) Servo, gentile signorina!ごきげんよう、愛らしい お嬢さん。 FANNÌファンニ (con riverenza, si tira in là, a occhi bassi)(お辞儀をする、そこから 身を引く、目線を下げて) Serva!ごきげんよう! SLOCKスルック Chi siete? Che volete?あなたは 誰なのか? あなたは 何を 望んでいるのか? FANNÌファンニ Leggete, e lo saprete.読みなさい、そうすれば あなたは そのことを 分かるだろう。 (gli dà le lettere)(彼に 手紙を 差し出す) SLOCKスルック Concisa: brava!簡潔だ【≒ 話が早い】: 素晴らしい! (legge e si compiace)(読む そして 喜ぶ) FANNÌファンニ (Io sono in convulsione.)(私は 激発の中にいる【≒ 私は 心が 破裂しそうだ】。) SLOCKスルック (dopo letto, con effusione)(読んだ後、愛情の迸りをもって) Ma bravo, sir Tobia! bravo, benone!まったく 素晴らしい、トビア氏よ! 素晴らしい、 たいへんよい! (con galanteria)(いんぎんをもって【≒ 礼儀正しく】) Mi fareste la graziaあなたが 私に 寛容を なしてくれるのなら d'avvicinarvi un po'?少し 近付くという【≒ よろしければ 少し 近付いて いただけませんか】。 FANNÌファンニ Così sto bene.このようで 私は よい【≒ これで 私は 結構です】。 SLOCKスルック Ma non io quanto basta: e quegli occhiettiしかし 私は 適量ではない【≒ けれども 私には 不十分だ】:そして その目は sempre bassi!..常に 伏せている!… FANNÌファンニ Decenza.慎みが。 SLOCKスルック (subito)(すぐさま) Volea dirlo...私は そのことを 言いたかった… Sicché dunque... sapreteさて それでは… あなたは 知っているのか già quello che contengonoもう 含んでいるものを queste lettere?この手紙が【≒ あなたは この手紙の内容を もう 知っているのか】? FANNÌファンニ No!いいえ! SLOCKスルック No! (non ci scappaいいえ だって! (彼女から 漏れない un accento di più.) Dunque ascoltate,口調が 余分に【≒ 彼女は 余計なことを 口に出さない】。)それでは 聞きなさい、 c'è qualche cosa anche per voi.【この手紙には】 何か あなたに関することも ある。 FANNÌファンニ Spicciate.手早くすませなさい。 SLOCKスルック (legge)(読む) Signore Slook: v'abbiamo provveduto la moglie dell'età qualità, condizioni ricercate, con tutti gli attestati. Essa è l'unica nostra figlia Fannì, che vi esebirà la presente col confronto, e contrassegno della vostra: pagate a lei dunque a vista, o due giorni data, com'è di vostro comodo, i debiti, e obbligazioni che avete incontrati. In fede. Tobia Mill. スルック氏よ: 私たちは 妻を用意した 良質の年齢の、求められた条件【の】、すべての証明書と共に。彼女は 私たちの 唯一の娘 ファンニだ、その者は 本状を 提出するだろう 【あなたの】確認付きの、そして あなたの証明付きの: したがって 彼女に対して 支払いなさい 一覧払で もしくは 2日後払いで、あなたの好都合であるように、債務を、そして債務を それを あなたは 直面した【≒ 私たちは あなたに 良い年齢の、あなたが求める条件に叶った妻を、あらゆる証明書を付けて 用意した。彼女は 私たちの一人娘 ファンニである、彼女は あなたに あなたが確認した、あなたの証明済みの この手紙を 提出するだろう: そうしたら 彼女に対して 即座に、あるいは2日後に どちらでも都合の良い方で あなたが負った 債務を 支払うように】。誠実に。トビア・ミル。 FANNÌファンニ (Che avvilimento!)(なんという 落胆だ!) SLOCKスルック Ebben cosa ne dite?それで それについて 君は 何を 言うのか? FANNÌファンニ (Ah qui ci vuol coraggio!)(ああ ここで 度胸が 必要だ!) E voi cosa pensate?それで あなたは 何を 考えているのか? SLOCKスルック Far onore alla firma.署名から生じる支払を 履行することを。 FANNÌファンニ (con forza)(力をもって【≒ 強く】)) Ah, non lo fate:ああ、するでない: ed anzi rinunziateそして むしろ 取り下げなさい alla vostra cambiale.あなたの手形を。 SLOCKスルック Perché?どうしてか? FANNÌファンニ (con foco)(火をもって【≒ 熱を込めて】) Perché non sonoなぜなら io la mercanzia per voi,私は あなたへの 商品では 【↑】 ないからだ、 né vi può far onore.また それは あなたにとって 名誉に なり得ない。 SLOCKスルック Anzi non vidi mai capo migliore.いやむしろ 私は 一度も 見【たことが】ない より優れた 頭を。 |
far cattive figure: a quel che vedo fare cattiva figura 悪印象を与える,みっともない姿をさらす (Caro l'american!) これは皮肉と理解した。 che appena voi la mostra visto avrete, / tutto conchiuderete. これも商業の表現を用いている。conchiudere = concludere (商談や交渉などを)まとめる。 e co' denti stretti) denti stretti は歯を食いしばった状態を表す。この co' denti stretti は顔がこわばっている様子を表す。 Servo! proprio in Europa この servo は丁寧な挨拶。Sono il servo vostro を短縮したようなもの。これ以降に出て来る場合も同様。ごきげんよう で訳した。これ以降でも同様。 che vi esebirà la presente col confronto, この女性形の presente は、商業用語で 本状、つまり この書類,手紙 を意味する。 conforto は一般的に 慰め だが、この場合は 確認。動詞 confortare に 確認する の意味もある。 |
| [N. 4] Terzetto Fannì Edoardo Slook |
Maestoso 4/4 D major |
SLOCKスルック Darei per sì bel fondo私は 与えたいのだが これほどに 素晴らしい 株式に quanto possiedo al mondo:私が 世界で 所有している すべてのものを: tutti impiegar vorrei,私は すべて 使いたいのだが、 i capitali miei:私の資本を【≒ 私の財産を】: e un cento almen per centoそして 少なくとも 100パーセント ne spero di piacer.の喜びを そのことから 私は 期待している。 FANNÌファンニ Cercate un altro fondo;他の株式を 探しなさい、 ve ne son tanti al mondo!それの 多くのものが 世界に ある! Il mio non è per voi,私のものは あなたのためのでは ない、 fallir potreste poi:それから あなたは 破産するかもしれないのだが: in libertà lasciatemi,私を 自由に しなさい、 vi prego per piacer.どうか 私は あなたに 懇願する。 SLOCKスルック Ma, perché ciò, spiegatevi.だが、なぜ そのことを、説明しなさい【≒ どうして そんなことを 言うのか、話しなさい】。 FANNÌファンニ Vorrei spiegarmi... ma!私は 説明したいのだが… けれども! SLOCKスルック Vi spiace il matrimonio?あなたには 結婚は 気に入らないのか? FANNÌファンニ Mi piacerebbe... ma!...私に 気に入りたいのだが… けれども! SLOCKスルック Son io forse un demonio?私は ことによると 悪魔かな? FANNÌファンニ Non dico questo... ma, ma!...私は そのことを 言わない… けれども、けれども!… |
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| Allegro 4/4 D major |
SLOCKスルック (con impeto)(激情をもって) Per carità, signora,お願いだから、ご婦人よ、 lasciamo questi ma.その けれども を 止めよう。 FANNÌファンニ Voi non sapete ancoraあなたは まだ 分かっていない cosa vol dir quel ma.この けれども が 何を 言いたいのか。 SLOCKスルック Sposatemi, e mi basta,私と 結婚しなさい、それで 私には こと足りる。 sarà quel che sarà.なるようになるだろう。 FANNÌファンニ Se il mio pregar non basta,もし 私の懇願が 十分でないならば、 so cosa ci vorrà.私は 分かっている 必要なことを【≒ 私は 何をすべきか 分かっている】。 SLOCKスルック Dunque io sono un demonio?それでは 私は 悪魔かな? FANNÌファンニ Non dico questo... ma, ma!...私は そのことを 言わない… けれども、けれども!… |
Per carità, signora, スルックはそれまでファンニを signorina お嬢さん と呼んでいたが、ここで signora に変えている。 |
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| Andantino 6/8 B-flat major |
(SCENA Ⅷ)(第8場) (Edoardo entra con frenata ira, e sempre con sarcasmo, e detti)(エドワルド 入る 抑えられた怒りを もって、そして 常に 皮肉を もって、そして 前の場の人たち) EDOARDOエドワルド (seguendo Fannì)(ファンニに 続いて) Quell'amabile visino,その可愛らしい顔を、 quell'occhietto amorosetto,その 恋心を誘う 目を、 quel complesso sì perfettoこれほどに 申し分ない その 総体を e di grazie, e di beltà,そして 愛らしさの、そして 美しさの【≒ 愛らしさと、美しさが これほどに 完全に 融合した その すべてを】、 (marcato)(はっきりと) lo creò per altri amore,それを 他の人のために 愛の神は 創り出した、 caro mio, per voi non fa:私の 親愛なる男よ、あなたのために していない【≒ 【スルックに】 旦那さん あなたのためには 創り出していない 】。 vi consiglio, ma di core,私は あなたに 進言する、しかし 心から、 |
lo creò per altri amore, この altri は 代名詞 他の人。この amore は 愛の神。 |
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| Allegro 4/4 B-flat major |
(prendendolo per mano, e stringendolo fortemente)(彼の片手を 取り、そして それを 力強く 握って) ritornare al Canadà.カナダに 帰ることを vi consiglio, ma di core,私は あなたに 進言する、しかし 心から、 ritornare al Canadà.カナダに 戻ることを。 SLOCKスルック Ma, signor, che c'entra lei,けれども、貴君よ、何が あなたと 関係があるのだ、 dica un po', ne' fatti miei!少し 言うように、私の行為について! FANNÌファンニ Ei lo fa per compassione彼は それを している 同情から delle amiche sue persone.友人に相応しい 彼の 人柄の。 EDOARDOエドワルド Perché molto m'interessaなぜなら それは 大いに 私の 興味を引く からだ e per voi, per me, e per essa.あなたについても、私について、彼女についても。 SLOCKスルック (alterato)(むっとして) Ma quest'è una mercanziaしかし これは 商品だ di mia tutta proprietà.私の 完全な 所有権の【≒ 彼女は 私が 完全に 所有する 商品だ】。 Vado a dirlo a sir Tobia,私は このことを トビア氏に 言いに行く、 e ragion men renderà.そして 彼は それについて 私に 言い分を 与えるだろう。 |
Ma, signor, che c'entra lei, entrarci ―と関係がある。 |
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| Allegro 4/4 D major |
EDOARDOエドワルド (fiero)(高慢に) Guai a voi se gli parlate!あなたには ただではすまないぞ もし あなたが 彼に 話すならば! FANNÌファンニ Con prudenza, e simulate.分別を もって、そして 【冷静を】 装いなさい。 SLOCKスルック Ma quest'è soverchieria.しかし これは 横暴だ。 EDOARDOエドワルド È una gran premura mia.それは 私の 重大な 緊急な用事だ【≒ それは 私にとって 重大な事態だ】 SLOCKスルック Voi chi siete?あなたは 誰なのか? EDOARDOエドワルド Lo saprete.あなたは それを 知るだろう。 SLOCKスルック (a Fannì)(ファンニに) Dite voi...あなたが 言いなさい… FANNÌファンニ Già inteso avete.あなたは 既に 分かった。 SLOCKスルック La cambiale parla chiaro.手形が 明解に 語っている。 EDOARDOエドワルド Rinunziarla, amico caro.それを【= 手形を 女性名詞単数】を 放棄しなさい、親愛なる友よ。 SLOCKスルック (con fuoco)(火をもって【≒ 熱を込めて】) Rinunziar? Son Slook... e poi...放棄する だって? 私は スルックだ… そして それから… EDOARDOエドワルド (fiero)(高慢に) Non parlate: guai a voi!話すでない: あなたには ただではすまないぞ! SLOCKスルック (turbato)(動揺して) Minacciate!あなたは 脅している! FANNÌ E EDOARDOファンニ と エドワルド Sì, tremate.そうだ、震えなさい。 SLOCKスルック Ma perché? Che sarà?だが どうして? どうなるのだろう? |
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| Allegro mosso 3/4 D major |
FANNÌファンニ (prestissimo)(極めて 迅速に) Non mi piacete, non pretendete,あなたは 私には 気に入らない、強要するでない、 non vo' sposarvi. vi pentirete.私は あなたと 結婚したくない、あなたは 後悔するだろう。 se questa mano voi stringereteもし この手を あなたが 握り締めるであろうならば saprò cavarvi quei brutti occhiacci.私は あなたの その 嫌な 目を 引き抜くことが できるだろう。 un vero inferno si schiuderà.本当の地獄が 開くだろう。 EDOARDOエドワルド (fiero)(高慢に) La rinuziate, a me cedete,それを 放棄しなさい、私に 屈しなさい、 guai se parlate, la rinunziate!ただではすまないぞ もし あなたが 話すならば、彼女を 断念しなさい。 Io saprò pungervi ben le vene,私は あなたの血管を うまく 刺すことが できるだろう、 vi mando in lettera al Canadà.私は あなたを 手紙で カナダに 送る。 Vi pentirete.あなたは 後悔するだろう。 Se la cambiale non rinunziateもし あなたが 手形を 放棄しないならば vi mando in lettera al Canadà.私は あなたを 手紙で カナダに 送る。 Io saprò pungervi ben ben le vene,私は あなたの血管を うまく 刺すことが できるだろう、 Se voi tardate ad imbarcarviもし あなたが 乗船するのに 遅れるならば saprò ben pungervi ben le vene.私は あなたの血管を うまく 刺すことが できるだろう。 SLOCKスルック (spaventato, e confuso)(ぎょっとして、そして 混乱して) Oh me meschino, povero Slook!ああ 私は かわいそうな人だ、哀れな スルックよ! Grazie signore; oh che buon core!ありがとう 貴君よ;ああ なんと 善良な 心だ! Cavarmi gli occhi! misericordia!...私の目を 引き抜く だって! 哀れみを!… Oh, che demoni son questi qua!ああ、これらの ここの人たちは なんと 悪魔なことか! Grazie signore, non dubitate...ありがとう 貴君よ、疑うでない… (partono)(【3人とも】 去る) |
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| [Recitativo] Dopo il Terzetto |
4/4 (C major) |
SCENA Ⅸ第9場 (Norton e Clarina)(ノルトンと クラリーナ) NORTONノルトン Non si farà: non si farà, sta' certa,【そうは】 ならないだろう:ならないだろう、確実である questo bel matrimonio.この 素晴らしい 結婚は。 CLARINAクラリーナ E sir Tobiaけれど トビア氏は ordina intanto, fa i preparativi,今のところは 命じている、彼は 準備をしている、 con la speranza che l'americano期待をもって アメリカ男を accetti miss Fannì.ファンニ嬢が 受け入れる 【↑】ことを。 NORTONノルトン Lo spera invano.彼は そのようなことを 虚しく 期待している【≒ 彼が そのようなことを 期待しても 無駄だ】。 Sono tante le piegheたくさんの罠が tese al povero diavolo, son tali哀れな悪魔に 仕掛けられたので、それらは あまりに i timori, i sospetti a' quali è in preda,彼が とりつかれる ところの 不安である、疑いである 【↑】ので、 che disperato il povero selvaggio哀れな 未開人は 打ちひしがれて del Canadà tornerà a fare il viaggio.カナダの旅をしに 帰るだろう。 CLARINAクラリーナ Ma si può dar pazziaしかし 狂気が 起きる かもしれない peggior di quella del signor Tobia!トビア氏のそれ【= 狂気】よりも ひどい! NORTONノルトン L'americano è semplice, ha credutoアメリカ男は 単純だ、彼は 信じていた che le spose in Europaヨーロッパの花嫁は sieno manifatture da negozio:商店の製品だと: e in parte non s'inganna.そして 部分的には 彼は 間違っていない。 CLARINAクラリーナ Io vado intantoとりあえず 私は 行く presso Miss: tu sta attento dal tuo canto:お嬢様のそばに: 君は 君の側から 注意しなさい: io sono interessata私は 興味を持っている per questi amanti: poveretti!この 恋人たちに: かわいそうな人たち! Dopo tanto soffrir, e tanti stentiたくさんの 苦しむことの後に、そして たくさんの困難【の後に】 al fin li vorrei veder contenti.最後には 私は 見たいのだが 彼らが 満足する【≒ 喜んでいる】のを。 |
Sono tante le pieghe この行は、初演時の出版譜をはじめ多くの場合で Sono tanti li fili たくさんの糸が となっていた。次行の tese &l tendere は糸などを ぴんと張る という意味である。一方クリティカルエディションでは、(併載している台本では Sono tanti li fili であるにもかかわらず0-)楽譜では Sono tante le pieghe を採用している。pieghe < piega 。piega は 折った部分,曲がったところ,皺,傾向 といった意味で、このままでは意味が通じない。クリティカルエディションでは、この pieghe は、フランス語の piège 罠,策略 をイタリア語化した語と推測している。フランス語の tendre un piè ge は 罠を仕掛ける の意味で、イタリア語の tendere にも (罠などを)仕掛ける の意味がある。 |
| [N. 5] Aria Clarina Fannì Clarina |
Allegro 4/4 B-flat major |
CLARINAクラリーナ Anch'io son giovine,私も 若い、 anch'io lo provo:私も そのことを 感じている: spesso al medesimoしばしば 同じ caso mi trovo,状況に 私は ある、 e so per praticaそして 私は 経験から 知る che cosa è amor.愛が 何であるか。 Allor che s'ama愛する時には di vero affetto,真の情愛で、 sempre si bramaいつでも 熱望される il caro oggetto,愛する 対象が、 ei sol può renderci彼だけが 与えることが できる 彼女の contento il cor.心に 満足を【≒ 喜びを】。 (parte)(去る) |
ei sol può renderci この ci は a lei と理解した。 |
| [Recitativo] Dopo l'Aria Clarina |
4/4 (C major) |
SCENA Ⅹ第10場 Norton, poi Slookノルトン、それから スルック NORTONノルトン Eccolo appunto: pare pensieroso.ほらここに彼が: 考え込んでいるように 見える。 SLOCKスルック (escendo)(出て) Ehi, di grazia, signore,もしもし、お願いだから、貴君よ、、 bramerei di parlar a sir Tobia.私は トビア氏と 話しをすることを 切望しているのだが。 NORTONノルトン Io credo ch'ora in casa egli non sia.私は 確信している 今 彼は 館には いない と。 Ma di grazia, scusate,ところで どうか、許しなさい、 avete già concluso, conosceteあなたは 既に まとめあげたのか、【↓】あなたは 心得ているのか voi bene il capital che acquisterete?十分に 資産を それを あなたが 購入するであろう? SLOCKスルック Credo già di conoscerlo.既に それを まとめあげていると 私は 確信している。 NORTONノルトン (marcato)(はっきりと) Siate cauto.用心深くなりなさい。 SLOCKスルック Perché?どうして? NORTONノルトン (marcato)(はっきりと) Potrebbe darsi起きている かもしれないのだが che fosse ippotecato.それが 抵当に入れられた ことが。 SLOCKスルック (sorpreso)(驚いて) Ippotecato!抵当に入れられた だって! NORTONノルトン Ma in parola d'onore,しかし 【あなたの】 名誉にかけて、 non ne fate alcun moto: addio, signore.それについて 何一つ 動きを するでない: さようなら、旦那さんよ。 (parte)(去る) SCENA ⅩⅠ第11場 Slook, poi Millスルック、それから ミル SLOCKスルック Ippotecato! Diavolo! Madama抵当に入れられた だって! 悪魔め! お嬢様 colla decenza, e i ma,慎みをもった、そして けれども、 che vuol cavarmi gl'occhi; Il dolce amicoその者は 私の目を 引き抜きたい; 優しい 男友達 che mi prega, e vuol pungermi le vene!...その者は 私に 懇願する、そして 私の血管を 突きたい!… Oh, in qual razza di mondo son mai giunto!ああ、私は いったい どんな種類の 世界の中に 来たのだ! MILLミル Dov'è?彼は どこに いるのか? SLOCKスルック (Or quest'altro! viene in un buon punto!)(さて この 別の男が! 来ている よい時に! ) MILLミル Caro amico, lasciate ch'io v'abbracci:親愛なる友よ、私が 君を 抱擁する がままにさせなさい【≒ 私に 君を 抱擁させなさい】: abbiamo buone nuove?私たちは 何か 良い知らせを 持っているか? SLOCKスルック Buonissime.この上なく良い。 MILLミル Oh che gusto!ああ なんという満足だ! (ad ogni risposta di Slook, Mill lo abbraccia e bacia)(スルックの どの 返事にも、ミルは 彼を 抱擁する そして キスする Sicché dunqueさあ それでは l'affar!...取引は!… SLOCKスルック Va a meraviglia.それは 完璧に 進んでいる。 MILLミル Che piacer! E mia figlia?...なんという 喜びだ! それで 私の娘は?… SLOCKスルック Bella assai.たいへん 美しい。 MILLミル L'età?...歳は?… SLOCKスルック Giusta.ぴったりだ。 MILLミル Le maniere?物腰は? SLOCKスルック Obbliganti.親切だ【≒ 礼儀正しい】。 MILLミル Oh che consolazion!ああ なんという 慰めだ【≒ なんと ほっとしたことか】! SLOCKスルック (Bacia, bacia.)(キスだ、キスだ) MILLミル E per le proporzioni?そして 釣り合いについては【≒ 体形は】? SLOCKスルック Fatte apposta.適して 作られた【≒ 注文通りだ】 MILLミル Temperamento?気性は? SLOCKスルック Quello che ci vuole.必要であるものだ【≒ 望んだとおりだ】。 MILLミル Dunque ella è vostra sposa:それでは 彼女は あなたの花嫁だ: tutto confronta agli ordini del foglio.すべてが 書類の注文に 合致している。 SLOCKスルック (seccamente)(素っ気なく) C'è una difficoltà:一つの 障害が ある: MILLミル Che?何だって? SLOCKスルック non la voglio.私は 彼女を 欲しくない。 MILLミル (colpito)(打たれて【≒ 衝撃を受けて】) Oh!ああ! SLOCKスルック Ma!...けれども!… MILLミル Diavolo! dunque non vi piace!悪魔め! それでは 彼女は あなたに 気に入らないのだな! SLOCKスルック Anzi molto.むしろ 大いに 【気に入っている】 MILLミル E perché non la sposate?それで どうして あなたは 彼女と 結婚しないのか? SLOCKスルック Se fossi pazzo! (Mi son cari gli occhi;もし 私が 気が狂っているならば 【彼女と 結婚するのだが】! (私の目は 大切だ; madamina decenza me li cava.)慎みのお嬢さんは 私の それらを 引き抜く。) MILLミル (Le piace e non la vuole! Cospettone!)(彼は 彼女を 気に入っている けれども 彼は 彼女を 欲しくない! これは驚いた!) Ma almeno una ragione!...だが せめて 理由を!… SLOCKスルック Oh peggio! (Il dolce amicoああ いっそう悪い! (【彼女の】 優しい友人は) mi punge allor le vene.)その時には 私の血管を 突くのだ。) MILLミル Io butto foco!私は 火を 吹き出している! SLOCKスルック Butta pur.どうぞ 吹き出しなさい。 MILLミル Oh, alle corte,ああ、法廷に、 o sposarla, o parlar.彼女と 結婚するか、それとも 【理由を】 話すか。 SLOCKスルック Né l'un, né l'altro.一つのことではなく、別のことでもない【≒ どちらも しない】 。 MILLミル Dunque!...それでは!… SLOCKスルック Non vi scaldate:興奮するでない: flemma!冷静さを! MILLミル La sposerete?あなたは 彼女と 結婚するつもりか? SLOCKスルック La sposerei... ma!私は 彼女と 結婚したいのだが… けれども! MILLミル (fremente)(身震いして) Ma?けれども? SLOCKスルック Flemma: quel ma冷静さを: この けれども は vuol dir che ci ho una gran difficoltà.言いたいのだ 大きな困難が ある と。 |
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| N. 6 Duetto [Mill-Slock] Mill Slook |
Allegro vivace 2/2 G major |
MILLミル (con foco, e prestissimo)(火を もって【≒ 熱を込めて】、そして この上なく速く Dite presto, dove staすぐに 言いなさい、どこに あるのか questa gran difficoltà?その 大きな困難は? SLOCKスルック (con placidezza)(平静をもって) Oh ci sta, ma non si sa,ああ それは ある、しかし 分からない、 e né meno si saprà.そして より少なく 分かるだろう【≒ 大きな困難は あるのだが、それが どこにあるのかは 今は 分からないし 今後も ますます 分からないだろう】。 MILLミル (crescendo)(増大して【≒ 声を大きくして】) Ella ha tutti i requisiti,彼女は 必要条件を すべて 持っている、 e non trovo in lei mancanze.そして 私は 彼女に 不足を 見出していない。 SLOCKスルック (con più flemma)(さらに 冷静さをもって)(con più flemma) Forse troppo anzi abbondanze,ことによると むしろ あまりにも 大量だ【≒ 【すべて どころか】 むしろ おそらく 過剰だ】、 ma, cor mio, per me non fa.けれども、私の心【の友よ】、彼女は 私には 適していない。 MILLミル (con tutta forza)(すべての力をもって) Mantenete la parola,約束を 守りなさい、 non si viene con inganni.【人は】 欺瞞で 来るでない【≒ 人を 騙しに 来るな】。 SLOCKスルック (con più flemma)(さらに 冷静さをもって)(con più flemma) Sono qui a pagarvi i danni,私は ここに 来ている あなたに 賠償金を 支払うために、 e così si finirà.そして このように 終わるだろう。 |
ma, cor mio, per me non fa. fare per qlcu. / ql.co. ―に適している |
| Allegro moderato 3/4 G major |
MILLミル (fremente)(身震いして) Quest'è un procedereこれは やり方だ d'americano.アメリカ人の。 Ma di ficcarmelaだが 私を 騙すことを si spera invano.虚しく 期待している【≒ 私を 騙そうとしても 無駄だ】。 La figlia è in ordine,娘は 注文にある【≒ 娘は 注文通りだ】、 la carta canta,書類は 唱えている【≒ 契約書に 書かれている】、 e il signor flemmaだから 冷静氏は la sposerà.彼女と 結婚するだろう。 SLOCKスルック Questo è un procedereこれは やり方だ da uomo onesto:正直者の: vi pago il debito,私は あなたに 債務を 支払う、 né cerco il resto.私は お釣りを 要求しない。 (Non sa che vogliono(彼は 知らない 彼らが【= ファンニと エドワルドが】 望んでいることを cavarmi gl'occhi!私の目を 引き抜くことを! Non me li cavano彼らは 私の それらを 引き抜かない per verità.)実際には。) |
Ma di ficcarmela ficcarla a qlcu. [人]を騙す。 la carta canta, carta canta はイタリア語の諺 carta canta e villan dorme の前半部分。直訳すると 紙は歌い そして 農民は眠る。前半は 紙に書かれたものは記録として残る という意味で、後半は農民が暴動をおこさない平和な社会を意味している。つまり、紛争を避けるために契約は書類にして残すべし という意味。 |
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| Recitativo 4/4 (G major) |
MILLミル (amaramente)(辛らつに) Signor americano!アメリカ男氏よ! SLOCKスルック (placido)(穏やかに) Signor europeo!ヨーロッパ男氏よ MILLミル Voi dunque avete voglia di morir?それでは あなたは 死ぬことの欲求を 持っているのか【≒ それでは あなたは 死にたいのか】? SLOCKスルック Grazie al cielo, non ho quest'intenzione.天のおかげで【≒ おかげさまで】、私は その意図を 持っていない【≒ 私には そんなつもりはない】。 MILLミル Vuo' darvi una lezione私は あなたに 授業を 与えたい perché impariate ad esser di parola.あなたが 約束を守ることを 学ぶために。 SLOCKスルック (Ohimè! che anche il papà...)(ああ! 父親も また…) MILLミル Spada, o pistola...剣を、もしくは ピストルを… (in aria di millanteria cava un guanto, e lo getta a Slook ch'è immobile, né sa che significhi)(虚勢の様子で 手袋を引き抜き、そして それを スルックに 投げつける その者は 動かず、それが 意味することを 分からない) |
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| Allegro 4/4 G major |
Ecco il guanto: v'aspetto fra un'ora,ほらここに 手袋が: 私は あなたを 待ち受ける 1時間後に、 vi consiglio di far testamento.私は あなたに 勧める 遺言状を 作成することを。 Dalla rabbia non vedo, non sento...怒りによって 私は 見ない、私は 聞かない… Ah! eh! ih! ah! oh! uh! oh!... ti voglio ammazzar.アー! エー! イー! アー! オー! ウー! オー!… 私は あなたを 殺したい。 SLOCKスルック Grazie tante! (M'imbarco fra un'ora.とても ありがとう! (1時間後には 私は 乗船している。 Occhi e morte: che bel complimento!両目と 死: なんという 素敵な 誉め言葉だ! Non si cavano: e fo giuramento,それらは 引き抜かれない: そして 私は 誓いを する、 che vuo' intero alla patria tornar.)無傷で 祖国に 帰るつもりである という。) (partono)(【二人とも】 去る) |
che vuo' intero alla patria tornar.) この intero 全部の,完全な は 元のままの,無傷の の意味(を副詞的に用いている)。 |
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| [Recitativo] Dopo il Duetto [Mill-Slook] |
4/4 (C major) |
SCENA ⅩⅡ第12場 Fannì, Clarina, indi Edoardoファンニ、クラリーナ、それから エドワルド CLARINAクラリーナ Venite, sono andati.来なさい、彼らは 行ってしまった。 FANNÌファンニ Com'eran riscaldati! Io per me credo彼らは なんと 熱くさせられていたことか【≒ 彼らは なんと 興奮していたことか】! 私は 私にとって 確信している che il buon american n'avrà abbastanza.善良な アメリカ男は うんざりするだろう と。 CLARINAクラリーナ Anch'io son persuasa私も 確信している che senza sposa abbia a tornar a casa.花嫁なしに 彼は 家に 帰らなくては ならない と。 EDOARDOエドワルド Oh mia Fannì!ああ 私のファンニよ! FANNÌファンニ Caro Edoardo!いとしい エドワルドよ! EDOARDOエドワルド Ebben,それで、 vedesti più l'american? Pretende君は もう アメリカ男に 見ていなかったのか? 彼は 強く求めていないのか ancora di sposarti?いまだに 君と 結婚することを FANNÌファンニ Io gli ho mostrata私は 彼に 示した tanta avversion, gli ho fatte夥しい嫌悪を、私は 彼に した sì graziose minaccie!それほどに 上品な 脅しを! EDOARDOエドワルド Io l'ho pregato私は 彼に 懇願した con sì buona maniera a rinunziarti!それほどに 心優しいやり方で 君を 断念するように! CLARINAクラリーナ Pover'uomo, io lo credo ben pentito!かわいそうな男だ、私は 彼は 十分に 後悔していると 確信している。 (via)(去る) EDOARDOエドワルド Ei prenderà sicuro altro partito.彼は きっと 別の 結婚相手を 迎えるだろう。 FANNÌファンニ Oh, s'io divento tua!...ああ、私が 君の女に なるならば!… EDOARDOエドワルド (prende la mano di Fannì e la bacia con tutto trasporto)(ファンニの手を 取り、それに キスする 夢中になって) Speriamolo.それを 期待しよう。 SCENA ⅩⅢ第13場 (Slook viene sulla porta, li vede, si ferma, sorride, e avanzando)(スルックが 扉のそばに 来る、彼らを 見る、立ち止る、微笑む、そして 前に進んで) (si volge, lo vede, ritira la mano, fa un inchino, e accennando di cavargli gli occhi)(【彼の方を】 向く、彼を 見る、手を 引っ込める、お辞儀を する、そして 彼の両目を 引き抜く しぐさをして) SLOCKスルック Bravi!素晴らしい! FANNÌファンニ Serva sua!...ごきげんよう!… (per partire)(去ろうとする) EDOARDOエドワルド (la stessa azione)(同じ 行為を) Servitore.ごきげんよう。 SLOCKスルック Servo anch'io. Posso chiedere un favore?私も ごきげんよう。私は 親切な行為を 頼むことが できるか【≒ 一つ お願いが できるかね】? FANNÌファンニ (grave)(深刻に) Che v'occor?何が あなたに 必要なのか? EDOARDOエドワルド (burbero)(ぶっきらぼうに) Che cercate?あなたは 何を 要求するのか? SLOCKスルック Dite in prima:はじめに 言いなさい: ognun qui mi vuol morto. Sono sicuroここにいる 一人一人が 私の 死を 望んでいる。私は 安全なのか un quarto d'ora dalle vostre mani?四半時【しはんとき ≒ 15分間】 君たちの手から? EDOARDOエドワルド Voi non siete già in mezzo a' americani.あなたは もう アメリカ人たちの 間には いない。 SLOCKスルック (serio)(真剣に) Lo so. Un americano私は そのことを 分かっている。アメリカ人は non avria minacciata in propria casa脅さなかったろうに 自分自身の家で a un ospite la vita.客に 命を【≒ アメリカ人は 自宅で 客の命を 脅かすことはないだろう】。 EDOARDOエドワルド (Che rimprovero è questo!)(これは なんという 非難だ!) FANNÌファンニ (Io son stordita.)(私は 仰天している。) SLOCKスルック Ma lasciamo da parteだが 脇に 置いておこう sì fatte gentilezze. Madamina,そのように 済んだ 親切な行為は。お嬢さん、 voi, che senza saper qual colpa io m'abbia,あなたは、どのような罪を 私が 私に 持っていたか 知らずに、 mi faceste quel dolce complimento,私に あの優しい 祝辞を した、 quale morte dev'essere la mia?【あなたは】 どのような死を 私のもので あるべきなのか?【= 私の死に】 FANNÌファンニ Io non bramo la morte a chi che sia.私は 誰であろうと 死を 切望しない SLOCKスルック Ma poco fa... vi ricordate?...だが 少し前には… あなたは 覚えているか?… FANNÌファンニ Alloraその時は vi parlava un'amante disperata.絶望した 恋する女が あなたに 話したのだ。 SLOCKスルック È dunque ver che siete ippotecata?それでは 本当なのか あなたが 抵当に入れられたのは。 FANNÌファンニ (abbassa gli occhi)(目を 伏せる) Ma!けれども! SLOCKスルック L'acquirente?...買い手は?… FANNÌファンニ (gira gli occhi su Edoardo e sospira)(目を エドワルドに 回す そして 溜め息を吐く) SLOCKスルック Ora capisco bene今や 私は よく 理解した perchè voleva pungermi le vene.なぜ あなたが 私の欠陥を 突きたかったか。 EDOARDOエドワルド Ah, trasportato dalla gelosia...ああ、嫉妬の爆発が… SLOCKスルック E che bestia è costei? ma andiamo avanti:それで この男は どんな獣なのか? だが 先に 進もう: e perché presentarmi la cambiale?そして どうして 私に 手形を 提出したのか? FANNÌファンニ Sforzata da mio padre...私の父に 強いられて… SLOCKスルック Povera Miss! Ma che paese è questo!かわいそうなお嬢さん! それにしても これは なんという国なのだ! Anche i padri che sforzano le figlie!父親すら 娘に 強いる! E il vostro sa che amate il dolce amico?それで あなたのものは【= あなたの父親は】 知っているのか あなたが 優しい友人を 愛している ことを? FANNÌファンニ Non ardimmo parlargliene finora.今まで 彼に そのことを 思い切って 言わなかった。 EDOARDOエドワルド La mia fortuna è troppo disuguale私の財産は あまりにも 等しくない【≒ 不釣り合いだ】 al ricco stato suo.彼の 裕福な地位に対して。 SLOCKスルック Non c'è altro male?他の不運は ないか【≒ 他に 支障は ないかね】? (pensa, passeggia, cava le due lettere, le esamina, sorride, guarda Fannì ed Edoardo)(考える、散歩する【≒ 歩き回る】、2通の手紙を 引き抜く、それらを 検討する、微笑む、ファンニと エドワルドを 凝視する) EDOARDOエドワルド Che mai pensa?あなたは いったい 何を 考えているのか? FANNÌファンニ Che fa?あなたは 何を しているのか? SLOOKスルック (prendendoli per mano)(彼らの 手を 取って) Ragazzi miei,私の 若者たちよ、 venite qua, sentite:ここに 来なさい、聞きなさい: io cercavo una moglie, calcolando私は 妻を探し求めていた、推量して【≒ 予測して】 che mi fruttasse eredi; dopo quello彼女が 私の 相続人を もたらす ことを; che in materia di donne ho visto e inteso女性に関して 私が 見た そして 分かった 【↑】後に me ne passò la voglia: null'ostante,欲求は 私から 消えた; それにもかかわらず、 Miss, voi mi siete cara,お嬢さん、あなたは 私には いとしい、 quel giovine mi piace, e compatiscoあの若者は 私に 気に入っている、そして 私は 気の毒に思っている in voi l'età e l'amore. Io son ricco,あなたたちにおいて 年齢を そして 愛を。私は 裕福だ、 e vuo' farvi felici: ecco, io vi cedo,そして 私は あなたたちを 幸せに したい: ほらここに、私は あなたに 譲渡する、 e giro la cambiale... il vostro nome?...そして 手形を 裏書する… あなたの名前は?… EDOARDOエドワルド Edoardo Milfort.エドワルド・ミルフォルトだ。 SLOOKスルック (va al tavolino e dietro la lettera scrive il giro)(小テーブルに 行き そして 手紙の後ろに【≒ 手紙の裏に】 裏書を 書く) (scrivendo)(書きながら) E per me all'ordine S. P. del sir Edoardo Milfort:そして 私を通じて 評価できないほど貴重な エドワルド・ミルフォルト氏宛に: Slook.スルック。 (gli da la lettera)(彼に 手紙を 手渡す)> Per dritto Miss è vostra da tal punto:権利により お嬢さんは あなたの女だ こうした時点から【≒ 正当な権利により お嬢さんは 今から あなたの妻だ】: d'istituirvi erede mio prometto:私は 約束する あなたを 私の相続人に 指定すると: ammazzatemi adesso, io vel permetto.今 私を 殺しなさい、私は それを あなたに 認める。 EDOARDOエドワルド Ah, signor!ああ、旦那さん! FANNÌファンニ Uomo raro!...稀な男だ!… EDOARDOエドワルド La mia gioia! La mia riconoscenza...私の喜びだ!私の感謝だ! FANNÌファンニ La sorpresa, il contento...驚きが、満足が【≒ 喜びが】… SLOCKスルック Basta, basta, tacete.もういい、もういい、黙りなさい。 |
che il buon american n'avrà abbastanza. averne abbastanza うんざりする。 sì fatte gentilezze. Madamina, sì fatte gentilezze. この fatto は (ことが)済んだ で採った。この gentilezze 親切,思いやり,親切な行為 は反語だろう。 Io non bramo la morte a chi che sia. a chi che sia 誰であろうと me ne passò la voglia: null'ostante, null'ostante もしくは nulla ostante,nullaostante,nullostante、nonostante の同義語で、接続詞でも前置詞でも用いられるが、この場合は副詞 にもかかわらず。 E per me all'ordine S. P. del sir Edoardo Milfort: S. P. おそらく senza prezzo 評価できないほど貴重な の意味だろう。 d'istituirvi erede mio prometto: istituire qlcu. erede 人を相続人に指定する。法律用語。 |
| [N. 7] Aria Fannì Fannì |
Allegro 4/4 A major |
FANNÌファンニ Come tacer, come frenare i motiどうやって 静めるのか、どうやって 抑えるのか 急な心の動きを d'un cor riconoscente感謝している心の che a voi deve il piacer che in petto or sente?それは 喜びを あなたに 負っている それは 私が 今 胸の中に 感じている【≒ 私が 今 胸の中に 感じている 感謝する心の 喜びは 彼のおかげで 感謝する心の 激しい動きを どうやって静められるのだろうか、どうやって 抑えられるのだろうか】? |
Come tacer, come frenare i moti この tacere は他動詞だが、おそらく自動詞 静かにする を他動詞 静かにさせる ≒ 静める で用いているのだろう。 |
| Allegro giusto 4/4 A major |
Vorrei spiegar il giubilo私は 歓喜を 説明したい che fa brillarmi il core;それは 私の心を 輝かさせている; provo sì dolci palpiti!...私は これほどに 快い 心臓拍動を 感じている!… un così caro ardore!...これほどに いとしい熱情を!… Oh Dio! rapita l'animaああ 神よ! 恍惚とした 魂は esprimersi non sa.自分の気持ちを表現することが できない。 |
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| Andante 4/4 A major |
Un soave e nuovo incanto甘美な そして 新たな 魅力が mi seduce in tal momento;このような瞬間に 私を うっとりさせている; e l'idea del mio contentoそして 私の満足の考えは【≒ 私の 喜びの気持ちは】 di piacer languir mi fa.私を 喜びで 悶々とさせる。 |
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| Allegro 2/2 A major |
(poi con trasporto, crescendo)(それから 熱狂をもって、【声を】 増しながら) Ah, se amor voi conosceste,ああ、もし あなたが 愛を 知っていたならば、 ben comprender mi potreste!...あなたは 私を よく 理解できるだろうに!… Se a provarlo arrivereteもし あなたが それを うまく 感じることが できるであろう ならば qual piacer ne sentirete!...そのことから あなたは なんという 喜びを 感じるであろうか!… Quando s'ama, e che si brama!...愛する時にはいつでも、そして なんと 熱望することか!… si sospira... e si delira...溜め息する… そして 夢中になる… il pensier... il cor... la mente...思いは… 心は… 精神は… vola... s'accende... si sente!...飛ぶ… 燃え点く… 感じる!… Ma poi c'è quel bel momentoけれども それから この 素晴らしい瞬間が ある che ci viene a consolar...それは 私たちを 慰めるに 来る【≒ 落ち着かせに 来る】… (e rimettendosi)(そして 【元に】 戻って) Perdonatemi, signore,私を 容赦しなさい、貴君よ mi fa amore delirar.愛の神が 私を 錯乱させている。 |
Se a provarlo arriverete arriverare a 不定詞 にはいくつかの意味があるが、ここでは うまく―できる で採った。 |
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| (Allegro) 2/2 A major |
Ah, nel sen di chi s'adora,ああ、熱愛する人の胸の中では non ci resta che bramar.熱望することの 他は 残されていない。 (parte con Edoardo)(去る エドワルドと共に) |
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| [Recitativo dopo l'Aria Fannì] |
4/4 (C major) |
(SCENA ⅩⅣ)(第14場) (Slook)(スルック) SLOCKスルック Eppur lo cred'anch'io, che il far del beneだがしかし 私も そのことを【= che節】 確信している、善行を施すことは。 sia il contento maggiore最大の満足だ【≒ 最大の喜びだ】 per chi sì bel dover sente nel cuore.心に これほどに 立派な義務を 感じる 者にとって。 (parte)(去る) SCENA ⅩⅤ第15場 (Mill preceduto da un Servo, che porta due pistole e due spade)(ミル 一人の召使いに 先導されて、その者は 2つの拳銃と 2つの剣を 持って来る) MILLミル Metti là tutto, e parti.すべてを そこに 置きなさい; すべてを、そして 去りなさい。 il Servo mette sul tavolino le pistole e le spade, poi parte, dopo l'ordine召使いは 小テーブルの上に 拳銃と 剣を 置く、それから 去る、命令の後に Senti: avverti聞きなさい: 知らせなさい mia figlia che l'aspetto:私の娘に 私が 彼女を 待っている と: oh qui c'è sottoああ ここには 隠されている un qualche grande imbroglio:何か 大きな ペテンが: ed io scoprirlo, e vendicar mi voglio.そして 私は それを 剥き出しにすることを、そして 仕返しをすることを 望む。 Ma quel signor american! Per Bacco!それはそうと あの アメリカ男氏め! なんとまあ! le piace, e poi non la vuol più! Buffone!彼は 彼女を 気に入っている、そして それから 彼女を もう 欲しくない だと! 無責任な者だ! con quella flemma!... con quei ma! È un'azione!...あの冷静さで!… あの けれども で! それは 戦闘だ!… Ma l'ha da far con me: son sì arrabbiatoだが 彼は それを 私と しなくては ならない: 私は とても 怒っているので ch'al primo colpo già l'ammazzo. Adagio:最初の打撃で もう 彼を 殺す。注意深く【≒ 落ち着いて ≒ ちょっと待てよ】: e s'egli invece ammazza me! Potrebbeそして もし 彼が それに反して 私を 殺すならば! darsi un tal caso, brutto caso! e alloraそのような場合も あり 【↑】得るだろうに、悪い場合だ! そして その時には che figura fo io? morto! Oh vergogna!私は どんな姿なのだろうか? 死! ああ 恥だ! qui pensar bisogna: quasi quasiここで 考え なければならない: ほとんど mi pento. Se valesse una bravata!...私は 後悔している と思うほどだ。向こう見ずが 役に立つならば!… egli è piùtosto semplice... tentiamo:彼は かなり 単純だ… 試してみよう: e intanto il Rodomonte a far pensiamo.そして とりあえず ロドモンテを することを 考えよう【≒ 空威張り屋になることを 考えよう】。 |
oh qui c'è sotto / un qualche grande imbroglio: esserci sotto qualcosa で 何かが隠されている の意味になる。 ch'al primo colpo già l'ammazzo. Adagio: この adagio は、興奮した後に冷静さを取り戻し、我に返って ちょっと待てよ という表現。 e intanto il Rodomonte a far pensiamo. ロドモンテ は、マッテーオ・マリーア・ボイアルド『恋するオルランド』やルドヴィーコ・アリオスト『狂えるオルランド』に登場する軍司令官。 |
| [N. 8] Finale Slook Fannì Clarina Edoardo Norton |
Maestoso 4/4 C major |
MILLミル (si assetta il cappello rivolto, si cinge la spada, acciglia gli occhi, passeggia da spaccone)(振り向いた帽子を 身支度をする【≒ 帽子を 逆向きjに 被る】、剣を 身に着ける、両目を 眉をひそめる【≒ 顔をしかめる】、空威張りする人のように 散歩する【≒ ふんぞり返って 歩き回る】) Porterò così il capello,私は このように 帽子を 身に着けていよう、 torcerò gl'occhi e la faccia,両目と 顔を 捻じ曲げよう【≒ しかめっ面をしよう】、 ed in aria di minaccia,そして 威嚇の様子で【≒ 脅すように】、 camminando il guarderò,歩きながら 彼を 凝視しよう、 e con aria di minaccia,そして 威嚇の様子をもって【≒ 脅すように】、 camminando il guarderò.歩きながら 彼を 凝視しよう。 Figuriam ch'abbia paura目立とう 彼が 不安を 持つように della truce mia figura,残忍な 私の姿に、 cavo fuor la spada allora.その時に 私は 剣を 外に 引き抜く。 (ed ei trema e si scolora.)(すると 彼は 動揺し そして 【顔色が】蒼白になる。) (finge tutta l'azione e le parole dell'avversario)(相手の すべての動作と 言葉を 想像する) Fuor la spada! (ei non risponde.)剣を 外に【≒ 剣を 抜け】! (彼は 答えない。) Riparate... (si confonde.)守りなさい… (彼は 混乱する。) Corpo di!... (non v'alterate.)【剣の】打撃!… (かっとなるでない。) Già v'infilzo... (no... aspettate.)既に 私は あなたを 刺し貫いている… (いいや… 待ちなさい。) Non c'è scampo... (aiuto!) Là!...逃げ道は ない… (助けて!) そこに!…) (Ahi! son morto) e morto è già.(ああ! 私は 死んでいる) そして 既に 彼は 死んでいる。) L'ho passato a parte a parte...私は 彼を 貫いて 突き通した… Quanto sangue!... oh il brutto morto!なんと多くの 血が!… ああ 痛ましい 死だ! Ti sta ben...それは 君に 適切である 【≒ 当然の報いだ】… (Slook in berretto, e una lunga pippa fumando, tenendone un'altra sotto al braccio, lo vede, si ferma e ride, depone la pippa, prende una pistola, e va per dietro a Mill)(スルック 帽子をかぶって、そして 長いパイプを 喫煙して、別の物【= 別のパイプ】を 腕の下に 押さえておいて、彼を見る、立ち止まる そして 笑う、パイプを 下ろす、ピストルを 握る、そしてミルの後ろに向かって 行く) SLOCKスルック (presentandogli la pistola)(彼に ピストルを 差し出して) Ma son risorto.さて 私は 復活した。 E a servirvi sono qua.そして あなたに 仕えるために 私は ここに 来ている。 MILLミル (sorpreso, intimorito, immobile)(驚いて、ぎょっとして、不動で) Ah!ああ! SLOCKスルック In più nobile manieraより高貴な やり方で io vi vengo ad ammazzar.私は あなたを 殺しに来ている。 MILLミル Non si viene in tal manieraそのようなやり方で 来るでない le persone a soverchiar.人々に 打ち勝つために。 |
Porterò così il capello, クリティカルエディションでは cappello ではなく capello を採用しているが、ト書きからこれは 帽子 を意味していると思われる。 Ti sta ben... stare bene 適切である,相応しい。人の間接補語と共に用いると 当然の報いだ,いい気味だ の意味になる。 |
| Allegro mosso 4/4 C major |
(Parmi quasi aver paura,(私には あやうく 恐れそうになった ように思われる【≒ 私は もう少しで 恐怖に陥るところだったようだ】、 ma non voglio farmi star.)だが 私は 私を 【恐れ】のままで い させ たくない【≒ 私は 自分を 恐怖を感じたままに したくはない】。) SLOCKスルック (Egli ha un poco di paura,(彼は 少し 恐れている、 terminiamo il nostro affar.)私たちの 事柄を 終えよう【≒ 私たちの決闘を 終わりにしよう】。) Adunque al campo!さあ 戦場へ! MILLミル (esitando)(ためらって) E voi volete... それでは あなたは 望むのか… morir!...死ぬことを!… SLOCKスルック Decisamente...疑いの余地なく… mi voglio sodisfar.私は 私を 満足させたい。 Io sono lo sfidato,私は 決闘を申し込まれた男だ、 (prende l'altra pippa)(もう一つの パイプを 手に取る) e scelsi l'armi: andiamo.そして 私は 武器を 選んだ: 行こう。 MILLミル (Ah tanto fa! ci siamo.)(ああ 【どうせ やるなら】 同じことだ! よし。) (bravando)(挑発して) Al campo!戦場へ! SLOCKスルック (Sì,(そうだ、 (ridendo)(笑って) a fumar.)喫煙しに。) MILLミル Vedrete i torti mieiあなたは 見るだろう 私の【受けた】 失礼に com'io so vendicar.どうやって 私が 報復することが できるか。 Ah dove mi sia nol so,ああ どこに 私が いるのか それは 私は 知らない【が】、 vedrete com'io so vendicar.あなたは 見るだろう どうやって 私が 報復することが できるか。 SLOOKスルック Vedrete i torti mieiあなたは 見るだろう 私の【受けた】 失礼に com'io so vendicar.どうやって 私が 報復することが できるか。 Oh quanto ridorò,ああ どれだけ 私は 笑うだろう、 vedrete com'io so vendicar.あなたは 見るだろう どうやって 私が 報復することが できるか。 al campo,戦場に、 MILLミル al campo,戦場に、 SLOOK (a fumar.)(喫煙しに。) MILL E SLOCK vedrete nel campo com'io so vendicar.あなたは 見るだろう どうやって 私が 報復することが できるか。 (s'incamminano)(【二人とも】 歩き出す) (SCENA ⅩⅥ)(第16場) (Fannì, Clarina, e detti)(ファンニ、クラリーナ、そして 前の場の人たち) FANNÌファンニ Qual ira, oh ciel, v'accende,なんという 怒りが、ああ 天よ、あなたを 燃やしているのだ、 dove frementi andate!あなたたちは 震えながら どこに 行くのだ! Per amor mio restate,私の愛のために 留まりなさい、 frenate quell'ardor.その熱情を 抑えなさい。 MILLミル Lasciami: vo a punirlo.私を 放っておきなさい: 私は 彼を 罰したい。 CLARINAクラリーナ Unitevi con noi.私たちと 合流しなさい【≒ 私たちと 一緒にいなさい】。 SLOCKスルック Io vado a divertirlo.私は 彼を 楽しませに 行く。 MILLミル 【(ファンニに)】。 Per causa tua...君のせいで… SLOCKスルック Per voi...あなたのために… FANNÌファンニ Almen per compassione.せめて 同情から。 CLARINAクラリーナ Calma, signor padrone.落ち着きなさい、主人である旦那様。 MILLミル Basta guardala, e poi...彼女を 見さえすれば よい、そして それから… SLOCKスルック Lo so ch'è un buon boccone:私は そのことを 分かっている 彼女が 美味しい 美味なものなことを【≒ 彼女が 素敵な美女だと 私は 分かっている】: ma!...けれども!… MILLミル (arrabbiato)(怒って) Ancor dei ma! venite.また けれども だ! 来なさい。 SLOCKスルック (ridendo)(笑って) Con flemma: andiam.冷静さを もって: 行こう。 FANNÌファンニ Sentite:聞きなさい: vi plachi il mio dolor.私の苦悩が あなたたちを 宥めるように。 MILLミル Quel ma mi desta gl'impeti:あの けれども が 私に 激情を 引き起こす: che provi il mio furor.それは 私の怒りを 感じている。 FANNÌ E CLARINAファンニ と クラリーナ Deh! moderate gl'impeti,お願いだから! 激情を 抑えなさい、 calmate quel furor.その激怒を 静めなさい。 SLOCKスルック (ridendo)(笑って) Gli passeranno gl'impeti,彼の 激情は 治まるだろう、 si calmerà il furor.激怒は 治まるだろう |
ma non voglio farmi star.) この stare は ―のままでいる。ミルは実際には恐怖を感じているのだが、それを隠したいと思っている。 (Ah tanto fa! ci siamo.) ci siamo にはいろいろな意味があるが、この場合は何かを始める時に気合を入れる さあ,よし といった言い方。 Per causa tua... ミルはスルックには一貫して2人称敬称を用いているので、この tu は娘のファンニに向けたものだろう。 Ancor dei ma! venite. dei は部分冠詞。 |
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| Moderato 3/4 E-flat major |
(SCENA ULTIMA)(最終場) (Edoardo, Norton, e detti)(エドワルド、ノルトン、そして 前の場の人たち) EDOARDOエドワルド (a Mill)(ミルに) Vi prego un momento, signore, a fermarvi,私は あなたたちに 一瞬を 懇願する、貴殿よ、居残るための、 io debbo parlarvi d'altissimo affar.私は あなたたちと 話す必要がある 極めて高い 事柄について【≒ 重大な事案について】 MILLミル Vo a battermi adesso, fra poco tornate.私は 今 戦いたいのだ、間もなく【≒ 後で】 戻りなさい。 EDOARDOエドワルド Potreste morire, e pria che moriate,あなたは 死ぬ かもしれないのだが、だが あなたが 死ぬ 前に、 (presentandogli la lettera)(彼に 手紙を 差し出して) a vista, vi prego, di farmi pagar.一覧払いで、私は あなたに 懇願する、私に 支払いを求めることを。 MILLミル Ma quest'è un'insistenza...だが これは 強い要求だ… SLOCKスルック Abbiate pazienza.我慢しなさい。 MILLミル Ehi, Norton, quell'uomo a vista spicciate.えい、ノルトンよ、この男を 手早くすませなさい【≒ この男の要求にさっと応じなさい】。 CLARINAクラリーナ (Scabroso è il momento!)(【この】瞬間は 取り扱いにくい【≒ 難しい瞬間だ】!) SLOCKスルック (Vuol esser graziosa!)(彼女は 情け深く あるつもりだ) FANNÌファンニ (Comincio a tremare.)私は 震え 始めている)。 NORTONノルトン Signore, scusate,旦那様、お許しを、 in cassa tal fondo non posso trovar.私は 金庫に資金を そのような株式を 見付けられない。 MILLミル Ma diavolo! e come! che somma!...まったく 悪魔め! それで どうして! 何の金額だ!… NORTONノルトン (gli presenta la lettera dalla parte del giro)(彼に 手紙を 差し出す 裏書きの方で) Tenete.持ちなさい。 MILLミル Che vedo! che sento! quest'è tradimento.私は 何を 見ているのだ! 私は 何を 聞いているのだ! これは 背信だ。 Sì: tutti a tradirmi uniti vi siete:そうだ: あなたたちは 皆 私を 騙すために 結び付けられたのだ【≒ 結託したのだ】: protesto quel giro: mi vo' vendicar.私は その裏書の 支払を拒絶する: 私は 仕返しをしたい。 FANNÌファンニ Ah padre!...ああ 父よ!… MILLミル In ritiro.撤退に【≒ 出て行け】。 EDOARDOエドワルド Signore...旦那様… MILLミル Sortite.外に出なさい【≒ 出て行け】。 NORTONノルトン Ma almeno...しかし せめて… MILLミル Tacete...黙りなさい… CLARINAクラリーナ Guardate...見なさい… MILLミル Finite.止めなさい。 Tu... lei... voi... quel... l'altra... vuo' ognun castigar!君は… あなたは… あなたは… あの… もう一人の… 私は 皆を 懲らしめたい! FANNÌ, CLARINA, EDOARDO E NORTONファンニ,クラリーナ,エドワルド と ノルトン Vi prego a calmarvi, voler perdonar.私は あなたに 懇願する 落ち着くように、許すつもりであるように。 |
a vista, vi prego, di farmi pagar. fare pagare 支払いを求める。これは当然、『商品』であるファンニを引き渡すことも意味する。 Ehi, Norton, quell'uomo a vista spicciate. spicciare には(客の要求に)すばやく応ずる という意味もある。 protesto quel giro: mi vo' vendicar. この protestare 抗議する,異議を申し立てる も商業用語。手形などの 支払/引受を拒絶する。 |
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| Allegro 4/4 C major |
SLOCKスルック (Slook depone la pippa e facendosi avanti)(スルックは パイプを 脇に置く そして 前に 向かう) Or che avete ben gridato,あなたが 十分に 怒鳴った 今こそ、 e vi siete ben sfogato;そして あなたが 十分に 感情を爆発させた 【今こそ】: posso dirvi una parola,私は 一言 言わなくてはならない、 mi volete un po' ascoltar?あなたは 私【の話】を 少し 聞きたいか? MILLミル Cosa dirmi voi potete?あなたが 私に 何を 言うことが できるというのか? SLOCKスルック Che voi solo il torto avete.あなた だけが 間違いを 持っている【間違っている】 ということを。 MILLミル (con foco)(火をもって【≒ 熱を込めて】) Torto io?私が 間違いを だって? SLOCKスルック Flemma: sì, torto.冷静さを: そうだ、間違いを。 (lo prende sotto il braccio e con confidenza)(彼を 腕の下で 掴む【≒ 彼と 腕を組む】 そして 秘密の話で【≒ ないしょで】) E da farvi vergognar:そして あなた【自身】を 恥ずかしいと思わなくては: Vostra figlia è un capitaleあなたの娘は 資産だ e sforzato, e ipotecato...そして 強いられた、そして 抵当に入れられた… MILLミル Ma...けれども… SLOCKスルック Zitto: ho appena cominciato.静かに: 私は 【話し】始めた ばかりだ。 Io potevo protestarvi,私は あなたの 支払を拒絶することが できた、 e la borsa danneggiarvi.そして あなたの財布に【≒ あなたの資金に】 損害を与えることが 【できた】。 MILLミル Ma...けれども… SLOCKスルック Zitto, flemma: lasciate mi parlar.静かに、冷静さを: 私に 話させなさい。 Ho scoperto un acquirente,私は 買い手を 見つけた、 ed io senza perder niente,そして 私は 何一つ 失うことなく、 ho girata la cambiale,手形を 裏書した、 e ceduto il capitale,そして 資産を 譲渡した、 che fruttare in capo a un annoそれは 1年先に un nipote vi farà.あなたに 孫を もたら 【↑】せるだろう。 MILLミル La mia figlia a un computista?私の娘が 会計係に? SLOCKスルック Siete ben di corta vista! Zitto.あなたは とても 目先が聞かない! 静かに。 Sir Milfort n'è innamorato:見るフォルト氏は 彼女に 恋をしている: Miss d'amarlo m'ha svelato:お嬢さんは 彼を 愛していることを 私に 打ち明けた: m'informai ch'è un uom d'onore,私は 情報を得た 彼が 名誉の男だと【≒ 紳士だと】、 cosa far contra l'amore?愛の神に 逆らって 何をするというのか? Taccio io: voi pur tacete:私は 黙っている: あなたも 黙っている: e al mio erede concedeteそして 私の相続人に 譲渡しなさい quell'amabile beltà.あの かわいらしい 美女を。 MILLミル (pensoso)(考え込んで) Uomo onesto! Vostro erede!誠実な男 だと! あなたの相続人 だと! SLOCKスルック Ve ne faccio piena fede!私は それを 完全に 保証する。 FANNÌファンニ Caro padre, se m'amate!親愛なる父よ、もし 私を 愛しているならば! EDOARDOエドワルド Ah signor, me l'accordate...ああ 旦那様、私に 彼女を 許可しなさい… CLARINAクラリーナ Deh, arrendetevi, signore...お願いだから、譲歩しなさい、旦那様… NORTONノルトン Siate tanto di buoncore!...あなたは 立派な心を 持っている!… SLOCKスルック (gridando)(大声を出して) Ci vuol tanto a dire un sì?はい と一言 言うのに それほどたくさん 必要かね? MILLミル (burbero)(ぶっきらぼうに) Sì: sposatevi.そうだ、結婚しなさい。 (li unisce)(彼らを 結びつける) FANNÌ, CLARINA, EDOARDO, SLOOK E NORTONファンニ,クラリーナ,エドワルド,スルック と ノルトン Oh! così!ああ! このように! EDOARDOエドワルド Tu sei mia!君は 私の女だ! FANNÌファンニ Tu mio!君は 私の男だ! FANNÌ E EDOARDOファンニ と エドワルド Oh contento!ああ 満足だ! SLOCKスルック (con compiacenza)(喜びをもって) Abbiam fatto un bel negozio私たちは 素晴らしい商取引を した nella lor felicità!彼らの 幸福において! MILLミル Abbracciatemi: giudizio:私を 抱擁しなさい: 良識を【≒ 道理をわきまえなさい】: e il negozio bene andrà.そうすれば 商取引は うまく 行くだろう。 |
che fruttare in capo a un anno fruttare には商業用語で 利益を生む の意味があり、これを 子を儲ける にかけている。 Sir Milfort n'è innamorato: ne = di lei。essere innamorato di ql.cu. ―に恋する。 Ve ne faccio piena fede! ne = di ciò そのことについて。fare fede di- ―を保証する。 |
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| Più mosso 4/4 C major |
FANNÌ, CLARINA, EDOARDO, MILL, SLOOK E NORTONファンニ、クラリーナ、エドワルド、ミル、スルック と ノルトン Come consola il coreいかに 心を 喜ばせた ことか un fortunato amore!幸運な 愛が! Brillar fa una bell'anima立派な 魂は 輝かさせる l'altrui felicità.他の人の幸福を。 |
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| APPENDICE | |||
| [N. 2] Duetto [Fanni-Edoardo] |
Più mosso 4/4 C major |
EDOARDOエドワルド Ma se tuo padre?...しかし もし 君の父親が?… FANNÌファンニ Ah, taci.ああ、黙りなさい。 EDOARDOエドワルド Se ad altri?...もし 他の人に?… FANNÌファンニ Non fia mai.決して 【≒ そうは】 ならない。 EDOARDOエドワルド Giura che mia sarai,誓いなさい 君が 私の女に なるであろう ことを、 né tradirai l'amor.君が 愛を 裏切らないであろう 【↑】ことを。 FANNÌファンニ Giuro che tua m'avrai私は 誓う 君が 私を 君の女に 獲得するであろう ことを né tradirò l'amor.私は 愛を 裏切らないであろう 【↑】ことを。 |
第2番 ファンニとエドワルドの二重唱 57から62小節(Allegroの最初の小節)までの異稿。ローマのサンタ・チェチーリア国立アッカデーミアに伝わる筆写譜に基づく。 56小節の後からここに移る。 63小節に戻る。 |
参考資料
GIACHINO ROSSINI LA CAMBIALE DI MATRIMONIO EDIZIONE CRITICA a curadi Eleonora di Cinto / FONDAZIONE ROSSINI / 2022 / ISBN 979-12-80640-43-7 / ISMN 979-0-7050971-2-2
LA CAMBIALE DI MATRIMONIO / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy / 2006
GIOACHINO ROSSINI LETTERE E DOCUMENTI VOLUME Ⅰ / FONDAZIONE ROSSINI PESARO / 1992
GIOACHINO ROSSINI LETTERE E DOCUMENTI VOLUME Ⅲa / FONDAZIONE ROSSINI PESARO / 2004
Dizionario Rossiniano / Eduardo Rescigno / Biblioteca Universale Rizzoli / 2002 / ISBN 88-17-12894-5 / 9788817128940
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Tobia MillPaolo Bordognabasso FannìDésirée Rancatoresoprano Edardo MilfortSaimir Pirgutenore SlookFabio Maria Capitanuccibasso NortonEnrico Maria Marabellibasso ClarinaMaria Gortsevskayasoprano Orchestra Haydn di Bolzano e Trento ConductorUmberto Benedetti Michelangeli RegiaLuigi Squarzina Ripresa della regiaGiovanni Scandella Scene e costumiGiovanni Agostinucci Lighting designerPietro Sperduti Maurizio Fabretti BPA Palas, Pesaro, Italy Agosto 2006 |
2006年のロッシーニ・オペラ・フェスティヴァル ROF での上演のライヴ収録。公演記録によると、公演は8月8、11、14、18日の4回。モーツァルト《第一戒律の責務 Die Schuldigkeit des Ersten Gebots》との二本立てだった。《結婚手形》は1991年のルイージ・スクワルジーナ演出の再演。
主要4役はいずれも若い歌手である。デジレ・ランカトーレが群を抜いて素晴らしく、サイミール・ピルグも美声が映えている。ファビオ・マリア・カピタヌッチも豪快な歌。パオロ・ボルドーニャは当時34歳で、ミルにはちょっと貫禄が不足している。
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Tobia MillVito Priantebasso FannìJulija Samsonovasoprano Edardo MilfortDaniele Zanfardinotenore SlookGiulio Mastrototarobasso NortonTomasz Wijabasso ClarinaFrancesca Russo Ermollisoprano Wurttembergische Philharmonie DirettoreChristopher Franklin RegiaAnnette Hornbacher SceneMatthias müler CostumiClaudia Möbius LuciKai Luczak Kurhaus, Bad Wildbad, Germany DVD 14 and 16 July 2006 CD 8, 14 and 16 July 2006 |
2006年、ヴィルトバートのロッシーニ Rossini in Wildbad での公演のライヴ収録。既に公式サイトの記録は消されてしまい、公演評なども見つからず、正確な上演日が分からなくなっている。7月8日が初日で、4回の公演があったという。
CD
OPERA / RICORDI / FONIT CETRA |
Tobia MillEnzo Darabasso FannìSoeun Jeunsoprano Edardo MilfortLuca Canonicitenore SlookRoberto Frontalibasso NortonStefano Rinaldi Milianibasso ClarinaMarilena Laurenzasoprano Orchestra Sinfonica di Torino della Rai DirettoreDonato Renzetti Auditorium Pedrotti, Pesaro, Italy Agosto 1991 |
1991年のロッシーニ・オペラ・フェスティヴァル ROF での上演のライヴ録音。公演記録によると、公演は8月19、22、24、26日の4回。 ROFで《結婚手形》が上演されるのはこれが初めてだった。
ドナート・レンゼッティの、ロッシーニの様式をしっかりわきまえた指揮が素晴らしく、安心して楽しめる。
歌手ではロベルト・フロンターリの逞しいスルックが最も映えている。1970、80年代を代表するバッソブッフォ、エンツォ・ダーラはさすがの巧さ。彼は空威張りしてもどこか情けない風情なのがミルに打ってつけだ。とはいえ声には少々衰えも出始めている。30歳だったルカ・カノーニチもたいへん瑞々しい声をしている。それだけにチョン・ソウンのかなり薄い声の歌が惜しい。
CD |
Tobia MillMichel Trempontbasso FannìEleanor Oldhamsoprano Edardo MilfortJean-Paul Fouchecourttenore SlookPeter Harveybasso NortonTill Fechnerbasso ClarinaMiriam Ruggerisoprano Le Concert Spirituel Clavecin et directionHervé Niquet Salle Wagram, Paris, France 22-25 June 1991 |
《結婚手形》の今のところ唯一のピリオド楽器演奏の録音。エルヴェ・ニケが1987年に創設したル・コンセール・スピリチュエルの比較的初期の録音の一つ。
ピリオド楽器演奏なのでフルートなどは雅な音色である。ただそれ以上に全体にフランス風の軽く上品なロッシーニになっている。
歌手も同傾向。ベルギーのバリトン、ミシェル・トランポンはこの録音の翌月に63歳を迎える頃で、ベテランの巧さを存分に発揮している。ただしイタリアのバッソブッフォとはやはり流儀がやや異なる。ジャン=ポール・フシェクールもいかにもフランスのテノールの味わい。ピーター・ハーヴィーも荒々しさのまったくない、洗練された植民地人を歌っている。エレアノール・オルダムは少し弱い。
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Tobia MillBruno Praticòbasso FannìAlessandra Rossisoprano Edardo MilfortMaurizio Comencinitenore SlookBruno de Simonebasso NortonFrancesco Facinibasso ClarinaValeria Baianosoprano English Chamber Orchestra Marcello Viotti All Saints Church, London, UK 20-23 August 1990 |
clavesが1988年から1992年にかけてマルチェッロ・ヴィオッティを起用してロッシーニのファルサ5作を録音したシリーズの1つ。当時として画期的な企画だったが、今となっては良し悪しある演奏になっている。
ブルーノ・プラティコが群を抜いて巧い。ブルーノ・デ・シモーネ(二人ともまだ30代前半だった)も達者だがかなり優男なスルックになっている。一方マウリツィオ・コメンチーニとアレッサンドラ・ロッシは今一つ。
マルチェッロ・ヴィオッティの指揮は十分素晴らしいが、ただ颯爽としたロッシーニという感じではない。
DVD |
Tobia MillJohn Del Carlobasso FannìJanice Hallsoprano Edardo MilfortDavid Kueblertenore SlookAlberto Rinaldibasso NortonCarlos Fellerbasso ClarinaAmelia Fellesoprano Radio-Sinfonieorchester Stuttgart Gianluigi Gelmetti Directed for StageMichael Hampe Stage DesignCarlo Tommasi CostumesCarlo Diappi Rokokotheater Schwetzingen, German 6-9 May 1989 |
1989年、ドイツ、シュヴェツィンゲン音楽祭での上演の収録。ジャンルイージ・ジェルメッティの軽快で切れ味の良い音楽がロッシーニに生きている。
まだロッシーニルネサンスがドイツにまで浸透していなかった頃の上演で、歌手は良し悪しある。ベテランのアルベルト・リナルディ(この公演の直後に50歳を迎えた)が圧倒的な存在感を誇るが、一方で細かい音符は滑りがちである。若い世代のジョン・デル・カルロ(彼はロッシーニのバッソブッフォも歌うが、万能型のバスである)は技術的にはより優れているが、スルックと(そしてノルトンと)一緒の時は貫禄負けしてしまっている。ジャニス・ホールは今一つ。当時65歳のカルロス・フェラーが強い存在感を放っている。
ミヒャエル・ハンペの演出はかなり台本に忠実に従った舞台作りで、安心して見ることができるが、一方で生真面目過ぎて舞台が固く、ファルサの味を損ねている面もある。
少々のカットが入っている。
CD |
Tobia MillRolando Paneraibasso FannìRenata Scottosoprano Edardo MilfortNicola Montitenore SlookRenato Capecchibasso NortonMario Petribasso ClarinaGiovanna Fioronisoprano I Virtuosi di Roma Renato Fasano Teatro Grande, Brescia, Italy 1959 |
これは長らく《結婚手形》の代表的録音だった。ロランド・パネライとレナート・カペッキ(共に35歳)の二人の達者なバリトンと、まだ国際的に注目されたばかりの若手ソプラノだったレナータ・スコットの瑞々しい歌が素晴らしい。二コラ・モンティは古いタイプのテノーレ・ディ・グラツィアの甘く柔らかい歌い方で、今日からするとだいぶ古めかしい歌い方だが、かといって悪いわけでもない。
戦後バロック復興においてイタリアではイ・ムジチと双璧だった、レナート・ファザーノ率いるイ・ヴィルトゥオージ・ディ・ローマ(日本では ローマ合奏団 と表記)の演奏は今でも古臭くない。
この録音は RICORDI の企画だが、録音を担当したのは当時の米国の新興レーベル Mercury だった。音質の良さで知られたレーベルだけに、1959年のイタリア録音としてはずば抜けて良好なステレオ録音。LP時代には何度も発売された名盤だが、CD時代になってからはほとんど世に出回らなくなってしまったのが惜しい。上記CDも海賊的なもの。