ROSSINI IL TURCO IN ITALIA

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最新更新 2026年09月20日

無断転載 厳禁

GIOACHINO ROSSINI

IL TURCO IN ITALIA

初演 1814年8月14日、ミラノ スカラ座
First performance 14 August 1814, Teatro alla Scala, Milano

台本 フェリーチェ・ロマーニ
Libretto Felice Romani

原作 フランツ・ヨーゼフ・ザイデルマンの同名作のためのカテリーノ・マッツォラによる台本
Original Libretto by Caterino Mazzolà for the same title , music by Franz Joseph Seydelmann

《イタリアのトルコ男》は、ロッシーニのオペラブッファの中でも特に個性的な傑作である。台本は皮肉が効いた 苦みのある喜劇 で、そこにロッシーニの充実した音楽が相乗し、通向きの傑作となった。この作品は20世紀後半以降、ことにここ数十年で人気が高まり、上演も盛んである。

目次

題名の日本語訳
作曲
初演
1815年ローマでの上演
19世紀の上演
20世紀の上演
台本
あらすじ
音楽

音楽設計図
登場人物

ATTO Ⅰ
Sinfonia
N. 1 INTRODUZIONE
Recitativo Dopo l'Introduzione
N. 2 CAVATINA DI D. GERONIO
Recitativo Dopo la Cavatina di D. Geronio
N. 3 CAVATINA FIORILLA, CORO, CAVATINA SELIME DUETTINO
N. 3-i Cavatina Fiorilla
N. 3-ii Coro, Cavatina Selim e Duettino Fiorilla - Selim
Cavatina Selim
Duettino Fiorilla - Selim
Recitativo, Cavatina Narciso (N. 3bis) e Recitativo
N. 4 TERZETTO
Recitativo Dopo il Terzetto
N. 5 QUARTETTO
Recitativo Dopo il Quartetto
N. 6 DUETTO Fiorilla - Don Geronio
N. 7 FINALE DELL'ATTO PRIMO
Coro di Fiorilla
Stretta del Finale Primo

ATTO Ⅱ
Recitativo
N. 8 DUETTO Don Geronio - Selim
Recitativo Dopo il Duetto
N. 9 CORO E CAVATINA FIORILLA
Recitativo Dopo il Coro e la Cavatina [Fiorilla]
N. 10 DUETTO Fiorilla - Selim
Recitativo Dopo il Duetto
N. 11 RECITATIVO ED ARIA NARCISO
Recitativo Dopo l'Aria Narciso
N. 12 ARIA ALBAZAR
N. 13 CORO
Recitativo Dopo il Coro
PRIMA RIPRESA DEL CORO
Recitativo Dopo la Prima Ripresa del Coro
SECONDA RIPRESA DEL CORO
Recitativo Dopo la Seconda Ripresa del Coro
N. 14 QUINTETTO
Recitativo Dopo il Quintetto
N. 15 RECITATIVO ED ARIA DI FIORILLA
ARIA DI FIORILLA
Recitativo Dopo l'Aria di Fiorilla
N. 16 FINALE SECONDO


APPENDICI ROMA 1815
N. 3-ia Cavatina Fiorilla
Recitativo, Cavatina Narciso (N. 3bis) e Recitativo
Recitativo Dopo il Duettino (N. 3-ii)
N. 3bis CAVATINA NARCISO
Recitativo Dopo la Cavatina Narciso (N. 3bis)
Recitativo per saltare il Coro e Cavatina Fiorilla (N. 9) e il Duetto Fiorilla-Selim (N. 10)
Recitativo Dopo l'Aria Narciso (N. 11)
N. 11bis ARIA GERONIO
Aria di Fiorilla con cabaletta modificata

参考資料

題名の日本語訳

Il turco in Italia は日本では長らく《イタリアのトルコ人》と訳されている。それで間違ってはいないものの、この台本での定冠詞付きの il turco はセリームを指しているというだけでなく、この台本では turco もしくは turchi は多くの場合で トルコ人の男 を意味していることは台本を読めば明らかである(第5番 四重唱 の台本などで分かる)。
さらに言えば、この作品では男と女の愛を鋭く考察しており、人 を用いて一括りにしてしまうとそれを曖昧にしてしまう。
この作品の内容を十分に理解した上で、なおもこの台本における turco、turchi を トルコ人 と訳すのは、無神経な行為とすら言える。それは L'italiana in Algeri を《アルジェのイタリア人》と訳すのと同じくらいの無神経さである。
こうした点から、オペラ御殿ではこの作品は《イタリアのトルコ男》と訳す。

作曲

先に結論を書いておくと、《イタリアのトルコ男》の制作に関してはほとんど何も分かっていない。関連する情報は極めて乏しく、ロッシーニがいつスカラ座から依頼を受けたのか、いつ頃どうしてこの題材が選ばれたのか、どうして台本作家にロマーニが起用されたのか、など分からないことばかりである。ロッシーニの作曲状況に関してしばしば有益な情報を提供するボローニャの母アンナへの手紙も、《イタリアのトルコ男》初演の前後2か月ずつ残されていない。

とりあえず1813年秋からのロッシーニの状況を時系列で見ていきたい。

1813年10月初頭、ロッシーニはカーニヴァルシーズンの開幕公演であるオペラセリア《パルミラのアウレリアーノ》の制作のためにミラノ入りする。

《イタリアのトルコ男》に関連すると思われる最初の言及は、1813年11月7日付でロッシーニがミラノからボローニャの母アンナに宛てた手紙に現れる。そこにはミラノのすぐ後、カーニヴァルシーズンの2つめのオペラを書くためにジェノヴァに行き、それから
大感傷的オペラを作るために すぐに ミラノに 戻ります
subito torno a milano a Fare la Gran' Opera Sentimentale

と書いている。【1】
そのおよそ半月後の11月24日付でロッシーニが母に宛てた手紙でもほぼ同様なことを書いているが、そこでは
大オペラブッファを書くために
per scrivere la Gran Opera Buffa

と変わっている。【2】
大感傷的オペラ や 大オペラブッファ が《イタリアのトルコ男》を指しているのかどうかは分からない。オペラの種類にブレがあることからすると、この頃はまだ題材は決まっていなかったと考えるべきだろう。

さて1813年、ミラノに新たな劇場が開場した。所有者のカルロ・レ Carlo Re の名前を冠して レ劇場 Teatro Re と称したこの劇場は、同年12月8日のこけら落とし公演にロッシーニ《タンクレーディ》をミラノ初演した。これにはロッシーニも関与し、いくらか手直しをした。これは大成功を収めた。

1813年12月26日、《パルミラのアウレリアーノ》初演。

ロッシーニは1814年1月10日頃にジェノヴァ入りしたが、上演されたのは新作オペラセリアではなく《タンクレーディ》だった(1814年1月29日 聖アゴスティーノ劇場 Teatro di Sant'Agostino)。新作オペラは春のシーズンに延期された。【3】

この後、母への手紙は2月17日付から4月9日付までの間残されておらず、ロッシーニが2月下旬から4月初旬までどこで何をしていたかはっきりしたことは分からない。

さて《タンクレーディ》ミラノ初演の大成功によってレ劇場から依頼があったことは疑いない。そして選ばれたのが《アルジェのイタリア女》だった。ヴェネツィアで大成功したこのオペラブッファは、これがミラノ初演で、やはりロッシーニが関与していくらかの手直しをした。1814年4月12日に始まった公演はこれまた大成功だった。

5月31日、スカラ座でモーツァルト《女は皆そうしたもの Così fan tutte》の公演が始まり、14回の公演という好評を得た。この時のフィオルディリージのフランチェスカ・マッフェイ=フェスタは《イタリアのトルコ男》でのフィオリッラに、グリエルモのフィリッポ・ガッリはセリームになる。ロマーニとロッシーニが観劇したのは間違いないだろう。

ロッシーニは6月初旬までミラノに滞在し、それからジェノヴァで新作オペラを披露するつもりだったのだろう、母宛ての5月17日付の手紙でも【4】、6月1日でも【5】 6月8日でも【6】、ジェノヴァ向けのオペラを書いているというようなことを書いている。
しかし結局ジェノヴァでは彼の新作オペラは上演されなかった。ロッシーニがジェノヴァを訪れたのかどうかすら分かっていない。
この6月8日付の手紙の後、母宛ての手紙は10月25日、ヴェネツィアから差し出されたものまで残されていない。

8月14日、スカラ座で《イタリアのトルコ男》が初演。

10月15日頃、ロッシーニはヴェネツィアに到着【7】、フェニーチェ劇場のカーニヴァルシーズン開幕公演のオペラセリア《シジスモンド》に取り掛かる。

以上のように見ても、やはり《イタリアのトルコ男》の制作の過程は見えてこない。
とはいえ、いくらかの推測ができないわけでもない。

かつては、4月のレ劇場での《アルジェのイタリア女》の大成功がスカラ座がロッシーニに新作オペラブッファを依頼するきっかけになったのではないかと推測されていた。しかし母宛ての手紙が明るみに出て、スカラ座からの依頼ないしは打診はもっと早い11月頃にあり、新作オペラブッファの初演は春のシーズンに予定されていたことが分かった。

5、6月にスカラ座で上演されたモーツァルト《女は皆そうしたもの》は、《イタリアのトルコ男》に強い影響を与えたと考えられている(⇒ 台本)。またロッシーニが《イタリアのトルコ男》 第3番での合唱で《ドン・ジョヴァンニ》で騎士長の像が現れる際の音楽が引用されていることからすると、この時期ロッシーニがモーツァルトのオペラに強い関心を持っていた様子が窺える。

ロッシーニの母宛ての手紙が明るみになってから、頓挫したジェノヴァ向けの新作オペラについて様々に推測されている。中には、6月にジェノヴァで上演しようと書き進めていたオペラが《イタリアのトルコ男》で、それがミラノに流れたのではないかという見方もある。しかしジェノヴァ向けの新作オペラについてはすべてが謎のままで、それと《イタリアのトルコ男》を結び付けるにはあまりにも情報が無さすぎる。

母宛ての手紙からはもう一つ情報が読み取れる。1814年月1月8日付【8】、2月17日付【9】【10】、6月8日付【11】の手紙で、ロッシーニは恋人について言及している。特に6月8日付の手紙では、メラーテ Merate (ベルガモの西20kmほどの町)で恋人の傍でジェノヴァ向けのオペラを書いていると書いている。これはスカラ座で《女は皆そうしたもの》が上演された直後である。
そこから、6月にロッシーニがメラーテでの恋人との甘い生活を楽しみ過ぎてミラノ入りが遅れ、結果作曲に時間が不足したのではないか、という推測もある。あり得る話ではあるのだが、しかしロッシーニのミラノ入りが遅れたといった新聞記事は見当たらない。

後述するように《イタリアのトルコ男》には協力者による代筆がある。第2番 ドン・ジェロ―ニオのカヴァティーナ、第12番 アルバザールのアリア、第16番 第2幕フィナーレ、そしてレチタティーヴォ。これはロッシーニが作曲に時間の余裕がなかったことを示唆している。
もう一つロッシーニが《イタリアのトルコ男》作曲の時間がひっ迫していたことが自筆総譜から窺える。Zaida をロッシーニは Zai-da と2音節に割り振って音楽を付けているのだが、自筆総譜では協力者の書いたレチタティーヴォの Zaida は Za-i-da と3音節に割り振られており、かつ -i- に強勢が入るようになっている。これはロッシーニと協力者の間で Zaida の読み方の共有が出来ていなかったことを示すのみならず、ロッシーニ自身も含めた誰もチェックして修正する余裕がなかったことを示唆している。【12】

ではこれらの状況を踏まえた上で、《イタリアのトルコ男》制作の仮説を立ててみよう。
ロッシーニは1813年11月頃にスカラ座から春のシーズンの新作オペラブッファの依頼を受けて題材を検討していた。しかしジェノヴァでのカーニヴァルシーズン後半での新作オペラセリアが延期になって春に上演することになって、その制作時間を確保するためにロッシーニはスカラ座への新作を秋に延期してもらった。台本制作は既に始まっていたが、しかしロッシーニはそれを気に入らなかった。彼は5月か6月に《女は皆そうしたもの》を見て大いに気に入り、自分もその路線のオペラブッファを書きたいと思う。6月にジェノヴァ向けのオペラを書く必要があったので、スカラ座の新作オペラブッファは一から新たな台本を書いてもらうのではなく、マッツォラの《イタリアのトルコ男》を取り上げ、《パルミラのアウレリアーノ》でやはり旧台本を手直ししてもらった若いフェリーチェ・ロマーニに手直ししてもらうことにした。ジェノヴァでのオペラが流れた後、ロッシーニは7月頃に《イタリアのトルコ男》を書き進めるも、予想以上に難航して時間が足らず、協力者の助けを必要とした。

この仮説がどこまで正しいのか、実際のところは新たな資料が見つからない限り分からない。が、現状最も無理のない仮説はこのようなものではないだろうか。

1 GIOACHINO ROSSINI LETTERE E DOCUMENTI VOLUME Ⅲa p. 49
2 ivid. p. 53
3 ivid. p. 59
4 ivid. p. 68
5 ivid. p. 69
6 ivid. p. 70
7 GIOACHINO ROSSINI LETTERE E DOCUMENTI VOLUME Ⅰ p. 64
8 GIOACHINO ROSSINI LETTERE E DOCUMENTI VOLUME Ⅲa p. 58
9 ivid. p. 63
10 ivid. p. 64
11 ivid. p. 70
12 クリティカルエディションではレチタティーヴォでも Za-da と2音節に修正し、それについての注釈を付けている。

初演

初演は1814年8月14日、ミラノ スカラ座で行われた。

セリーム
Selim
フィリッポ・ガッリ
Filippo Galli
バス
basso

ドンナ・フィオリッラ
D. Fiorilla
フランチェスカ・マッフェイ・フェスタ
Francesca Maffei Festa
ソプラノ
soprano

ドン・ジェローニオ
D. Geronio
ルイージ・パチーニ
Luigi Pacini
バス
basso

ドン・ナルチーゾ
D. Narciso
ジョヴァンニ・ダヴィド
Giovanni David
テノール
tenore

プロスドーチモ
Prosdocimo
ピエトロ・ヴァゾーリ
Pietro Vasoli
バス
basso

ザイダ
Zaida
アデライデ・カルパーノ
Adelaide Carpano
ソプラノ
soprano

アルバザール
Albazar
ガエターノ・ポッツィ
Gaetano Pozzi
テノール
tenore


マエストロ・アル・チェンバロ
Maestro al Cembalo
ヴィンチェンツォ・ラヴィーニャ
Vincenzo Lavigna

首席ヴァイオリン奏者
Primo Violino
アレッサンドロ・ロッラ
Alessandro Rolla

フィリッポ・ガッリ 1783-1853 はロッシーニ時代の極めて重要なバス。ロッシーニの初演に関わったものだけでも、《幸せな間違い》のバトーネ、《試金石》のアスドゥルバーレ、《アルジェのイタリア女》のムスタファ、《イタリアのトルコ人》のセリーム,《トルヴァルドとドルリスカ》のオルドウ公爵、《泥棒カササギ》のフェルナンド、マオメット2世のタイトルロール、《セミラーミデ》のアッスール。もちろんその他のロッシーニのバス役も各地で歌った。1830年にはドニゼッティ《アンナ・ボレーナ》初演 ミラノ でエンリーコを歌った。

フランチェスカ・マッフェイ・フェスタ 1778―1835 はナポリ生まれのプリマドンナ。1799年秋にはナポリで主役を担っており、デビューはもう少し前かもしれない。ナポリ、フィレンツェで活動した後、1803年から1805年までヴェネツィアを拠点にし、その後はミラノやローマでも活動した。1809年から1813年までパリの皇后劇場 Théâtre de l'Impératrice (オデオン劇場)に出演。イタリアに戻ってからはミラノ、トリノ、ナポリ、ヴェネツィア、ボローニャなどの主要劇場で活躍。1820年には短期間ながらミュンヘンでも歌った。最後の出演記録は1828年8月。ロッシーニのオペラの初演で歌ったのは《イタリアのトルコ男》のフィオリッラだけだが、各地でロッシーニのオペラのヒロインを数多く歌った。

ルイージ・パチーニ 1767―1837 は当時の高名なバッソブッフォ。トスカーナの山中の村ポピリオ(フィレンツェから北西に70km強)の生まれ。ローマとナポリで学んだ後、まずテノールで10年以上活動し十分な名声を博した。1804/05年のカーニヴァルシーズンからバッソ・ブッフォに転向。以来四半世紀に渡って、ミラノ、クレモナ、トリノ、ローマ、パヴィア、ボローニャ、ヴェネツィア、ジェノヴァなど、主として北、中部イタリアの諸都市で活躍した。数多くのオペラの初演に参加したが、中でもロッシーニ《イタリアのトルコ男》 1814 ミラノ でのドン・ジェローニオ役として名高い。また初演ではないが、1815年8月9日から始まったミラノ、スカラ座での《アルジェのイタリア女》ではタッデーオを歌い、この公演は49回の上演という大成功を収めた。作曲家ジョヴァンニ・パチーニは息子。

ジョヴァンニ・ダヴィド 1790―1864 は、当時の若い世代の優秀なテノール。父親も高名なテノールで、その教えで1808年にはデビューしていた。1814年《イタリアのトルコ男》 ミラノ でナルチーゾを歌った(その9か月前にスカラ座での《パルミラのアウレリアーノ》初演でタイトルロールを歌う予定だったが、病気降板した)。その後ナポリに移り、ここでロッシーニのオペラの重要なテノールとして活躍した。初演では、《オテッロ》 1816 のロドリーゴ、《リッチャルドとゾライデ》 1818 のリッチャルド、この《エルミオーネ》のオレステ、《湖の美女》 1819 のジャコモ5世、《ゼルミーラ》 1822 のイーロを歌った。

ピエトロ・ヴァゾーリについてはあまり詳しい情報がないが、1805年から1838年まで30年以上の出演記録が残されており、そのうち1810年から1824年までは専らミラノ スカラ座に出演しており、スカラ座の座付きのバリトンだったようである。ロッシーニのオペラの初演では、《試金石》 1812 ミラノのパクーヴィオ(これも詩人役)、《イタリアのトルコ男》の詩人を歌った。他にも数多くのオペラに出演しており、当時の大人気オペラであるステーファノ・パヴェージ Stefano Pavesi 《マルカントーニオ氏 Ser Marcantonio》 1810 ミラノ初演 でパスクィーノを歌った。

《イタリアのトルコ男》の初演の評判は、少なくとも初日の直後の公演評では芳しいものではない。
8月20日付の Corriere delle Dame 紙にはこのようにある。

このオペラブッファの音楽は むしろマエストロの名声と同じくらい素晴らしい; というのも 彼は この作品に その核となるように この見事な若い作曲家によって書かれた《アルジェのイタリア女》や《試金石》、その他のオペラで惜しみなく用いられた 散りばめられた韻律の美しさや宝石を 積み上げたからである。おそらくロッシーニ氏は この劇の台本が、イタリア人の愛人や夫の習慣を嘲るために ドレスデンで書かれた陳腐なものであることを 考慮したのだろう、そうすることによって 彼の以前の作品の美に少しばかり偏愛して 自分自身を焚きつけようとしたのだ。《アルジェのイタリア女》には夫が必要だった。そこで 詩人とマエストロの実り豊かな才能は、《イタリアのトルコ男》との結婚の立会人を務めた。この婚姻から子孫は生まれるであろうか?… 観客は、この結婚の床が実りをもたらさないことを願っている。[…]ロッシーニ氏は疑いなく音楽の天才である。しかし今回は 彼は 平凡な才能であることを望んだようだ。

La musica di quest'opera buffa è anzi tanto grande, quanto lo è la celebrità del maestro; poichè egli ha in essa come in suo centro rammassate le sparse bellezze e giojelli metrici, che trovansi dispersi nella Italiana in Aigeri, nella Pietra del paragone, ed in altre opere scritte da questo bravo e giovane compositore. Ed in ciò fare, il sig. Rossini ha forse considerato che essendo la poesia di questo dramma un transunto di rancio libretto, scritto a Dresda per mettere in ridicolo i costumi degli amanti e de' mariti italiani; cosi egli ha voluto folleggiare con se medesimo, facendo un po' il pazzo amoroso colle bellezze delle precedenti sue composizioni. L'Italiana in Algeri aveva bisogno di un marito; ed il fecondo ingegno del poeta e del maestro han servito da testimoni a maritarla col Turco in Italia. Nasceranno dei figli da questo connubio? ... Il pubblico desidera che il toro nuziale rimanga sterile. [...] Il signor Rossini senza dubbio è un genio per la musica; ma questa volta ha voluto essere un genio mediocre.


つまり、題材が面白くないのでロッシーニは自作の良いところを集めたが良い結果ではなかった、といった論調である。
この評はかなり的外れである。まず《イタリアのトルコ男》には《アルジェのイタリア女》や《試金石》からの直接更生された音楽はないし、そもそも旧作からの更生そのものが少ない。また音楽の性格も、爆発的な笑いのエネルギーに満ちた《アルジェのイタリア女》などとはかなり異なる。第2幕の五重唱でのカノン風の音楽を用いた見事な音楽や、ほとんどオペラセリアのようなフィオリッラの大アリアは、それまでのロッシーニのオペラブッファには見られないものだ。また同じトルコものでありながら、《アルジェのイタリア女》のムスタファと《イタリアのトルコ男》のセリームではまったく性格が(そして音楽も)異なる。台本に関しては、後述するように、ロッシーニ自身がこうした題材を強く望んだ可能性がある。

8月16日付の Corriere milanese 紙の評は、大半がインテリ臭い内容だが、以下の部分はなかなか有益な情報だ。

私は 導入、パチーニのアリア、フェスタのカヴァティーナ、ガッリの登場の音楽、二重唱、三重唱、五重唱を聞く… 私は検討し、考え、認識し、そして 私の近くの、極めて控えめな男性に言った。これは 彼の優良なワイン畑のワインだ; 彼は少し大きな声で 誤ったものにされた新版だ と私に付け加えた;[…] 大きな拍手が 第1幕のフィナーレとマエストロの舞台への登場に 敬意を表した、私も自ら進んで喝采に参加した、ある状況では 二つのさらなる手も無駄ではないからだ。
Ascolto l'introduzione, l'aria di Pacini, la cavatina della Festa, la sortita di Galli, un duetto, un terzetto, un quintetto...., esamino, penso, riconosco, e dico all'orecchio del mio vicino, uomo discretissimo, C EST DU VIN DE SON CRU; nuova edizione scorretta, mi soggiuns'egli un po' forte; [...] un applauso rinforzato onorò il fnale dell atto primo e la comparsa del maestro sul palcoscenico, lo mi unii di buon grado ai plaudenti, giacch&eacut; due mani di più non sono inutili in certe circostanze,


C'est du vin de son cru はフランス語で、cru は優良で信頼のあるワイン畑を指す用語である。評者の発言は、これはロッシーニの優れた才能から生み出された優良な作品である、といった意味なのだが、一方でここから熱狂や絶賛は感じられない。隣席の男の返答は、ロッシーニの水準にある作品だがその範囲内ではあまり出来は良くない、といった意味である。

どちらの評からも 期待外れ という論調が窺える。
ところが実際には《イタリアのトルコ男》は、8月14日から9月6日までに13回の公演があったので、十分な成功を収めたと言える。
これらの芳しくないのは、評者たちがこの個性的な作品をあまり良く理解できなかったからだろう。その背景には、4か月前のレ劇場での《アルジェのイタリア女》の大成功があるのだろう。ミラノの観客のロッシーニの新作オペラブッファへの期待は極めて高まったのだが、彼らが望んでいたのは《アルジェのイタリア女》のような捧腹絶倒のオペラであって、《イタリアのトルコ男》のような男女の愛を斜に構えて扱ったものではなかったのだ。評者は肩透かしを喰らったのではないだろうか。

ともかくも《イタリアのトルコ男》はその後各地で頻繁に上演されるようになった。これについては別項を。

1815年 ローマ稿

ロッシーニは1815年からナポリを拠点とする。10月4日、サン・カルロ劇場での《英国女王エリザベッタ》でナポリへの初オペラを披露した後、同月にフィオレンティーニ劇場で《幸せをもたらす策謀》と《アルジェのイタリア女》(10月28日)を上演した。
それが済むと、10月末頃にロッシーニはローマへ移った。この1815/16年のローマのシーズンでは、有名な《セビリアの床屋》が2月20日に初演されることになるのだが、本来の目的はヴァッレ劇場でのカーニヴァルシーズンの開幕演目《トルヴァルドとドルリスカ》(12月26日初演))の制作だった。
その前の11月7日にロッシーニは《イタリアのトルコ男》を改訂して上演している。この時の出版台本が残されていないので、上演形態の詳細には不明な点もあるものの、筆写総譜が3種残されており、概要は判明している。

変更点は以下の通り。
第2番 ジェロ―ニオのカヴァティーナ(協力者の作曲した曲)を省略。
第3番のうち、フィオリッラのカヴァティーナが、新たに作曲されたカヴァティーナ Presto amiche, (N. 3-ia)に差し替え。
第3番の後に新たなナルチーゾのカヴァティーナ Un vago sembiante (N. 3bis)を挿入。
第8番 ドン・ジェローニオとセリームの二重唱の後、その後のレチタティーヴォ、第9番 合唱 とその後のレチタティーヴォ、第10番 フィオリッラとセリームの二重唱 を省略、新たなレチタティーヴォを挿入し、そして 第10番 二重唱 の後のレチタティーヴォの途中に続ける。
第11番 ナルチーゾのアリア の後に、新たなジェロ―ニオのアリア Se ho da dirla avrei molto piacere を挿入。
第12番 アルバザールのアリア (これも協力者の書いた曲)を省略。
第15番 フィオリッラのアリアのカバレッタ L'infelice, che opprime sventura, をより装飾の込んだ音楽に変更。

協力者が作曲した 第2番 ジェロ―ニオのカヴァティーナ と 第12番 アルバザールのアリア が省略されたのは不思議ではない。脇役アリアの後者はともかく、前者をロッシーニが新たに自分で書き直さなかったのは、その時間が無かったからだろう。一方、やはり協力者の書いた第2幕フィナーレはさすがに省略できなかった。

第3番の冒頭のフィオリッラのカヴァティーナ Non si da follia maggiore は初演後あまり好評でなかったようで、初演の数か月後のフィレンツェ、ペルゴラ劇場での上演では既に別の詳細不明のアリアに差替えられていた。また1816年春、ヴェネツィア、サン・ベネデット劇場ではここは省略された。Non si da follia maggiore を用いていることが確認できる上演は、1816年11月30日、ドレスデン(ドイツ初演)、1819年、ミュンヘンなど限られている。
ロッシーニは1815年、ローマでの上演でこのカヴァティーナを、より簡潔でより華やかな Presto amiche, に差替えた。この新しいカヴァティーナは、最高音に高い変ホ音が記譜されているのが特徴である。後の19世紀の《イタリアのトルコ男》の上演ではほぼこの新しいカヴァティーナが歌われたと思われる。ちなみにロッシーニはこのカヴァティーナを《新聞》 1816 ナポリ で更生している。

第11番bis ジェロ―ニオのアリア(とその前のレチタティーヴォ)は、バッソブッフォのための素晴らしいアリアで、見事に歌い切れば喝采を浴びること間違いなしの傑作である。もっともこの追加アリアは、19世紀でも、近年でも、採用されることは少ない。物語の展開とはほとんど無関係なことと、五重唱の前にジェロ―ニオに負担をかけること、そして何よりそもそも技術的に難易度が高いからだろう。ローマの次にこの曲が出版台本に現れるのは 1816年夏、ヴィチェンツァ、エレテーニオ劇場 や 1818年春、ペーザロ、パッラコルダ劇場である。

※普請中※

1820年 ナポリ稿

ロッシーニはナポリ時代の1820年4月、ヌオーヴォ劇場で《イタリアのトルコ男》を取り上げている。

セリーム
Selim
アントーニオ・タンブリーニ
Antonio Tamburini
バス
basso

ドンナ・フィオリッラ
D. Fiorilla
マリア・カンタレッリ
Maria Cantarelli
ソプラノ
soprano

ドン・ジェローニオ
D. Geronio
ジェンナーロ・ルツィオ
Gennaro Luzio
バス
basso

ドン・ナルチーゾ
D. Narciso
ジュゼッペ・クレスピ
Giuseppe Crespi
テノール
tenore

プロスドーチモ
Prosdocimo
ジェンナーロ・ルツィオ子 (ジェンナリーノ・ルツィオ 通称パッポーネ)
Gennaro Luzio il giovane (Gennarino Luzio, detto Pappone)
バス
basso

ザイダ
Zaida
テレーザ・チェッコーニ
Teresa Cecconi
ソプラノ
soprano

ゾレマ
Zorema
クレメンティーナ・チェッコーニ
Clementina Cecconi


タリンダ
Talinda
マリアンナ・チェッコーニ
Marianna Cecconi


ナルブート
Narbut
ジュゼッペ・パピ
Giuseppe Papi


ジプシー男
Un Zingaro
フランチェスコ・サヴェーリオ・ラナウド
Francesco Saverio Ranaudo







首席ヴァイオリン奏者、指揮者
Primo Violino, e Direttore dll'Orchestra
ジョヴァンニ・デ・ロレンツォ
Giovanni de Lorenzo

ナポリでの上演は、ミラノでの形態から大きく改変された。

レチタティーヴォセッコはすべて散文の語りに置き換えられた。
ジェロ―ニオはナポリ語で歌語り、かつフィオリッラの夫ではなくフィオリッラの後見人にされた。
第2番 ジェロ―ニオのカヴァティーナ(協力者の書いたもの)は削除。
フィオリッラの登場のカヴァティーナは、ローマの時と同様、Presto amiche, に差替えられた。
ナルチーゾの登場のカヴァティーナとして、《アルジェのイタリア女》のリンドーロのカヴァティーナ Languir per una bella が挿入された。
第2幕 第8番 ジェロ―ニオとセリームの二重唱は、音楽はそのままに 詩人とセリームの二重唱 に変更。
第2幕 第14番 五重唱は 詩人が加わった六重唱になった。
アルバザールが削除され、代わりに
ナポリのオペラブッファではナポリ語のバッソブッフォが活躍する伝統があった。ナポリ語のバッソブッフォではカサッチャ一族、ことにカルロ・カサッチャ Carlo Casaccia 1768―? (《新聞》のドン・ポンポーニオの創唱者)が有名だが、ジェンナーロ・ルツィオ Gennaro Luzio 1740―? はその2世代上のナポリ語のバッソブッフォの名歌手。1820年は引退する前年で、彼は80歳頃だった。

詩人の ジェンナーロ・ルツィオ は彼の子で、区別のためしばしば ジェンナリーノ・ルツィオ Gennarino Luzio と呼ばれ、また パッポーネ Pappone の通称でも知られていた。

アントーニオ・タンブリーニ 1800―1876 は1820、30年代にドニゼッティやベッリーニの多くのオペラの初演に関わったことで知られる名バス(今日でいうバリトン)。とりわけベッリーニ《清教徒》 1835 パリ 初演のリッカルドと、ドニゼッティ《ドン・パスクワーレ》 1843 パリ 初演のマラテスタとして知られる。1820年は彼はまだデビューして2年の若手だった。

マリア・カンタレッリは、《絹のはしご》初演 1812 ヴェネツィア のジューリアとして知られている。彼女は基本的に北部中部イタリアで活躍していたが、1820年春から冬にかけてはナポリのヌォーヴォ劇場で活動していた。さらなる略歴は《絹のはしご》でのものを。


※普請中※

19世紀の上演

《イタリアのトルコ男》は、1830年代までは頻繁に上演され、1840年代でも散発的な上演があった。

確認できた主な公演を列挙する。

1814/15年、カーニヴァルシーズン、フィレンツェ、ペルゴラ劇場。フィオリッラの登場のカヴァティーナは T'intendo o dolce amore という詳細不明の曲に差し替えられた。第3番の後にナルチーゾの登場のアリアとして《アルジェのイタリア女》のリンドーロのアリア Languir per una Bella を挿入。

1816年春、ヴェネツィア、サン・ベネデット劇場。フィオリッラの登場のカヴァティーナは削除された。ナルチーゾは登場の際 Da mille affannni oppresso という正体不明のカヴァティーナを歌う。

1816年夏、ヴィチェンツァ、エレテーニオ劇場。フィオリッラの登場のカヴァティーナは Presto amiche,。 1816年秋、ボローニャ、コルソ劇場。ローマ稿での改訂がかなり反映された。フィオリッラの登場のカヴァティーナは N. 3-ia Presto amiche, に差し替え。ナルチーゾのN. 3bis Un vago sembiante を採用。 第2幕 第9番と第10番(とそれに関連するレチタティーヴォ)を省略。その一方でジェロ―ニオの追加アリア N. 11bis Se ho da dirla avrei molto piacere は採用されていない。


※普請中※

確認できた19世紀最後の上演は、1853年7月、ミラノ、ヌオーヴォ・ディ・サンタ・ラデゴンダ劇場 Teatro nuovo di Santa Radegonda。7月11日付のミラノ音楽新聞 Gazzetta Musicale di Milano に公演評が載っており、それによると、ジェロ―ニオがヴィンチェンツォ・ガッリ Vincenzo Galli(フィリッポの弟、当時55歳くらい)、フィオリッラが ロジーナ・ヴィリアルド Rosina Vigliard、セリームが フォルトゥナート・ゴレ Fortunato Gorè、ナルチーゾが アキッレ・エッラーニ Achille Errani。公演は成功だった。なおCoragoには他のキャストの名前も出ている。

ドイツ語圏での初演は、1816年11月30日、ドレスデン、イタリア語。 【1】 フィオリッラのカヴァティーナはオリジナルの Non si da follia maggiore を用いている。
なおドイツ語での初上演は、1819年4月23日、シュトゥットガルト。フランツ・カール・ヒーマー Franz Carl Hiemer の訳詞による。 【2】

スペイン初演は、1818年10月14日、マドリッド。 【3】

オーストリア初演は、1820年3月、ウィーン、ドイツ語訳詞。 【4】

英国の The HARMONICON 1830 p. 286 によると、ロンドンで1821年5月19、22、26、29日、6月5、8、19、30、7月10、17、26、28日、8月11日と《イタリアのトルコ男》が上演されており、おそらく1821年5月19日が《イタリアのトルコ男》の英国初演だと思われる。これについて
《イタリアのトルコ男》では ベニス夫妻が初めて現れた。
Il Turco in Italia, in which Signor and Madame De Begnis made their first appearance.

と書いている。ベニス夫妻とは ジュゼッペ・デ・ベニス Giuseppe de Begnis 1793―1849 と ジュゼッピーナ・(ロンツィ・)デ・ベニス Giuseppina (Ronzi) de Begnis 1800―1853 のこと。

米国初演は 1826年3月14日 ニューヨーク パーク劇場 Park Theater。高名なテノール、マヌエル・ガルシア Manuel Garcia 1775―1832(《セビリアの床屋》初演のアルマヴィーヴァ伯爵)の一座による新大陸公演の一つだった。 【5】 この公演は彼の娘で当時17歳(3月24日に18歳を迎える)だったマリア・マリブラン Maria Malibran 1808―1836 も出演したが、彼女は、さすがにフィオリッラではなく、ザイダだった。 【6】

※普請中※

1, 2, 3, 4 Annals of opera, 1597-1940 p. 1814 / Alfred Loewenberg
5 MANUEL GARCÍA (1775-1832) p. 202/ James Radomsky / OXFORD UNIVERSITY PRESS / 2000 / 0-19-816373-8 6 MALIA MALIBRAN A Bioglaphy of the singer p. 33/ Howard Bushnell / 1979 / The Pensylvania University Press

20世紀の上演

《イタリアのトルコ男》の近代蘇演は、ロッシーニのオペラにはありがちなことだが、2段階ないしは3段階で復活している。

20世紀の《イタリアのトルコ男》のおそらく最初の上演は、マリア・カラスがフィオリッラを歌ったことでよく知られている。1950年10月19、22、25、29日、ローマ、エリゼオ劇場 Teatro Eliseo。セリームが セスト・ブルスカンティーニ Sesto Bruscantini、フィオリッラが マリア・カラス Maria Callas、ジェロ―ニオが フランコ・カラブレーゼ Franco Calabrese、ナルチーゾが チェーザレ・ヴァッレティ Cesare Valletti、詩人が マリアーノ・スタービレ Mariano Stabile、ザイダが アンナ・マリア・カナーリ Anna Maria Canali、アルバザールが アンジェロ・メルクリアーリ Angelo mercuriali。指揮が ジャナンドレア・ガヴァッゼーニ Gianandrea Gavazzeni。演出が ジェラルド・グエッリエーリ Gerardo Guerrieri、装置と衣装が ミーノ・マッカーリ Mino Maccari。会場のエリゼオ劇場は歌劇場ではなく専ら演劇が主の劇場で、座席数も800席弱の中劇場である。この公演は大きな評判となり、《イタリアのトルコ男》は再び脚光を浴びることになった。ただし、おそらく用いられた楽譜は次の商業録音と同様に省略の多いものだったと思われる。

ローマでの公演の成功から、《イタリアのトルコ男》は、イタリアのみならず、ヨーロッパ各地で上演されるようになった。

1954年8月31日から9月8日、ミラノ、スカラ座で英Columbia(後のEMI、さらにWarner Classics)が《イタリアのトルコ男》の初の商業録音を行った。セリームが ニコラ・ロッシ=レメーニ Nicola Rossi-Lemeni、フィオリッラが マリア・カラス Maria Callas、ジェロ―ニオが フランコ・カラブレーゼ Franco Calabrese、ナルチーゾが ニコライ・ゲッダ Nicolai Gedda、詩人が マリアーノ・スタービレ Mariano Stabile、ザイダが ヨランダ・ガルディーノ Jolanda Gardino、アルバザールが ピエロ・デ・パルマ Piero de Palma。オーケストラと合唱はスカラ座のもの。この録音は以降四半世紀に渡って《イタリアのトルコ男》の唯一の商業録音として広まった。しかしこの時用いられた楽譜はカットがたいへんに多く、ことに物語的にも音楽的にも極めて重要な第15番 フィオリッラの大アリアが省略されているのは致命的だ。そのため仮面舞踏会の五重唱でセリームに変装したナルチーゾと立ち去ったフィオリッラは、なぜか反省して家に戻ってジェロ―ニオと和解することになってしる。この録音は《イタリアのトルコ男》を不正確な形態で知らしめてしまった。

翌1955年、ミラノ、スカラ座で舞台上演。公演記録。1955年4月15、18、21、23日、5月4日の5公演。セリームが ニコラ・ロッシ=レメーニ Nicola Rossi-Lemeni、フィオリッラが マリア・カラス Maria Callas、ジェロ―ニオが フランコ・カラブレーゼ Franco Calabrese、ナルチーゾが チェーザレ・ヴァッレティ Cesare Valletti、ザイダが ヨランダ・ガルディーノ Jolanda Gardino、アルバザールが アンジェロ・メルクリアーリ Angelo mercuriali。シングルキャスト。指揮が ジャナンドレア・ガヴァッゼーニ Gianandrea Gavazzeni。演出は32歳の若きフランコ・ゼッフィレッリ Franco Zeffirelli。この公演も大きな評判を呼んだ。

1957年8、9月、英国、スコットランド、エジンバラの国王劇場 King's Theater でスカラ座の引っ越し公演が行われた。1957年8月30日、9月2、4、6日の4公演。セリームが セスト・ブルスカンティーニ Sesto Bruscantini、フィオリッラが エウジェニア・ラッティ Eugenia Ratti、ジェロ―ニオが フランコ・カラブレーゼ Franco Calabrese、ナルチーゾが ルイージ・アルヴァ Luigi Alva、詩人が フェルナンド・コレナ Fernando Corena、ザイダが フィオレンツァ・コッソット Fiorenza Cossotto、アルバザールが アンジェロ・メルクリアーリ Angelo mercuriali。シングルキャスト。指揮が ジャナンドレア・ガヴァッゼーニ Gianandrea Gavazzeni。

1958年4、5月、スカラ座で再演があったが、この時はピッコラ・スカラ(小劇場)での上演だった。1958年4月11、15、18、25日、5月5日、5公演。前年エジンバラ公演から詩人が ジューリオ・フィオラヴァンティ Giulio Fioravanti に代わっただけで後は変わらず。

時間を少し戻すと、1955年3月、ナポリで《イタリアのトルコ男》の上演があった。セスト・ブルスカンティーニの評伝 Una vita per l'opera conversazioni con Sesto Bruscantini に掲載された公演記録によると、1955年3月16―18日、王宮劇場 Teatro di Corte。セリームが セスト・ブルスカンティーニ Sesto Bruscantini、フィオリッラが グラツィエッラ・シュッティ Graziella Sciutti、ジェロ―ニオが メルキオッレ・ルイーゼ Melchiorre Luise、ナルチーゾが アゴスティーノ・ラッザーリ Agostino Lazzari、詩人が マリアーノ・スタービレ Mariano Stabile、ザイダが ラウラ・ディディエル Laura Didier。指揮が ヴィットーリオ・グイ Vittorio Gui。演出は フランコ・エンリケス Franco Enriquez。この公演には25歳のピエール・ルイージ・ピッツィ Pier Luigi Pizzi も携わっていたという。

このナポリの上演と関係していると思われる公演が1957年、パリで催された。ニューヨーク・タイムズ 1957年7月28日付の パリの国際音楽祭 という記事に公演評があり、全体に好評なうえ、フィオリッラのラッティを絶賛している。ライヴ録音が残されており、そのCDによると、セリームが ニコラ・ロッシ=レメーニ Nicola Rossi-Lemeni、フィオリッラが エウジェニア・ラッティ Eugenia Ratti、ジェロ―ニオが メルキオッレ・ルイーゼ Melchiorre Luise、ナルチーゾが アゴスティーノ・ラッザーリ Agostino Lazzari、詩人が マリアーノ・スタービレ Mariano Stabile、ザイダが ヨランダ・ガルディーノ Jolanda Gardino、アルバザールが レナート・エルコラーニ Renato Ercolani。指揮が オリヴィエーロ・デ・ファブリティース Oliviero De Fabritiis。演出は、ニューヨーク・タイムズの記事によると、エンリーコ・フリジェーリオ Enrico Frigerio。

1958年、イタリアのRAIミラノが《イタリアのトルコ男》の放送録音を行った。セリームが セスト・ブルスカンティーニ Sesto Bruscantini、フィオリッラが グラツィエッラ・シュッティ Graziella Sciutti、ジェロ―ニオが フランコ・カラブレーゼ Franco Calabrese、ナルチーゾが アゴスティーノ・ラッザーリ Agostino Lazzari、詩人が シピオ・コロンボ Scipio Colombo、ザイダが レナータ・マッティオーリ Renata Mattioli、アルバザールが フロリンド・アンドレオッリ Florindo Andreolli。指揮が ニーノ・サンツォーニョ、RAIミラノのオーケストラと合唱団。なおこの収録は映像のためだったようで、YouTubeには同じ出演者によるオペラ映画がアップされている。

これらのうち録音の残っている1957年パリ公演と1958年ミラノの放送録音は、いずれもフィオリッラの大アリアを欠いており、つまりガヴァッゼーニが指揮した楽譜と同じもののようである。《イタリアのトルコ男》はしばらくこの形で上演され続けたと思われる。

1960年2月、ヴェネツィア、ラ・フェニーチェ劇場で公演。公演記録。2月4、7、9日の3公演。出演者などはリンク先を。歌手は1955年のナポリ公演や1958年のRAI放送録音とかなり共通している。

1965年、珍しいオペラを演奏会形式で紹介することで知られた、米国、ニューヨークのアメリカン・オペラ・ソサエティ American Opera Society がカーネギー・ホールで《イタリアのトルコ男》を演奏会形式で上演した。The New York Times 紙の2月24日号に公演評が載っている。セリームが ジョルジョ・タデオ Giorgio Tadeo、フィオリッラが ジュディス・ラスキン、ジェロ―ニオが エルフェゴ・エスパルサ、ナルチーゾが ジェロルド・シエナ Jerold Siena、詩人が シェリル・ミルンズ Sherrill Milnes、ザイダが ベティ・アレン Betty Allen、アルバザールが L. D. クレメンツ L. D. Clements。指揮が ジョン・プリッチャード John Pritchard。
ちなみにこのニューヨークタイムズ紙の評では作品を酷評している。
それはあまり良いオペラではなく、そしてそれはロッシーニの型にはまったテクニックの良い例である。アリアとアンサンブルは 予め決められた順序で互いに続き、すべてだいたい同じように形作られており、ロッシーニの偉大な腕前で書かれているが しかし彼の旋律のひらめきはとても乏しい。
と、まるで初演時の新聞評と同じような論調である。この頃はまだ《イタリアのトルコ男》の真価が認められていなかったことが窺える。

1966年、オーストリアの野外オペラ祭、ブレゲンツ音楽祭で公演があった。Austrian Information紙 1966年7月1日号のこの音楽祭の公演案内によると、《イタリアのトルコ男》は8月12、16、18、19日の4公演。ここにはこれ以上の情報はないが、指揮者はヴィットーリオ・グイ Vittorio Gui で、検索すると信頼度の高いサイトではないが出演者の情報も見つかる。

1968年1月、ローマ歌劇場で公演。公演記録。1969年1月12、14、16、19、22日の5公演。セリームが セスト・ブルスカンティーニ Sesto Bruscantini、フィオリッラが グラツィエッラ・シュッティ Graziella Sciutti、ジェロ―ニオが パオロ・モンタルソロ、ナルチーゾが ウンベルト・グリッリ、詩人が ウンベルト・リナルディ Umberto Rinaldi、ザイダが エレナ・ツィリオ Elena Zilio、アルバザールが アゴスティーノ・ラッザーリ Agostino Lazzari。指揮が フランチェスコ・クリストフォリ Francesco Cristofoli。演出が カルロ・ピッチナート Carlo Piccinato、装置と衣装が ゴットフリート・ノイマン・シュパラルト Gottfried Neumann Spallart。

1970年6、7、8月には英国、グラインドボーン音楽祭で公演。公演記録。6月14、16、18、20、24、26、28、30日、7月2、4、10、13、21、26、30日、8月4日の16公演。出演者はリンク先を。7月10日以降のいずれかの公演のライヴ録音の音声がYouTubeに上がっており、ここでは第15番 フィオリッラの大アリアが歌われていることが分かる。なおこのプロダクションは同年春と秋に各地でツアーも行われた。

他にも公演はあったろうが、このように1950年代から70年代半ばまでは《イタリアのトルコ男》は散発的に上演がある程度で、ロッシーニの他の傑作オペラブッファに比べると人気はだいぶ低かった。

《イタリアのトルコ男》の転機は1978年、米国のニューヨーク・シティ・オペラの公演である。New York 紙(通称ニューヨーク・マガジン New York Magazine)1978年10月9日号には、1978年10月4、8日の公演案内と、(おそらく練習段階で取材したであろう)評が載っている。この公演は アンドルー・ポーター Andrew Porter による英語訳詞による The Turk in Italy だった。ロッシーニ研究の権威 フィリップ・ゴセットの提供した情報によって従来よりもはるかにロッシーニの意図したとおりの状態で上演された。セリームが ドナルド・グラム Donald Gramm、フィオリッラが ベヴァリー・シルズ Beverly Sills、ジェロ―ニオが ジェイムズ・ビリングズ James Billings、ナルチーゾが ヘンリー・プライス Henry Price、詩人が アラン・タイタス Alan Titus、ザイダが スザン・マルセー Susanne Marsee、アルバザールが ジョナサン・グリーン Jonathan Green。指揮が ジュリアス・ルーデル Julius Rudel。演出が ティート・カポビアンコ Tito Capobianco。装置と衣装が ジョン・コンクライン John Conklin。YouTubeに、かなり悪い画質だが、全曲の映像が上がっており、第11番のナルチーゾのアリアも、第15番のフィオリッラの大アリアも歌われていることが確認できる。一方第12番 アルバザールのアリアは省略している。また第3番のうちフィオリッラのカヴァティーナは、近年の上演では珍しく、ローマ稿での差し替えカヴァティーナ Presto amiche, 採用している(もちろん英訳詞)。これはシルズお得意の超高音を披露できるからだろう。
この時用いられた楽譜は、クリティカルエディションの準備版 una versione preliminare とされ、第1版の著作権も1978年となっている。

1979年12月と1980年1月、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場で公演。。公演記録。1979年12月18、20、22日、1980年1月3、6、8、10日の7公演。出演者などはリンク先を。

この頃から《イタリアのトルコ男》の上演は徐々に活発になる。

1981年、クリティカルエディションを用いた初の全曲商業録音がなされる。⇒ 参考資料 。

1982年、フランス、エクサン=プロヴァンス音楽祭で《イタリアのトルコ男》の公演があったことが分かっているが、詳細は分からなかった。

ロッシーニ・オペラ・フェスティヴァル ROF ではその初期から《イタリアのトルコ男》が取り上げられた。
1983年の公演記録。公演日や出演者などはリンク先を。前年に《アルジェのイタリア女》のムスタファでROFに初出演したサミュエル・レイミーがセリームを歌った。8月25日公演の(おそらく客席収録の)音声がYouTubeに全曲上がっている。ここではまだアルバザールのアリアが省略されていた。

1986年の公演記録。公演日や出演者などはリンク先を。当時全盛期だったルッジェーロ・ライモンディがセリームを歌った。YouTubeに全曲映像が上がっており、アルバザールのアリアが復活したことが分かる。

日本初演は、1981年9、10月、東京室内歌劇場による日本語訳詞上演だったようであるが、同歌劇場の公式サイトの公演記録には反映されていない。昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センターで検索をかけると出演者などの記録が閲覧できる。

台本

ロマーニが書いたロッシーニ《イタリアのトルコ男》の台本は、カテリーノ・マッツォラ Caterino Mazzolà 1745―1806 【1】 の書いた同名の台本に基いている。作曲はフランツ・ヨーゼフ・ザイデルマン Franz Joseph Seydelmann 1748―1806。この《イタリアのトルコ男》は1788年1月22日にドレスデンで初演された。 【2】
その翌年の1789年4月28日、ザイデルマンの《イタリアのトルコ男》はウィーンの宮廷劇場でも上演された(全10回の公演)。5月16日付でモーツァルトがライプツィヒから妻コンスタンツェに宛てた手紙でこの公演について触れている。
モーツァルトの《女は皆そうしたもの》の制作は、その年の夏か秋頃から翌年1月の始め頃と考えられている(初演は1790年1月26日)。このため、直接の証拠はないものの、ダ・ポンテの《女は皆そうしたもの》の台本には、マッツォラの《イタリアのトルコ男》から強く影響を受けているという見解がある。
最も端的な類似は、物語の展開を牽引する人物の存在だ。前者ではドン・アルフォンソであり、後者では詩人である。
またマッツォラの《イタリアのトルコ男》では第2幕でザイダとセリームが(偽の)服毒をするのだが、これが《女は皆そうしたもの》第1幕フィナーレの偽の服毒に影響を与えたという推測もある。
主題の上でも、どちらの台本でも 相手に理想を押し付けるのは本当の愛ではない という点が共通している。《女は皆そうしたもの》が同時に《男だっては皆そうしたもの》であって、お互いの欠点まで理解しようとして初めて愛が成立すると説いているのと同様、勝手気ままな妻フィオリッラといわゆるモラハラ夫ジェロ―ニオは、幕切れで互いに理解し合おうとすることで復縁に至る。
さて前述の通りスカラ座では1814年5月31日からモーツァルト《女は皆そうしたもの》が上演され評判となった。
フィリップ・ゴセットなどロッシーニ研究者たちは、この《女は皆そうしたもの》がロマーニ / ロッシーニの《イタリアのトルコ男》に強い影響を与えたと主張している。これも直接の証拠は無いが、ロッシーニがこの時の《イタリアのトルコ男》の公演を観劇して、《女は皆そうしたもの》と同じ路線の喜劇を希望して、マッツォラの台本に辿り着いた、という推測は、十分説得力を持ちうるだろう。

さてロマーニは、マッツォラの《イタリアのトルコ男》の台本をロッシーニのために調整するのだが、その扱いは様々である。
マッツォラの詩句をそのまま用いている箇所もある。たとえば冒頭のジプシーたちの合唱の4行は、マッツォラの書いた詩句をほんの僅か変えただけでほとんど同じである。そこまでではなくとも、ロマーニがマッツォラの詩句を踏襲していたり、言葉は変わっても意味が大差ない箇所は多い。たとえば第2幕フィナーレのフィオリッラとジェローニオのブドウとニレのエピソードは、マッツォラの歌詞を変えつつも踏襲している。
全編にわたって大活躍する詩人は、ロマーニの創作ではなく、マッツォラの台本での役割をだいたい踏襲したものである。
初演時の出版台本にはロマーニの名前が載っていないのは、この台本が彼が『書き上げた』ものではなく、マッツォラの台本を『調整した』ものだからだろう。彼はやはり旧台本を調整した《パルミラのアウレリアーノ》でも G. F. R. というイニシャルしか記していない。

一方でマッツォラの台本からまったく離れて新たに創作した箇所も少なくない。
例えばフィオリッラとセリームの出会いの様子は、マッツォラの台本ではバカラーレ(ジェロ―ニオに相当する)が簡単に述べているだけである。

BACARALEバカラーレ
Questa mane今朝
Sbarcò un Principe Turco. In sulla spiaggiaトルコの王子が 上陸した。浜辺で
Mia moglie passeggiava. Egli l'addocchia,私の妻が 散歩していた。彼は 彼女に 目を留めて、
Ad essa si avvicina.彼女に 近づく。
Ella fa riverenze.彼女は お辞儀をする。

このたった数行をロマーニは思い切り拡大して第3番のとても効果的な場面を作り出した。
伊達男ナルチーゾはマッツォラの台本には存在せず、ロマーニが作り出した役である。当時のスカラ座は若き名テノール、ジョヴァンニ・ダヴィドと契約しており 【3】 、彼に相応しいテノール役が必要だったからだろうが、これによって五重唱で 偽のセリーム を起用することができた。
ロマーニは第2幕ではマッツォラの台本からかなり離れている。
マッツォラの台本では第2幕第10場で絶望したザイダは毒を呷り、それを知ったセリームもまた同じ毒を呷って後を追おうとする。第14場で、ブッファにあるまじき展開に詩人は怒り出すが、しかし彼らが飲んだのは直前にアルバザールがすり替えた阿片(睡眠剤)入りの睡眠薬だった。第17場で彼らはトルコ風の楽園を模した庭園に連れて来られて目を覚ます。最初は死んで天国に来ていると思った二人は、生きていることを理解し、ザイダとセリームはよりを戻す。
実のところ、マッツォラの台本では、第2幕はザイダとセリームの復縁が軸になっている。つまりこの台本ではたしかにセリームがタイトルロールの《イタリアのトルコ男》なのである。
ロマーニはこの場面を採用しなかった。こちらが本家とはいえ、5月にスカラ座で上演された《女は皆そうしたもの》の模倣とみなされかねなかったからだろうが、しかしそれ以上にロッシーニがこうした大げさな展開を好まなかったのは間違いないだろう。
ロマーニが代わりに据えたのが、あの素晴らしい第2幕の五重唱である。仮面をつけて正体が分からない状況で、間違ったカップルが2組でき、1組は結ばれ、もう1組は破綻し、そしてどちらにもなれなかった一人の男は絶望する。この滑稽で皮肉の効いた場面は、《イタリアのトルコ男》の中でも特に優れた場面だろう。
またロマーニの台本では五重唱の後、ザイダとセリームのよりが戻ったことは、アルバザールが簡単に報告するだけで片付けている。ロマーニもロッシーニも二人の復縁の経緯にはまったく関心を示さなかったのだろう。
フィオリッラの大アリアもロマーニが新たに書いて据えたものである。

《イタリアのトルコ男》は、悪妻を懲らしめて改心させる物語のように受け止められるかもしれない。しかしこの作品をそう捉えると、かなり表面的な理解に留まってしまう。モーツァルトの《女は皆そうしたもの》が実際には 男だってそうしたもの でもあって、そこで男女の愛の複雑さを深く掘り込んでいるのと同じ様に、《イタリアのトルコ男》も簡単な喜劇ではない。
フィオリッラは人妻でありながら自由奔放に愛を楽しもうとする女性だが、それは彼女がジェローニオの高圧的な態度に反発してのことである。ジェローニオは従順だった前妻の面影を、若く美しい(そして貧しい出である)フィオリッラに押し付けている、現代で言う モラハラ夫 だ。彼女が夫にうんざりしていることが、彼女の開口一番の台詞
Non si dà follia maggiore
dell'amare un solo oggetto:
一人の相手だけを愛することほど ひどく馬鹿げたことはない:
に繋がっている。つまり彼女は夫婦の問題によって生み出された悪妻である。
とはいえフィオリッラが毎日のように遊び歩き、多数の取り巻き(愛人候補)を引き連れ、また愛人の一人であるナルチーゾを家に引き入れていたとなれば、やり過ぎである。ジェローニオが彼女をしばしば 頭のおかしい女 pazza と嘆いているのも無理はない。

ジェロ―ニオは自由過ぎるフィオリッラに手を焼いて、詩人の計画に乗って彼女を家から閉め出し故郷に帰るよう告げる。しかしそれによって彼は妻のことをやっぱり愛していることに気付かされる。
フィオリッラは、故郷に帰るよう手紙で告げられると貧しい生活を思い出し、さらには取り巻きの男たちにも見放されて、楽しい日々が夫の支えによって成り立っていることを思い知らされる。
結局二人は、ブドウ(実をつけるが自立できない)とニレ(支えにはなるが実を付けない) の関係でお互いを支え合い理解し合うことでよりを戻す。
この教訓臭い夫婦の対話は、あまりロッシーニ好みではなさそうに思われる。ゴセットもロッシーニが第2幕フィナーレを協力者に任せたことについて、彼がこの幕切れに対して uncomfortable 居心地が悪い だったからかもしれないと述べている。
とはいえ、この和解をもって二人が模範的な夫婦になるであろうかといえば、とてもそうは思えないだろう。フィオリッラはおそらく、夫の支えに感謝しつつ、また遊び楽しみ続けるだろう。ジェロ―ニオはそんな若妻を苦々しく思いながらも、自分のところに戻ってくれば良いと思うようになるのではないだろうか。
理想よりも現実を受け入れ許すことで一つ次元の高い愛に至る、という精神は、《女は皆そうしたもの》にも《イタリアのトルコ男》にも共通した主題に思われる。

1 マッツォラは現在のイタリアだと最北東部に当たるロンガローネの生まれ。1780年からドレスデンの宮廷詩人を長く務めた。イタリア時代にはロレンツォ・ダ・ポンテと知り合っていた。ダ・ポンテがウィーンの宮廷詩人に就任できたのは、ドレスデンのマッツォラがウィーンのサリエーリに彼を推薦して、サリエーリが皇帝に掛け合ったからだと言われている。ダ・ポンテにとってマッツォラは友人であり恩人であった。

2 マッツォラの《イタリアのトルコ男》の台本は他の作曲家によって何度かオペラ化されている。そのうちの一つ、フランツ・ジュスマイヤー Franz Süssmayr の《ナポリのイスラム教徒の男 Il musulmano in Napoli》 (自筆総譜ではやはり イタリアのトルコ男 Il turco in italia とあるという)は1794年2月12日 プラハで初演された。ジュスマイヤーはモーツァルトの弟子で、彼のレクイエムを補筆した人物としてとてもよく知られている。
ちなみにこれより前にマッツォラとジュスマイヤーには接点がある。マッツォラは1791年5月から8月までの僅かな期間ではあったものの、ロレンツォ・ダ・ポンテの後任としてウィーンの宮廷詩人を務めていた。1791年9月6日、プラハで初演されたモーツァルト《ティートの慈悲 La clemenza di Tito》のメタスタージオの台本をモーツァルトのために調整したのがマッツォラである。そしてジュスマイアーはこの際モーツァルトを手伝い、レチタティーヴォなどを代筆したとされる。なおこれらの公演を興行したのは、《フィガロの結婚》をプラハで上演して大成功を収め、モーツァルトに《ドン・ジョヴァンニ》を依頼したことで知られるドメニコ・グワルダソーニ Domenico Guardasoni 1731―1806 である。

3 ダヴィドは後にナポリでロッシーニの重要なテノールになるが、その前はスカラ座を拠点としていた。《パルミラのアウレリアーノ》にもタイトルロールで出演予定だったが、病気降板した。

あらすじ

第1幕
ナポリの郊外の海辺。ジプシー男たちが自由な暮らしを喜んでいる。しかしザイダ一人だけは愛する人を失ったと嘆き、アルバザールに慰さめられる。
詩人が現れる。彼は喜劇を書こうとしていたが良い題材が見つからずにいた。彼はジプシーたちを見るとこれは喜劇の導入に打って付けだと喜ぶ、そして彼らがもたらす波乱で一つ劇が作れるだろうと考える。
ドン・ジェローニオがジプシー女に星占いをしてもらうためにやって来る。彼は若く美しい後妻ドンナ・フィオリッラがあまりにも気ままで困り果ててた。ザイダは占いで彼が寝取られ男であることを見抜き(実際にはそういう噂を耳にしていたのだろう)、ジプシー女たちが彼を嘲けるので、ジェローニオは怒り出す。
詩人はザイダに声を掛け、彼女の不幸な身の上を聞き出す。彼女はかつてトルコの後宮の女奴隷だったが、王子セリーム・ダメレクに見初められ結婚するはずだった。しかし恋敵の女たちによって彼女が不実だと信じ込まされたセリームは彼女に死を命じた。彼女はアルバザールに救われ、二人でジプシーたちに混ざってナポリまで逃亡して来た。すると詩人は、間もなくここにトルコの王子がやって来るので、セリームとザイダの仲を取り持ってもらおうと提案する。
フィオリッラが、一人だけを愛する生活なんて退屈だと歌いながら現れる。一隻の船が海岸に近づき、トルコの王子セリームが上陸し、イタリアの地を讃美する。彼もフィオリッラも相手を認めるや惹かれ合い、二人で立ち去る。
詩人が伊達男ドン・ナルチーゾと出くわす。彼はフィオリッラの恋人の一人だが、彼女を見失って探しているところだ。そこにジェローニオが来て、妻がトルコ男を家に連れて来てコーヒーを飲もうとしていると助けを求める。そのトルコ男こそザイダの愛するセリームだと知った詩人は素晴らしい劇の急転換だと喜ぶ。自分たちを劇の素材に使おうとする詩人にナルチーゾとジェローニオは憤慨する。
フィオリーッラは自宅(当然ジェローニオの家)にセリームを連れて来てコーヒーを飲もうとしている。二人は駆け引きしているが、明らかに彼は彼女にのぼせあがっている。そこにジェローニオが割って入ろうとするのでセリームは怒り出す。フィオリッラは夫にセリームの上着の裾にキスをさせて事なきを得る。その様子を目撃したナルチーゾはジェローニオの情けなさを詰る。セリームはフィオリッラとの密会を改めることにして立ち去る。詩人が到着、劇に打ってつけのもめごとに立ち会えなかったことを残念がる。事の成り行きを語り嘆くジェローニオに対して、詩人は彼に妻に対して毅然とした態度をとるよう助言する。それを鵜呑みにしたジェローニオは戻ってきたフィオリッラに対して居丈高な態度で接し、フィオリッラもしばらくそれに応戦する。しかし彼女がわざと媚びて甘い言葉を囁くとジェローニオは簡単に軟化、するとフィオリッラは元に戻って反撃に出て、ジェローニオは敗北する。
詩人は成り行きに満足しているが、まだ劇を完成するには不足していると感じ、ザイダとセリームを再会させることにする。
海岸。ザイダとジプシーたちが野営している。セリームは夜の闇に乗じてフィオリッラと駆け落ちしようと彼女を待っている。彼はジプシー女に占いをしてもらうと、ザイダが苦しみつつも彼と縒りを戻すことを願っていると告げる。彼女自身がザイダだと気付いたセリームは、彼女への愛を蘇らせる。そこにナルチーゾ、フィオリッラ、ジェローニオがそれぞれやって来る。セリームはヴェールを被ったフィオリッラに魅せられるが、彼女は正体を現すやザイダと親密になっていたセリームを怒りをぶつける。彼女を止めようとするナルチーゾ、虚しく家に帰るよう諭すジェローニオ。二人の女はセリームを巡って喧嘩を始める。混乱の中、詩人だけが喜んでいる。幕。

第2幕
居酒屋。失意のジェロ―ニオに詩人は酒を勧めて励ましている(ジェロ―ニオに同情しているのではなく、彼が酒の力を借りて行動することで劇を進めようとしている)。そこにセリームが現れ、ジェローニオに、トルコでは重荷になった妻を売りとばす習慣がある、とフィオリッラを買い取ろうと持ち掛ける。ジェロ―ニオは、イタリアでは妻を買おうとする男を打ちのめす習慣があると断る。二人は言い争い、互いに殺すと脅すが、続きは別の場所でと立ち去る。隠れて様子を見ていた詩人は、話の進め方に頭を悩ます。
フィオリッラがとりまきを連れてやって来る。彼女はセリームについてザイダと話を付けようと彼女を呼び出す。現れたセリームはしかし決断を下せず、怒ったザイダは去ってしまう。彼が彼女に哀れみを感じる様子を見たフィオリッラは、ザイダを追いかけるがいいと彼を去らせようとする。しかし二人とも恋愛巧者、駆け引きの後、二人は仲直りして一緒に去る。
ジェロ―ニオは妻がセリームの参加する宴に行ってしまったことを察する。そこに詩人が彼に、セリームが仮面舞踏会でフィオリーラをトルコに連れて行く計画をしていると告げる。詩人は既にザイダにもフィオリッラと同じ格好をして仮面舞踏会に参加するよう伝え、同様にジェロ―ニオもセリームの格好で仮面舞踏会に行くよう促す。それを立ち聞きしたナルチーゾもセリームに変装して仮面舞踏会に行くことにする。彼は愛の神に助力を祈り、自分を棄てたフィオリッラに復讐を誓う。
詩人はセリームの企てに第2幕が台無しになると憤慨している。アルバザールからザイダが宴の場所を知らないと聞いて、彼は慌てて知らせに行く。アルバザールは、愛の神がセリームの心にザイダと同じ熱情を引き起こせばいいのだが、愛の神は気紛れだ、と案じる。
仮面舞踏会。人々が陽気に喜んでいる。フィオリッラはセリームに変装したナルチーゾを本人と思って腕を組む。一方セリームはフィオリッラに変装したザイダと腕を組む。遅れてやって来たジェロ―ニオは妻とトルコ男が2組いるのに仰天する。2組がそれぞれ愛を囁き、訳が分からなくなったジェロ―ニオは妻を求めて騒ぎ出し、皆から非難される。2組は混乱に乗じてそれぞれ去る。一人残ったジェロ―ニオは途方に暮れる。詩人が、ザイダがセリームとよりを戻したことを告げる。しかしジェローニオから妻もセリームと一緒だったと聞き、二人は真相を確かめに行く。
アルバザールはザイダの勝利に喜びながら、宿からセリームの荷物を運び出している。詩人はジェロ―ニオに、ナルチーゾがセリームに変装してフィオリッラを連れ出したことを明かす。愛人を家に自由に出入りさせていたことを知ってジェロ―ニオは愕然とする。詩人は彼に、妻を家から閉め出し、ソレントの貧しい両親の元に帰るよう手紙で告げるように促す。彼女がセリームとトルコに逃げてしまうことを心配したジェロ―ニオは渋るが、アルバザールからザイダとセリームが復縁したことを聞き、決意する。
フィオリッラが家に戻って来て夫と鉢合わせするが、ジェロ―ニオは自分は考えを改めたと言って家の中に入る。フィオリッラはやって来た詩人にセリームの居場所を尋ねるも、彼がザイダと仲直りして二人でトルコに向かおうとしていると聞き、自らの敗北を知る。さらにジェロ―ニオからの手紙で、彼女が家から閉め出され、ソレントの実家に帰るよう告げられ、彼女は愕然とする。彼女は装飾品を投げ捨てて、哀れな女が帰郷したら両親がどれほど悲しむか嘆く。取り巻きたちにも見捨てられ、フィオリッラはもはや支えも慰めをないと打ちひしがれる。この様子に詩人は喜び、そしてジェローニオに彼の妻が心から反省して心を改めるならば彼女を許して受け入れるよう告げる。
海岸。フィオリッラはセリームの載ってきた船を見て、あれが来ることがなければ、と悔やむ。詩人に促されてジェローニオが彼女に近づく。二人はニレとブドウを引き合いに出して和解する。セリームとザイダが出帆しようとしている。二人は夫婦に謝罪し、夫婦も彼らを許す。ナルチーゾもジェローニオに謝罪し、すべてが丸く収まる。詩人は喜劇がハッピーエンドで幕切れを迎えることができて大喜びしている。一同が、愛によって生じた過ちは取るに足らないことだ、と唱和して幕となる。

音楽

序曲
序奏を前に置いた 展開部を欠いたソナタ形式の序曲。
序奏は Adagio 4/4 ニ長調。三連符が特徴的な動きのある部分と、ホルンのオブリガート 【1】 が印象的な部分に分かれるが、最後には両者が融合する、と言う面白い作りをしている。ホルン独奏部分の伴奏が海原を感じさせるようなものなのは、物語の舞台がナポリの海岸ということに由来しているのだろう。ロッシーニはこの序奏を気に入ったようで、多少手直しした上で次作《シジスモンド》 1814 ヴェネツィア の序曲の序奏に更生し、その序曲全体はさらに《オテッロ》 1816 ナポリ の序曲に更生されている。
主部は Allegro 4/4 ニ長調。複付点のリズムがウキウキと弾むような第1主題と、管楽器が絡む第2主題からなる。第2主題ではトランペットの独奏が目立つ。コデッタ(小結尾)でいつも通りロッシーニクレッシェンドが披露されたのち、両主題とも再現される。

1 初演の時のスカラ座の首席ホルン奏者は ルイージ・ベローリ Luigi Beloli もしくは ルイージ・ベッローリ Luigi Belloli 1770―1817 という名手で、1803年から亡くなるまでスカラ座の首席ホルン奏者を務め、またミラノ音楽院のホルン教授にもなった。ロッシーニは彼の腕前に感心して序曲にホルン独奏を盛り込んだのだろう。 なお1814年の頃はまだバルブホルンは普及していなかったという。

第1幕

第1番 導入
A 急 / B 緩 / A’急 の三部形式。
A 急 Nostra patria è il mondo intero, は Allegro 2/4 ト長調。ジプシー男たちによるいわゆる 開幕の合唱で、そこにザイダの嘆きとアルバザールの慰めが加わる。この音楽は《絹のはしご》 第5番 ルチッラのアリア Sento talor nell'anima の素材を更生している。
B 緩 Ho da fare un dramma buffo, は Moderato 4/4 ハ長調。詩人の登場のカヴァティーナの役割だが、前奏込みでも40小節しかない短いもの。
A’で Primo Tempo でになって、全員のアンサンブルになる。
ロッシーニのオペラブッファの導入としては比較的短いが、詩人という謎の人物を印象付けるものになっている。

第2番 ドン・ジェロ―ニオのカヴァティーナ
緩 カンタービレ / 急 カバレッタ の二部構成のカヴァティーナ。このカヴァティーナは協力者の書いたもので、ロッシーニの音楽ではない。そのため少々音楽にパンチがないが、ロマーニの台本のおかげもあってまずまずの出来栄えになっている。
緩 カンタービレ Vado in traccia di una Zingara は Allegro moderato 4/4 ヘ長調。ここは無難にまとめた印象。
Più lento でザイダ と ジプシー女たちの合唱が挟まった後、Primo Tempo に戻るが、これらはテンポ・ディ・メッゾ(中間部)の占いの場面。
急 カバレッタ Ah! mia moglie, san chi sono は Allegro brillante 2/4 ヘ長調。ジェロ―ニオは怒ってバッソブッフォらしい早口で捲し立てる(とはいえロッシーニのような猛烈な早口ではない)一方で、ジプシー女たちが彼を馬鹿にして嘲るのが愉快だ。

第3番 フィオリッラのカヴァティーナ、合唱、セリームのカヴァティーナ、小二重唱
第3番は3つの曲をまとめたような大きな曲になっている。
第3-i番 フィオリッラのカヴァティーナ Non si da follia maggiore は Allegro vivace 4/4 イ長調。速度、拍子、テンポとも変化はない単一構成のカヴァティーナだが、前半4行の歌詞が戻ることで緩やかな A / B / A’ の形式になっている。全体に自由気ままを愛するフィオリッラの性格が浮かび上がっている。
これ以降は 第3-ii番で一括りになっている。合唱 Voga, voga, a terra, a terra. では音楽の雰囲気が一変する。Allegro moderato 4/4 ホ短調。ロッシーニがオペラブッファで短調の曲を書くことは珍しい。この音楽はモーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》 第2幕フィナーレ で騎士長が登場する時の音楽が用いられていることでよく知られている。
セリームのカヴァティーナ Bella Italia, alfin ti miro, は Andante 4/4 ホ長調。前半がセリームの独唱、後半が彼とフィオリッラの独白。セリームの独唱は20小節弱の短いもの。トルコ風のエキゾティックな要素はまったくなく、歌詞ともども彼が知的で洗練された人物であることが示されている。後半では初見で惹かれ合う両者の心の躍動が音形の執拗な繰り返しで示される。
小二重唱は 急 カンタービレ / さらに急 カバレッタ の二部構成。緩 カンタービレ Serva... / Servo. は Allegro 4/4 イ長調。フィオリッラとセリームの恋の駆け引き(しかしフィオリッラが一枚上手だ)は、単純な対話のように見えて実は手の込んだ音楽で刻々と変化する。Più mosso でテンポが上がり、セリームがのぼせ上った様子が窺える。

第4番 三重唱
全編 Allegro 2/2 ト長調の単一構成の三重唱だが、曲調によって前半と後半に分れる。この三重唱は極めて個性的で、ロッシーニの全オペラブッファの中でも異彩を放つ傑作である。
前半は詩人を中心にジェローニオとナルチーゾが異論を挟む形。冒頭の4小節音形は曲中何度も現れる動機になっている。【1】 。そしてウキウキとした音楽、弦の荒々しい8分音符の連なりが入れ替わりながら進む。混乱が極まった時、詩人が朗々と歌う Sceglier voglio per un dramma 私は劇に選びたい は、劇作りのためなら何でもするという詩人の狂気(インテリの変態と言ってもよい)が浮かび上がるかのようだ。さらに詩人は no: di meglio non si da. そうだ: より良いものはない。 で彼の最高音であるト音に達する。
後半ではジェロ―ニオとナルチーゾがオペラブッファらしい早口で反撃して愉快だ。冒頭の動機が繰り返されて締め括られる。

1 ゴセットはこれがモーツァルト《女は皆そうしたもの》の序曲と第30番 三重唱で聞かれる標語 motto と同じであると指摘している。たしかにどちらもドラファソ(ド)である。

第5番 四重唱 三部構成の四重唱だが、本来 急 / 緩 / 急 であるべきところが最初の部分が Andante なので、緩 / さらに緩 / 急 のような作りになっている。この四重唱は単なる重唱という以上に、コンチェルタートやストレッタに相当する箇所があることで、第1幕前半を締める小フィナーレのようになっている。
  緩 Siete Turchi: non vi credo; は Andante 4/4 ハ長調。まずフィオリッラとセリームが同じような旋律で掛け合うという二重唱の定型で始まり盛り上がるも、ジェロ―ニオが闖入するとブッファの音楽に変わり、彼がフィオリッラの夫と分かると音楽が激しくなり、と台本の慌ただしい展開に音楽も多才に変化する。
さらに緩 Io stupisco, mi sorprende, は コンチェルタート。Largo 2/4 ヘ長調。四者四様の、しかも裏表のある感情が密に絡められている中、ナルチーゾのフィオリッラへの不信が美しくも痛々しい旋律で浮かび上がっている。
テンポが Allegro に上がって経過区になる。ナルチーゾが不甲斐ないジェロ―ニオに文句を言って場はさらに混乱、苛立ったセリームはひとまずこの場を離れることにする。Teco parlar vorrei, の短い一節からはセリームの表裏が垣間見える。
拍子が 2/2 に変わり、急速なストレッタの音楽になる。

第6番 フィオリッラとジェロ―ニオの二重唱
急 / 緩 / 急 の三部構成の二重唱。個性的な曲の多い《イタリアのトルコ男》の中ではかなり定型に則った三部構成の二重唱だが、ロッシーニの楽想が弾けていて第1幕でも特に楽しい曲である。
急 Per piacere alla signora は Allegro 4/4 ト長調。ピリピリした伴奏に乗って夫婦が言い争う。詩人に焚きつけられたジェロ―ニオは強い調子で早口で捲し立てるが、フィオリッラはそれを巧みにかわす様な歌いっぷりで、さらに徐々に(偽りの)優しい言葉になっていく。
緩 No; mia vita, mio tesoro; は Andantino 4/4 変ホ長調。速度が落ちるだけでなく長三度下の調に移って、空気が一転する。フィオリッラの(偽りの)切々とした訴えの歌はたいへん美しく、ジェロ―ニオは戦意を喪失するほかない。
Allegro に転じ、経過区。最初の急の音楽が戻るが、ここではフィオリッラが優勢に転じている。
そのまま 急 (Con marito di tal fatta。この陽気で軽やかで、しかも抗し難い色香の漂うフィオリッラの歌には、彼女の魅力がすっかり音楽になっている。
ロッシーニはこの曲を《新聞》第1幕 第6番 リゼッタとドン・ポンポーニオの二重唱に更生している。

第7番 第1幕フィナーレ
10の部分からなる大規模なフィナーレだが、大雑把に、合唱、三重唱、ナルチーゾのアリオーソ、合唱、フィオリッラのアリオーソ、コンチェルタート、ストレッタ のような作りになっている。 合唱 Gran maraviglie は Allegro 3/4 ニ長調。開幕と同様にジプシー男たちが陽気に歌い、そしてザイダが占い客を募る。
ザイダ、詩人、セリームの三重唱 Per la fuga è tutto lesto; は Moderato 4/4 変ロ長調。この三重唱は、次の Più mosso でテンポが上がるが、これは一時的なものでフェルマータの後でテンポが戻る、単一構成と理解すべきだろう。基本的にザイダとセリームの二重唱に詩人が挟まるような作り。Ecco il fin delle mie pene で二人が再会の喜びを美しく歌い上げている脇で、詩人がヘ音のオクターブ跳躍でぼやくのが愉快だ。
失意のナルチーゾの Perché mai se son tradito, は Andante 6/8 ト長調。短いが美しい音楽で、フィナーレ前半の空気を入れ替える。
合唱 Evviva d'amore。これはフィオリッラの取り巻きの合唱。Allegro brillante 2/4 ハ長調。弦の16分音符の忙しない伴奏が特徴的である。
フィオリッラのアリオーソ Chi servir non brama amor, は Primo Tempo [Andante] 6/8 ハ長調。歌の旋律は異なるものの、伴奏は先のナルチーゾのものと概ね同様である。セリームの Che bel canto! なんという美しい歌だ! という台詞通りのもの。
ジェロ―ニオもやってくる。Qui mia moglie ha da venire, は Primo Tempo [Allegro brillante] 2/4 ハ長調。フィオリッラの取り巻きの合唱の忙しない伴奏が再び現れる。
このようにここでは、ナルチーゾとフィオリッラ、彼女の取り巻きとジェロ―ニオと、対になる対象に同じ伴奏の音楽を与えている。あるいはロッシーニは、それぞれを同類とみなしていたのかもしれないが、定かではない
フィオリッラが正体を明かし、一同の驚きの声 Ah! ああ! の後、コンチェルタートになる。Andante 4/4 変ホ長調。緻密に書かれているのはもちろんだが、最上声のフィオリッラと最低声のセリームが同じように16分音符で呼応するのが非常に効果的である。
Allegro brillante 3/4 ト長調 に転じて経過区。二人の女の喧嘩と間で戸惑う男たち、それを喜ぶ詩人の様子が3拍子で軽快に描かれる。 ストレッタ Quando il vento improvviso sbuffando は Allegro vivace assai 2/2 ニ長調。ロッシーニらしいスピード感溢れるストレッタだが、終結前にフェルマータで総休止してから改めて締めに入るのが巧い。

第2幕

第8番 ドン・ジェローニオとセリームの二重唱
三部構成の二重唱だが、Allegro、Piu mosso、Presto と 急 / さらに急 / 極めて急 のような作りになっている。バスの二重唱だが、バッソブッフォ同士の二重唱と異なり、片方がヒロイックなバスなので、二重唱のバランスが徐々に変わっていく。
急 D'un bell'uso di Turchia は Allegro 4/4 ヘ長調。セリームが堂々と高飛車にトルコ流儀を迫ると、ジェロ―ニオはそれに負けじとイタリア流儀を返す。お互い相手の腹を探るような音楽で進む。
Più mosso でテンポが上がり、Se Fiorilla di vender bramate, では二人は興奮し、徐々にブッファ風の音楽へと傾いていく。
Recitativo的な経過区の後、しびれを切らしたセリームが Ed invece di pagarla, とジェロ―ニオを脅しにかかるが、ジェロ―ニオも相手になり、オペラブッファ的な早口の応酬となる。オペラセリアもこなせる堂々とした主役バスがバッソブッフォのように早口を捲し立てて愉快な二重唱になる。

第9番 合唱とフィオリッラのカヴァティーナ
フィオリッラの取り巻きの男たちの合唱とフィオリッラのカヴァティーナ。合唱 / カヴァティーナ / 合唱 / カヴァティーナ / 合唱 というロンド形式。Allegro 4/4 ハ長調。合唱 Non v'è piacer perfetto が陽気で明るい一方、フィオリッラのカヴァティーナ Se il zefiro si posa は色香のあるもの。速度指示に変化はないにもかかわらず、両者のテンポを切り替えるのが半ば慣習になっている。男たちに囲まれたフィオリッラの美しさ色っぽさが特に際立つ佳曲。

第10番 フィオリッラとセリームの二重唱
緩 / 急 / 急 の三部構成の二重唱だが、これは 緩 カンタービレ / 急 カバレッタ の二部構成の 緩 カンタービレ がさらに 緩 / 急 に分かれたもの。 緩 カンタービレ Credete alle femmine は Andnte 3/8 変ロ長調。セリームもフィオリッラも独り言のように相手に聞こえる嫌味をゆっくりと歌う。似たような旋律を両者がそれぞれ歌うというのは定型どおりだが、実は二人は細かい音形が異なっていて微妙な差が生じている。
Allegro にテンポが上がり、経過区。セリームが少し憤慨しているのに対して、フィオリッラの方が冷静に優位に立つ。
小二重唱(ここは実際には Andnte と Allegro の間のテンポになることが多い) In Italia certamente... では、二人はまだ並行して歌うことはない。
Allegro 4/4 変ロ長調 になってテンポ・ディ・メッゾ(中間部)。音楽が明るく活気付き、伴奏の付点と三連符が気持ちの昂ぶりを表す。結局二人は仲直りする。
そして 急 カバレッタ Tu m'ami, lo vedo, で二人はやっと並行して愛を歌う。Allegro 2/4 変ロ長調。ベタな作りとは言えるが、ロッシーニの巧みな筆運びによって喜びの解放感を味わえる。

第11番 レチタティーヴォとナルチーゾのアリア
レチタティーヴォを前に置いた 緩 カンタービレ / 急 カバレッタ の二部構成のアリア。
レチタティーヴォは14小節と短いが激しいもので、フィオリッラに裏切られたナルチーゾの怒りが描かれている。
緩 Tu seconda il mio disegno, は Andante 4/4 ハ長調。装飾歌唱がたっぷり盛り込まれた優美な音楽だが、時々暗い陰が混ざる。
テンポ・ディ・メッゾ(中間部)で Allegro にテンポが上がる。なぜかここだけ変ホ長調に転じる。ナルチーゾのストーカー気質が出ている。
急 カバレッタ Ah! sì; la speme, でハ長調に戻る。速いテンポで込み入った装飾歌唱をこなし、復讐を果たすという喜びを見出したナルチーゾの屈折した感情が浮かび上がっている。
このアリアは装飾歌唱の技術は要求されるものの、イ音より高い音(当時のテノールがファルセットーネを用いて歌う高音域)は使われておらず、それでも音楽は充実しているので、若いテノールがロッシーニのアリアを訓練するために好んで歌われる曲である。

第12番 アルバザールのアリア
Ah! sarebbe troppo dolce。速度、拍子、調性とも Andantino mosso 4/4 ト長調 で変化はないが、歌詞の前半が繰り返されることで緩やかな A / B / A’の三部構成になっている。このアリアは協力者の書いたものでロッシーニの曲ではない。典型的な アリア・ディ・ソルベート / シャーベット・アリア(脇役のアリア)で、ロッシーニの音楽に比べるとあまりに控えめなのは仕方ない。そのため頻繁に省略されるが、とはいえなかなかの佳曲ではある。

第13番 合唱
Amor la danza mova,、Allegro 3/4 ハ長調。仮面舞踏会に参加した男たちの合唱。宴の喜びを歌っている。2回繰り返され、都合3回歌われる。

第14番 五重唱
緩 / コンチェルタート / 急 / ストレッタ の五重唱。この五重唱は、名曲の多いこの作品の中でも際立って優れた曲であり、滑稽でありつつも、もはやオペラブッファの枠を越えてしまったような深みすら感じられる。
緩 Oh! guardate che accidente: は Andante 4/4 変ホ長調。妻がどれだか分からず戸惑うジェローニオの無伴奏の呟きの後、上昇音形の連なる伴奏で彼の地に足が付かない不安な様子が描かれている。カップルたちの対話は ナルチーゾ→ザイダ、セリーム→フィオリッラという組み合わせで、混乱を助長させている。
コンチェルタート(緩の後半に当たる)。21小節のうち17小節が無伴奏という、ロッシーニのオペラでは非常に珍しいもの。美しくも謎めいた音楽は非常に秀逸だ。最後に上昇音形が戻る。
Allegro deciso 4/4 変ホ長調に変わり、中間部。訳が分からなくなったジェロ―ニオは、ついに妻を求めて騒ぎ出す。
急 Questo vecchio maledetto では、ロッシーニは Prestissimo 2/2 の急速なカノン風の音楽を用いて個の存在を薄め、誰が誰だか分からない状況を表現している。音楽的に素晴らしいのみならず、舞台(合唱を含め全員仮面をつけている)と相乗した時にたいへんに効果的に作られている。
Allegro 3/8 に変わって ストレッタ Egli e pazzo... lo sentite?。3拍子の軽快な音楽で、2組のカップルはジェロ―ニオを非難しながら逃亡を図り、ジェロ―ニオは途方に暮れる。彼だけが残されて空になった舞台と消え入るような曲尾直前の音楽が余韻を残す。

第15番 レチタティーヴォとフィオリッラのアリア
レチタティーヴォと 緩 カンタービレ / 急 カバレッタ の二部構成のアリア。このレチタティーヴォとアリアはまったくの悲劇のオペラのそれである。極めてドラマティックな音楽がこの作品の頂点を成している。
レチタティーヴォは手紙の朗読から始まり、その後は歌も伴奏もかなり激しい。終盤ではフィオリッラは、カデンツァとはいえ、上の変ロ音が記譜されて(レチタティーヴォでは珍しい)感情の昂ぶりが窺える。
アリアの 緩 カンタービレ Squallida veste, e bruna は Andante 3/4 ニ長調。ニ長調だがしばしばト音に♯が付き、終結和音もイ嬰ハホの和音である。その上で全体に陰りが強い。フィオリッラが苦悩に満ちて後悔を歌い上げる。
Allegro 4/4 に転じて、テンポ・ディ・メッゾ(中間部)。ここも歌伴奏ともにたいへん激しい。フィオリッラは故郷の両親を思い(同時に貧しい暮らしを思い出し)、身もだえるように歌う。合唱(フィオリッラの取り巻きの男声合唱)が彼女に
Chi rovina a se stesso procura
solo accusi la sua cecita.
自分自身に 破滅を もたらす 者は ただ その 無思慮を 非難するがいい。
と歌う箇所では、弦の16分音符のトリル状の音形が彼らの嘲笑を模している。
急 カバレッタ L'infelice, che opprime sventura, は、比較的穏やかに始まってから徐々に起伏が激しくなる。イ音を18拍伸ばしたり、装飾歌唱の末に DF♯A (ニ長調の主和音)に落ち着いたたと思ったら、一瞬とはいえ CEGB♭ (C7) という遠い和音に飛ばしてアッと驚かせるなど、ロッシーニの果敢な創意が生きている。

第16番 第2幕フィナーレ
緩 / 急 / 幕切れの唱和 のフィナーレ。この曲は協力者が書いたもので、ロッシーニの書いたものではない。
緩 Son la vite sul campo appassita, は フィオリッラとジェロ―ニオ、詩人の三重唱。Andante affettuoso un poco mosso 4/4 イ長調。詩人に促されて、二人はブドウとニレの喩えに従い、お互い支え合おうと和解し、その様子に。詩人は喜ぶ。正直、先のフィオリッラの大アリアに比べると拍子抜けするほど穏やかで特徴に乏しい音楽だが、とはいえこれが当時の標準程度だったろう。
急 Rida a voi sereno il Cielo, は Allegro vivace 2/4 ハ長調。セリームらの出帆を祝う合唱の後、気まずそうなフィオリッラにザイダとセリームが誤り、彼女とジェルマーノも彼らを許す、さらにはナルチーゾも非を詫びる、といった幕切れの諸々が段取りよく進められ、詩人は満足する。
一同が Allegro spiritoso 3/8 ハ長調 の Restate contenti: で 愛から生じた過ちは取るに足らない と唱和して幕となる。
ロッシーニが幕切れを自分で書かなかったのは返す返すも残念だが、その分の労力と才能をフィオリッラの大アリアに注ぎ込んだのだ と納得するほかないだろう。

ローマ稿の音楽

第3-ia番 フィオリッラのカヴァティーナ
1815年 ローマ稿で 第3番-i フィオリッラのカヴァティーナ を差替えた新しいカヴァティーナ Presto amiche,。Allegro 4/4 変ホ長調 の単一構成だが、緩やかに前半と後半に分かれる。 オリジナルの Non si dà follia maggiore は初演後にはあまり好まれなかったようで(歌詞の問題も会ったのかもしれない)、19世紀の多くの上演でこの Presto amiche, が歌われたことが分かっている。
2つのカヴァティーナは小節数ではほとんど変わらないのだが、Presto amiche, の方が性格が単純で、かつ装飾歌唱が盛りだくさんになっている印象になっている。最大の特徴は、長い装飾歌唱の後、上の変ロ、ハ、変ニ、ニ、そして高い変ホ音にまで達する長い上昇音形にある。ロッシーニがソプラノのために高い変ホ音を記譜した例は他にないだろう。ローマでのフィオリッラ役は分かっていないが、装飾歌唱に長けかつ超高音を出せる歌手だったのだろう。この差し替えは今日ではほとんど行われない。
ロッシーニはこのカヴァティーナを《新聞》 1816 ナポリ でのヒロイン リゼッタ のカヴァティーナに手直しして更生している。

第3bis番 ナルチーゾのカヴァティーナ
1815年 ローマ稿で新たに挿入されたナルチーゾの単一構成のカヴァティーナ Un vago sembiante。Allegro 4/4 変ロ長調。冒頭の歌詞とその旋律から優男の優美なアリアと思われそうだが、実際には気紛れなフィオリッラに棄てられそうになっている愛人の苦悩を歌っており、曲中しばしばト短調やヘ短調に振れている。装飾歌唱が多く盛り込まれている一方で、超高音は用いられていない。
なおこのカヴァティーナを採用する場合、本来はローマ稿の通りに前後のレチタティーヴォと一括で採用すべきであるが、そうせずにアリアを初演稿のレチタティーヴォのまま挿入してしまう場合もある。

第11bis番 ジェロ―ニオのアリア
1815年 ローマ稿で新たに挿入されたジェロ―ニオのアリア。このアリアは、《イタリアのトルコ男》の他の音楽と比べるとストレートなバッソブッフォの音楽だが、とはいえ非常に良くできた名曲である。
このアリアは構成がかなり自由で、曲想が次々と変化していく。
冒頭 Se ho da dirla avrei molto piacere は Allegretto 6/8 ニ長調。ジェローニオは 6/8 の軽やかな音楽で妻への複雑な思いをぼやく。
速度はそのまま 2/2 に変わる(1拍が8分音符3つから4つに変わるが、実際にはさらにテンポを上げてしまう)。Cappellini, e cappelloni はいかにもバッソブッフォらしい早口の捲し立て。
6/8 に戻り、Che non possa trovarsene una, でジェロ―ニオは再び妻を嘆く。
6/8 のまま Allegro con brio に変わり、Ah! se nel mondo non vo della luna, でジェロ―ニオはさらにぼやく。少しばかりロッシーニ・クレッシェンドが用いられる。
2/2 が再現するが、今度は速度が Allegro に上がり、物凄い早口になる(少し短くなっている)。
最後に Primo Tempo (= Allegro con brio) 6/8 の音楽が拡大されて再現し、ロッシーニ・クレッシェンドで盛り上げられて締め括られる。

第15a番 フィオリッラのアリアの手直しされたカバレッタ
1815年 ローマ稿で新たに手直しされた第2幕のフィオリッラのアリアのカバレッタ。手直しは歌の部分だけでなくオーケストラにも及び、カバレッタが91小節から99小節に8小節増えている。ここではフィオリッラの歌の音域は低いロ音から高いニ音まで2オクターブ以上と広く、かつ装飾歌唱が多くなっている。これはさすがに難し過ぎるためなのか、なお筆写譜によっては簡易に改められているものもあり、クリティカルエディションではフィオリッラの歌が2段併記になっている。
今日、この手直しされたカバレッタを採用する場合でもまるまる採用されることはなく、後半のみを差替えることが一般的である。

対訳付き音楽設計図

登場人物
セリーム【1】
SELIM,
トルコの王子 その者は旅をしている、かつてザイダの恋人、そして それから フィオリッラに 魅惑された
Principe Turco che viaggia, un tempo amante di Zaida, e poi invaghito di Fiorilla
バス
basso

ドンナ・フィオリッラ
D. FIORILLA,
気紛れな女、しかし正直な、ドン・ジェローニオの妻 【2】
donna capricciosa, ma onesta, moglie di:
ソプラノ
soprano

ドン・ジェローニオ
D. GERONIO,
意志の弱い、そして怖がりの男
uomo debole, e pauroso
バス
basso

ドン・ナルチーゾ
D. NARCISO,
ドンナ・フィオリッラの扈従の騎士【3】、嫉妬深い そして 感情的な男
cavaliere servente di Donna Fiorilla, uomo geloso e sentimentale
テノール
tenmore

プロスドーチモ
PROSDOCIMO【4】
,
詩人、そして ドン・ジェローニオの知人
Poeta, e conoscente di D. Geronio
バス
basso

ザイダ【5】
ZAIDA,
かつて セリームの女奴隷 そして 婚約者、それからジプシー女;優しい心の そして 【セリームを】 愛する女
un tempo Schiava e promessa sposa di Selim, poi Zingara; donna di cuor tenero ed amante
ソプラノ
soprano

アルバザール【6】
ALBAZAR,
かつて セリームの腹心の部下、それから ザイダのジプシーの崇拝者 そして 【ザイダのジプシーの】友人
prima confidente di Selim, poi zingaro seguace ed amico di Zaida
テノール
tenmore


舞台は ナポリ近辺の 休暇の地で、そして ドン・ジェローニオの家で。
La Scena è nelle vicinanze di Napoli in un luogo di villeggiatura, e in casa di D. Geronio.


1 Selim は曲中でもレチタティーヴォでも Se-lim と2音節に割り振られており、-lim が主拍にかつ4分音符で置かれていることが多く、明らかに後ろに強勢が入っている。ただしレチタティーヴォでは例外(Se- に強勢が入るように書かれている)もある。
2 フィオリッラは台本からドン・ジェローニオの若い後妻であることが分かる。
3 扈従の騎士 こしょうのきし もしくは こじゅうのきし については、第3番の後のレチタティーヴォの傍注を参照。
4 Prosdocimo はイタリア語では -do- に強勢が入る。台本ではこの名前で呼ばれることはなく、常に 詩人 Poeta で呼ばれる。
5 Zaida は Zai-da と2音節に割り振られており、1音節目に強勢、そして二重母音 ai は基本的に a が強くなるので『ザ』イダ の読みになる。なお自筆総譜では協力者の書いたレチタティーヴォでは Za-i-da と3音節に割り振られ、-i- に強勢が入るように書かれているが、クリティカルエディションでは2音節に直され、注釈が付けられた。
6 アルバザールはマッツォラの原作台本では 宦官 eunuco とされており、台本中でも触れられている。ロマーニの台本ではこの設定は外されたが、その性格は残されている。セリームの腹心の部下であり女奴隷のザイダに接触できるのは彼が宦官だからと考えるの自然だろう。

日本語訳は極力文学的色づけをしない直訳にしてある。
歌詞とト書きは、マーガレット・ベント Margaret Bent によるクリティカルエディション総譜に基づいている。

※左右対訳に表示されない場合は、ブラウザの幅を広げるか、文字サイズを小さくするか。スマートフォンでは横向き表示を推奨。

Sinfonia
Adagio
4/4
D major
序奏を前に置いた 展開部を欠いたソナタ形式の序曲。
[Allegro]
4/4
D major
ATTO Ⅰ
N. 1
INTRODUZIONE

Zaida
Poeta
Albazar
Coro
Allegro
2/4
G Major
SCENA Ⅰ第1場
(Luogo solitario fuori di Napoli. Spiaggia di mare. Colle da un lato sparso di casini di campagna che si vedono in lontananza, e di tende custodite da Zingari. Una truppa di Zingari è sul colle, un'altra al piano, tutti occupati a differenti uffici. Zaida, Albazar, indi il Poeta)(ナポリの【郊】外の 人気のない場所。海の浜辺。一方の側に 田舎の小屋が 点在した 丘 それらは【= 小屋は】 遠くに 見える、そして ジプシーたちによって 管理されている 天幕。ジプシーたちの一団が 丘の 上に いる、別の【一段】は 平地に、皆 違った 職務で 忙しい。ザイダ、アルバザール、それから 詩人)

CORO DI ZINGARIジプシー男たちの合唱
Nostra patria è il mondo intero,全世界が 私たちの 故郷だ、
ed in sen dell'abbondanzaそして 豊かさの 懐の 中で
l'altrui credula ignoranza他の人たちの 軽々しく信じやすい 無知が
ci fa vivere e sguazzar.私たちを 生きさせている そして 楽しく暮らさせている【≒ 信じやすい 無知な人たちのおかげで 私たちは 豊かに 楽しく暮らしている】。

ZAIDAザイダ
Hanno tutti il cor contento,皆が 満ち足りた 心を 抱いている【のに】、
sol la misera son io!私 だけが 不幸な女だ!
Ho perduto l'amor mio,私は 私の 愛する人を 失った、
e nol posso più trovar.そして 彼を もう 見つけることは できない。

ALBAZARアルバザール
Consolatevi una volta;一度【くらい】 安堵しなさい;
divertitevi con noi.私たちと一緒に 気晴らしをしなさい。
Su...coraggio! tocca a voiさあ… 元気を出して! あなたの番だ
la canzone a cominciar.歌を 始める。
A / B / A’の三部形式の導入。

l'altrui credula ignoranza
後にあるようにジプシーたちは占いで生計を立てており、占いをすぐ信じる人たちのことだと思われる。

Moderato
4/4
C Major
POETA詩人
Ho da fare un dramma buffo,私は 喜劇を 作らなくてはならない、
e non trovo l'argomento!しかし 私は 題材を 見つけ【られ】ない!
Questo ha troppo sentimento,これは あまりにも 感情を 持ち過ぎている【≒ これは あまりにも 感傷的 過ぎる】、
questo insipido mi par.これは 味気なく 私には 思われる【≒ これは 私には おもしろくないと 思われる】。
Primo Tempo
2/4
G major
CORO合唱
Nostra patria è il mondo intero,全世界が 私たちの 故郷だ、
ed in sen dell'abbondanzaそして 豊かさの 懐の 中で
l'altrui credula ignoranza他の人たちの 軽々しく信じやすい 無知が
ci fa vivere e sguazzar.私たちを 生きさせている そして 楽しく暮らさせている。

POETA詩人
Come! Zingari! perbacco.なんと! ジプシーたちだ! なんとまあ。
Gioia, canti, colazione!歓喜、歌、食事!
Oh! che bella introduzioneああ! なんという 素晴らしい 導入を
vi sarebbe da cavar!そこから 掘り出す べきで あろうか!

ZAIDA E ALBAZARザイダ と アルバザール
Nostra patria è il mondo intero,全世界が 私たちの 祖国だ、
ed in sen dell'abbondanzaそして 豊かさの 懐の 中で
l'altrui credula ignoranza他の人たちの 軽々しく信じやすい 無知が
ci fa vivere e sguazzar.私たちを 生きさせている そして 楽しく暮らさせている。
[parte]【ザイダは】[去る]
[parte]【アルバザールは】[去る]

CORO合唱
Ci fa vivere e sguazzar.私たちを 生きさせている そして 楽しく暮らさせている。
[partono][去る]
[Recitativo] Dopo l'Introduzione
4/4
(C Major)
SCENA Ⅱ第2場
(Poeta solo)(詩人一人)

POETA詩人
Ah! se di questi Zingari l'arrivoああ! もし これらの ジプシーたちの 到来が
potesse preparar qualche accidente.なにか 出来事を 用意することが できる【↑】ならば、
che intrigo sufficienteそれは 【↓】まるまる一つの劇に 足りる 波乱を
mi presentasse per un dramma intero!私に 差し出すだろう!
Un bel quadro farei tratto dal vero.私は 現実から 素晴らしい 場面を 作るだろうに。
Abbandonar bisogna断念する 必要がある
il pensier sopra i capricci気紛れについて 考えることを
della bella Fiorilla: hanno già messo in scena美しい フィオリッラの: 既に 上演して来た
dei Poeti d'ogni razza,どんな タイプの 詩人も、
sciocco marito, ed una moglie pazza.愚かな夫を、そして 頭のおかしい 妻を。
Ecco appunto Geronioそらここに ちょうど ジェロ―ニオが
che ha la pazzia di farsi astrologare:その者は 星占い してもらうのに 取りつかれている:
corro i zingari presto ad avvisare.私は ジプシーたちに 急いで 知らせに 行く。
(il Poeta sale il colle e si vede accennare ai Zingari Geronio il quale esce da parte opposta meditando)(詩人は 丘を 上る そして ジプシーたちに ジェロ―ニオを 示すのが 見られる その者は 反対側から 熟考しながら 出る)
potesse preparar qualche accidente.
この台本での accidente はすべて 出来事 で訳す。

che intrigo sufficiente
intrigo は一般的に 陰謀 の意味で用いられるが、もつれた状況 をも意味する(他動詞 intregare には 陰謀を企てる の意味の他に もつれさせる の意味もある)。commedia d'intrigo で 筋の込み入った喜劇 という意味になる。つまり詩人の言う intrigo は (たくさんの)予期せぬ展開 のような意味である。ここでは 波乱 で訳す。

N. 2
CAVATINA DI D. GERONIO

D. Geronio

Zaida
Coro
Allegro moderato
4/4
F major
SCENA Ⅲ第3場
(D. Geronio, indi Zingari, e Zingare)(ドン・ジェローニオ、それから ジプシー男たちと ジプシー女たち)

GERONIOジェローニオ
Vado in traccia di una Zingara私は ジプシー女の 跡に 行く【≒ 私は ジプシー女を 探しに 来ている】
che mi sappia astrologar:その者は 私に 星占いをすることが できる:
che mi dica in confidenza,その者は私に 内密に 言う、
se col tempo e la pazienza,時間と共に そして 忍耐【と共に】
il cervello di mia moglie私の 妻の 頭脳を
potrò giungere a sanar.私が 改善するに 至ることが できるであろう【↑↑】かどうか【≒ 時間をかけて 我慢すれば 私が 私の 妻の 頭を 改めるように できるかどうか】。
Ma la Zingara ch'io bramoしかし ジプシー女は その者を 私は 切望している
è impossibile a trovar.見付けるのは 不可能だ。
Il cervello di mia moglie私の 妻の 頭脳は
è formato di tal pasta,それほどの 気質で 作られている ので、
che un astrologo non basta星占い師は 十分でない
come è fatto ad indagar.それが どうやって 調査されれば いいか【≒ 私の 妻の 頭は 占い師が どうやって 調べれば いいのか 手に余るほどの 気質で できている ≒ 私の 妻の 頭の中は 占い師でも 見抜けない】。

(intanto scendono i Zingari, e le Zingare con Zaida, che giunti al piano circondano Geronio etc.)(その間に ジプシー男たち、そして ザイダと一緒のジプシー女たちが 【丘から】 下りる、その者たちは 平地に 到着して ジェローニオを 取り囲む などなど)
緩 カンタービレ / 急 カバレッタ の二部構成のカヴァティーナ。このカヴァティーナは協力者の書いたもので、ロッシーニの筆によるものではない。
緩 カンタービレ。

39小節から42小節まで省略可記号 Vi--de あり。自筆総譜で取り消しが示唆されているが、クリティカルエディションでは推奨しておらず、上演でもカットされることはほぼない。
58小節から67小節まで省略可記号 Vi--de あり。自筆総譜で取り消されているが、上演でカットされることはほぼない。


è formato di tal pasta,
この pasta は 気質。

come è fatto ad indagar.
come fare a + 不定詞 ―するにはどうすればいいか

Più lento
4/4
F major
ZAIDA E CORO DI ZINGAREザイダ と ジプシー女たちの合唱
Chi vuol farsi astrologar!誰が 星占いして もらい たいのか!
Primo Tempo
4/4
F major
GERONIOジェローニオ
Ecco appunto a me vicinoそらここに ちょうど 私の 近くに
uno stuol di zingarelle.ジプシー女たちの 一団が。

ZAIDAザイダ
Noi leggiamo nel destino,私たちは 運命に 読み取る、
noi leggiamo nelle stelle:私たちは 星々に 読み取る:
chi vuol farsi astrologar!誰が 星占いして もらい たいのか!

CORO DI ZINGAREジプシー女たちの合唱
Chi vuol farsi astrologar!誰が 星占いして もらい たいのか!

GERONIOジェローニオ
Zingarelle!...ジプシー女たちよ!…

ZAIDA E CORO DI ZINGAREザイダ と ジプシー女たちの合唱
Qua la mano.ここに 手を。

GERONIOジェローニオ
Aspettate...待ちなさい…

ZAIDA E CORO DI ZINGAREザイダ と ジプシー女たちの合唱
Presto...急いで…

GERONIOジェローニオ
Piano.ゆっくりと【≒ 急かさないで】。

ZAIDAザイダ
Siete nato...あなたは 生まれた…

GERONIOジェローニオ
Sì... in che giorno?そうだ… どんな 日に?

ZAIDAザイダ
Era il sol in Capricorno.太陽が 山羊座に あった。

GERONIOジェローニオ
Son garzone od ammogliato?私は 未婚の男か それとも 既婚男性か?

ZAIDAザイダ
Qua la fronte. Maritato.ここに 額を。夫だ。

GERONIOジェローニオ
Quando... Come vi accorgeste?いつ… どうやって 君たちは 気づくのか?

ZAIDAザイダ
Sotto il segno dell'Ariete.牡羊座の 星座の 下に【≒ 白羊宮の 下に】。

ZAIDA E COROザイダ と 合唱
Infelice!不幸な人だ!

GERONIOジェローニオ
Cos'è stato?何が あったのか?

ZAIDA E COROザイダ と 合唱
Poveretto!哀れな男だ!

GERONIOジェローニオ
Cos'è nato?何が 生じたのか?

ZAIDA E COROザイダ と 合唱
Che fatal costellazione!なんという 不幸をもたらす 星座だ!

GERONIOジェローニオ
Qual è?それは どんなものか?

ZAIDA E COROザイダ と 合唱
Il segno del montone!雄羊の 星座だ【≒ 寝取られ男の 星座だ】!

GERONIOジェローニオ
Eh! levatevi d'attorno,えい! 周りから 遠ざかりなさい、
eh! toglietevi di qua!えい! ここから 立ち退きなさい!
テンポ・ディ・メッゾ(中間部)。ザイダとジプシー女たちの星占いの場面があることで拡大されている。

Sotto il segno dell'Ariete.
この segno は星占いにおける 星座。重複するがそのまま訳す。

Il segno del montone!
この montone 雄羊 (ariete と同義) は 寝取られ男 を意味している。ヨーロッパでは妻に浮気された夫には頭に角が2本生えるという言い伝えがある(イタリア語の形容詞 cornuto 角の生えた には 妻を寝取られた の意味もある)。立派な角が2本生えた雄羊を寝取られ男にたとえてジェロ―ニオを揶揄している。

Allegro brillante
2/4
F major
Ah! mia moglie, san chi sonoああ! 私の妻め、私が誰だが 知っている
fino i Zingari di piazza;群衆の ジプシーたち までが;
se tu segui a far la pazzaもし 君が 馬鹿げたことを し 続けるならば
tutto il mondo lo saprà.全 世界が そのことを 知るだろう。

ZAIDA E COROザイダ と 合唱
Che fatal costellazione!なんという 不幸をもたらす 星座だ!

GERONIOジェローニオ
Eh! lasciatemi buffone!えい! 私を 放っておきなさい 無責任な奴め!

ZAIDA E COROザイダ と 合唱
Il montone! ah! ah! ah!雄羊【≒ 寝取られ男】! ハ! ハ! ハ!

([Geronio] fugge via seguitato dalla truppa de' Zingari. Mentre Zaida con Albazar vogliono allontanarsi, esce il Poeta che li trattiene)([ジェロ―ニオは] 急いで立ち去る ジプシーたちの 一団に 後を追われて。ザイダが アルバザールと共に 遠ざかる つもりで いる時に、詩人が 出る その者は 彼らを 引き留める)
急 カバレッタ。

139小節から146小節まで省略可記号 Vi--de あり。自筆総譜(レチタティーヴォは協力者の手による)で取り消されている。
172小節から187小節まで省略可記号 Vi--de あり。自筆総譜(レチタティーヴォは協力者の手による)で取り消されている。

fino i Zingari di piazza;
piazza は 広場 の意味だが、転じて広場に集まる 群衆 も意味する。ジプシーは流浪の民なので、この di piazza はおそらく 野外で群れ成す の意味合いだと思われる。

[Recitativo] Dopo la Cavatina di D. Geronio

4/4
(C Major)
SCENA Ⅳ第4場
Poeta, Zaida, ed Albazar詩人、ザイダ、そして アルバザール

POETA詩人
Brava! Intesi ogni cosa:素晴らしい! 私は すべての ことを 聞いた:
voi siete, Zingarella, spiritosa.あなたは、ジプシー女よ、機知に富んでいる。
Qual è la vostra patria?あなたの 故郷は どれだ?

ZAIDAザイダ
Ebbi la vita私は 命を 受け取った
del Caucaso alle falde.コーサカスの 山裾で。

POETA詩人
E qual venturaそれで どのような 運命が
da sì lontane terreそれほどに 遠くの 地 から
qui vi tragge raminga?ここへと あなたを 流浪に 引き寄せているのか?

ALBAZARアルバザール
I casi nostri私たちの 状況は
sono un romanzo.小説【のよう】だ。

POETA詩人
(Buono!) Sarete stata(いいぞ!) あなたは いたことがあるだろう
certo in qualche serraglio.確実に なんらかの 後宮に。

ZAIDAザイダ
Un dì feliceかつて 幸福に
schiava in Erzerum vissi私は エルズルムで 奴隷女を 経験した
di Selim Damelec.セリーム・ダメレクの。

ALBAZARアルバザール
E i mali suoiそして 彼女の 不運は
han principiato di là.そこから 始まった。

POETA詩人
Cosa v'avvenne?何が 起こったのか?

ZAIDAザイダ
Udite: egli mi amava,聞きなさい: 彼は 私を 愛した、
e sposarmi volea: le mie rivaliそして 彼は 私と 結婚することを 望んだ: 私の 恋敵たちは
mi fanno agli occhi suoi私を 彼の 目に
infida comparir: cieco e furente不実であると 思えるように【↑】させた: 理性を失わせ そして 激怒させ
lo rende gelosia,る 嫉妬が 彼を、
ed impone a colui che morta io sia.そして それは【= 嫉妬は】 あの男に【= セリームに】 強要する 私が 死ぬ ようにと。
Albazar mi salvò. Lungo sarebbeアルバザールが 私を 救出した。長く なるだろう
il dir quanto soffersi, in quanti modiどれほど 苦しんだか 言うことは、いくつもの やり方で
crudo destin m'offese,残酷な運命は 私を 苦しめた、
come qui, con tal gente, in questo arnese.あの人たちと いっしょに、この【ジプシーの】身なりで ここに【いる】 ように。

POETA詩人
Un bel pensier mi viene良い 考えが 私に 来ている
che può farvi felice.あなたを 幸福に することが できる ところの。

ZAIDAザイダ
In qual maniera?どのような やり方で?

POETA詩人
Debbe arrivar stasera今晩 到着する はずだ
certo Principe Turco, il qual viaggiaある トルコの 王子が、その者は 旅している
per visitar l'Italia, ed osservarイタリアを 訪れる ために、そして 観察する【ために】
i costumi Europei.ヨーロッパの 習慣を。

ZAIDAザイダ
Mi sembra strano私には 奇妙に 思われる
che salti in testa a un Turcoトルコ男の 頭に 跳ねる ことは
questa curiosità.その 好奇心が【≒ トルコ男が そんな好奇心を 思いつくなんて 私には 不思議に 思われる】。

POETA詩人
Il caso è molto raro in verità.状況は 本当に とても 稀だ。
Ma pur sicuramente egli è aspettato;それでも たしかに 彼は 待たれている;
anzi gli han preparatoそれどころか 彼らは 彼に 用意している
un palazzo magnifico, e una festa.立派な 館を、そして 祝宴を。
Pochi giorni qui resta,彼は 数日 ここに 留まる、
poi ritorna in Turchia: dov'ei conoscaそれから トルコに 戻る: もし 彼が 認識する ならば
la fé del vostro coreあなたの 心の 誠実を
si farà coll'amante mediatore.彼は 恋人との 仲介者に なるだろう【≒ もし 彼が あなたの 心が 誠実であることを 理解するならば 彼は セリームとの仲を 取り持ってくれるだろう】。
Dite: miglior idea...言いなさい:【他に】 より良い 考えは…

ALBAZARアルバザール
Trovar non si potea...見つけることは 出来ない…

ZAIDAザイダ
Facil vi fia al Principe l'ingresso?王子に 入ることは あなたには 簡単なのか【≒ あなたは 王子と 容易に 接することができるのか】?

POETA詩人
Se a Selim ritornarvene bramateもし あなたが セリームに 戻ることを 熱望する ならば
lasciate fare a me.私に 任せなさい。

ZAIDAザイダ
Sì: non ho paceはい: 私は 平安を 持たない
lunge di lui: benché con me crudele彼から 遠く離れては: 私に つれない けれども
l'amo, l'amai: sempre gli fui fedele.私は 彼を 愛している、私は 彼を 愛した: 私は ずっと 誠実 だった。
(partono per il colle)(【彼らは】 丘の方へ 去る)
schiava in Erzerum vissi
Erzerum エルズルム 現在のトルコ東部の古くからある都市。
この viver は他動詞 体験する。

poi ritorna in Turchia: dov'ei conosca
この dove は もし―ならば。se と同義。

si farà coll'amante mediatore.
この時点では詩人も、ナポリにやって来るトルコの王子がセリームであるとは分っていない。

N. 3
[CAVATINA FIORILLA, CORO, CAVATINA SELIME DUETTINO]

Fiorilla
Selilm
N. 3-i [Cavatina Fiorilla]

Allegro vivace
4/4
A major
(Fiorilla accompagnata da varie sue amiche, come chi ritorna da una passeggiata ec.)(フィオリッラ 様々な 彼女の 女友達たちによって 同伴されて、散歩から 戻る 人の ように などなど)

FIORILLAフィオリッラ
Non si dà follia maggioreより大きな 馬鹿げたことは ない
dell'amare un solo oggetto:一人の対象 だけを 愛すること よりも:
noia arreca, e non diletto退屈を 引き起こす、そして 喜び【を 引き起こすの】ではなく
il piacere d'ogni dì.毎日の 楽しみは【≒ 毎日 同じような 楽しみしかなければ 喜びでなく 退屈が もたらされる】。
Sempre un sol fior non amanoいつでも 一つの 花を 愛するわけでは ない
l'ape, l'auretta, il rio;蜂は、微風は、小川は;
di genio e cor volubile天分で そして 気の変わりやすい 心【で】
amar così vogl'io,私は そのように 愛し たい、
voglio cangiar così,私は そのように 変わりたい、
voglio cambiar così.私は そのように 変わりたい。
第3番は、小題にある通り、フィオリッラのカヴァティーナ、合唱、セリームのカヴァティーナ、フィオリッラとセリームの小二重唱からなる。

速度、拍子、テンポとも変化はない単一構成のカヴァティーナだが、前半4行の歌詞が戻ることで緩やかな A / B / A’ の形式になっている。

Non si dà follia maggiore
この台本での si dà は ある で訳す。

voglio cambiar così.
1回目と2回目は cangiar だが 3回目は cambiar である。

N. 3-ii Coro, [Cavatina Selim] e Duettino [Fiorilla - Selim]

Allegro moderato
4/4
e minor
(Intanto si vedrà passare una nave, la quale gittato in mare un battello si fermerà sull'ancora. Il battello si avvicina a terra recando Selim accompagnato da molti Turchi)](そうしている間に 一隻の帆船が 進むのが 見える、それは 海に 小船を 降ろして 錨を下ろして 止まる。小船は 陸地に 近付く セリームを 運んで 多数の トルコ男たちに 同伴されて)

CORO合唱
Voga, voga, a terra, a terra.漕げ、漕げ、陸地へ、陸地へ。

FIORILLAフィオリッラ
Un naviglio! Turco pare.船が! トルコの【船】に 思われる。

CORO合唱
Dal travaglio avuto in mare海で 受けた つらい労働から
Riposar potremo qua.私たちは ここで 休息することが できるだろう。

FIORILLAフィオリッラ
In disparte ad osservare【↓】私たちは 離れて 観察して
noi starem chi approderà.いよう 誰が 上陸するだろうか。
(Fiorilla si ritira: Intanto approda il battello, e sbarca Selim)(フィオリッラは 退く: そうしている間に 小船が 着岸する、そして セリームが 下船する)

CORO合唱
E scordare il ciel d'Italiaそして イタリアの 空が 忘れ
ogni pena ci farà.させるだろう 私たちの あらゆる 苦労を。
合唱。
モーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》 第2幕フィナーレ で騎士長が登場する時の音楽が用いられている。

si vedrà passare una nave
この nave は大型の帆船を意味する。かつては大型の船は港に直接接岸できず、連絡用の小船を用いた。battello はそちらの意味で用いられている。

Andante
4/4
E major
SCENA Ⅵ第6場
(Selim, indi Fiorilla)(セリーム、それから フィオリッラ)

SELIMセリーム
Bella Italia, alfin ti miro,美しい イタリアよ、ついに 私は おまえに 見とれている、
vi saluto amiche sponde;おまえたちに 挨拶する 好意的な 岸々よ;
l'aria, il suolo, i fiori, e l'onde空気が、地面が、花々が、波が
tutto ride e parla al cor.すべてが 心に 笑い そして 語る。
Ah! del cielo, e della terra,ああ! 空の、そして 地の、
cara Italia sei l'amor.愛だ おまえは、愛する イタリアよ。

FIORILLAフィオリッラ
(Intanto si sarà fatta vedere colla sua compagnia)(そうしている間に 姿を現しているだろう 彼女の 仲間の女たちと 共に)
(Che bel Turco! avviciniamoci.)(なんと 素敵な トルコ男だ! 近づこう。)

SELIMセリーム
(Quante amabili donzelle!)(なんと多くの かわいらしい 娘たちだ!)

FIORILLAフィオリッラ
(Anche i Turchi non mi spiacciono.)(【他の】 トルコ男たちも 私には 不快では ない。)

SELIMセリーム
(L'Italiane son pur belle.)(イタリア女たちは 本当に 美しい。)

FIORILLAフィオリッラ
(Vo' parlargli.(私は 彼に 話しかけたい。

SELIMセリーム
(Vo' accostarmi.)(私は 近づきたい。

FIORILLA E SELIMフィオリッラ と セリーム
E mi voglio divertir.)そして 私は 楽しみ たい。
単一構成のカヴァティーナ。

Allegro
4/4
A major
FIORILLAフィオリッラ
Serva...【あなたの】 僕 しもべ の女だ…

SELIMセリーム
Servo.【あなたの】 僕 しもべ の男だ。

FIORILLAフィオリッラ
(È assai garbato.)(彼は とても 上品だ。)

SELIMセリーム
(Oh! che amabile visetto!)(ああ! なんと かわいらしい 可憐な顔だ!)
Son davvero fortunato私は 本当に 幸運だ
d'incontrar[e] si vago oggetto.これほどに 美しい 対象と 出会って。

FIORILLAフィオリッラ
Anzi è mio tutto il favoreいやむしろ すべての 恩恵は 私のものだ
d'incontrare un gran signore偉大な 大旦那に 出会う という
così pien di civiltà.これほどに 礼儀正しさに 満ちた。

SELIMセリーム
(Son sorpreso.)(私は 驚いている。)

FIORILLAフィオリッラ
(È già ferito.)(彼は 既に 傷を負わせられた。)

SELIMセリーム
(Che avvenenza!)(なんという 愛らしさ)

FIORILLAフィオリッラ
(È nella rete.)(彼は 網の 中に いる)

SELIMセリーム
Voi, signora, mi piacete.あなたは、婦人よ、私に 気に入られている。

FIORILLAフィオリッラ
Non mi burli...私を からかうで ない…

SELIMセリーム
In verità.本当に。

FIORILLAフィオリッラ
(Con un poco di modestia(少しばかりの 謙虚さで
io so ben quel che si fa.)私は 何をするか よく 分かっている。)

SELIMセリーム
(Quell'amabil modestino(あの 愛すべき 謙虚さが
più gentil sembrar la fa.)彼女を さらに 愛らしいように 見え させている。)

FIORILLAフィオリッラ
Addio signor[e]...さようなら 貴君よ…

SELIMセリーム
Partite?あなたは 去るのか?

FIORILLAフィオリッラ
Vo' passeggiando un poco.私は 少しばかり 散歩をし たい。

SELIMセリーム
Che venga anch'io gradite?私も 行くことを あなたは 喜んで受けるか?

FIORILLAフィオリッラ
È troppo onor.それは 非常に 光栄だ。

SELIMセリーム
(Che foco!)(なんという 熱情だ!)

FIORILLAフィオリッラ
Ah!ああ!

SELIMセリーム
Carina!... voi sospirate?いとしい人よ!… あなたは 溜め息をついているのか?
Ah!ああ!

FIORILLAフィオリッラ
Voi pure.あなたも。

SELIMセリーム
Anch'io.私も。

FIORILLA E SELIMフィオリッラ と セリーム
Perché?なぜ?
急 カンタービレ / さらに急 カバレッタ の二部構成の小二重唱。
緩。

Serva... / Servo.
どちらも謙った挨拶。日本語に相当する言い方がないのでそのまま訳す。

Più mosso
4/4
A major
SELIMセリーム
Perché una fiamma insolitaなぜなら ただならぬ 炎を
sento che avvampa in me.私は 感じている【↑】からだ それは 私の 中で 燃え上っている。

(Fiorilla gli porge la mano, che Selim stringe teneramente, allora Fiorilla corrisponde alla tenerezza di Selim)(フィオリッラは 彼に 手を 差し出す、それを セリームは 優しく 握る、その時 フィオリッラは セリームの 愛情に 応える)

FIORILLA E SELIMフィオリッラ と セリーム
Cara mano al sen ti premo;いとしい手よ 私は おまえを 胸に 押し付ける;
non ti voglio più lasciar.私は おまえを【= 手を】 離し たくない。

FIORILLAフィオリッラ
(Non è poi così difficile(結局 それほど 難しくない
questi Turchi a conquistar.)これらの トルコ男たちの 愛を掴むのは。)

SELIMセリーム
(Non è poi così difficile(結局 それほど 難しくない
l'Italiane a conquistar.)イタリア女たちの 愛を 掴むのは。

(partono dandosi il braccio)(【二人で】 去る 腕を 組んで)
急 カバレッタ。

[Recitativo] Dopo il Duettino

4/4
(C Major)
SCENA Ⅶ第7場
(Poeta, indi Narciso)(詩人、それから ナルチーゾ)

POETA詩人
Della Zingara amante【セリームを】 愛している ジプシー女の
non è buffo il carattere,役どころは 滑稽では なく、
ma bello e interessante. È teatrale気高く そして 関心を引く。劇らしい
il principio dell'opera,オペラの 始まりは【≒ オペラの 始まりは 劇にふさわしい】、
ma non ci vedo intreccio naturale.しかし そこに 自然な もつれを 私は 見ない。

NARCISOナルチーゾ
Poeta!詩人よ!

POETA詩人
Don Narciso!ドン・ナルチーゾよ!
Come! siete qui solo? io vi credeaどうしのだた! あなたは ここで 一人なのか? 私は 思っていた あなたが
della Fiorilla in compagnia.フィオリッラと 一緒だと。

NARCISOナルチーゾ
Venne meco; ma poi prese altra via.彼女は 私と 一緒に 来た; しかし それから 別の 道を 進んだ。
Ditemi: la vedeste?私に 言いなさい: あなたは 彼女を 見たか?

POETA詩人
Io, no.私は、いいや。

NARCISOナルチーゾ
(Colei(あの女は
ha qualche intrigo che mi tien nascoso.)なんらかの 悪巧みを 抱いている それを 彼女は 私に 隠して おいている。)

POETA詩人
(Pensa il servente cavalier geloso.(扈従 こしょう/ こじゅう の騎士が 嫉妬を 思い起こしている【≒ 愛人が 嫉妬している】。
Scopriam terreno: mi potrebbe offrire地盤を 見えるようにしよう【≒ 意図を 明らかにしよう】: 彼は 私に 提供する かもしれない
qualche bell'episodio.)なんらかの 良い エピソードを。)

NARCISOナルチーゾ
(All'incostante son venuto in odio.)(気紛れな者を 私は 憎らしくなった。)


SCENA Ⅷ第8場
D. Geronio, e dettiドン・ジェローニオ、そして 前の場の人たち

GERONIOジェローニオ
Amici... Soccorretemi...友たちよ… 私を 助けなさい…
consigliatemi... io son fuori di me.私に 助言しなさい… 私は 正気でなくなっている。

NARCISOナルチーゾ
Perché? che avvenne mai?どうして? いったい 何が 起きたのか?

POETA詩人
Che cosa c'è?どんなことが あるのか?

GERONIOジェローニオ
In questo punto io vidiこの瞬間に【≒ たった 今】 私は 見た
mia moglie con un Turco.私の妻が トルコ男と 一緒に【いるのを】。

POETA詩人
Un Turco!トルコ男だって!

NARCISOナルチーゾ
(Infida!)(不実な女め!)

GERONIOジェローニオ
In casa mia lo guida私の 家に 彼女は 彼を 案内している
a prendere il caffè. Sian maledettiコーヒーを 飲みに。 呪われるように
tutti i Turchi del mondo.世界中の 全ての トルコ男たちが。

POETA詩人
(allegro)(陽気に)
Un punto è questoこれは 点だ
da farsi molto onore.たいへんな 名誉になる ための【≒ これは あなたにとって 大いに 名誉になる 状況だ】。

GERONIOジェローニオ
Io non mi curo私は 関心を持たない
d'aver in casa mia私の家に
il gemmato turbante宝石で飾った ターバンを 有することに
di Selim Damelec.セリーム・ダメレクの。

POETA詩人
(saltando per allegrezza)(喜びの感情に 跳び上がって)
Che? Selim... Davvero?なんだって? セリームが… 本当か?
L'amante della Zingara!... perbacco!ジプシー女の 愛する人が!… なんとまあ!
Questo arrivo improvvisoこの 思いがけない 到着は
è un bel colpo di scena... Il dramma è fatto.素晴らしい 劇の急転換だ…
Apollo ti ringrazio.アポッロよ 私は おまえに 感謝している。

NARCISO E GERONIOナルチーゾ と ジェローニオ
È matto.彼は 頭がおかしい。
(Pensa il servente cavalier geloso.
servente cavalier もしくは cavalier servente 直訳すると 奉仕する 騎士。扈従の騎士 という訳語がある。扈従 こしょう/ こじゅう とは 付き従うこと。この場合は 既婚貴婦人の愛人 という意味。

da farsi molto onore.
farsi onore 名声を博する,名をあげる。

è un bel colpo di scena... Il dramma è fatto.
colpo di scena 劇の急転換。この colpo は 突然の行為,驚かす行為 の意味で、観客をあっと驚かせるような突然の場面 を指す。

N. 4
TERZETTO

Narciso
Poeta
Geronio
Allegro
2/2
G major
POETA詩人
Un marito scimunito!愚かな 夫!
una sposa capricciosa!移り気な 妻!
no: di meglio non si dà.いいや: より良いものは ない。

GERONIOジェローニオ
(adirato)(腹を立てて)
Mio signor, che burla è questa?私の 貴君よ、これは 何の 悪ふざけ なのか?
Mi rispetti, o che la testaあなたは 私を 尊重しなさい、さもなければ
qualchedun le romperà.誰かが あなたの【↑】頭を 潰すだろう。

POETA詩人
Un galante supplantato恋する男が 取って代わられた
da un bel Turco innamorato!夢中になった 立派な トルコ男に!
Un amante supplantato!取って代わられた 恋人!
Oh! che intreccio che si fa.ああ! なんという もつれだ それは 作られる。
Ah! ah! ah!ハ! ハ! ハ!

NARCISOナルチーゾ
(sdegnato)(憤慨して)
Per chi intende di parlare?あなたは 誰に対して 言っている つもりなのか?
Non ci venga ad insultare私たちを 侮辱するように なるで ない。
o con me da far l'avrà.さもなければ あなたは 私と 悶着を起こすだろう。

POETA詩人
(ora all'uno, ora all'altro)(時には 一方に、時には 他方に)
Ma signor, perché si scalda?..だが 貴君よ、どうして あなたは 腹を立てているのか?
Lei signor, perché s'infiamma?あなたは 貴君よ、どうして 興奮しているのか?
Sceglier voglio per un dramma私は 劇に 選び たい
L'argomento che mi par.題材を それは 私に【うってつけだと】 思われる。

GERONIOジェローニオ
Scelga pure un argomentoどうか 題材を 選びなさい
che a' miei pari non s'adatti,それは 私の ような者に 適合しない【≒ どうか 私のような者を 巻き込まない 題材を 選びなさい】、
e i mariti non maltratti,そして 夫たちを ひどい目に遭わせるでない、
che san farsi rispettar.その者たちは 尊重してもらう 術を知っている。

POETA詩人
Sceglier voglio per un dramma私は 劇に 選び たい
l'argomento che mi par.題材を それは 私に【うってつけだと】 思われる。

NARCISOナルチーゾ
Lasci vivere i galanti,恋する男たちに 生きるがままに させておきなさい【≒ 恋する男たちを そっとしておきなさい】、
e non badi al loro stato;そして 彼らの ありさまに 注目するでない;
o un poeta bastonatoさもないと 棒で打たれた 詩人を
io farò nel dramma entrar.私は 劇の中に 登場さ せるだろう。

POETA詩人
Atto primo,第1幕、
il marito con l'amico...夫が 友と共に…
Scena prima,第1場、
moglie... Turco... grida... intrico...妻が… トルコ男が… 大声を出す… ごたごた…
no: di meglio non si dà.そうだ: より良いものは ない。
単一構成の三重唱で、速度、テンポ、調性とも変化はないが、曲調によって前半と後半に分れる。前半は詩人を中心にジェローニオとナルチーゾが異論を挟む形。

qualchedun le romperà.
ジェローニオは詩人に対して le を用いていることから、彼は詩人を二人称敬称単数 lei で呼んでいることが分かる。この前行の rispetti も二人称単数敬称 lei に対する命令法である。二人称敬称単数では voi よりも lei の方が相手との距離がある。

Per chi intende di parlare?
ナルチーゾはそれまで詩人に対して二人称敬称複数 voi を用いて話していたが、ここから 二人称敬称単数 lei に変わっている。

o con me da far l'avrà.
avere a che fare con qlcu. で 人と悶着を起こす という成句になり、それと同様な意味と思われる。

Lasci vivere i galanti,
lasciare vivere in pace そっとしておく の in pace が省略されたものと理解した。

(Allegro)
2/2
G major
GERONIO E NARCISOジェルマーノ と ナルチーゾ
Atto primo, scena prima.第1幕、第1場、
il poeta, per l'intrico.詩人は、ごたごたの せいで、
dal marito e dall'amico夫によって そして 友によって
bastonate prenderà.棒たたきを 受けるだろう。

POETA詩人
Atto primo, scena prima,第1幕、第1場、
il marito con l'amico...夫が 友と共に…
moglie... Turco... grida... intrico...妻が… トルコ男が… 大声を出す… ごたごた…
no: di meglio non si dà.そうだ: より良いものは ない。
後半は三者の早口の応酬になる。

[Recitativo] Dopo il Terzetto

4/4
(C Major)
SCENA Ⅸ第9場
(Appartamenti elegantemente mobiliati in casa di D. Geronio. Sofà, Tavolino, Sedie, ec. Fiorilla accompagnata da Selim)(ドン・ジェローニオの 家の 家具を備え付けられた 上品な 居室。ソファー、小テーブル、いす、などなど。フィオリッラ セリームに 同伴されて)

FIORILLAフィオリッラ
(ad un servo che parte)(召使いに その者は 去る)
Olà: tosto il caffè. Sedete.そら: すぐに コーヒーを。座りなさい。
(siedono)(【二人とも】 座る)

SELIMセリーム
Ammiro私は 見とれている
di questo gabinetto i ricchi arredi;この 小部屋の 豪華な 家具に;
ma per sì gran beltà come la vostraだが 本当に 素晴らしい 美しさに 対しては あなたのもの【= あなたの 美しさ】 のような
un tempio ci vorria,神殿が 必要である、
e n'avreste uno magnifico in Turchia.そして それの 壮麗なものを あなたは トルコで 手に入れるだろう【≒ あなたは トルコで 壮麗な 神殿を 得るだろう】。

FIORILLAフィオリッラ
Qualche serraglio forse? È ver che i Turchiもしかして なんらかの 後宮を? 本当か トルコ男たちは
sono tanto gelosi?とても やきもち焼きだ【↑】というのは?

SELIMセリーム
Ah! se un tesoroああ! もし【↓】同じくらいの 宝物を
possedessero eguale,彼らが 所有している【↑】ならば、
della lor gelosia sarien scusati;彼らの やきもちは 大目に見られるだろう;
vi amerebbero più che non credete.彼らは あなたを 愛するだろうに あなたが 思うよりも。

(è recato il caffè)(コーヒーが 持って来られる)

FIORILLAフィオリッラ
Ecco il caffè.ほらここに コーヒーが。

SELIMセリーム
(Non posso più!)(私は もう【我慢】 できない!)

FIORILLAフィオリッラ
(versando, e porgendo)(注いで、そして 手渡して)
Prendete.取りなさい。

SELIMセリーム
(Che mano delicata!)(なんと 華奢 きゃしゃ な 手だ!)

FIORILLAフィオリッラ
Il zucchero è bastante?砂糖は 十分か?

SELIMセリーム
(Che maniera elegante!(なんという 優美な 物腰だ!
Che begli occhi e che foco in lor scintilla!)なんという 美しい 目だ そして その【= 目の】中に なんと 炎が きらきら光っていることか!

FIORILLAフィオリッラ
A che pensate mai?いったい 何のことを あなたは 考えているのか?

SELIMセリーム
Penso a Fiorilla.フィオリッラのことを 考えている。

FIORILLAフィオリッラ
(Il turco è preso.)(【この】 トルコ男は 捕まえられた。 )
Quante donne amaste?あなたは 何人の 女性を 愛したのか?
Quante vorreste averne?彼女たちの 何人を あなたは 有し たかったのか?

SELIMセリーム
Una ne amai,私は 彼女たちの 一人を 愛した、
né voleva amar più: ma presso a voi【その後は】 私は もう【誰も】 愛する つもりは なかった: しかし あなたの 傍で
sento ch'è forza ancor arder d'amore.私は 感じている いまだに 愛で 燃え ざるをえない と。
Deh! se gradir l'affetto mio volete,お願いだから! もし あなたが 私の 情愛を 喜んで受け たい ならば、
l'unica del mio cor fiamma sarete.あなたは 私の 心の ただ一つの 炎に なるだろう。
sento ch'è forza ancor arder d'amore.
essere forza + 不定詞 ―はどうしようもないことだ,―するのは避けられない,―せざるを得ない。

N. 5
QUARTETTO

Fiorilla
Narciso
Geronio
Selim
Andante
4/4
C major
FIORILLAフィオリッラ
Siete Turchi: non vi credo;あなたたちは トルコ男たちだ: 私は あなたたちを 信じていない
cento donne intorno avete:百人の 女性たちを 周りを擁している:
le comprate, le vendeteあなたたちは 彼女たちを 買い、あなたたちは 彼女たちを 売る
quando spento è in voi l'ardor.あなたたちに 激しい情熱が 消えた 時には。

SELIMセリーム
Ah! mia cara, anche in Turchiaああ! 私の いとしい女よ、トルコでも
se un tesoro si possiede,もし 宝物を 所有している ならば、
non si cambia, non si cede,取り替えない、譲らない、
sente un Turco anch'ei l'amor.トルコ男は 彼も 愛を感じている。


SCENA Ⅹ第10場

(D. Geronio, e detti)(ドン・ジェローニオ、そして 前の場の人たち)

GERONIOジェローニオ
(sulla porta)(扉の ところで)
Ecco qui... da soli a soli...そら ここに【彼らが いる】… 二人きりだ…
Che mi tocca sopportare?私には 何を 我慢せ ざるを得ないのか【≒ 私は 何を 我慢し なくてはならないのか】?
È permesso?よろしいかな?
(entrando)(入って)
si può entrare?入ることは できるか?
Sperar posso un tal favor?そのような 恩恵を 私は 望めるか?

SELIMセリーム
Che pretende quell'ardito?あの 厚かましい男は 何を 強く求めているのか?

FIORILLAフィオリッラ
Vi calmate: è mio marito.落ち着きなさい: 彼は 私の 夫だ。

SELIMセリーム
(balzando in piedi, e snudando un pugnale)(すっくと立ち上がって、そして 短剣を 鞘から抜いて)
Il marito!.. Indietro... presto...夫だって!… 下がれ… すぐに…

GERONIOジェローニオ
Come? ahimè!... che tratto è questo?なんだって? ああひどい!… これは どんな 態度なのか?

SELIMセリーム
Il marito! indietro...夫だって!… 下がれ…

GERONIOジェローニオ
Aiuto!助けて!

FIORILLAフィオリッラ
Compatite: è qui venuto容赦しなさい: ここに 来た
poverino a farvi onore.哀れな男は あなたに 敬意を表しに。

SELIMセリーム
Non mi fido.私は【彼を】 信頼しない。

GERONIOジェローニオ
Sì signore.そうだ【≒ 彼女の 言う とおりだ】 貴君よ。


SCENA ⅩⅠ第11場

(D. Narciso in disparte, e detti)(ドン・ナルチーゾ 離れて、そして 前の場の人たち)

NARCISOナルチーゾ
(Ciel che vedo! L'incostante(天よ 私は 何を 見ているのだ! 気紛れな者は
già del Turco è fatta amante.)もう トルコ男の 恋人に なっている。)

FIORILLAフィオリッラ
E domandavi il favoreそして 彼は あなたに 恩恵を 求めている
di baciarvi...あなたに キスする という…

GERONIOジェローニオ
Di baciarvi, sì signore.キスする、そうだ 貴君よ。

FIORILLAフィオリッラ
la zimarra... Poverino!長衣に… 哀れな男よ!
(costringe il marito a baciare la vesta del Turco)(夫に トルコ男の 服に キスするよう 強いる)

GERONIOジェローニオ
La zimarra, sì signore,長衣に、そうだ 貴君よ、
presto, presto, presto, qua.すぐに、すぐに、すぐに、ここに。
緩 / さらに緩 / 急 の三部構成の四重唱。
緩。

Come? ahimè!... che tratto è questo?
tratto は 態度 で訳したが、他動詞 trattare には 応対する の意味があり、この tratto も 応対 なのかもしれない。

Largo
2/4
F major
SELIMセリーム
Io stupisco, mi sorprende,私は 唖然としている、私は 驚いている、
son gli italici maritiイタリア人の夫たちは
più de' Turchi assai compiti,トルコ男たち よりも ずっと 礼儀正しい、
sono pieni di bontà.彼らは 善良に 満ちている。

FIORILLAフィオリッラ
(Oh! che scena!) dite bene:(ああ! なんという 場面だ!) あなたは よく 言っている【≒ そのとおりだ】:
(vecchio stolido) i mariti(年老いた 愚か者を) 夫たちは
(me la godo!) son compiti,(私は 大いに 楽しんでいる) 礼儀正しい、
sono pieni di bontà.彼らは 善良に 満ちている。

NARCISOナルチーゾ
(Ah! lo vedo: i torti miei,(ああ! 私は そのことを 理解してる: 私の 迷惑が、
sventurato, son compiti.不幸な男だ、遂行された【≒ 私は ひどい目に 遭わされた】。
Giusto amor! deh! sian puniti正義にかなった 愛の神よ! お願いだから! 罰せられるように
tanti oltraggi che mi fa.)これほどたくさんの 侮辱が それを 彼女が 私に している。)

GERONIOジェローニオ
(Maledetto!) dice bene:(忌々しい!) 彼は よく 言っている【≒ そのとおりだ】:
(ah! pettegola!) i mariti(ああ! おしゃべり女め!) 夫たちは
(crepo, schiatto) son compiti,(私は 裂ける、私は 爆発する) 礼儀正しい、
sono pien di bonà.彼らは 善良に 満ちている。
さらに緩。

(Ah! lo vedo: i torti miei,
この torti は 迷惑 つまり ひどい目に遭わされること を意味している。3行下の oltraggii 侮辱 に近い。

sventurato, son compiti.
compire = compiere この場合は (過ちを)犯す。セリームの服にキスをしたことを指す。

Allegro vivae
4/4
C major
(Narciso si avanza e dirige il discorso a Geronio: allora tutti si pongono intorno a Geronio tirandolo in disparte a vicenda)(ナルチーゾは 進む そして ジェローニオに 話を 向ける: その時 皆が ジェローニオの 周りに 身を置く 代わりばんこに 彼を 引き寄せて)

NARCISOナルチーゾ
Come! sì grave scornoなんだって! これほどの 耐えがたい 恥を
soffrir potete in pace?あなたは 平穏に 耐えることが できるのか【≒ あなたは おとなしく 耐えていられるのか】?

SELIMセリーム
Che vuol da voi l'audace?この 厚かましい男は あなたから 何を 望んでいるのか?

GERONIOジェローニオ
Nulla.何もない。

FIORILLAフィオリッラ
Che mai pretende?彼は いったい 何を 強く求めているのか?

GERONIOジェローニオ
Niente.何もない。

FIORILLAフィオリッラ
Che dire intende?彼は 何を 言う つもりなのか?

SELIMセリーム
Nol voglio in mia presenza.私は 望まない 彼が 私の 前に【いることを】。

GERONIOジェローニオ
Politica!... prudenza!...策略が!… 思慮深さを!…

NARCISOナルチーゾ
Sentite.聞きなさい。

SELIMセリーム
Qua.ここに。

FIORILLAフィオリッラ
Via, su.向こうへ、さあ。

GERONIOジェローニオ
Ma sono stufo omai,しかし 私は 今 うんざりしているので、
che non ne posso più.そのことについて 私は もう できない。

SELIMセリーム
(Selim appressandosi a Fiorilla, e parlandole in disparte)(セリームは フィオリッラに 近づいて、そして 傍らで 彼女に 話して)
Teco parlar vorrei,私は 君と 話したいのだが、
t'attendo in riva al mar.私は 海岸で 君を 待つ。
(Costor mi fan dispetto,(やつらは 私を 苛立た せる、
è meglio uscir di qua.)ここから 出る 方がいい。)
経過区。


2/2
C major
FIORILLAフィオリッラ
(a Selim)(セリームに)
Ma pria di lasciarmiけれども 私から 去る 前に
volgetemi almenoせめて 私に 向けなさい
il ciglio sereno,晴れ晴れとした 眼 まなこ を、
un guardo d'amor.愛の 眼差しを。
(Quei due seccatori(あれらの 二人の うんざりさせる人たちは
si rodano il cor.)【セリームの】心を 蝕んでいる。)

NARCISOナルチーゾ
(a Geronio)(ジェローニオに)
Dovreste mostrarviあなたは 態度を示す べきだ
men debole almeno:少なくとも より少なく 意志が弱い【≒ あなたは せめて もう少し しっかりした 態度を取る べきだ】:
mirate: son pieno見なさい: 私は いっぱいだ
per voi di rossor.あなたに対して 赤面で【≒ あなたのせいで 私は 恥ずかしくて たまらない】。
(Mi straziano l'alma(私の 魂を ひどく苦しめている
lo sdegno [e] l'amor.)怒り[と] 愛が。)

GERONIOジェローニオ
(a Narciso)(ナルチーゾに)
Non posso spiegarvi私は あなたに 説明することが できない
la rabbia che ho in seno:怒りを それを 私は 胸の中に 抱いている:
son tutto veleno,私は すっかり 毒だ、
son tutto furor.私は すっかり 激情だ。
(Ma pure mi calma(それでも 私を 鎮める
del Turco il timor.)トルコ男の 恐れが。)

SELIMセリーム
(per partire, e tornando indietro)(去ろうとして、そして 引き返して 戻って)
(a Fiorilla)(フィオリッラに)
Ma pria di lasciarviけれども あなたから 去る 前に
volgetemi almenoせめて 私に 向けなさい
il ciglio sereno,晴れ晴れとした 眼 まなこ を、
un guardo d'amor.愛の 眼差しを。
(Quei due seccatori(あれらの 二人の うんざりさせる人たちは
l'assediano ognor.)ずっと 彼女を 取り囲んでいる。)

(partono Selim, Fiorilla, Narciso da parte opposta: resta in iscena Geronio che passeggia a lunghi passi)セリームは、フィオリッラは、ナルチーゾは 向かい合っている 側から 去る: ジェローニオ一人は 舞台に 残る その者は 散歩する【≒ 歩き回る】 大股で)
急。

[Recitativo] Dopo il Quartetto

4/4
(C Major)
SCENA ⅩⅡ第12場

D. Geronio, ed il Poetaドン・ジェローニオ、そして 詩人

POETA詩人
(Sono arrivato tardi,私は 遅れて 到着した、
il Turco è già partito.トルコ男は 既に 去った。
Oh! buon segno: sbuffar veggo il marito.)ああ! 良い 兆候だ: 私は 夫が 溜息をついているのを 見ている。)

GERONIOジェローニオ
(Un vecchio far non può maggior follia老人は より大きな 馬鹿げたことは しない
che una moglie pigliar che giovin sia.)妻を 取るよりも その者は 若い【≒ 年取った男にとって 若い 妻を 娶る ほど ひどく 馬鹿げたことは ない】)。
Poeta! non ti sembra詩人よ! 君には 思われないのか
ch'io meriti pietà? Qui l'ho sorpresa私が 哀れみに 値する と? 私は 彼女を 不意打ちした
vagheggiata dal Turco, ed il bestioneトルコ男に じっと見つめられた、そして 大きな手に負えぬ奴は
ammazzar mi volea.私を 殺そうと した。

POETA詩人
Bene!いいぞ。

GERONIOジェローニオ
Che dici?君は 何を 言っているのか?
Mi astrinse, per placarlo,彼女は 私に 無理に従わせた、彼を なだめる ために、
a baciargli il vestito.彼の 服に キスする ように。

POETA詩人
(Oh! il bel terzetto!)(ああ! 素晴らしい 三重唱だ!)

GERONIOジェローニオ
E qui restava ancor se Don Narcisoそして ここに まだ 居残っていただろう もし ドン・ナルチーゾが
non arrivava a tempo, e non prendea然るべき時に やって来なかった【↑】ならば、そして 取らなかった【↑】ならば
giusta difesa d'oltraggiato sposo.侮辱された 夫の 正当な 擁護を。

POETA詩人
(Che scena! Che quartetto prezioso!)(なんという 場面だ! なんという 貴重な 四重唱だ【≒ なんという 価値のある 四重唱だ】!)

GERONIOジェローニオ
Ma di che vai parlando? Io non intendo.しかし 君は 何について 話しているのか? 私は 分からない。

POETA詩人
Scusate: disponendo容赦しなさい:
stavo un dramma burlesco. Or che pensate voi私は【↑】準備していた 滑稽な 劇を。今 あなたは 何を 考えているのか
di dire a vostra moglie?あなたの 妻に 言【お】うと?

GERONIOジェローニオ
Oh! s'ella fosseああ! 彼女が
docil com'era la mia prima sposa!優し【↑】ければ 私の 最初の 妻が【優しかった】 のと同じくらいに!
Le mie ragioni far valer potrei;私は 私の 理性を もたらさ せることが できるのだが;
ma il rovescio è costei della medaglia.だが あの女は メダルの 裏側だ。

POETA詩人
È tal perché in voi trova un uom di paglia.彼女は そのようである なぜなら 彼女は あなたに 藁でできた人を 見出しているからだ【≒ 彼女は あなたを 取るに足らないつまらない男だと 思っている ので そのように なっているのだ】。
(il Poeta parte)(詩人は 去る)


SCENA ⅩⅢ第13場
D. Geronio, indi Fiorillaドン・ジェローニオ、それから フィオリッラ

GERONIOジェローニオ
Il Poeta ha ragione. È la pazienza詩人は 正しい。我慢は
la virtù. de' somari: Alfin son ioロバの 徳だ【≒ 馬鹿の 徳だ】。最後には 私が
che devo comandar in casa mia.私の 家で 支配しなければならない。
O quel Turco, o mia moglie vada via.あの トルコ男か、あるいは 私の妻が 立ち去るのだ。

FIORILLAフィオリッラ
(È Geronio ancor qui! Cattivo incontro!(ジェローニオが まだ ここに いる! 具合の悪い 遭遇だ!)
sarò costretta per un quarto d'ora私は 強いられるだろう 四分の一時間の間
ad ascoltar precetti di morale.)道徳の 教えを 聞くことを。)

GERONIOジェローニオ
(Eccola: gravità!)(そらそこに 彼女が: 威厳を!)

FIORILLAフィオリッラ
(Predichi quanto vuol; tacer dovrà.)彼は 好きなだけ 説教するがいい; 彼は 黙らざるを 得ないだろう。)

GERONIOジェローニオ
Quanti bocconi amariいくつの 苦い 丸薬が
mi si fanno inghiottir!私に 飲み込んで もらうのだ【≒ どれくらいの ひどい 叱責を 私は 喰らわせられるのだ!】!

FIORILLAフィオリッラ
Con chi l'avete?誰に 腹を立てているのか?
(Fiorilla in questa scena è sempre indifferente, e tranquilla: Geronio di tanto in tanto alza la voce, e sempre burbero)(フィオリッラは この場面で 常に 無関心で、そして 落ち着いて いる: ジェローニオは 時々 声を 大きくする、そして ずっと つっけんどんで 【いる】)

GERONIOジェローニオ
Con una donna pazza,頭のおかしい 女に、
bizzarra, capricciosa,風変わりな、移り気な【女に】、
che per disgrazia a Don Geronio è sposa.その者は 運が悪いことに ドン・ジェローニオの 妻だ。
Stanco son io...私は うんざりしている…

FIORILLAフィオリッラ
Vi prego私は あなたに 懇願する
di non gridar sì forte,そのように 大声で 叫ばないように、
che duolmi un poco il capo.私の 頭が 少し 痛む から。

GERONIOジェローニオ
Anche a me duole.私の【頭】 も 痛む。
Ma cospetto!... farò...だが これは驚いた!… 私は【そう】 しよう…

FIORILLAフィオリッラ
Non vi scaldate.興奮するで ない。
Non sapete parlar se non gridate.あなたは 話す 術を知らない あなたが 叫ば なけ れば【≒ あなたは 叫ばずに 話すことが できない】。
Vi par che sia ben fatto,あなたには 思われるのか とても 相応しい と、
che un uom del vostro rangoあなたの 身分の 男が
debba strillar così?そのように 喚きたて なければならない【↑】ことが?

GERONIOジェローニオ
(L'ammazzerei.)(私は 彼女を 殺したいものだ。)
E par ben fatto a Leiそして あなたには 思われるのだ とても 相応しいと
di farmi disperar... Corpo di Bacco,私を 絶望さ せるのが… なんたることだ、
vi metterò riparo.私は あなたに対して 対策を講じよう。

FIORILLAフィオリッラ
Piano, sposino caro.小声で、いとしい 夫よ。

GERONIOジェローニオ
Impertinente!図々しい!

FIORILLAフィオリッラ
Già col gridar non ottenete niente.既に 大声を出す ことで あなたは 何も 得ていない。

GERONIOジェローニオ
Ebben si parli piano.それでは 小声で 話そう。

FIORILLAフィオリッラ
Se la domanda è lecita,もし 要求が 妥当で あれば、
dite mi, mio dolce amor, saran poi lunghe私に 言いなさい、私の いとしい 愛する人よ、とはいえ 長いの だろうか
le vostre ammonizioni?あなたの 警告は【≒ あなたの 説教は】?

GERONIOジェローニオ
Oh! lunghe molto.ああ! とても 長い。

FIORILLAフィオリッラ
Se non le ristringete io non le ascolto.もし あなたが それを 再び締めなければ【≒ あなたが 説教を 手短にしなければ】私は それを 聞かない。

GERONIOジェローニオ
Le ascolterete... sì... le ascolterete,あなたは それを 聞くだろう… そうだ… それを 聞くだろう
signora smorfia, o alla capanna anticaしかめ面 婦人よ、さもなければ【↓】ソレントの 元の 小屋に
tornerete in Sorrento ove vi presi.あなたは 帰るだろう そこで 私は あなたを【妻に】 受け入れた。
Gran sproposito ho fatto!非常に 馬鹿なことを 私は した!
Se più resto con voi divento matto.さらに あなたと 一緒に 居残るならば 私は 頭がおかしく なる。

FIORILLAフィオリッラ
Voi sempre vi lagnate. Anch'io ragioneあなたは いつも 文句を言っている。私も
avrei di lamentarmi,不平を言う【↑】言い分を 持っている、
eppur cheta mi sto.それでもなお 私は 物静かに 留まっている。

GERONIOジェローニオ
Voi! questa è bella!あなたが! なんということだ!
E qual motivo mai dato vi avrei?...それで いったい どのような 原因を 私は あなたに 与え ただろうか?…

FIORILLAフィオリッラ
Fate i vostri lamenti in faccia ai miei.あなたの 苦情を しなさい 私のものと 比べて【≒ 私の 言う 文句と 比べて 自分の 文句を 言いなさい】。

GERONIOジェローニオ
Ebben: di voi mi lagnoそれでは: 私は あなたに 不平を言っている
che cambiata vi siete,あなた【の性格】が 変わった ことを、
e che il marito far crepar volete.そして あなたが 夫を 死な せ ようとしている ことを。

FIORILLAフィオリッラ
Di voi mi dolgo anch'io per la ragione私も あなたに 不平を言っている
che vi siete cambiato.あなたが 変わった という【↑】理由で。

GERONIOジェローニオ
Io!私が!

FIORILLAフィオリッラ
Ve lo provo.私は あなたに そのことを 証明する。
Amabil, come un dì, più non vi trovo.あなたが、かつてのように、優しいとは 私は 思わない。
72小節 Non sapete parlar se non gridate. から 102小節 Se più resto con voi divento matto. まで 省略可記号 Vi--de あり。この個所は初演時の出版台本には載っているものの、自筆総譜では取り消されており、また当時の筆写譜では扱われていない。したがって初演直前か直後に取り消されたと思われる。近年の上演でもカットされることが多い。


docil com'era la mia prima sposa!
マッツォラの原作台本では、最初の妻の名前が ドロテア Dorotea となっている。

È tal perché in voi trova un uom di paglia.
uomo di paglia 藁でできた人 で 役に立たない人,取るに足らないつまらない人 という意味になる。

Il Poeta ha ragione. È la pazienza
ロマーニの台本では第12場のレチタティーヴォには続きがあり、さらに詩人のアリアがあった。アリアで詩人はジェロ―ニオに対し、悪妻は棒で叩いて bastonare 言うことを聞かせるのだ、ソクラテスは妻にそれができなかった、と言う(詩人は、当然、彼の劇が面白くなるようそうけしかけているのであって、ジェロ―ニオがフィオリッラにそんなことをしても効き目がないことは分かって言っている)。最初は渋ったジェロ―ニオもやがてその気になる。これを受けて彼はここで 詩人は正しい。 と言っている。協力者はアリアの前のレチタティーヴォを書いていたが、ロッシーニはおそらくこの場面を気に入らなかったようで、アリアの音楽は書かなかった。

Quanti bocconi amari
この boccone は 丸薬。boccone amaro 苦い丸薬 で 屈辱,非難 を意味する。

mi si fanno inghiottir!
inghiottire bocconi 叱責を喰らう。

Con chi l'avete?
averla con qlqu. 人に 腹を立てる。

Voi! questa è bella!
Questa è bella! なんということだ! この bella は反語的な ひどい。

Fate i vostri lamenti in faccia ai miei.
この in faccia a - は ―と比べて。

N. 6
DUETTO [Fiorilla-Don Geronio]

Fiorilla
Don Geronio
Allegro
4/4
G major
GERONIOジェローニオ
(con ironia)(皮肉を もって)
Per piacere alla signora婦人に 気に入られる ために
che ho da far vorrei sapere.私が 何を すべきか 私は 知りたいものだ。

FIORILLAフィオリッラ
(placidamente)(穏やかに)
Voi dovete ognor tacereあなたは いつでも 黙っていなければ ならない
mai di nulla sospettar.決して 何も 疑っては ならない。

GERONIOジェローニオ
Ma se ascolto...しかし もし 私が 聞く ならば…

FIORILLAフィオリッラ
Si fa il sordo.耳の聞こえない人に なりなさい。

GERONIOジェローニオ
Ma se vedo...しかし もし 私が 見る ならば…

FIORILLAフィオリッラ
Si fa il cieco.盲人に なりなさい。

GERONIOジェローニオ
No, signora, non l'accordo,いいや、婦人よ、私は そのことは 認め【られ】ない、
vo' vedere, e vo' parlar.私は 見 たい、そして 私は 話し たい。

FIORILLAフィオリッラ
Passerete per balordo,あなたは 馬鹿な人だと 思われるだろう、
vi farete corbellar.あなたは あなたを からかわせ させるだろう。

GERONIOジェローニオ
(in collera)(怒って)
Alle corte: in casa mia要するに: 私の 家では
non vo' Turchi né Italiani;私は トルコ男たちも イタリア男たちも【いて】 ほしくない;
o mi scappa...さもなければ…

FIORILLAフィオリッラ
(ironica)(皮肉を込めて)
Che pazzia!なんという 狂気だ!

GERONIOジェローニオ
qualche cosa dalle mani.何かが【↑↑】私の 手から【↑↑】逃げる【≒ 私は 自制できなくなるだろう】。

FIORILLAフィオリッラ
(con finta tenerezza)(うわべだけの 愛情を もって)
Via: carino, vi calmate.さあ: いとしい人よ、落ち着きなさい。

GERONIOジェローニオ
Come! ancora mi burlate?なんだって! まだ 私を からかうのか?
急 / 緩 / 急 の三部構成の二重唱。
急。

Passerete per balordo,
passare per - ―で通る, ―と見なされる,―だと思われる

o mi scappa...
次のジェローニオの行 qualche cosa dalle mani. に続く。

qualche cosa dalle mani.
scappare di mani = sfuggire di mani 手に負えなくなる,制御できなくなる という言い方があり、これと同様のことを言っていると思われる。mi scappa qualche cosa dalle mani 私は自制できなくなる,私の我慢も限界を超える といった意味だろう。

Andantino
4/4
E-flat major
FIORILLAフィオリッラ
No; mia vita, mio tesoro;いいえ、私の 命の人よ、私の 宝の人よ;
se vi adoro ognun lo sa.私が あなたを 熱愛している かどうか 誰もが そのことを 知っている。
Voi, crudel, mi fate oltraggio?..あなたは、むごい人よ、私を 侮辱 しているのか?…
Mi offendete..あなたは 私の 感情を害している…

GERONIOジェローニオ
(Addio coraggio.)(勇気よ さらば)

FIORILLAフィオリッラ
(fingendo dolore)(うわべだけの 悲しみ 【をもって】)
Voi vedete il pianto mioあなたは 私の 涙を 見ている
senza aver di me pietà!私に 哀れみを 抱くこと なしに!

GERONIOジェローニオ
(commosso)(心を動かされて)
No, Fiorilla, t'amo anch'io,いいや、フィオリッラよ、私も 君を 愛している、
egualmente ognun lo sa.誰もが 等しく そのことを 知っている。
緩。

Allegro
4/4
E-flat major
FIORILLAフィオリッラ
(offesa)(むっとして)
Ed osate minacciarmi!それでも あなたは あえて 私を 威嚇している!
maltrattarmi! spaventarmi!私を ひどい目に遭わせている! 私を 脅かしている!

GERONIOジェローニオ
Perdonate...容赦しなさい…

FIORILLAフィオリッラ
(sdegnata)(大いに怒って)
Mi lasciate.私を 放っておきなさい。

GERONIOジェローニオ
(correndole dietro)(彼女の 後ろに 駆けつけて)
Fiorilletta!..フィオレッタよ!…

FIORILLAフィオリッラ
Vo' vendetta.私は 仕返しを したい。

GERONIOジェローニオ
Fiorillina!..フィオリッラよ!…

FIORILLAフィオリッラ
Via di qua.ここから 去りなさい。
Per punirvi aver vogl'ioあなたを 罰するために 私は
mille amanti ognor d'intorno,千人の 恋人たちを いつでも 周りに、
far la pazza notte e giorno,昼も夜も はしゃぎ【↑↑】たい、
divertirmi in libertà.自由に 楽しみ【↑↑↑】たい。
経過区。

Fiorilletta!..
Fiorillina!..
どちらも Fiorilla の親愛を表す縮小形。訳は フィオレッタ のままにする。

far la pazza notte e giorno,
この fare la pazza は pazzeggiare 馬鹿げたことをする,はしゃぐ と同義と理解した。

(Allegro)
4/4
E-flat major
(Con marito di tal fatta(こうした 種類の 夫には
ecco qui come si fa.)ほら ここに どう するか【≒ これが この 手の 夫を どう扱うか だ】。)

GERONIOジェローニオ
(Me meschino!) Ah! no, ben mio...(私は 惨めだ!) ああ! いいや、私の 最愛の人よ…
(Cosa ho fatto!) In pace io torno.(私は 何を したのだ!) 私は 平穏に 戻っている【≒ 私は もう 落ち着いている】。
(Or sto fresco!) Notte e giorno!(今 私は ひどい目に遭っている!) 昼も夜も!
Questa è troppa crudeltà.これは あまりにも 残酷な行為だ。

FIORILLAフィオリッラ
Non v'ascolto... via di qua.いいや 私は あなた【の言うこと】を 聞かない…

GERONIOジェローニオ
(Ah! l'ho detto; nacque matta,(ああ! 私は こう 言った; 彼女は 頭がおかしく 生まれた、
e più matta morirà.)そして さらに 頭がおかしくなって 死ぬだろう。)

(partono)(去る)
急。

(Or sto fresco!) Notte e giorno!
stare fresco ひどい目に遭う。

[Recitativo] Dopo il Duetto

4/4
(C Major)
SCENA ⅩⅣ第14場
Poeta solo詩人 一人

POETA詩人
Ho quasi del mio dramma私は ほとんど 私の 劇の
finito l'orditura;筋立てを 終えた。
ma un atto è poco a un dramma, e Orazio diceしかし 一つの幕は 劇には 不十分だ、そして オラーツィオは【= ホラティウスは】 言っている
che minore di cinque esser non può.5【幕】より 少ないのは あり得ないと。
Ma in due parti dividerlo io dovrò,しかし 私は それを 2つの 部分に 分割しなければ ならないだろう【≒ 私は 劇を 2部仕立てにしなければ ならないだろう】、
che gli uditori miei sarian ben presto,私の 聴衆は とても 早く、
caro Orazio, stufi親愛なる オラーツィオよ、飽きる【↑】から
se fosser di cinque atti i drammi buffi.もし 喜劇が 5幕で ある ならば。
Intanto della zingaraそうしている間に ジプシー女の
si vada in traccia: a lei Selim si scopra,跡を 行こう: 彼女に セリームが 自分の正体を示すように、
e tutto, onde sia suo, pongasi in opra.そうすれば すべては、彼が 彼女の男に なるために、実行に移される。
e tutto, onde sia suo, pongasi in opra.
porre in opera 実行に移す。

N. 7
FINALE DELL'ATTO PRIMO

Fiorilla
Zaida
Narciso
Geronio
Selim
Allegro
3/4
D major
SCENA ⅩⅤ第16場
(È notte. Spiaggia di mare ec., come nella Scena Ⅰ. Nave di Selim ancorata. Campo zingaresco illuminato. Zingari, e Zingare occupate a diversi uffici ec. Zaida, ed Albazar)(夜で ある。海の 浜辺 などなど、第1場と 同様に。 錨を下ろした セリームの 帆船。明かりの点いた ジプシーの 野営地。ジプシー男たち、そして ジプシー女たち 様々な 職務にある。ザイダ、そして アルバザール)

CORO合唱
Gran maraviglie非常に 驚くべきことを
ignote al sole,太陽に 知られていない【驚くべきことを】、
udir chi vuole,誰が 聞き たいか、
chi vuol mirar?誰が 見 たいか?

ZAIDAザイダ
Il passato, ed il futuro過去を、そして 未来を
chi desia di penetrar?誰が 見抜き たいか?
Non v'è arcano tanto oscuroあまりにも かすんだ 秘密は ない
ch'io non possa disvelar.私が 明らかにすることが できない だけの

CORO合唱
Gran maraviglie非常に 驚くべきことを
ignote al sole,太陽に 知られていない【驚くべきことを】、
udir chi vuole,誰が 聞き たいか、
chi vuol mirar?誰が 見 たいか?
10の部分からなる大規模なフィナーレ。
合唱とザイダの歌。

Moderato
4/4
B-flat major
SCENA ⅩⅥ第16場
(Selim, indi il Poeta, e detti)(セリーム、それから 詩人 そして 前の場の人たち)

SELIMセリーム
Per la fuga è tutto lesto;駆け落ちのために すべては 手早い【≒ 駆け落ちの 用意は すべて 迅速に 整った】;
buono il vento, cheto il mar;風は 良い、海は 静かだ;
impaziente io qui m'arresto私は ここで もどかしく 立ち止っている
la mia bella ad aspettar.私の 美女を 待つ ために。

POETA詩人
(Qui è Selim! senza conoscerlo(ここに セリームが いる! 彼を 認識すること なく
Zaida ad esso s'avvicina.)ザイダが 彼に 近づいている。)

ZAIDAザイダ
Dalla Zingara indovina占いの ジプシー女から
chi vuol farsi astrologar?誰が 星占いを してもらい たいか?

SELIMセリーム
Zingarella, vieni avanti:ジプシー娘よ、前に 来なさい
che ti dicono i pianeti?黄道十二宮図は 君に 何を 言っているのか?

ZAIDAザイダ
Ah! qual voce!... qual sembian[te]!ああ! なんという 声だ!… なんという 顔だ!
Non ho forza di parlar.私は 話す 勇気を 持っていない。

POETA詩人
(Or si fa lo scoprimento;(今 発見が なされている;
vi sarà uno svenime[nto],卒倒が あるだろう、
vo un sedile a preparar.)私は 椅子を 用意する つもりだ。)

SELIMセリーム
Che t'annunzia la mia sorte私の 占いは 何を 君に 告げているのか【?】
di funesto, e duro tanto,【それは】【非常に】 不幸に襲われている【ので】、そして 非常に 厳しい ので
che sugl'occhi quasi il pianto【↓】君の 両目に 涙が ほとんど
io ti veggo tremolar?かすかに震えているのを 私は 見ている【≒ 君の 目に 涙が 震えているのが 見える くらい 不幸で 厳しい 私の 占いは 君に 何を 告げているのだろうか】?

ZAIDAザイダ
Per ingiusta gelosia不当な 嫉妬に よって
veggo Zaida tratta a morte;ザイダが 死へと 導かれている のを 私は 見ている;
però t'ama, e sol desiaけれども 彼女は 君を 愛している、そして ただ 切望している
di poter con te tornar.君と 仲直りすることが できる ことを。
ザイダ、詩人、セリームの三重唱。
この三重唱は、次の Più mosso でテンポが上がるが、これは一時的なものでフェルマータの後でテンポが戻る、単一構成と理解すべきだろう。

Che t'annunzia la mia sorte
この sorte は 占い。

di poter con te tornar.
tornare in pace con qlcu. 人と仲直りする の in pace が省略されたものと理解した。

Più mosso
4/4
B-flat major
SELIMセリーム
Dove vive l'infelice?どこで 生きているのか 不幸な人は?
Ma... no[n] erro... Zaida bella!だが… 私は 間違っていない… 美しい ザイダよ!

ZAIDAザイダ
Si, signor, io sono quella!そうだ、貴君よ、私が その女だ!

SELIMセリーム
Vieni a me mio caro bene.私のところに 来なさい 私の いとしい 最愛の人よ。
三重唱の続き。


4/4
B-flat major
ZAIDA E SELIMザイダ と セリーム
Ecco il fin delle mie peneここに 私の 苦しみの 終わりが【ある】
sola mia felicità.私の 唯一の 幸せ【であるところの】。

POETA詩人
(V'è il sedile, e non si sviene;(椅子が ある、しかし 卒倒しない;
colle regole non va.)規則 どおりには いかない【≒ 劇の お約束 どおりには ならないものだ】 。

(si allontanano uniti, indi ritornano)(【彼らは】 一緒に 遠ざかる、それから 戻る)
三重唱の続き。

Più mosso の後、速度指示に変更はないが、ここから3人の絡む小三重唱になると同時にテンポが落ちることが多い。
Andante
6/8
G major
SCENA ⅩⅦ第17場
(Don Narciso, e detti, indi Fiorilla travestita, e colla faccia coperta da un velo, in ultimo Don Geronio)(ドン・ナルチーゾ、そして 前の場の人たち、それから フィオリッラ 変装して、そして ヴェールに 覆われた 顔で、最後に ドン・ジェローニオ)

NARCISOナルチーゾ
Perché mai se son tradito,いったい なぜ 私が 裏切られたので あれば、
crudo amor il cor m'accendi?残酷な 愛の神よ 私の 心を 燃え上がらせるのか?
O l'amante alfin mi rendi,最後に 私に 恋人を 返しなさい あるいは、
o mi dona libertà.私に 自由を 与えなさい。
(Don Narciso si perde tra la folla: esce allora Fiorilla seguita da un coro delle sue amiche)(ドン・ナルチーゾは 群衆の間で まごつく: その時 フィオリッラが 出る 彼女の 女友達たちの合唱に ついて来られて)
ナルチーゾのアリオーソ。

(Coro di Fiorilla)

Allegro brillante
2/4
C major
CORO合唱
Evviva d'amore万歳 愛の
il foco vitale,生命力のある 火よ、
delizia del core,心の 悦楽よ、
del mondo piacer.この世の 喜びよ。
合唱。
Primo Tempo [Andante]
6/8
C major
FIORILLAフィオリッラ
Chi servir non brama amor,愛の神に 従うことを 切望しない 人は
s'allontani: io l'ho con me.遠ざかるように: 私は 彼を 私と 共に 持っている【≒ 私は 愛の神と 共に ある】。
Per domar superbo core高慢な 心を 従わせる ために
arco e face Amor mi diè.愛の神は 弓と 松明 たいまつ を 与えた。

SELIMセリーム
Che bel canto! che presenza!なんという 美しい 歌だ! なんという 容姿だ!
フィオリッラのアリオーソ。

Primo Tempo [Allegro brillante]
2/4
C major
GERONIOジェローニオ
Qui mia moglie ha da venire,ここに 私の妻が 来ている はずだ、
voglio fare... voglio dire...私は したい… 私は 言いたい…
se la trovo, sentirà.彼女を 見つけたら、彼女は 聞くだろう。)

FIORILLAフィオリッラ
Vago e amabile straniero!優雅で 愛すべき 異国の男よ!

SELIMセリーム
Bella ninfa!美しい 妖精よ!

ZAIDAザイダ
(A lei s'appressa!)(彼は 彼女に 近付いている!)

GERONIOジェローニオ
(Chi s'appressa?)(誰が 近付いているのか?)

NARCISOナルチーゾ
(Par Fiorilla.)(フィオリッラの ようだ)

GERONIOジェローニオ
(Sembra lei.)(彼女の ように思われる。)

POETA詩人
(Qui Geronio, qui l'amante!)(ここに ジェローニオが、ここに 愛人が!)

SELIMセリーム
Deh! scoprite il bel sembiante.お願いだから 美しい 顔の ヴェールを取りなさい。

ZAIDAザイダ
(Siam da capo: è già cambiato.)(私たちは 頭からだ【≒ 元の木阿弥だ】: 彼は もう 変わった。)

SELIMセリーム
Vi scoprite.【ヴェールを】 脱ぎなさい。

FIORILLAフィオリッラ
Infido! ingrato!不実な男め! 恩知らずの男め!
Così m'ami? guardami.このように 君は 私を 愛するのか? 私を よく見なさい。
(si toglie il velo, e tutti coloro ch'erano accorsi a vedere gridano)(ヴェールが 取り去られる、そして 【それを】 見に 駆けつけた すべての人たちは 大声を上げる)
経過区。

Andante
4/4
E-flat major
FIORILLA, ZAIDA, NARCISO, POETA, GERONIO E SELIMフィオリッラ、ザイダ、ナルチーゾ、詩人、ジェローニオ と セリーム
Ah!ああ!

FIORILLAフィオリッラ
Ah! che il cor non m'ingannava,ああ!【私の】 心は 私を 欺かなかった、
certi sono i torti miei.私の 迷惑は 確実だ【≒ 私が ひどい目に遭わされたのは 明らかだ】。
Io mi sento in faccia a lei私は 感じている 彼女の 前で 私が
dallo sdegno lacerar.怒りによって 引き裂かれるのを。

SELIMセリーム
Ah! che il cor non m'ingannava,ああ!【私の】 心は 私を 欺かなかった、
osservava i passi miei.彼女は 私の 歩みを 見ていた。
Io non oso in faccia a lei私は 彼女の 前で
per vergogna il ciglio alzar.不名誉から 眼 まなこ を【↑】どうしても 上げ【られ】 ない。

ZAIDA, NARCISO E GERONIOザイダ、ナルチーゾ と ジェローニオ
Ah! che il cor non m'ingannava,ああ!【私の】 心は 私を 欺かなかった、
certi sono i torti miei.私の 迷惑は 確実だ【≒ 私が ひどい目に遭わされたのは 明らかだ】。
Io mi sento in faccia a lei私は 感じている 彼女の 前で 私が
dallo sdegno lacerar.怒りによって 引き裂かれるのを。

POETA詩人
Questa scena ci mancavaこの 場面は 不十分である
per compire i versi miei.私の 詩を 完成するには。
Vi è sorpresa a cinque e a sei,5人の そして 6人の 驚くべき出来事が ある【ならば】、
gran finale si può far.素晴らしい フィナーレを 作ることが できる。
コンチェルタート。

per compire i versi miei.
compire = compierer 完成する。

Allegro brillante
3/4
G major
ZAIDAザイダ
(volgendosi dispettosa a Fiorilla che dispettosa egualmente le risponde)(立腹して フィオリッラの方に 向いて その者は 同様に 立腹して 彼女に 応える)
Vada via: si guardi bene立ち去りなさい: しないようにしなさい
di cercar l'amante mio.私の 恋人を 得ようとすることは。

FIORILLAフィオリッラ
Quel signor non le appartiene.あの 高貴な人は あなたの ものでは ない。
Qui con lui restar vogl'io.私は ここに 彼と 一緒に 留まり たい。

SELIMセリーム
Ma sentite... vi calmate.だが 聞きなさい… 落ち着きなさい。

NARCISOナルチーゾ
Voi che dite? Non parlate?あなたは 何を 言っているのか? あなたは【何も】 言わないのか?

GERONIOジェローニオ
Presto a casa, a casa presto...急いで 家に、家に 急いで…

ALBAZARアルバザール
Che disordine è mai questo?これは いったい 何の 混乱 なのか?

POETA詩人
Oh! che scena singolar!ああ! なんという 並外れた 場面だ!

ZAIDAザイダ
Lo vedremo, lo vedremo...【後で】 私たちは そのことを 分かるだろう、私たちは そのことを 分かるだろう【≒ 後で 私たちは どうなのか 分かるだろう】…

FIORILLAフィオリッラ
A veder ci sarem due.見るのに 私たちは 二人になるだろう【≒ 二人とも 分かるだろう】。

ZAIDAザイダ
Mia signora, non la temo...私の 婦人よ、私は あなたを 恐れていない…

FIORILLAフィオリッラ
Le civette pari sue...あなたのような 誰にでも媚を売る女たちを【≒ あなたのような 尻軽女たちを】…

ZAIDAザイダ
Le pettegole sue pari...あなたのような 中傷家の女たちを【≒ あなたのような 陰口好きの女たちを】…

FIORILLA E ZAIDAフィオリッラ と ザイダ
Saprò bene castigar.私は 懲らしめることが できるだろう。

ZAIDAザイダ
(quasi azzuffandosi)(ほとんど つかみ合いの喧嘩をして)
Come! come! a me pettegola!なんだって! なんだって! 私を 中傷家の女だって【≒ 私を 陰口好きの女だって】!

FIORILLAフィオリッラ
Cospetto! a me civetta!おやこれは驚いた! 私を 誰にでも媚を売る女だって【≒ 私を 尻軽女だって】!

ZAIDAザイダ
Sei tu sola la pettegola,君だけが 中傷家の女だ【≒ 君 だけが 陰口好きの女だ】、

FIORILLAフィオリッラ
Sei tu sola la civetta,君だけが 誰にでも媚を売る女だ【≒ 君だけが 尻軽女だ】、

FIORILLA E ZAIDAフィオリッラ と ザイダ
frasca, sciocca, impertinente...浮気女、馬鹿女、無礼な奴…
che maniera di parlar!なんという 話し方だ!

SELIMセリーム
(dividendole)(彼女たちを 引き離して)
Cosa fate? olà... placatevi.あなたたちは 何を しているのか? そら… 落ち着きなさい!

GERONIOジェローニオ
Quale sdegno... qual rumore?...なんという 怒りか… なんという 騒音か?…

NARCISOナルチーゾ
Ma Fiorilla... vergognatevi...だが フィオリッラよ… 恥ずかしいと思いなさい…
Zaida oibò!... non hai rossore.ザイダよ おい!… 君は 羞恥心を 持っていない。
Deh! parlate colle buone,お願いだから! おとなしく 話しなさい、
non vi state a cimentar.挑発し合っている でない。

POETA詩人
(godendo dello spettacolo)(光景を 心から喜んで)
Seguitate... via... bravissime!続けなさい… さあ… この上なく見事だ!
Qua... là... bene; in questo modoここに… そこに… いいぞ; そんなふうに
azzuffatevi, stringetevi,つかみ合いの喧嘩をしなさい、締め付け合いなさい、
graffi... morsi... me la godo...ひっかくことを… 噛むことを… 私は 大いに楽しんでいる…
Che final! che finalone!なんという 大詰め! なんという 大大詰めだ!
Oh! che chiasso avrà da far.ああ! なんという 騒ぎを それは 作る はずであろうか。
Le civette pari sue...
par(i) + 所有代名詞 ―のような…。性質や身分が同等であることを表す。この場合の所有代名詞は先行する名詞の性・数と一致する。

Stretta del Fina[le Primo]

Allegro vivace assai
2/2
D major
FIORILLA, ZAIDA, NARCISO, ALBAZAR, POETA, GERONIO E SELIMフィオリッラ、ザイダ、ナルチーゾ、アルバザール、詩人、ジェローニオ と セリーム
Quando il vento improvviso sbuffando突然 強く吹く 風が
scuote i boschi, e gli spoglia di fronde;木々を 揺り動かして、そして それらの 葉をつけた枝々を 剥ぎ取る【↑】時;
quando il mare in tempesta mugghiando轟く 嵐の中の 海が
spuma, bolle, flagella le sponde:泡立ち、沸き立ち、海岸を洗う【↑↑】時:


FIORILLA, ZAIDA, NARCISO, ALBAZAR, POETA, GERONIO, SELIM E COROフィオリッラ、ザイダ、ナルチーゾ、アルバザール、詩人、ジェローニオ、セリーム と 合唱
meno strepito fan di due femmineそれらは より少ない 騒音を 出す 二人の 女たちよりも【≒ それらは 二人の女が 出す 騒音ほど うるさくは ない】
quando sono rivali in amor.彼女たちが 愛において 恋敵で ある 時。
ストレッタ。

ATTO Ⅱ
[Recitativo]

4/4
(C Major)
SCENA Ⅰ第1場
(Camera in una Locanda. Tavolini con lumi ecc. D. Geronio, ed il Poeta seduti, e bevendo)(宿兼食堂の 部屋。灯火のある 小テーブル などなど。ドン・ジェローニオ、そして 詩人 座って、そして 飲んで)

POETA詩人
Via... cosa serve? Omaiさて… 何が 役に立つのか? 現状では
bisogna darsi pace: ella fra poco諦め なければならない: 彼女は 間もなく
colla sua compagnia彼女の 仲間の女と 一緒に
a cenar qui verrà: potrete allora夕食を食べに ここに 来るだろう: その時 あなたは できるだろう
corla sul fatto; ora bevete, e in bando彼女を 現場で 急襲することが; 今は 酒を飲みなさい、そして 追放に
vada[n] un solo istante 一瞬で 行く
la moglie capricciosa, ed il galante.移り気な 妻は、そして 恋する男は【≒ 浮気な妻と 愛人の男は すぐさま 追い払われる】。

GERONIOジェローニオ
Caro poeta mio, darei la testa親愛なる 私の 詩人よ、私は 頭を 与えたいものだ
nella muraglia, se a' capricci suoi,城壁に【≒ 私は 自暴自棄になりたいものだ】、彼女の 気紛れに
e alla mia cecità volgo il pensiero...そして 私の 盲目に 私が 考えを 向ける【↑】時には。

POETA詩人
Sofferenza ci vuole. Anche un bicchiere.忍耐が 必要だ。また グラスを【≒ もう一杯】。
(versandogli da bere)(彼に 飲むために 注いで)
(Prevedo qualche incontro: il vin potrebbe(私は なんらかの 遭遇を 予想している: 酒が
porger qualche coraggio al scimunito,間抜けに いくらかの 勇気を 与えることが【↑】できるだろうに、
altrimenti il mio dramma è già finito.)もしそうでなければ 私の 劇は もう【ここまでで】 終わった。)

GERONIOジェローニオ
Credi, che in questo albergo君は 確信しているか、この 宿に
verrà certo la pazza?確実に 頭のおかしい女が 来るであろう【↑】と?

POETA詩人
Anzi una cenaそれどころか 晩餐が
è per lei preparata彼女のために 用意されている
splendida veramente, e questa notte本当に 贅沢な【晩餐が】、そして 今夜
passerà coi compagni in festa, e in gioco.彼女は 仲間たちと一緒に 宴に、そして 賭博【場】に 立ち寄るだろう。

GERONIOジェローニオ
Saprò ben disturbarla.私は うまいこと 彼女を 妨害することが できるだろう。

POETA詩人
(come sopra)(上と 同様に)
Un altro poco.少量の もう一つを【≒ 【酒を】 もう少し】。


SCENA Ⅱ第2場
(Selim, e detti)(セリーム、そして 前の場の人たち)

SELIMセリーム
A proposito, amico,ちょうどいい時に、友よ、
senza molto cercarti io qua ti trovo.君を それほど探すこと なく 私は ここで 君を 見つけている。
Gran cose debbo dirti.重大な ことを 私は 君に 言わなくては ならない。

POETA詩人
(Intrigo nuovo.)(新たな 波乱だ。)

GERONIOジェローニオ
E grandi cose anch'ioそして 重大な ことを 私も
bramava dirvi appunto.ちょうど 君に 話すことを 切望していた。

POETA詩人
(Io mi ritiro(私は 後ろに下がる
per schivare ogni impegno e notar tutto.)あらゆる 責任を 避ける ために そして すべてを 書き取るために。)
(si ritira, e di tanto in tanto si fa vedere esplorando)(後ろに下がる、そして 時々 【様子を】 探って 姿を 現す)

SELIMセリーム
Io t'ascolto.私は 君【の言うことを】を 聞く。

GERONIOジェローニオ
Parlate.話しなさい。

SELIMセリーム
Dunque possiam seder.それでは 私たちは 座って かまわない。

GERONIOジェローニオ
Come bramate.あなたが 切望する ように【≒ 好きなように】。

SELIMセリーム
Or principia, se vuoi.さあ 始めなさい、もし 君が 望むならば。

GERONIOジェローニオ
No, principiate voi.いいや、あなたが 始めなさい。

SELIMセリーム
Ebben principierò: quanti anni sonoそれでは 私が 始めよう: 何年だ
che con Donna Fiorillaドンナ・フィオリッラと
vi unisce il matrimonio?あなたを 結婚が 結び付けて【↑】から?

GERONIOジェローニオ
Fra poco saran sei. (Calma Geronio.)間もなく 6【年】だ。(落ち着け ジェローニオよ。)

SELIMセリーム
Amor che passa un lustro愛は それは 5年を 超えている
deve stancare assai.とても 飽き飽きしているに 違いない。

GERONIOジェローニオ
Di fatti sono実際 私は
stanco, ma stanco molto.飽き飽きしている、それどころか とても 飽き飽きしている。

SELIMセリーム
E il matrimonioそれで 結婚は
è un gran peso per voi.あなたにとって 大きな 重さである。

GERONIOジェローニオ
Lo sa ciascunoそのことを 誰もが 知っている
che lo sente sul dosso.その者は 背中の上に それを【= 重さを】 感じている【≒ 重荷を背負っていると 実感している者なら 誰でも 結婚が 大きな重荷である ことは 知っている】。

SELIMセリーム
(Va bene: a meraviglia.)(結構だ: 完璧だ。)

GERONIOジェローニオ
(Qual discorso!)(なんという 話だ!)

SELIMセリーム
Quando si trova poi要するに 得る 時には
una donna bizzarra, e capricciosa風変わりな 女を、そして移り気な
come la vostra sposa,あなたの 妻の ような【≒ あなたの 妻の ような 風変わりで 気紛れな 女と 結婚してしまうと】、
il povero marito...哀れな 夫は…

GERONIOジェローニオ
È rovinato.崩壊した。

SELIMセリーム
(Seguitiam polito.)(洗練されて 続けよう【≒ 丁寧に 続けよう】。)
Or dunque del tuo statoところで 君の 状態について
trovar ti devi malcontento assai.君は とても 不満で あるに 違いない。

GERONIOジェローニオ
L'avete indovinato.そのことを あなたは【言い】当てた。

SELIMセリーム
Io vengo amico,私は 来ている 友よ、
ad offrirti un rimedio,君に 解決法を 提供しに、
a cavarti d'impiccio; e non dovrai君を 厄介なことから 引き抜くために【≒ 君を 窮地から 救い出すために】; そして 君は
per il riposo tuo faticar molto.君の 安らぎのために あまり あくせく働か【↑】なくていい。

GERONIOジェローニオ
Ma... come!.. vi spiegate.しかし… なんということだ!… 説明しなさい。

SELIMセリーム
Odi.聞きなさい。

GERONIOジェローニオ
V'ascolto.私は あなた【のいうこと】を 聞く。
24小節 Credi, che in questo albergo から 35小節 Un altro poco. まで省略可。この箇所は当時の筆写譜には載っていない。

46小節 Dunque possiam seder. から 50小節 No, principiate voi. まで省略可。省略できるよう多少の改変がなされている。この箇所は当時のほとんどの筆写譜には載っていない。

63小節 (Va bene: a meraviglia.) から 74小節 L'avete indovinato. まで省略可。省略できるよう多少の改変がなされている。この箇所は当時のほとんどの筆写譜には載っていない。


bisogna darsi pace: ella fra poco
darsi pace 諦める

corla sul fatto; ora bevete, e in bando
corla = la corre。corre = cogliere 摘む,不意を襲う,急襲する。

Caro poeta mio, darei la testa / nella muraglia, se a' capricci suoi,
dare la testa nel muro 直訳すると 壁に 頭を 与える ≒ 壁に 頭を 打ち付ける。怒りや絶望の感情を表す表現。muraglia は 城壁 や 絶壁 の意味で、muro 壁 の強調として用いているのだろう。動詞は dare の他にも (s)battere、picchiare などが用いられ、また la testa は il capo や di capo の場合もあり、nel muro は contro il muro の場合もある。

e di tanto in tanto si fa vedere esplorando)
farsi vedere = mostrarsi, apparire 姿を現す。

Quando si trova poi
この trovare は 得る,獲得する。ottenere と同義。娶る の意味で用いられている。


senza molto cercarti io qua ti trovo.
セリームはまずジェロ―ニオを 二人称単数親称 tu を用いて呼ぶ。

bramava dirvi appunto.
ジェロ―ニオもセリームを 二人称単数親称 tu を用いて呼ぶ。

Parlate.
ジェロ―ニオはセリームを 二人称単数敬称 voi を用いて呼ぶようになる。

è un gran peso per voi.
ここからしばらくセリームはジェロ―ニオに対して 二人称単数敬称 voi を用いて呼ぶ。

trovar ti devi malcontento assai.
ここからセリームはジェロ―ニオを 二人称単数親称 tu を用いて呼ぶ。

N. 8
DUETTO [Don Geronio - Selim]

D. Geronio
Selim
Allegro
4/4
F major
SELIMセリーム
D'un bell'uso di Turchiaトルコの 良い 習慣の
forse avrai novella intesa;説話を おそらく 君は 聞いたことが あるだろう;
della moglie che gli pesa妻の その者は 彼の 重荷となる
il marito è venditor.夫は 売り手である【≒ 夫にとって 重荷である 妻を 夫は 売ってしまう】。

GERONIOジェローニオ
Sarà l'uso molto buono,とても 良い 習慣だろう、
ma in Italia è più bell'uso:しかし イタリアでは もっと 素晴らしい 習慣が ある:
il marito rompe il muso夫は 顔を 潰す
quasi sempre al comprator.ほとんど いつでも 買い手に 対して。

SELIMセリーム
Anche questo sarà buono,それも また 良いだろう、
ma fra noi non deve entrare.しかし 私たちの 間では 納得がいか ないに 違いない。

GERONIOジェローニオ
Anzi, questo più di quelloそれどころか、これは それよりも さらに
mi conviene d'abbracciare.私にとって 受け入れるに 相応しい。

SELIMセリーム
Ma perché?しかし どうして?

GERONIOジェローニオ
Le nostre usanze私たちの しきたりを
piace a me serbar ancor.まだ わざわざ残しておくことは 私に 好まれる【≒ 私は 私たちの しきたりを 残すことが 好きだ】。

SELIMセリーム
Non è poi cotanto sciocco結局 彼は それほどの 馬鹿 ではない
come vogliono ch'ei sia.彼らが 望んでいるほど 彼が【馬鹿で】ある と。

GERONIOジェローニオ
Su giudizio testa mia,さあ 判断を 私の頭よ、
qui ci vuol prudenza e cor.ここでは 思慮深さと 勇気が 必要だ。

SELIMセリーム
Prudenza, qui ci vuol prudenza e cor.思慮深さが、ここでは 思慮深さと 勇気が 必要だ。
su giudizio testa mia,さあ 判断を 私の頭よ、
qui ci vuol prudenza e cor.ここでは 思慮深さと 勇気が 必要だ。
三部構成のアリアだが、Allegro、Più mosso、Presto と 急 / さらに急 / 極めて急 のような作りになっている。
急。
Più mosso
4/4
F major
SELIMセリーム
Se Fiorilla di vender bramate,もし あなたが フィオリッラを 売ることを 切望しているならば、
senza fare più lungo discorso,これ以上 長い 話を すること なしに、
io la compro, e denaro vi sborso私は 彼女を 買う、そして あなたに 金 かね を 支払う
da comprarne al bisogno anche tre.必要な場合は 彼女の 3人も 買うための【≒ 彼女が 3人分 買えるだけの 金を あなたに 支払おう】。

GERONIOジェローニオ
Signor Turco, l'ho detto, e il ripetoトルコ男氏よ、私は そのことを 言った、そして そのことを 繰り返す
io non vendo mia moglie a persona,私は 私の妻を 誰かに 売りはしない、
e perciò, sia cattiva, o sia buona,そして それゆえ、彼女が 悪かろうが、彼女が 善良であろうが、
io... mia moglie la tengo per me.私は… 私の 妻を 彼女を 私のために 置いておく。

SELIMセリーム
(Maledetto!) Ma pensi...(忌々しい!) しかし 考えなさい…

GERONIOジェローニオ
(forte ed alzandosi)(大声で そして 立ち上がって)
Ho pensato.私は 考えた。

SELIMセリーム
Lei si scalda...あなたは 興奮している…

GERONIOジェローニオ
Mi scaldo sicuro.私は 確かに 興奮している。

SELIM E GERONIOセリーム と ジェローニオ
(Un cervello più strano, e più duroさらに 奇妙な 頭は、そして さらに 強情な【頭は】
io scommetto che al mondo non è.)私は 断言する この世に ない と。)
さらに急。

da comprarne al bisogno anche tre.
ne = di quella = di Fiorilla。da comprarne al bisogno anche tre = da comprare anche tre di Fiorilla フィオリッラ3人も買えるだけの【金】。

Lei si scalda...
セリームはジェローニオを 人称単数親称 lei を用いて呼ぶようになる。


4/4
F major
SELIMセリーム
(arrabbiato)(怒って)
Non volete?あなたは 望まないのか?

GERONIOジェローニオ
No, cospetto.そうだ【望まない】、こんちくしょうめ。

SELIMセリーム
Ricusate?あなたは 拒むのか?

GERONIOジェローニオ
Sì, ricuso.そうだ、私は 拒む。

SELIMセリーム
Voglio averla a tuo dispetto.私は 君には おかまいなしに 彼女を 手に入れ たい。

GERONIOジェローニオ
Non l'avrà...あなたは 彼女を 手に入れ【られ】ないだろう…

SELIMセリーム
Conosco altr'uso...私は 別の 習慣を 知っている…

GERONIOジェローニオ
E sarebbe...それで それは…

SELIMセリーム
D'involarla!彼女を 奪い去る という!
ここは実質 Recitativo。

No, cospetto.
この cospetto は間投詞的な罵倒の言葉。

Voglio averla a tuo dispetto.
a dispetto di qlcu. 人の立場を無視して,人におかまいなしに。

Presto
2/2
F major
Ed invece di pagarla,そして 彼女に 支払う 代わりに、
il buffone che s'oppone,おどけ者を その者は 抵抗する、
per far presto, d'ammazzar.早くするために、殺すという【習慣を】【≒ 【彼女の強奪を】 急ぐために 抵抗する ふざけた奴を 殺すという【習慣を 知っている】】。

GERONIOジェローニオ
Ma dovrebbe paventare,だが あなたは 恐れる べきだ、
ch'ella invece d'ammazzare,あなたが 殺す 代わりに
succedesse che dovesse起こる【↑】ことを
ammazzato qui restar.ここで 殺される【↑】べきである【↑】ことが【≒ あなたが 殺す 代わりに、あなたが ここで 殺される べき ことが 起こる ことを あなたは 恐れる べきだ】。

SELIMセリーム
(minacciando, e ritirandosi a vicenda)(【交互に】 威嚇して、そして 交互に 後ろに下がって)
Alle prove venga avanti...試練へと 前に 来なさい…

GERONIOジェローニオ
Presto... via... si provi un poco...急いで… さあ… 少し 試そう…

SELIMセリーム
Temerario! in pochi istanti無鉄砲な奴め! 僅かな 瞬間で

GERONIO E SELIMジェローニオ と セリーム
ci vedremo in altro loco;別の 場所で 会おう;
e saranno coltellate,そして 彼らは 切り付けられ、
schioppettate, moschettate,パチパチと音を立てられ、銃で撃たれ、
e vedrà che non mi lascioそして あなたは 分かるだろう 私を
da minacce spaventar.威嚇によって 脅かす【↑】がままにさせ【↑】ない【↑】ことを。
(via da parte opposta)(去る 反対の 側 から)
極めて急。

[Recitativo] Dopo il Duetto

4/4
(C Major)
SCENA Ⅲ第3場
Poeta solo詩人 一人

POETA詩人
Credeva che questa scena私は 思った この 場面は
dovesse accelerar la conclusione;決着を 速めるに 違いない【↑】と。
ma l'affare va in lungo, e qui fa d'uopoだが 事は【実際には】 なかなかはかどらない、そこで ここで 必要である
che venga presto lo sviluppo,すぐに 進展が 起こることが
e venga naturale;そして 自然に 起こることが;
poi finir con un poco di morale.それから すこしばかりの 教訓をもって 終わる【必要がある】。
O mio cervello ti affatica e suda,ああ 私の 頭脳よ 努力しなさい そして 汗をかきなさい【≒ 苦労しなさい】、
inventa il dramma mio come si chiuda.私の 劇が どのように 締め括られるか 考え出しなさい。
parte去る
ma l'affare va in lungo, e qui fa d'uopo
andare in lungo ひどく長引く,なかなかはかどらない。

N. 9
CORO E CAVATINA [FIORILLA]

Fiorilla
Coro
Allegro
4/4
C major
SCENA Ⅳ第4場
(Fiorilla con seguito)(フィオリッラ 【彼女の】 崇拝者たちと 共に)

CORO合唱
Non v'è piacer perfetto完璧な 喜びは ない
se nol procura amor.もし 愛の神が それを【= 喜びを】 得させない ならば。
De' giochi, e del diletto娯楽の、そして 喜びの
amore è genitor.父親である 愛の神は。

FIORILLAフィオリッラ
Se il zefiro si posa微風が じっとしている 時は
a carezzar un fior,一輪の花を 愛撫する ために、
se va da giglio a rosa百合から 薔薇ヘと 行く時は
vaga farfalla ognor,優雅な 蝶が いつでも、
Farfalla, e zefiretto蝶を、そして そよ風を
move il poter d'amor.愛の神の 力が 動かしている。

CORO合唱
De' giochi, e del diletto娯楽の、そして 喜びの
amore è genitor.父親である 愛の神は。

FIORILLAフィオリッラ
Quando di primavera春の
ride il primiero albor,最初の 夜明けの光が 微笑む【↑】時、
quando natura intera全 自然が
riveste il primo onor;最初の 栄光を 帯びる【↑】時;
è l'aura del diletto喜びの そよ風だ
che sparge in terra amor.愛の神が 大地に 放つ のは。

CORO合唱
De' giochi e del diletto娯楽の、そして 喜びの
amor è genitor.父親である 愛の神は。
(il Coro si pone a giocare)(合唱は 賭け事をするのに 身を置く【合唱は 賭け事をし 始める】)
合唱とフィオリッラのカヴァティーナ。合唱 / カヴァティーナ / 合唱 / カヴァティーナ / 合唱 というロンド形式。

che sparge in terra amor.
この個所での amor は、大地にそよ風を放つ のでいずれも 愛の神 で採った方が相応しいと思われる。

[Recitativo] Dopo il Coro e la Cavatina [Fiorilla]

4/4
(C Major)
FIORILLAフィオリッラ
Che turca impertinente! osa a Fiorillaなんという 無礼な トルコ女だ! 彼女は フィオリッラと
l'amante disputar! saprò ben io愛する人を【↑】あえて 競っている! 私は 十分に できるだろう
vendicarmi di lei: voglio che sia彼女に 仕返しをすることが: 私は 望んでいる 彼女が
presente al mio trionfo. Ad ogni costo私の 勝利に 居合わせる【↑】ことを。なんとしても
di quella sciocca abbasserò l'orgoglio.あの 馬鹿女の 傲慢さを 私は へこませよう。
Abbia il suo Turco poi che non lo voglio.彼女は 彼女の トルコ男を 獲得するがいい 私は 彼を 欲していない から。
Io l'ho fatta invitar a questo albergo私は 彼女を 招か せた この宿屋に
a nome di Selim; venga, e vedremoセリームの 名前で; 彼女は 来るがいい、そして 私たちは 分かるだろう
di noi chi vincerà.私たちのうちの 誰が 勝利するであろうか。


SCENA Ⅴ第5場
Zaida, e dettaザイダ、そして 前の場の女

ZAIDAザイダ
(sulla porta, indecisa)(扉の ところで、決心がつかず)
Scusate... errai...失礼… 私は 間違えた…

FIORILLAフィオリッラ
Entrate, entrate pure: io vi invitai.入りなさい、どうぞ 入りなさい: 私が あなたを 招いた。

ZAIDAザイダ
(entrando)(入って)
Voi!あなたが!

FIORILLAフィオリッラ
Sì: fra pochi istantiそうだ: 僅かな 瞬間の 間【≒ 少しの間】
qui vedrete Selim. Sul cor di luiここで あなたは セリームと 会うだろう。彼の 心に
non voglio che la vostra lontananza私は 望んでいない あなたの 離れていることが
m'apporti alcun vantaggio. Ora dovremo私に 何か 有利を 引き起こす【↑】ことを【≒ あなたが 彼から 離れていることで 私が 何かしら 有利になることを 私は 望まない】。今こそ 私たちは
disputarcelo in pace:平和に 彼を 競い合おう:
sceglierà di noi due chi più gli piace.彼は 選ぶだろう 私たち 二人のうち より 彼に 好まれる 人を。

ZAIDAザイダ
Inutile è la scelta選ぶことは 役に立たない
dove parla il dovere, e parla onore.義務が 語る ところでは、そして 名誉が 語る【ところでは】。

FIORILLAフィオリッラ
Tutto, tutto, si sa, cede all'amore.すべては、すべては、周知のとおり、愛に 屈する。
Ecco appunto Selim.そらここに ちょうど セリームが。


SCENA Ⅵ第6場
Selim, e detteセリーム、そして 前の場の人たち

SELIMセリーム
Trovarvi sola【↓】やっと あなた だけを 見つけると
finalmente io credea, bella Fiorilla,私は 思っていた、美しい フィオリッラよ、
ma non potete star sola un momento.しかし あなたは 一瞬【だけでも】 一人で いることが できない。

FIORILLAフィオリッラ
Sarete più contento,あなたは より 満足する だろう
quando tutti osservatiあなたが 気づく【↓】であろう 時
avrete i convitati.招かれた人たち【↑】全員を。

SELIMセリーム
(accorgendosi di Zaida)(ザイダに 気づいて)
Zaida!ザイダ!

ZAIDAザイダ
Infedel!不実な人よ!

SELIMセリーム
Ma... come! in questo albergo!だが… どうして! この宿に!
Che vuol dir ciò?このことは 何を 言いたいのか?

FIORILLAフィオリッラ
Questa locanda ornaiこの 宿を 私は 飾った
di sua bella presenza,彼女の 美しい 容姿で、
per veder se a me date,判断するために あなたが 私に 与えるか どうか
o a lei la preferenza. Decidete.好みを あるいは 彼女に【≒ あなたが 私の方を 好むか それとも 彼女の方を 好むか 判断する ために】。決めなさい。

ZAIDAザイダ
Parlate.話しなさい。

SELIMセリーム
In gran cimento mi mettete.大きな 試練に あなたたちは 私を 置いている。

ZAIDAザイダ
Perfido! intendo: de' miei torti io stessa恩知らずの男め! 私は 理解している: 私 自身が 私の 迷惑の
qui venni spettatrice.目撃者として ここに 来た【≒ 私が ひどい目に 遭うのを 自分で 目撃しに ここに 来た】。

SELIMセリーム
Ah! no...ああ! いいや…

FIORILLAフィオリッラ
Partite去りなさい
dunque con lei.それでは 彼女と 一緒に。

SELIMセリーム
Neppure.【それ】さえもない。

ZAIDAザイダ
Ebben: venite.それでは: 来なさい。

SELIMセリーム
Ma lasciate ch'io possaしかし させなさい 私が
un momento pensar...一瞬 考え【↑】られる【↑】ように。

ZAIDAザイダ
Pensar? No... parta考える? いいや… 去りなさい
meco Selim, o a me rinunzi.私と 一緒に セリームよ、さもなければ 私を 断念しなさい。

FIORILLAフィオリッラ
E a me,そして 私を【断念しなさい】、
se qui non resta.もし ここに 残らない【↑】ならば。
(Fiorilla si allontana disdegnosa; Selim rimane incerto e pensoso)(フィオリッラは 蔑むように 遠ざかる: セリームは ためらった そして 考え込んだ ままでいる)

SELIMセリーム
(Impiccio egual non v'è.)(同じくらいの ごたごたは ない。)

ZAIDAザイダ
Crudel! non più: comprendoひどい人だ! もう いい: 私は 理解している
qual per me serbi amor: io ti abbandonoどのような 愛を 君が 私に 持ち続けているのか: 私は 君を 委ねる
alla rivale in braccio: un giorno forse恋敵の 腕の中に: おそらく 一日で
ti pentirai, ma tardi君は 後悔するだろう、しかし 遅い
d'aver l'affetto mio così schernito;これほどに 馬鹿にされた 私の 情愛を 得るには;
allor che da costei sarai tradito.この女から 君が 欺かれるであろう 時には。
(parte)(去る)


SCENA Ⅶ第7場
Fiorilla, e Selimフィオリッラ、そして セリーム

SELIMセリーム
(Povera Zaida! io sento(かわいそうな ザイダ! 私は 感じている
pietà di lei: tanto rigor non merta.)彼女に 哀れみを: 彼女は あれほどたくさんの 厳しさに 値しない。)

FIORILLAフィオリッラ
(Parla fra sé: la mia vittoria è incerta.)(彼は 独り言を 言っている: 私の 勝利は 不確かだ。)
Mi sembrate commosso: non parlate?...私には あなたは 心を動かされた ように見える: あなたは 話さないのか?
Via: corretele dietro,去りなさい: 彼女の 後に 急いで向かいなさい、
e la bella dolente consolate.そして 悲痛な 美女を 慰めなさい。

SELIMセリーム
No... vada pure... ma lasciate almenoいいや… 彼女は どうか 行くがいい… しかし せめて させておきなさい
ch'io la compianga: ella m'adora...私が 彼女を 気の毒に思う ように: 彼女は 私を 熱愛している…

FIORILLAフィオリッラ
E parmiそして 私には 思われる
che l'adoriate ancor.あなたも 彼女を 熱愛している と。

SELIMセリーム
Il primo oggetto最初の 対象が
dell'amor mio fu Zaida...私の 愛の ザイダ だった。

FIORILLAフィオリッラ
E sia l'estremo.そして 彼女が 最後の【対象である】。

SELIMセリーム
L'estremo!最後の!

FIORILLAフィオリッラ
Addio: mai più ci rivedremo.さようなら: もう 二度と 私たちは 再び会わないだろう。

SELIMセリーム
Deh!... perdonate...お願いだから!… 容赦しなさい…

FIORILLAフィオリッラ
Amante alcun non voglio誰一人 恋人を 私は 欲しく ない
che abbia diviso fra due donne il core.二人の 女の 間で 分断された 心を 持つ ところの【恋人を】。

SELIMセリーム
Che dite? per voi sola io sento amore.あなたは 何を 言っているのか? あなた だけ に 私は 愛を 感じている。
Per carita, placatevi,後生だから、落ち着きなさい、
calmate il vostro sdegno...あなたの 怒りを 鎮めなさい…

FIORILLAフィオリッラ
Andate, andate... di me siete indegno.行きなさい、行きなさい… あなたは 私には ふさわしくない。

SELIMセリーム
Ingrata! mi scacciate...恩知らずの女よ! あなたは 私を 追い出す…
ebben... io partirò.よしそれでは 私は 去ろう。

FIORILLAフィオリッラ
Farete bene.あなたは【そう】すると よい。

SELIMセリーム
Addio... (mi lascia andar!)さようなら… (彼女は 私が 行くがままに させている!)

FIORILLAフィオリッラ
(Davvero ei parte!)(本当に 彼は 去る!)

SELIMセリーム
(Politica ci vuol.)(策略が 必要だ)

FIORILLAフィオリッラ
(Ci vuol dell'arte.)(狡猾が 必要だ)
Farete bene.
fare bene a +不定詞 ―するとよい。この場合は Farete bene a partire. の a +不定詞 部分が省略されたもの。

N. 10
DUETTO [Fiorilla - Selim]

Fiorilla
Selim
Andnte
3/8
B-flat major
SELIMセリーム
(in disparte come parlando fra sé)(離れて 独り言を 言う ように)
Credete alle femmine女性たちを 信じなさい
che dicon d'amarvi!その者たちは あなたを 愛すると 言っている!
Di un nulla si sdegnano彼女たちは 何でもないことで 憤慨する
minaccian lasciarvi.【そして】 あなたを 捨てると 脅す。
Di donna l'amore女の 愛は
è un foco che more火だ それは 消える
appena brillò.輝いたら すぐに。

FIORILLAフィオリッラ
(facendo il medesimo gioco)(同じ 戯れを して)
Credete a quest'uominiこれらの 男たちを 信じなさい
che avete d'intorno!その者たちを あなたが 周りに 有している!
Per tutte sospirano;すべての 女たちに 対して 彼らは 溜息を吐いている;
non amano un giorno.彼らは 一日【しか】 愛さない。
Son l'aura d'estate彼らは 夏の そよ風だ
che più non trovateそれを あなたは もう 見つけ【られ】ない
appena spirò.吹いたら すぐに。
緩 / 急 / 急 の三部構成の二重唱。緩 カンタービレ / 急 カバレッタ の二部構成の 緩 カンタービレ がさらに 緩 / 急 に分かれたもの。
緩。

Allegro
3/8
B-flat major
SELIMセリーム
(avvicinandosi un poco)(少し 近づいて)
È ingiustizia lamentarsi不平を言うことは 不公平だ
se si sprezza un cor fedele.誠実な 心が 侮蔑されるのに。

FIORILLAフィオリッラ
(volgendosi un poco)(少し 身を向けて)
Bella cosa allontanarsi素晴らしい ことだ 遠ざかることは
per non dir che si è infedele.言わない ために 彼が 不実である と。

SELIMセリーム
(correndo, e con forza)(駆けつけて、そして 力を 込めて)
Io nol sono.私は そのような者では ない。

FIORILLAフィオリッラ
A voi non parlo.私は あなたに 話していない。

SELIMセリーム
Come!何だって!

FIORILLAフィオリッラ
No.いいえ。

SELIMセリーム
Parea di sì.そうだと 思われた。
経過区。

(Allegro)
3/8
B-flat major
FIORILLAフィオリッラ
(con dispetto)(意地悪を もって)
In Italia certamente...イタリアでは 疑いなく
non si fa l'amor così.そのように 愛は なされない。

SELIMセリーム
(con dispetto)(意地悪を もって)
In Turchia sicuramenteトルコでは もちろん
non si fa l'amor così.そのように 愛は なされない。
急。
ここは前の箇所と速度、拍子、調性とも変化はないが、フェルマータの後から小二重唱になるので区切りを入れる。

Allegro
4/4
B-flat major
FIORILLAフィオリッラ
(a parte tutti e due)(離れて 二人とも)
(Ma se dura la questione(しかし もし 問題が 続くならば
prende foco, e se ne va.彼は かっとなる、そして 彼は 行ってしまう。
Si discorra colle buoneおとなしく 論じよう
ed allor si placherà.)そして その時は 彼は 落ち付くだろう。)

SELIMセリーム
(Ma se dura la questione(しかし もし 問題が 続くならば
prende foco, e se ne va.彼女は かっとなる、そして 彼女は 行ってしまう。
Si discorra colle buoneおとなしく 論じよう
ed allor si placherà.)そして その時は 彼女は 落ち付くだろう。)

SELIMセリーム
(supplichevole)(嘆願するように)
Dunque sperar non posso!..それでは 私は 期待 でき ない のだ!…

FIORILLAフィオリッラ
(commossa)(心を動かされて)
Dunque schernita io sono!..それでは 私は 嘲笑されたのだ!…

SELIMセリーム
(per baciarle la mano)(彼女の 手に キスする ために)
La vostra man...あなたの 手を…

FIORILLAフィオリッラ
(ritirandola a fatica)(かろうじて それを 引っ込めて)
Non posso.私は できない。

SELIMセリーム
Idolo mio, perdono!..私の 偶像よ、容赦しなさい!…

FIORILLAフィオリッラ
(con tenerezza)(愛情を もって)
Lo meritate?あなたは それに 値するのか?

SELIMセリーム
(con trasporto)(夢中になって)
Io v'amo.私は あなたを 愛している。

FIORILLAフィオリッラ
E mi amerete?....そして あなたは【これからも】 私を 愛するであろうか?

SELIMセリーム
Ognor.これからもずっと。
テンポ・ディ・メッゾ(中間部)

prende foco, e se ne va.
prendere fuoco かっとなる。

Allegro
2/4
B-flat major
(con tutta la gioia e tenerezza)(すっかり 喜びと 愛情を もって)

FIORILLAフィオリッラ
Tu m'ami, lo vedo,君は 私を 愛している、私は それを 分かっている、
mi fido, ti credo;私は【君を】 信頼している、私は 君を 信じている;
ma torna mia vitaけれども 再び【↓】言い 始めなさい 私の 命の人よ
a dirmelo ancor.それを もう一度。
Se infida ti sono,もし 私が 君に 不実ならば、
se mai t'abbandonoもし 私が 君を 捨てるならば
sia sempre la pace平安は ずっと
straniera al mio cor.私の 心に 無関係だ。

SELIMセリーム
Tu m'ami, lo vedo,君は 私を 愛している、私は それを 分かっている、
mi fido, ti credo;私は【君を】 信頼している、私は 君を 信じている;
ma torna mia vitaけれども 再び【↓】言い 始めなさい 私の 命の人よ
a dirmelo ancor.それを もう一度。
Se infido ti sono,もし 私が 君に 不実ならば、
se mai t'abbandonoもし 私が 君を 捨てるならば
sia sempre la pace平安は ずっと
straniera al mio cor.私の 心に 無関係だ。

(partono)(【二人とも】 去る)
急。

[Recitativo] Dopo il Duetto

4/4
(C Major)
Scena Ⅷ第8場
(D. Geronio, indi il Poeta, poi Don Narciso in disparte)(ドン・ジェローニオ、それから 詩人、その後に ドン・ナルチーゾ 離れて)

GERONIOジェローニオ
Dove diamine è andata? è quasi un'oraいったいぜんたい 彼女は どこに 行ったのか? ほとんど 1時間だ
che la tavola è pronta per la cena,テーブルが 夕食のために 用意ができて から、
e non si vede ancor? forse al festino,それでも 彼女は まだ 見られないのか? おそらく 宴会に、
che a quel Turco si dedica, sarà.それは あの トルコ男に 捧げられている、彼女は いるのだろう
(per uscire)(出ようとする)


POETA詩人
Fermate.立ち止りなさい。

GERONIOジェローニオ
Cosa c'è?何が あるのか?

POETA詩人
Gran novità.重要な 新しい情報だ。

GERONIOジェローニオ
Spiegati.説明しなさい。

POETA詩人
È preparato,準備されている、
amico, un rapimento.友よ、人さらいが。

GERONIOジェローニオ
Che dici? e il vero io sento?君は 何を 言っているのか? そして 私は 真実を 聞いているのか?

(esce D. Narciso)(ドン・ナルチーゾが 出る)

NARCISOナルチーゾ
(È partita Fiorilla, e qui costoro!...(フィオリッラは 去った、そして ここに 奴らが!…
Che fanno? udiamo un poco.)彼らは 何を しているのか? 少し 聞こう。)

POETA詩人
Ad un festino宴会に
Fiorilla deve andar: ivi l'attendeフィオリッラは 行くに 違いない: そこで 彼女を 待っている
mascherato Selim, che di ridurla仮面をつけた セリームが、その者は 彼女に 強いることを
spera a partir per la Turchia.期待している トルコに 出発する ように。

NARCISOナルチーゾ
(Che ascolto?)(私は 何を 聞いているのか?)

GERONIOジェローニオ
Me infelice!.. oh moglie mia!...私は 不幸だ!… ああ 私の 妻よ!…

POETA詩人
Udite: a Zaida io corsi聞きなさい: ザイダに 私は 急いで向かった
tutto a narrar: vestita al par di leiすべてを 話しに: 彼女と【= フィオリッラと】 同じように 服を着て
ella al festino andrà; talché Fiorilla彼女は 宴会に 行くだろう;【↓】顔に【↓】仮面をつけた フィオリッラのように
colla maschera in volto sembrerà.彼女は 見えるだろう。
Voi da Turco dovete entrar colà.あなたは トルコ男の身で 向こうで 入場できるに 違いない。

GERONIOジェローニオ
E allora?...そして その時に?…

POETA詩人
Allor potreteその時に あなたは できるだろう
l'ingannata Fiorilla...人を騙す フィオリッラを…

GERONIOジェローニオ
Ho inteso... andiamo...私は 理解した… 行こう…
più tempo non perdiamo.もう 時間を 失わいでいよう。

POETA詩人
Eh! non temete.えーい! 心配するでない。
L'ultimo a comparire現れる 最後の人に
Selim sarà: molti de' nostri amiciなるだろう セリームは【≒ セリームは 最後に 到着するだろう】: 多数の 私たちの 友人たちを
onde tenerlo a bada時間を浪費するために 彼を 引き留める 目的で
troverà per la strada: andiamo intanto彼は 道で 見つけるだろう【≒ たくさんの 私たちの 仲間たちが 時間稼ぎに 彼を引き留めようと 道中で 彼を 待ち構えているだろう】: その間に 行こう
a procacciarvi maschera, e vestito.仮面を 手に入れようと努める ために、そして 服を。

GERONIOジェローニオ
Ti seguo.私は 君に ついて行く。

POETA詩人
(Il dramma è già: compito.)(劇は もう 達成された。)
(partono)(【二人とも】 去る)
1小節 Dove diamine è andata? è quasi un'ora から 8小節 che a quel Turco si dedica, sarà. まで省略可記号 Vi--de あり。この部分は自筆総譜では打消し線が引かれており、同時代の筆写譜ではほとんどが載っていない。昨今の上演でもほとんどの場合カットされる。


Fermate.
上記のカットが入る場合、Fermate. がしばしば Sentite. 聞きなさい。 に変えられる。

onde tenerlo a bada
tenere a bada qlcu. 時間を浪費させるために人を引き留める の意味。

N. 11
[RECITATIVO ED] ARIA NARCISO DOPO LA SCENA Ⅷ

Don Narciso
Recitativo


4/4
(C major)
(D. Narciso. Partiti D. Geronio ed il Poeta, esce lieto e frettoloso)(ドン・ナルチーゾ。去った ドン・ジェローニオと 詩人は、陽気に そして 素早く)


NARCISOナルチーゾ
Intesi: ah! tutto intesi.私は 理解した:ああ! 私は すべてを 理解した。
In questo albergoこの宿に
mi guidò la fortuna.運命が 私を 案内した。
レチタティーヴォと 緩 カンタービレ / 急 カバレッタ の二部構成のアリア。
レチタティーヴォ。

Allegro
4/4
(C major)
4小節。

4/4
(C major)
Ingrata donna,恩知らずの 女め、
non fuggirai da me.君は 私から 逃げ【られ】ないだろう。
Tutto vogl'io私は あらゆることを
tentar perché mi resti;試み【↑】たい 君が 私のところに 残る ように;
la fé mi serberai, che promettesti.君は 約束を 守るだろう、それを 君は 誓った。
レチタティーヴォの続き。

Andante
4/4
C major
Tu seconda il mio disegno,おまえは 私の 計画を 手助けしなさい、
dolce amor, da cui mi viene.優しい 愛の神よ、その者によって それは 私の 心に浮かんでいる【≒ 愛の神が 私に 計画を 思い浮かばせた】。
Deh! ricusa a tutti un bene,お願いだから! 皆に対して 恵みを 拒みなさい、
che accordasti solo a me.それを おまえは 私 だけに 認めた【≒ おまえが 私 だけに 認めた 恵みを 他の人たちに対しては 拒みなさい】。
緩 カンタービレ。

Tu seconda il mio disegno,
il mio disegno 第14番 五重唱 でセリームに変装してフィオリッラに近づくことを指す。

dolce amor, da cui mi viene.
この venire は 心に浮かぶ。

Deh! ricusa a tutti un bene,
愛の神に対して述べているものなので bene は (天の)恵み で採った。

Allegro
4/4
E-flat major
Se il mio rival deludo!私が 私の 恋敵を 失望させ【ることができ】るならば!
se inganno un incostante!私が 気まぐれな者を 欺く【ことができる】 ならば!
per un offeso amante侮辱された 恋人にとって
vendetta egual non v'è.同等の 復讐は ない。
テンポ・ディ・メッゾ(中間部)

(Allegro)
4/4
C major
Ah! sì; la speme,ああ! そうだ; 希望が、
che sento in core,それを 私は 心に 感じている、
pietoso amore,哀れみ深い 愛の神よ、
mi vien da te.おまえによって 私の 心に浮かんでいる。
Se il mio rival deludo!私が 私の 恋敵を 失望させ【ることができ】るならば!
se inganno un incostante!私が 気まぐれな者を 欺く【ことができる】 ならば!
per un offeso amante侮辱された 恋人にとって
vendetta egual non v'è.同じくらいの 復讐は ない。
急 カバレッタ。

[Recitativo] Dopo l'Aria Narciso

4/4
(C Major)
SCENA Ⅸ第9場
Il Poeta, indi Albazar詩人、それから アルバザール

POETA詩人
Oh! che fatica! che cervello duro!ああ! なんという 骨折りだ! なんという 鈍い 頭脳だ!
Sono quasi sicuro私は ほとんど 確信がある
che sbaglia la lezione,彼が 教えを 間違っている【≒ ジェロ―ニオが 教えたことを 理解していない】 と、
e il secondo atto mio guasta e rovina;そして 彼が 私の 第2幕を 台無しにする そして 破壊する【↑】と;
ma confido però nell'indovina.しかし それでも 私は 占い師の女を 信用している。
Ecco appunto Albazar. Ebben: trovastiそらここに ちょうど アルバザールが。それでは: 君は 見つけたか
il vestito per Zaida?ザイダの ための 服を?

ALBAZARアルバザール
Lo trovai.私は それを 見つけた。

POETA詩人
Bravo! Gran parte nel mio dramma avrai.いいぞ! 君は 私の 劇で 重要な 役割りを 手に入れるだろう。

ALBAZARアルバザール
Altro non bramo, che veder felice私は 切望していない、幸せであるのを 見ることの 他には
la povera ragazza.哀れな娘が。

POETA詩人
E il tuo carattere,そして 君の 役どころは、
benché non sia sublime,崇高では ない けれども、
non sarà privo d'interesse in tutto全体では 興趣を引くことに 欠いてい ない
se del nostro operar corremo il frutto.私たちの 作品の 果実を 摘み取る 時には。

ALBAZARアルバザール
Or qui Zaida mi manda今 ここに ザイダが 私を 送っている
per saper dov'&egarave; il luogo della festa.宴会の 場所が どこなのか 知る ために。

POETA詩人
Hai ragione: oh! che testa!君は 正しい: ああ! なんという 頭だ!
Avea dimenticata私は 忘れていた
la cosa più importante.最も 重要な ことを。
Addio: corro da Zaida in un istante.さようなら: 私は ザイダのところに 一瞬で 急いで向かう。
(parte)(去る)


SCENA Ⅹ第10場
Albazar soloアルバザール 一人

ALBAZARアルバザール
Zaida infelice! or che trovò l'amante不幸な ザイダ! 愛する人が 見い出した 今
dell'innocenza sua fatto già certo,彼女の 潔白の 事実が もはや 明らかだと、
di un'altra donna innamorato il vede:彼女は 彼が 他の 女に 夢中になっているのを 見ている:
e questo è il premio di sua lunga fede?これが 彼女の 長い 誠意の 褒美なのか?
che sbaglia la lezione,
前々行の cervello duro 鈍い頭脳 は明らかにジェロ―ニオのことなので、詩人はジェロ―ニオに何かを教えたのに、彼がそれをよく理解しなかったことをぼやいているのだろう。第8場にある通り、詩人の計画は、セリームを路上で引き留めている間にセリームに変装したジェロ―ニオが仮面舞踏会でフィオリッラを奪い返し、遅れて到着したセリームにフィオリッラに変装したザイダが近付く、というものである。詩人がジェロ―ニオに何を教えたのかは台本からは分からないが、結局ジェロ―ニオはセリームよりも遅れたばかりか、ナルチーゾにまで出し抜かれてしまい、詩人の計画を台無しにしてしまった。ということは詩人の 教え は変装に関する指示なのかもしれない。

N. 12
ARIA ALBAZAR

Albazar
Andantino mosso
4/4
G major
ALBAZARアルバザール
Ah! sarebbe troppo dolceああ! とても 甘美だろう
il servir al Dio d'amore愛の 神に 服従することは
se destasse eguale ardoreもし 彼が【= 愛の神が】 同じ 熱情を 引き起こすならば
in quel sen che nol provò.あの胸に それは それを 感じなかった【≒ 【セリームが】 熱情を 感じることのなかった 彼の 心に 愛の神が 【彼女と】 同じ 熱情を 引き起こすならば】。
Ma cotanto capricciosoしかし 非常に 気紛れなので
è qual Nume a cui serviamo,あの 神は それに 私たちは 服従している、
che ci dà chi non bramiamo,彼は 私たちに 与えるだろう 私たちが 熱望していない 者を、
e giammai chi si bramò.そして 決して ない 熱望した 人で なく【≒ 私たちが 服従している 愛の神は あまりにも 気紛れなので、私たちが 望んでいない人を 与えて、そして 望んでる人を 決して 与えないだろう】。
(parte)(去る)
速度、拍子、調性とも変化はないが、歌詞の前半が繰り返されることで緩やかな A / B / A’の三部構成になっている。
このアリアは協力者の書いたものでロッシーニの曲ではない。

N. 13
CORO

Coro
Allegro
3/4
C major
SCENA ⅩⅠ第11場
(Sala vagamente illuminate per festa da ballo. Coro di Maschere. Ballerini, e Ballerine. Fiorilla, indi D. Narciso, poi Zaida, e Selim, per ultimo D. Geronio)広間 舞踏会の 宴の ために美しく 照らされた。仮面をつけた人たちの 合唱。踊りの男たち、そして 踊りの女たち。フィオリッラ、それから ドン・ナルチーゾ、その後に ザイダ、そして セリーム、最後に ドン・ジェローニオ)

CORO合唱
Amor la danza mova,愛の神が 踊りを 動かしている、
presieda ai suoni amor,愛の神が 音響を 管理している【≒ 愛の神が 音楽を 取り仕切っている】、
solo piacer ritrova【↓】心は 喜び だけを 見つける
quando è commosso il cor.それが【= 心が】 心を動かされた 時には。
合唱。2回繰り返される。
[Recitativo] Dopo il Coro

4/4
(C Major)
FIORILLAフィオリッラ
E Selim non si vede!そして セリームは 見られない!
Fra tanta gente ancoraたくさんの 人々の 中で も
non lo posso trovar... ove sarà!私は 彼を 見つけ られ ない… 彼は どこに いるのだろう!
(esce D. Narciso, e la considera attentamente)(ドン・ナルチーゾが 出る、そして 彼女を 【見て】 注意深く よく考えて)

NARCISOナルチーゾ
(Quella è Fiorilla.)(あの女が フィオリッラだ。)

FIORILLAフィオリッラ
(vedendo Narciso, e credendolo Selim)(ナルチーゾを 見て、そして 彼を セリームと 思って)
Oh, appunto, eccolo qua.ああ、ちょうど、ほら彼が ここに。
(sottovoce tutti e due)(二人きりで 小声で)
Selim...セリームよ…

NARCISOナルチーゾ
Fiorilla...フィオリッラよ…

FIORILLAフィオリッラ
E tantoそして これほど
aspettar vi faceste?あなたは【時間に】 遅れたのか?

NARCISOナルチーゾ
Perdonate...容赦しなさい…

FIORILLAフィオリッラ
Datemi il braccio, e meco passeggiate.私に 腕を 差し出しなさい、そして 私と 一緒に 散歩しなさい。
(si perdono fra la folla, ed il Coro canta)(人込みの 中に 消える、そして 合唱が 歌う)
aspettar vi faceste?
farsi aspettare (約束の時間に)遅れる。

[PRIMA RIPRESA DEL CORO]

Coro
Allegro
3/4
C major
CORO合唱
Amor la danza mova,愛の神が 踊りを 動かしている、
presieda ai suoni amor,愛の神が 音響を 管理している【≒ 愛の神が 音楽を 取り仕切っている】、
solo piacer ritrova【↓】心は 喜び だけを 見つける
quando è commosso il cor.それが【= 心が】 心を動かされた 時には。
合唱。1回目の繰り返し。

[Recitativo] Dopo [la Prima Ripresa del] Coro

4/4
(C major)
(esce Zaida seguita da Selim)(ザイダが 出る セリームによって ついて来られて)

SELIMセリーム
Cara Fiorilla mia, perché tacete?いとしい 私の フィオリッラよ、なぜ あなたは 黙っているのか?
Forse sdegnata sieteことによると あなたは 憤慨しているのか
perché venni un po' tardi?私が 少し 遅れて 来た から?
Mille maschere intorno io mi trovai...私の 周りで 千の 仮面をつけた人たちに 出くわした…

ZAIDAザイダ
Disimpegnarvi almeno少なくとも あなたは【人込みから】 切り抜け
dovevate più presto.なくてはならなかった より 早く。

SELIMセリーム
Eh! via, perdono.えー! さあ、許しを。
Fiorilla...フィオリッラよ…

ZAIDAザイダ
(Traditor[e]! Son tutta in foco.)(裏切者め! 私は すっかり 火の 中に いる。)

SELIMセリーム
Prende[te] il braccio, e passeggiamo un poco.腕を 取りなさい、そして 少し 散歩をしよう。
(si perdono anch'essi)(彼らも 【人込みの 中に】 消える)
[Seconda Ripresa del Coro]

Coro
Allegro
3/4
C major
CORO合唱
Amor la danza mova,愛の神が 踊りを 動かしている、
presieda ai suoni amor,愛の神が 音響を 管理している【≒ 愛の神が 音楽を 取り仕切っている】、
Solo piacer ritrova【↓】心は 喜び だけを 見つける
quando è commosso il cor.それが【= 心が】 心を動かされた 時には。
合唱。2回目の繰り返し。

この2回目の合唱と続くレチタティーヴォは、自筆総譜にはあるものの、早い段階で外されたと推測されている。

[Recitativo] Dopo [la Seconda Ripresa del] Coro

4/4
(C Major)
GERONIOジェローニオ
Eccomi qui: la prima volta è questaそらここに 私が: これが 初めてだ
che in maschera mi trovo ad un festino.仮面をつけて 宴会に いるのは。
Povero Don Geronio!哀れな ドン・ジェローニオよ!
Maledetto l'amore, e il matrimonio.忌々しい 愛だ、そして 結婚だ。
(esce di nuovo Fiorilla con D. Narciso)(フィオリッラが ドン・ナルチーゾと 一緒に 再び 出る)
Ma che vedo! Fiorilla è già arrivata,それはそうと 私は 何を 見ているのだ! フィオリッラは もう 着いていた、
e già seco è Selim.そして セリームが もう 彼女と 一緒だ。
(esce da parte opposta Zaida, e Selim)(反対側から ザイダが、そして セリームが 出る)
Ma... come? un altroしかし… どうしたことだ? もう一人の
Selim qui vedo, e quella pur mi sembraセリームを ここで 私は 見ている、そして あの女は 私には 思われる
Fiorilla... che pasticcio è questo qua?フィオリッラだと… これは なんという 混乱なのか?
(guardando or gli uni, or gli altri)(時には 一方の組を見て、時には 別の組を 見て)
Quale di lor la moglie mia sarà?彼女たちの うちの どちらが 私の 妻なの だろう?
(Fiorilla e Narciso verranno alla parte dritta; Selim, e Zaida alla sinistra; D. Geronio un poco più in fondo, e nel mezzo)(フィオリッラと ナルチーゾは 右側に【= 下手に】 来るだろう: セリームは、そして ザイダは 左側に【=上手に】; ドン・ジェローニオは もう少し より 奥に、そして 中央に)
このレチタティーヴォと先立つ2回目の合唱は、自筆総譜にはあるものの、早い段階で外されたと推測されている。

N. 14
QUINTETTO

Fiorilla
Zaida
D. Narciso
Geronio
Selim
Andante
4/4
E-flat major
GERONIOジェローニオ
Oh! guardate che accidente:ああ! 見なさい なんという 出来事だ:
non conosco più mia moglie!私は 私の 妻を もはや 見分け【られ】ない!
Egual Turco, eguali spoglie,似たような トルコ男、似たような 服、
tutto eguale... che farò?皆 似たような… 私は 何を しよう?

NARCISOナルチーゾ
【(フィオリッラに)】
No, partir di qui non possoいいや、私は ここから 去ることは できない
senza voi Fiorilla mia.あなた 私の フィオリッラ なしでは。

ZAIDAザイダ
【(セリームに)】
Ma comprendere non possoけれども 私は 分かることが できない
qual sarà la sorte mia.私の 運命が どんなものなのか を。

GERONIOジェローニオ
Non conosco più mia moglie!私は 私の 妻を もはや 見分け【られ】ない!
che risolvo... che farò?私は 何を 決心する【べきな】のか… 私は 何を する【べき】だろうか?

SELIMセリーム
【(フィオリッラ姿のザイダに)】
Deh! seguitemi in Turchia,お願いだから! トルコへと 私に ついて来なさい、
là mia sposa vi farò.そこで 私は あなたを 私の 花嫁に するだろう。

FIORILLAフィオリッラ
【(セリーム姿のナルチーゾに)】
Persuadermi il cor vorria,心は 私を 納得させ たい、
ma risolvermi non so.しかし 私は 決心することが できない。

GERONIOジェローニオ
Oh! guardate che accidente:ああ! 見なさい なんという 出来事だ:
non conosco più mia moglie!私は 私の 妻を もはや 見分け【られ】ない!
Egual Turco, eguali spoglie,似たような トルコ男、似たような 衣服、
tutto eguale... che farò?皆 似たような… 私は 何を しよう?
perdendosi【人込みの中に】 消えて
緩 / コンチェルタート / 急 / ストレッタ の五重唱。

緩。
(Andante)
4/4
E-flat major
FIORILLAフィオリッラ
(Deh! raffrena amor pietoso,(お願いだから! 抑制しなさい 慈悲深い 愛の神よ
tanti affetti del cor mio.)私の 心の これほどたくさんの 情愛を。)
【(セリーム姿のナルチーゾに)】
Ah! se cara a te son io,ああ! もし 私が 君にとって いとしい ならば、
altro ben bramar non so.他の 幸福を 私は 熱望する 術を知らない。

ZAIDAザイダ
(Deh! seconda, amor pietoso,(お願いだから! 手助けしなさい、慈悲深い 愛の神よ、
l'innocente inganno mio.)私の 無実の 欺瞞を。)
【(セリームに)】
Ah! se cara a te son io,ああ! もし 私が 君にとって いとしい ならば、
altro ben bramar non so.他の 幸福を 私は 熱望する 術を知らない。

NARCISOナルチーゾ
(Deh! seconda, amor pietoso,(お願いだから! 手助けしなさい、慈悲深い 愛の神よ、
l'innocente inganno mio.)私の 無実の 欺瞞を。)
【(フィオリッラに)】
Ah! se caro a te son io,ああ! もし 私が 君にとって いとしい ならば、
altro ben bramar non so.他の 幸福を 私は 熱望する 術を知らない。

SELIMセリーム
(Deh! seconda, amor pietoso(お願いだから! 手助けしなさい、慈悲深い 愛の神よ、
i bei voti del cor mio.)私の 心の 素晴らしい 願いを。)
【(フィオリッラ姿のザイダに)】
Se cara a te son io,ああ! もし 私が 君にとって いとしい ならば、
altro ben bramar non so.他の 幸福を 私は 熱望する 術を知らない。

GERONIOジェローニオ
Son davvero un bello sposo;私は 本当に 素晴らしい 夫だ;
non conosco più qual sia私は もはや 分からない
di lor due la sposa mia;彼女たち 二人のうち【↑】どちらが 私の 妻【↑】なのか;
parlar deggio sì, o no?私は 話す べき なのか はい か、いいえ か?
緩 の後半だが、コンチェルタートになっている。

Allegro deciso
4/4
E-flat major
NARCISO E SELIMナルチーゾ と セリーム
Dunque seguitemi.それでは 私に ついて来なさい。

GERONIOジェローニオ
Io resto attonito.私は 唖然とした ままでいる。

FIORILLA E ZAIDAフィオリッラ と ザイダ
Ebben son teco.それでは 私は 君と 一緒だ。

GERONIOジェローニオ
Divento cieco.私は 盲目に なっている。

FIORILLA, ZAIDA, NARCISO E SELILMフィオリッラ、ザイダ、ナルチーゾ と セリーム
(per partire)(去ろうとして)
Andiamo.行こう。

GERONIOジェローニオ
(fermandoli)(彼らを 阻んで)
Partono!彼らが 去るだって!
Ferma... alto là.止まりなさい… 止まれ!

SELIMセリーム
Cosa domanda?あなたは 何を 要求しているのか
Cosa desia?あなたは 何を 切望しているのか?

ZAIDAザイダ
Ai fatti suoi彼の 行為に
attento stia.注意し なさい。

NARCISOナルチーゾ
Geronio è questo:あれは ジェローニオだ:
venite presto.すぐに 行きなさい。

FIORILLAフィオリッラ
Ah! ah! ho capito;ハ! ハ! 私は 理解した;
è mio marito.彼は 私の 夫だ。

GERONIOジェローニオ
Qui resterete,ここに 留まりなさい、
non partirete;去るでない;
voglio mia moglie,私は 私の 妻を 求めている、
che qui si sta.その者は ここに いる。

FIORILLA E ZAIDAフィオリッラ と ザイダ
Qui la sua moglie?ここに 彼の 妻が?

FIORILLA, ZAIDA, NARCISO E SELIMフィオリッラ、ザイダ、ナルチーゾ と セリーム
Diventa pazzo!彼は 頭がおかしく なっている!

GERONIOジェローニオ
Voglio mia moglie.私は 私の 妻を 求めている。

CORO合唱
(accorre a frapporsi)(間に入りに 駆けつける)
Quale schiamazzo!なんという 騒ぎだ!

FIORILLA, ZAIDA, NARCISO, SELIM E COROフィオリッラ、ザイダ、ナルチーゾ、セリーム と 合唱
In altro loco他の 場所で
la troverà.あなたは 彼女を 見つけるだろう。

GERONIOジェローニオ
Alto! nessun止まれ! 誰も
se n'andrà.立ち去るでない。
中間部。

Qui resterete, / non partirete;
どちらも未来形を用いているが、訳には反映させない。

[Prestissimo]
2/2
E-flat major
FIORILLA, ZAIDA, NARCISO E SELIMフィオリッラ、ザイダ、ナルチーゾ と セリーム
Questo vecchio maledettoこの 忌々しい 老人は
potria dar di noi sospetto....私たちに 疑いを 与えている のかもしれない…
zitti, zitti andiamo fuori,静かに、静かに 外に 行こう、
pria che n'abbia a cimentar.彼が 私たちを 危険にさらす はずである 前に。

GERONIOジェローニオ
Ah! Turcaccio maledetto!ああ! 忌々しい トルコ男め!
fremo d'ira, e di dispetto...私は 怒りに 震えている、そして 悔しさ【震えている】…
ma sentitemi di grazia,しかし お願いだから 私【の言うこと】を聞きなさい、
ma lasciatemi parlar.しかし 私に 話 させなさい。

CORO合唱
Andate fuori:外に 行きなさい:
non ci state ad inquietar.私たちの 落着きを失わせて いるで ない。

(Vogliono uscire: D. Geronio fuori di sé si scaglia fra loro per opporsi: le due coppie si ritirano entrambe da parte opposta: il Coro si frappone, e durante questa confusione segue)(彼らは 出 ようとする: ドン・ジェローニオは 我を忘れて 妨害するために 彼らの間に 飛び掛かる: 2組の カップルは 2組とも 反対側から 退く: 合唱が 間に入り、そして この 混乱の 間に 【彼らの】 後を追う)
急。カノン風の音楽。

pria che n'abbia a cimentar.
この ne は 私たちを (ci と同じ)で理解した。

Allegro
3/8
E-flat major
FIORILLA, ZAIDA, NARCISO E SELIMフィオリッラ、ザイダ、ナルチーゾ と セリーム
Egli è pazzo... lo sentite?彼は 頭がおかしい… あなたは そのことを 聞いているか?
(Ci conviene di scappare.)(逃亡する 必要がある。)
Ah! fermate... impedite...ああ!【彼を】 止めなさい…【彼を】 阻止しなさい…
(Idol mio non dubitare.)(私の 偶像よ 疑うでない。)
Non è quella, non è questa...彼女は あの女では ない、彼女は この女 では ない…
lei s'inganna; è la sua testa彼は 彼女を 間違っている; 彼の 頭だ
che l'immagina fra lor.彼女たちの 中に 彼女を 空想している のは。

GERONIOジェローニオ
Non son pazzo! ma sentite...私は 頭がおかしく ない!だが 聞きなさい…
mi volete assassinare...あなたたちは 私を 殺害し ようとしている…
Vo' mia moglie, mi capite...私は 私の妻を 求めている、私【の言うこと】を 理解しなさい…
Ma lasciatemi parlare...だが 私に 話さ せなさい…
Sarà quella, sarà questa...彼女は あの女 だろう、彼女は この女 だろう…
questa quella... la mia testaこの女か あの女か… 私の 頭は
non può scegliere fra lor.彼女たちの中で 選ぶことが できない。

CORO合唱
Siete pazzo... ma sentite...あなたは 頭がおかしい… だが 聞きなさい…
non si viene a disturbare...迷惑をかけに 来るでない…
Sarà vero quel che diteあなたの 言っている ことは 本当なの だろう
ma per or lasciate star.しかし 今のところは 放って おきなさい。
Non è quella, non è questa...彼女は あの女では ない、彼女は この女 では ない…
lei s'inganna; è la sua testa彼は 彼女を 間違っている; 彼の 頭だ
che l'immagina fra lor.彼女たちの 中に 彼女を 空想している のは。

(Selim, e Zaida partono da un lato, Narciso, e Fiorilla dall'altro: indi il Coro. Resta Geronio affannato, e disperato.)(セリームは、そして ザイダは 一方の側から 去る、ナルチーゾは、そして フィオリッラは 別の【側】から 【出る】: それから 合唱が 【出る】。ジェローニオが 居残る 苦しみ悶えて、そして 絶望して)
ストレッタ。

[Recitativo] Dopo il Quintetto

4/4
(C Major)
SCENA ⅩⅡ第12場
(D. Geronio, indi il Poeta)(ドン・ジェローニオ、それから 詩人)

GERONIOジェローニオ
Uh! che caldo! non possoううっ! なんて 暑いんだ! 私は
una parola solaただの 一言も
articolar. Darei del capo口に出【↑↑】せない。私は 頭を 与えたいものだが
nella muraglia... ah! più riparo alcuno障壁に【≒ 私は 自暴自棄になりたいものだ】… ああ! もはや 誰も
a tanto mal non veggio...これほどたくさんの 不幸に対する【↑】対策を 見ていない【≒ こんなに ひどい 不幸への 対策は もはや 誰にも 分からない】。
Perdo la moglie... si può dar di peggio?私は 妻を 失っている… これ以上ひどいことが あり 得るのか?
Ah! Poeta... non sai...ああ! 詩人よ… 君は 知らない…

POETA詩人
Sì: so tutto: incontraiいいや: 私は すべてを 知っている: 私は 出会った
Zaida insieme a Selim: l'ho conosciutaセリームと 一緒の ザイダに: 私は 理解した
al segno che mi fece.身ぶり手ぶりで それを 彼女が 私に した。

GERONIOジェローニオ
Ma Fiorillaだが フィオリッラ【↓】も
era qui pure, e avevaここに いた、そして 彼女は
una maschera seco仮面をつけた人を 彼女と一緒に 有していた
che quel Turco parea.その者は あの トルコ男に 見えた。

POETA詩人
Chi mai sarà?彼は いったい 誰 だろうか?
Venite meco: tutto si saprà.私と 一緒に 来なさい: すべてが 知られるだろう。
(partono)(【二人とも】 去る)


SCENA ⅩⅢ第13場
(Camera della Locanda come prima. Albazar, con facchini che vengono per trasportare la roba di Selim)(前と 同様の 宿兼食堂の 部屋。アルバザール、荷物運搬人たちと共に その者たちは セリームの 物を 運ぶために 来る)

ALBAZARアルバザール
Benedetta la festa, e chi la diede!宴が 祝福される【ように】、そして それを 与えた 人が。
Alfin ha vinto Zaida e in pochi istantiついに ザイダが 勝利を収めた そして 僅かな 瞬間で【≒ すぐに】
partirà con Selim.セリームと 一緒に 出発するだろう。
(ai facchini)(荷物運搬人たちに)
Presto; i bauli急いで; 旅行かばんが
si trasportino al mar senza indugiare.海に 運ばれるように もたもたすること なしに。
Andiamo il locandiere ad avvisare.旅館の主人に 知らせに 行こう。
parte去る


SCENA ⅩⅣ第14場
(D. Geronio, ed il Poeta, indi Albazar che ritorna)(ドン・ジェローニオ、そして 詩人、それから アルバザール その者は 戻る)

POETA詩人
Tutto è scoperto. Era Narciso.すべてが 暴かれた。彼は【= セリームに見えた 仮面をつけた男は】 ナルチーゾだった。

GERONIOジェローニオ
E comeそれで どうやって
poté Narciso?...ナルチーゾが できたのか?…

POETA詩人
Di Fiorilla amanteフィオリッラの 愛人
era anch'egli.だった 彼も また。

GERONIOジェローニオ
Che dici? ed io, buffone,君は 何を 言っているのか? そして 私は、おどけ者だ【≒ 愚かな夫だ】、
io lo lasciava entrar liberamente?私は 彼を 自由に 入れ させていたのか?

POETA詩人
Gran cecità!重大な 無知だ!

GERONIOジェローニオ
Non m'accorsi di niente.私は まったく 気付かなかった。
E adesso ove si trovaそれで 今 どこに いるのか
quella civetta?あの 浮気女は。

POETA詩人
Dopo aver scoperto気付いた 後に
Narciso, l'ha piantato, ed è tornataナルチーゾ【の正体】に、彼女は 彼を 捨てた、そして 戻った
al festino i compagni a ricercare;宴会に 仲間たちを 再び探しに;
or va in traccia del Turco.今 彼女は トルコ男の 跡を 行っている。

GERONIOジェローニオ
E che ho da fare?それで 私は 何を すべきなのか?

POETA詩人
Io vel dirò: l'ho già disposto in mente私は あなたに このことを 言おう: 私は 既に 頭脳の中に それを 準備した
come fosse un drammatico accidente.劇における 出来事 であるかの ように。
Un giorno mi dicesteかつて あなたは 私に 言った
che stanco di soffrir gli oltraggi suoi,彼女の 侮辱を 我慢することに うんざりした と、
di allontanar da voiあなたから 遠ざけると
Fiorilla proponeste,フィオリッラを あなたは【↑↑】私に 申し出た、
e di fare un divorzio anche otteneste.そして 離婚を する と も 申し出た。

GERONIOジェローニオ
È vero, e la sentenzaそれは 本当だ、そして 見解を
diedi al Paglietta.私は 三流弁護士に 与えた。

POETA詩人
Bene.いいぞ。
Or dovete ricorrere al Paglietta,今こそ あなたは 三流弁護士の ところに 急いで戻る べきだ、
e fingere senz'altri complimentiそして ふりをする【↑】べきだ 他の 世辞 なしに【≒ 率直に】
di rimandar Fiorilla a' suoi parenti.彼女の 両親の 元に フィオリッラを 送り返す【ふりをする べきだ】

GERONIOジェローニオ
Ma se ostinata sprezzaしかし もし 彼女が 強情に 無視したら
il mio finto divorzio, e se col Turco私の 偽の 離婚を、そして もし トルコ男と 一緒に
ella partir risolve, ah! caro amico,彼女が 去ると 決心したら、ああ! 親愛なる 友よ、
è finita la festa.祭りは 終わった【≒ もうおしまいだ】。

(esce Albazar con facchini, bauli ecc.)(アルバザールが 出る 荷物運搬人たちと、鞄と、などなど と共に)

ALBAZARアルバザール
No signori: con voi Fiorilla resta.いいや 貴君たちよ: あなたと 一緒に フィオリッラは 居残る。

GERONIOジェローニオ
Perché?どうして?

ALBAZARアルバザール
Selim con Zaida ha fatto pace:セリームは ザイダと 和解した:
egli stesso mi manda彼 自身が 私を 送っている
a prender la sua roba alla locanda.彼の 物を【引き】取りに 宿に。
(parte)(去る)

GERONIOジェローニオ
La sorte ci seconda.運命が 私たちに 好意を示している。

POETA詩人
Conservate維持しなさい
fermezza ad ogni evento.精神の強さを どんな場合にも。
(Non si può dar migliore scioglimento.)(さらによい 大詰めは あり得ない。)
(partono)(【二人とも】 去る)


SCENA ⅩⅤ第15場

(Piazza con Casino di D. Geronio. Fiorilla con Maschere, indi Geronio)(ドン・ジェロ―ニオの 家の ある 広場。仮面をつけた フィオリッラ、それから ジェローニオ)

FIORILLAフィオリッラ
(Chi avria creduto a questo segno audace(誰が 思った だろうか この 程度に【≒ あれほどまでに】 大胆だとは
Narciso!) Ecco il marito. Inver mi sentoナルチーゾが!) そらそこに 夫が。まったく 私は 感じている 私が
un poco mortificata. Ma, coraggio!少し 不愉快にさせられた と。しかし、頑張ろう!
Io so con lui di quanto私は 分かっている どの程度 彼に
comprometter mi posso.私が 妥協することが できるか。

GERONIOジェローニオ
(esce Geronio)(ジェロ―ニオが 出る)
(Ecco la pazza: ho mille furie addosso.)(そらあそこに 頭のおかしい女が: 私は 千の 怒りを まとっている。

FIORILLAフィオリッラ
Serva signor marito.【あなたの】 僕 しもべ の女だ 夫氏よ。

GERONIOジェローニオ
Schiavo signora mia.【あなたの】 僕 しもべ の男だ 私の婦人よ。

FIORILLAフィオリッラ
Dunque pensateそれでは あなたは 考えるのか
di farmi corbellar sempre così?いつでも このように 私を 嘲 させること について【≒ いつでも こうして 私の 嘲りを 買う こと について】。
Tanto rumore!...なんという 騒音だ!…

GERONIOジェローニオ
(Adesso io crepo qui.)(今 私は ここで 死ぬ。)
Non tema signorina心配するでない お嬢さん
che corbellar mai più non la farò...私が もう 二度と あなたを 嘲 させ ない だろう かと【≒ 私が もう 二度と あなたの 嘲りを 買う ことは ないだろう かと】…
Rimedio ci porrò... l'avviso intanto私は 私たちに 解決法を 示そう… 今のところは 私は あなたに 知らせる
che ravvisto mi son più che non crede,あなたが 思う よりも 私が 改心した ことを 、
che in casa mia più non si mette il piede.私の 家に【人が ≒ 誰も】足を 踏み入れない ことを。
(entra in casa e chiude)(家に 入る そして 閉める)


SCENA ⅩⅥ第16場
(Fiorilla, indi il Poeta con un Usciere)(フィオリッラ、それから 詩人 裁判所の職員と 共に)

FIORILLAフィオリッラ
Non l'ho veduto mai burbero tanto.私は これまで一度も 見たことが ない あれほど つっけんどんな男を。
Comincio quasi a spaventarmi alquanto.私は いくらか ぎょっとし 始めている。
Oh! Poeta! a proposito venite: dov'è Selim?ああ! 詩人よ! あなたは ちょうどよい時に 来ている。セリームは どこに いるのか?

POETA詩人
(piano all'Usciere)(裁判所の職員に 小声で)
(Andate(行きなさい
a prendere la lettera e il fardello.)手紙と 荷物を 取りに。)

FIORILLAフィオリッラ
Dite: dov'e Selim?言いなさい: セリームは どこに いるのか?

POETA詩人
Egli è occupato.彼は 忙しい。

FIORILLAフィオリッラ
Come?どうして?

POETA詩人
Con Zaida si è pacificato.ザイダと 彼は 和解した。
Anzi fra poco ei parteそれどころか 間もなく 彼は 出発する
con essa per Turchia.彼女と 一緒に トルコに向かって。
(Nota tutto, ed osserva, o musa mia.)(すべてを 書き取りなさい、そして 観察しなさい、ああ 私の ムーサ【= ミューズ,詩と音楽の神】よ。)

FIORILLAフィオリッラ
Vinto dunque ha colei? perfido! ed ioそれでは あの女が 勝利を収めたのか? 恩知らずな男め! そして 私は
nulla per lui curava彼のために 何も 気に掛けなかったのか
lo stuol di mille amanti,千人の恋人たちの 一団を、
del marito il dispetto?...夫の 苛立ちを?…

POETA詩人
(Un altro colpo, ed otteniam l'effetto.)(もう一つの 打撃だ、そして 私たちは 結果を 得る。)

FIORILLAフィオリッラ
Amici, un sol momento友たちよ、一瞬 だけ
possiam se lo bramate,もし あなたたちが そのことを 切望する ならば、私たちは
riposarci in mia casa...私の 家で 休息することが【↑】できる…

(esce da casa l'Usciere con un foglio e due servitori che portano un fardello)(家から 裁判所の職員が 出る 1枚の書類と 二人の 従者と 共に その者たちは 荷物を 持って来る)

POETA詩人
Alto! aspettate.止まれ! 待ちなさい。
Questa lettera a voi manda il marito.この 手紙を 夫が あなたに 送っている。

FIORILLAフィオリッラ
Qual capriccio! Leggiam.なんという 気紛れだ! 読もう。
1小節 Uh! che caldo! non posso から 20小節 Venite meco: tutto si saprà. まで(第7場全体) 省略可記号 Vi--de あり。この箇所は自筆総譜では取り消されており、ほぼすべての筆写譜で載っていない。初演後しばらくしてからカットされたと推測されている。昨今の上演でもほとんどの場合カットされる。

88小節 Ecco il marito. Inver mi sento から 115小節 Comincio quasi a spaventarmi alquanto. まで省略可。省略する時のために86―88小節のフィオリッラのレチタティーヴォを調整したものがある。この箇所は自筆総譜では取り消されており、すべての筆写譜で載っていない。昨今の上演でもほとんどの場合カットされ、さらに 86―88小節も含めてカットされることも多い。


articolar. Darei del capo / nella muraglia... ah! più riparo alcuno
dare del capo nel muraglia については第2幕第1場の傍注を参照。

che vengono per trasportare la roba di Selim)
荷物を船に乗せに運んでおり、つまりセリームがザイダと一緒にトルコに帰ろうとしていることを表している。

diedi al Paglietta.
paglietta 伊和辞典では へりくつばかりで頼りにならない弁護士 とある。paglia は わら,麦わら の意味で、その縮小形 paglietta は 麦わら帽子 の意味である。これが 三流弁護士 の意味になったのは、かつてナポリの弁護士が黒い麦わら帽子を被っていたことに由来する。

(Fiorilla, indi il Poeta con un Usciere)
Usciere には 廷吏 という訳語があるが、やや専門用語的なので 裁判所の職員 と訳す。

che ravvisto mi son più che non crede,
ravvedersi 改心する。mi son ravvisto で 私は 考えを改めた の意味。

comprometter mi posso.
compromettersi con qlcu. 人と妥協する,人に歩み寄る。

nulla per lui curava
この curare は 気に掛ける。badare と同義。

N. 15
RECITATIVO E ARIA [DI FIORILLA]

Fiorilla



4/4
(C major)
(durante la lettura l'Usciere parte; il Poeta si ritira senza essere veduto. Restano i servitori colle robe)(読むことの 間に 裁判所の職員は 去る; 詩人は 見られること なく 退く。物々を持った 召使いたちが 残る)

FIORILLAフィオリッラ
I vostri cenciあなたの 不用品を
vi mando, e in casa mia più non vi voglio:私は あなたに 送る、そして 私の 家に 私は もう あなたを 望まない:
essa è chiusa per voi, dimenticateそれは あなたには 閉ざされている、忘れなさい
d'esser stata mia moglie, e il rossor vostro私の 妻で あった ことを、そして あなたの 赤面を
seppellite in Sorrento.ソレントの 地下に埋めなさい。
D. Geronio. Qual colpo! Ohimè! che sento?ドン・ジェローニオ。 なんという 衝撃だ!悲しいかな! 私は 何を 聞いているのか?
レチタティーヴォと 緩 カンタービレ / 急 カバレッタ の二部構成のアリア。
レチタティーヴォ。

Allegro vivace
4/4
(C major)
Poeta... egli è partito... oh Dio! son chiuse詩人よ… 彼は 去った… ああ 神よ! 閉ざされた
della casa le porte...家の 扉は…
l'irato consorte怒った 配偶者は
per sempre mi scacciò... dunque a Sorrento永久に 私を 追い出した… それでは ソレントに
degg'io tornar? o mia vergogna! ahi! quale,私は 帰らなくては ならないのか? ああ 私の 恥よ! ああ! どのような、
quale asilo trovar! tutto ho perduto.どのような 避難所を 見つけるのだ【≒ どうやって 身を隠せば よいのだ】! 私は すべてを 失った、
Pace, marito, onor... intendo...平安を、夫を、名誉を… 私は 理解している…
(i servitori che mostrano le robe)(召使いたち その者は 物々を 見せる)
ah! questiああ! これらは
i testimoni sono証拠だ
della miseria mia...私の 惨めさの…
レチタティーヴォの続き。

quale asilo trovar! tutto ho perduto.
trovare asilo 身を隠す。

Allegro
4/4
(C major)
vani ornamentiくだらない 装飾品どもよ
che fate meco omai! itene tutti,それは 今 私と 共に 何の 役割りを果たしているのだ【≒ おまえたちは 今 私に なんの 意味が あるのだ】! 全部 行ってしまいなさい、
itene sparsi a terra; io vi calpesto地面に 散らばって 行ってしまいなさい; 私は おまえたちを 踏みにじる
cagioni de' miei falli, e vi detesto.私の 過ちの 原因よ、そして 私は おまえたちを 嫌悪する。
レチタティーヴォの続き。

[Aria di Fiorilla]

Andante
3/4
D major
(si spoglia degli ornamenti, che avrà intorno. Il Poeta si mostra di tanto in tanto, le maschere sorprese si guardano fra loro)(装飾品を 投げ出す、それらを 彼女は 周りに 有している。詩人は 時々 姿を見せる、驚いた 仮面をつけた人たちは 彼らの 中で 互いに顔を見合わせる)
Squallida veste, e bruna生気のない、そして 悲し気な 服が
d'affanno e pentimento,苦悩と 後悔で、
fia l'unico ornamento唯一の 装飾品だろう
che si vedrà con me.私と 共に 見られるであろう ところの【≒ 苦悩と 後悔で 生気のない、そして 悲し気な 服が 私が 身に着けている 唯一の 装飾品 だろう】。
Lutto non v'ha che basti,服喪 は ない それは 十分である、
a chi l'onor perdè.名誉を 失った 者には【≒ 名誉を 失った 者には 服喪ですら 悲しみが 足りない】。

CORO合唱
Amici, a noi conviene友たちよ、私たちには 必要だ
volger lontano il piè.遠くへ 足を 向ける ことが。

POETA詩人
L'affare è andato bene,事は うまく 行っている、
più da temer non c'è.さらに 心配することは ない。
緩 カンタービレ。

Allegro
4/4
D major
FIORILLAフィオリッラ
Caro padre, madre amata,愛する 父よ、愛する母よ、
quale affanno sentirete,どのような 苦悩を あなたたちは 感じるだろうか、
quando sola, e disprezzata【↓】あなたたちが 再び見るであろう 時に 一人の、そして 嘲笑された
vostra figlia rivedreteあなたたちの 娘が
far ritorno sconsolata失意の 帰還を するのを
all'antica povertà?以前の 貧困に【≒ 一人で、そして 嘲笑された あなたたちの 娘が 悲嘆に暮れて かつての 貧困に 戻って来るのを あなたたちが 再び見る時 あなたたちは どれほど 悲しむだろうか】?

CORO合唱
Al marito chiedete soccorso,夫に 助けを 求めなさい、
ma da noi non sperate pietà.しかし 私たちから 哀れみを 期待するでない。

FIORILLAフィオリッラ
Falsi amici, voi pur mi lasciate!偽りの 友たちよ、あなたたち も 私を 捨てるのだ!
ah! comincio a conoscervi appieno.ああ! 私は あなたたちを 完全に 理解し 始めている。
Voi restate, se il Cielo è sereno,あなたたちは 留まる、もし 空が 晴れて いる ならば、
voi fuggite se nero si fa.あなたたちは 急いで立ち去る もし それが 暗くなる ならば。

CORO合唱
Chi rovina a se stesso procura自分自身に 破滅を もたらす 者は
solo accusi la sua cecità.ただ その 無思慮を 非難するがいい。

FIORILLAフィオリッラ
Ah!ああ!
テンポ・ディ・メッゾ(中間部)。

vostra figlia rivedrete
rivedere は基本的に 再会する の意味で、ここでもその意味で用いられているのだが、vedere + 不定詞 qulcu./qul.co. 人/物が するのを 見る の表現をはっきりさせるため 再び見る で訳した。

(Allegro)
4/4
D major
L'infelice, che opprime sventura,不幸な者は、その者を 不運が 圧迫する、
più sostegno, conforto non ha.もはや 支援を、慰めを 有しない。

CORO合唱
Chi rovina a se stesso procura自分自身に 破滅を もたらす 者は
solo accusi la sua cecità.ただ その 無思慮を 非難するがいい。

POETA詩人
Ci è morale... oh che scena sicura!教訓が ある… ああ なんという 確実な 場面だ!
oh che incontro al teatro farà.ああ それは 劇場で なんという 好評を するだろう。

FIORILLAフィオリッラ
Caro padre, madre amata,愛する 父よ、愛する母よ、
quale affanno sentirete,どのような 苦悩を あなたたちは 感じるだろうか、
quando sola, e disprezzata【↓】あなたたちが 再び見るであろう 時に 一人の、そして 嘲笑された
vostra figlia rivedreteあなたたちの 娘が
far ritorno sconsolata失意の 帰還を するのを
all'antica povertà?以前の 貧困に【≒ 一人で、そして 嘲笑された あなたたちの 娘が 悲嘆に暮れて かつての 貧困に 戻って来るのを あなたたちが 再び見る時 あなたたちは どれほど 悲しむだろうか】?

(Fiorilla parte da un lato, seguita dai servitori, che portano le robe; le Maschere dall'altro)(フィオリッラは 一方の側から 去る、召使いたちに ついて来られて、その者たちは 物々を 運ぶ; 仮面をつけた人たちは 別の【側から 去る】)
急 カバレッタ。

この箇所はローマ稿でのより華やかな別稿がある(ロッシーニ自身の手によるものかは分かっていない)。⇒ 補遺 なお今日ではそちらを採用する場合でも後半のみ差替えることが一般的。

[Recitativo] Dopo l'Aria di Fiorilla

4/4
(C Major)
SCENA ⅩⅦ第17場
(Poeta, indi D. Geronio)(詩人、それから ドン・ジェローニオ)

POETA詩人
Che dramma! son contento:なんという 劇だ! 私は 満足している:
un migliore argomentoさらに良い 題材は
trovar non si potea, né in miglior modo見つけられることが できなかったし、さらに 優れた やり方で
avviluppar si cercherebbe un nodo.【劇の】 筋が もつれさせられるよう 追求したくない【≒ さらに 巧妙に 物語に 混乱をもたらすことを 追い求めたいとは思っていない】。

[entra Geronio][ジェローニオが 入る]

Amico! a meraviglia: pianti, strida,友よ! 完璧だ: 涙、金切り声、
rimorsi da Tragedia.後悔【どれも】 悲劇にふさわしい。

GERONIOジェローニオ
Io ti ringrazio,私は あなたに 感謝する、
Poeta mio. Credi che sia pentita,私の 詩人よ。君は 確信しているか 彼女が 後悔している と、
e corretta davvero?そして 本当に 矯正された【↑】と?

POETA詩人
Se lo credo?私が そのことを 確信しているか どうか だって?
Anzi saggia per sempre io la prevedo.それどころか 私は 予見する 彼女は いつまでもずっと 分別ある と。

GERONIOジェローニオ
Ed or, che far bisogna?それでは 今、何を する 必要があるのか?

POETA詩人
Seguitarla彼女の 跡を追いなさい
senza farsi vedere; e se si lagna,姿を 現すこと なく; そして もし 彼女が 嘆き、
se piange, se prometteもし 彼女が 泣き、もし 彼女が 約束するならば
di mutare costume, e viver bene,素行を 変えると、そして 立派に 生きる と、
perdonarle, e riprenderla conviene.彼女を 容赦して、そして 彼女を 引き取る 必要がある。
partono【二人とも】 去る


SCENA ⅩⅧ第18場
(Spiaggia come nell'Atto Primo. Si vede sull'ancore la nave di Selim, e Marinari Turchi che si dispongono alla partenza.(浜辺 第1幕と同様の。錨の上に セリームの船が 見える、そして トルコ人の船員たちが 【見える】 その者たちは 出発の 準備をしている。
Fiorilla, indi D. Geronio col Poeta)(フィオリッラ、それから ドン・ジェローニオ 詩人と共に)

FIORILLAフィオリッラ
Sì: mi è forza partir: non ho coraggioそうだ 私には 去ることは 避けられない: 私は 勇気を 有していない
di presentarmi a lui: grave è il mio torto.彼の 前に出る: 私の 過ちは 重大だ。
Questa vicina al portoこの 港から 近い
spiaggia rimota, provveduta è sempre人気のない 浜辺は、いつでも 備えられている
di battelli che vengono, e che vanno小船が それらは 来る、そして それらは 行く
da Napoli a Sorrento... è qui... La naveナポリから ソレントへ… ここだ…
è quella di Selim. Non fossi a questaあれは セリームの【↑】船だ。【もし】 それが この
spiaggia approdata mai, nave funesta!浜辺に ひょっとして 着岸【↑】され なかったならば、不幸をもたらす 船よ!

POETA詩人
(Miratela: sospira.)(彼女を 見なさい: 彼女は 溜息を吐いている)

GERONIOジェローニオ
(Ella è pentita,(彼女は 後悔してる、
è pentita davver.)彼女は 本当に 後悔している。)

POETA詩人
(Non vel dicea?(私は あなたに そのことを 言わなかったか?
Perché state indeciso? andate innanzi.)なぜ 迷っている? 前に 進みなさい。)

FIORILLAフィオリッラ
(Geronio! come qui? par che si avanzi.)(ジェローニオだ! どうして ここに? 彼は 進んでいるように 思われる。)

GERONIOジェローニオ
(Fiorilla poverina!)(哀れな フィオリッラ!)

FIORILLAフィオリッラ
(Mi guarda e si avvicina.)(彼は 私を じっと見て そして 近づいている。)

POETA詩人
(Vi ha scoperto, e vi mira.)(彼女は あなたを 認めた、そして 彼女は あなたを 見ている。)

FIORILLAフィオリッラ
(In mio favore(私のために
chi sa? forse gli parla il primo amore.)誰が 分るというのか? ことによると 最初の愛が 彼に 語っている【≒ もしかして かつての 愛が 私のために 彼に 語りかけているのか】。
N. 16
FINALE SECONDO

Fiorilla
Zaida
Narciso

Poeta
D. Geronio
Selim
Albazar
Coro
Andante affettuoso un poco mosso
4/4
A major
FIORILLAフィオリッラ
Son la vite sul campo appassita,私は 畑の 萎れた ブドウの木だ、
che del caro sostegno mancò.それは 大切な 支柱を 失った【≒ 私は 支柱を 失って 萎れた 畑の ブドウの木だ】。

GERONIOジェローニオ
Io son l'olmo a cui venne rapita私は ニレの木だ それから 強奪された
la sua vite, ed ignudo restò.その ブドウの木は、そして それは 裸身の ままでいる【≒ 私は ブドウの木を 剥がされて 丸裸になった ニレの木だ】。

POETA詩人
Il cultore son io, di buon cuore,私は 耕作者だ、善良な 心の、
che di nuovo congiunger li può.それは 再び 彼らを 結び付ける ことができる。

FIORILLAフィオリッラ
D'intorno mi gira,彼は 私の 周りを 歩き回っている、
mi guarda, e sospira,彼は 私を 見ている、そして 溜息を吐いている、
facciamoci avanti,前に 進もう、
placato mi par.私には 彼は 和らげられたと 思われる。

POETA詩人
D'intorno vi gira,彼女は あなたの 周りを 歩き回っている、
vi guarda, e sospira,彼女は あなたを 見ている、そして 溜息を吐いている、
via fatevi avanti,さあ 前に 進みなさい、
pentita mi par.私には 彼女は 後悔したように 思われる。

GERONIOジェローニオ
D'intorno mi gira,彼女は 私の 周りを 歩き回っている、
mi guarda, e sospira,彼女は 私を 見ている、そして 溜息を吐いている、
facciamoci avanti,前に 進もう、
pentita mi par.私には 彼女は 後悔したように 思われる。
Cara vite....愛する ブドウの木よ…

FIORILLAフィオリッラ
Olmo diletto....最愛の ニレの木よ…

POETA詩人
Oh che bella allegoria!ああ なんと 素晴らしい 寓喩だ!

GERONIOジェローニオ
Al mio tronco...私の 幹に…

FIORILLAフィオリッラ
All'ombra mia...私の【木】陰に…
tu potresti ritornar.君は 帰ることが できるだろう。

POETA詩人
Il final non può sbagliar.幕切れは 失敗する はずがない。

FIORILLAフィオリッラ
Torna sì fra queste braccia,戻りなさい そうだ この 腕の 中に、
olmo caro, a verdeggiar.いとしい ニレの木よ、青々としに。

GERONIOジェローニオ
Torna sì fra queste braccia,戻りなさい そうだ この 腕の 中に
cara vite, a verdeggiar.いとしい ブドウの木よ、青々としに。

POETA詩人
Bravi sì, buon prò vi faccia!いいぞ そうだ、
Nulla al dramma può mancar.劇には 何も 欠けている はずがない。
緩 / 急 / 幕切れの唱和 のフィナーレ。
緩。

Son la vite sul campo appassita,
ヨーロッパではブドウとニレは夫婦の良縁の象徴になっている。ブドウは蔓植物なので栽培に当たっては支えが必要なのだが、かつてヨーロッパではブドウの木とニレの木を並べて植えて、ニレの枝を横に伸ばしてそこにブドウが絡むようにして育てた。オウィディウス 紀元前43―紀元後17か18年 による ニレはブドウを愛し、ブドウはニレを見捨てない。 ulmus amat vitem, vitis non deserit ulmum. という有名な言葉が知られている。ここでも、夫婦がお互い支え合うことが肝要 と説いている。

Allegro vivace
2/4
C major
SCENA ULTIMA最終場
(Selim, Zaida, Coro di Zingari, Zingare, e Turchi, indi Geronio, Fiorilla, e Poeta, che ritornano, in ultimo Narciso)(セリーム、ザイダ、ジプシー男たちの、ジプシー女たちの、トルコ男たちの 合唱、それから ジェローニオ、フィオリッラ、そして 最後に 詩人)

CORO合唱
Rida a voi sereno il Cielo,空が あなたたちに 晴れ晴れと 笑うように、
sian per voi tranquilli i venti,風が あなたたちに 穏やかで あるように、
e vi portino contentiそして それらが【= 風が】 あなたたちを 連れて行くように
nella patria a respirar.故郷で 息をするために。

SELIMセリーム
Cara Italia io t'abbandono,愛する イタリアよ 私は おまえから 離れる、
ma per sempre in cor t'avrò.しかし 私は 永遠に 心の中に おまえを 抱くだろう。
Che per te felice io sono,おまえの おかげで 私が 幸せで ある ことを、
ogni dì rammenterò.私は 毎日 覚えているだろう。

ZAIDAザイダ
Vien Fiorilla. Già con leiフィオリッラが 来る。もう 彼女と
Don Geronio ha fatto pace.ドン・ジェローニオは 和解した。

POETA詩人
(Ecco il Turco... non vorrei...(そらここに トルコ男が… 私は 望まないのだが…
quest'incontro mi dispiace.)この 遭遇は 私には 気に入らない。)

FIORILLAフィオリッラ
(piano a Geronio)(ジェローニオに 小声で)
Non lo posso più vedere.私は もう 彼を 見られない。

GERONIOジェローニオ
(piano a Fiorilla)(フィオリッラに 小声で)
Un saluto per dovere...義務として 挨拶を…
poi va ben piantarli qua.それから ここで 彼らを 捨てて 結構だ【≒ 社交辞令で 挨拶をしたら ここで 彼らから 離れて かまわない】。

ZAIDA E SELIMザイダ と セリーム
(appressandosi)(近づいて)
Perdonate i nostri errori.私たちの 過ちを 容赦しなさい。

FIORILLA E GERONIOフィオリッラ と ジェローニオ
Perdonati già vi sono.あなたたちは もう 容赦されている。

NARCISOナルチーゾ
Permettetemi signori,私を 許しなさい 貴君たちよ、
che vi chieda anch'io perdono!私 も あなたたちに 赦免を 求める ことを!
Ah l'esempio, che mi dateああ 手本が、それを あなたたちが 私に 与えている
ben correggermi saprà.私を 十分に 正すことが できるだろう。

POETA詩人
È l'intreccio terminato,もつれは 終わった、
lieto fine ha il dramma mio.私の 劇は ハッピーエンドを 手に入れている。
E contento qual son ioそして 私が 満足に なるように
forse il pubblico sarà.おそらく 観客は【満足に】 なるだろう。
急。

Allegro spiritoso
3/8
C major
FIORILLA, ZAIDA, NARCISO, ALBAZAR, POETA, GERONIO, SELIM E COROフィオリッラ、ザイダ、ナルチーゾ、アルバザール、詩人、ジェローニオ、セリーム と 合唱-
Restate contenti:満足した ままでいなさい:
felici vivete,幸せに 行きなさい、
e a tutti apprendeteそして 皆に 教えなさい
che lieve è l'error,過ちは 取るに足らない と、
se sorge da quelloもし それが 生じた のならば あの
più bello l'amor.最も 素晴らしい 愛【↑】から。
(Intanto Selim, e Zaida salutati dagli altri, e corteggiati dai Zingari si vedranno appressare alla marina per imbarcarsi: in questo tempo cala il Sipario)(そうしている間に セリームは、そして ザイダは 他の人たちから 挨拶されて、そして ジプシーたちから 取り巻かれて 乗船するために 海に 近づくのが 見られるだろう: この 時点で 緞帳が 下りる)
幕切れの唱和。

e a tutti apprendete
この apprendere は 教える。

APPENDICI
Roma 1815
Cavatina Fiorilla
N. 3-ia
Cavatina Fiorilla

Fiorilla
Allegro
4/4
E-flat major
SCENA Ⅴ第5場

FIORILLAフィオリッラ
Presto amiche,急いで 友の女たちよ、
a spasso, a spasso,気晴らしに、気晴らしに、
le fresch'aure爽やかな そよ風を
a respirar:吸いに:
cento amanti,千の 恋人たちを
i più galanti,この上なく 洒落た男たちを
vo' quest'oggi私は 今日
conquistar.惚れ込ませ【↑】たい【≒ 私は 今日 たくさんの 色男たちの、この上なく 洒落た男たちの 心を奪い たい】。
Sì, son volubile,そうだ、私は 気が変わりやすい、
son capricciosa,私は 移り気だ、
non sento repliche,私は 反論を 聞かない、
non sento critiche,私は 批判を 聞かない、
vo' divertirmi,私は 楽しみたい、
voglio goder.私は 心から喜びたい。
Viva l'amore愛 万歳
viva il bel tempo,気ままな暮らし 万歳、
viva la moda,流行 万歳、
viva il piacer.喜び 万歳。
1815年 ローマ稿で、第3番-i フィオリッラのカヴァティーナ を差替えた新しいカヴァティーナ。単一構成だが、緩やかに前半と後半に分かれる。

a spasso, a spasso,
spasso には 散歩 の意味もあり(当然 気晴らし の行為である)、フィオリッラはセリームに対して Vo' passeggiando un poco. 私は 少しばかり 散歩をし たい。 と言っているので、この spasso は 散歩 かもしれないが、ここでは 気晴らし で訳す。

viva il bel tempo,
この bel tempo は buon tempo, buontempo と同義、気ままな暮らし。

Recitativo, Cavatina Narciso (N. 3bis) e Recitativo
[Recitativo] Dopo il Duettino
(N. 3-ii)

4/4
(C major)
SCENA Ⅶ第7場

POETA詩人
Della zingara amante【セリームを】 愛している ジプシー女の
non è buffo il carattere,役どころは 滑稽では なく、
ma bello e interessante. È teatrale気高く そして 関心を引く。劇らしい
il principio dell'opera,オペラの 始まりは【≒ オペラの 冒頭は 劇に向いている】、
ma non ci vedo intreccio naturale.しかし そこに 自然な もつれを 私は 見ない。
Pensiamo di scoprir qualch'altra cosa.何か 別の ことを 見つけることについて 考えよう。
Chi sa? potrei trovare誰が 知っているのか? 見つけ られるだろうに
materia tal che colpo possa fare.強く印象付けることが できる ほどの 題材を。
(parte)(去る)
1815年 ローマ稿における 第3番 フィオリッラのカヴァティーナ、合唱、セリームのカヴァティーナ と 小二重唱 の後のレチタティーヴォ。新たに挿入された 第3番bis ナルチーゾのカヴァティーナに続く。

materia tal che colpo possa fare.
fare colpo 強く印象付ける。

N. 3bis
Cavatina Narciso

Narciso
Allegro
4/4
B-flat major
NARCISOナルチーゾ
Un vago sembiante美しい 顔が
di gioia m'accende;喜びで 私を 燃え上せる;
un'alma incostante気紛れな 魂が
tremare mi fa:私を 動揺 させる;
e intanto quest'alma,そして そうしている間に この魂は、
fra gioia e timore,喜びと 不安の 間で、
perduta ha la calma,平静を 失った、
sol vive al dolore,それは【= 魂は】 ただ 苦悩に だけ 生きて、
delira, sospira,錯乱して、溜め息をついて、
più pace non ha.もはや 平安を 有して いない。
1815年 ローマ稿で新たに挿入されたナルチーゾの単一構成のカヴァティーナ。

[Recitativo Dopo la Cavatina di Narciso (N. 3bis)]

4/4
(C major)
SCENA Ⅶ第7場

NARCISOナルチーゾ
Di fiorilla il carattereフィオリッラの 性格を
ah pur troppo io pavento! Ella talvoltaああ 残念ながら 私は 恐れている! 彼女は 時には
sembra fedele amante,誠実な 恋人に 見える、
ma poi si suol cangiare in un istante.しかし それから それは 一瞬で 変わるのが 常だ。

POETA詩人
(Non ho trovato nulla che mi faccia...)(私は 何も 見つけて いない それは 私に )

NARCISOナルチーゾ
Poeta!詩人よ!

POETA詩人
Don Narドン・ナルチーゾよ!
1815年 ローマ稿で新たに挿入された 第3番bis ナルチーゾのカヴァティーナ の後のレチタティーヴォ。この後 本来のレチタティーヴォの対応する箇所に戻る。

Recitativo per saltare il Coro e Cavatina Fiorilla (N. 9) e il Duetto Fiorilla-Selim (N. 10)
[Recitativo] Dopo il Duetto(N. 8)

4/4
(C major)
SCENA Ⅲ第3場
Poeta, e Germano, poi Narciso詩人、そして ジェルマーノ、それから ナルチーゾ

POETA詩人
Ma bravi, ma bravissimi!まったく 素晴らしい、まったく この上なく素晴らしい!
buono che ho saputo tutto!私が すべてを 知ったのは 幸いだ!
La cosa va per Bacco a meraviglia!事は なんとまあ 申し分なく 進んでいる!
Un rapimento! Diavolo!誘拐だと! なんてことだ!
L'intreccio del mio dramma divien d'opera seria;私の 劇の もつれが オペラセリアの【もつれ】に なっている;
oh non v'è dubbio! Certo:ああ 疑いは ない! 確実だ:
fughe, schiamazzi, chi corre, chi si lagna,逃亡、騒ぎ、走る者、嘆く者、
il servente tradito, il povero marito.裏切られた 愛人、哀れな 夫。
Oh appunto voi... ma zitto in carità...ああ ちょうど あなたが… しかし 私は 親切で 意見を述べない…
sentite.聞きなさい。

GERONIOジェローニオ
Cosa c'è?なにが あるのか?

POETA詩人
Gran novità.重要な 新しい情報だ。
1815年 ローマ稿では、第8番 ドン・ジェローニオとセリームの二重唱の後、その後のレチタティーヴォ、第9番 合唱 とその後のレチタティーヴォ、第10番 フィオリッラとセリームの二重唱 が外され、第8番 二重唱の後にこの新たなレチタティーヴォを挿入し、そして 第10番 二重唱 の後のレチタティーヴォの途中の該当箇所に続く。

il servente tradito, il povero marito.
この servante は cavalier servante 扈従 こしょう/ こじゅう の騎士 の cavaliere が省略されたもの。既婚貴婦人の愛人。ナルチーゾのこと。第3番の後のレチタティーヴォの傍注も参照に。

Oh appunto voi... ma zitto in carità...
ma zitto in carità... の部分は独白。

Recitativo ed Aria Geronio
[Recitativo] Dopo l'Aria Narciso (N. 11)

4/4
(C major)
SCENA Ⅳ第5場
Geronioジェローニオ

GERONIOジェローニオ
Oh sorte deplorabile! oh destino!ああ 哀れな 運命よ! ああ 運命よ!
dove mai riducestiおまえは いったい どこに 落ちぶれさせたのだ
un povero disgraziato哀れな 不幸な
marito disperato!絶望した 夫を!
Dover per tutto il ghettoユダヤ人街中を
correre a suo dispetto:彼の立場を無視して【≒ 夫だなんて 関係なく】 走ら【↑】なくてはならない:
cercar abiti a nolo, caricarsi貸 衣装を 探さ【↑↑】なくてはならない、自らに 背負わせ【↑↑】なくてはならない【≒ 自分で 背負わなくてはならない】
quell'asino da soma,荷物運びの ロバの ように、
diventar Kaimacan contra sue voglie.彼の 意に反して カイマカンに なら【↑↑↑↑】なくてはならない。
E perché? per quel diavol di mia moglie!それで なぜ? あの 私の 妻という 悪魔の ために!
Ma che moglie è la mia!だが 私のものは なんという 妻だ【≒ 私の 妻は どんな 妻だ】!
Cospetto, è un satanassoこれは驚いた、彼女は サタンだ
in carne, e in ossa: ah più ci studio sopra,肉において、そして 骨において【≒ 彼女は 人間の姿をした 悪魔の長だ】: ああ 私が それについて 上に 学ぶ ほどに【≒ 私が 彼女にことを 知ろうとすればするほど】、
sempre meno l'intendo.いつでも より少なく 彼女を 理解する【≒ いつだって 彼女が ますます 分からなくなる】。
Ah chi mi aiuta, con stil, com'io vorrei,ああ 誰が 私を 手助けするのか、私が 望むように、
robusto e forte,逞しい そして 力強い【↑】やり方で
tutti i pregi spiegar di mia consorte?私の 配偶者の すべての 長所を 説明することを【≒ 私が望むように、しっかりとした そして 力強い やり方で 私が 私の妻の あらゆる 長所を 説明できるように 誰が 手助けしてくれるというのか?】?
1815年ローマ稿で新たに挿入されたジェロ―ニオのアリア の前のレチタティーヴォ。

in carne, e in ossa: ah più ci studio sopra,
in carne, e in ossa 皮においては―だが 肉と骨においては… つまり 表面は―だが中身は… という表現だと思われる。見た目は美女だが中身はサタンだ という意味。
N. 11bis
Aria Geronio

D. Geronio
Allegretto
6/8
D major
GERONIOジェローニオ
Se ho da dirla avrei molto piacereもし 私が 言わなければ ならないであろう ならば【≒ 実を言うと】 私は とても 嬉しい だろう
a mia moglie di fare il ritratto;私の妻の 肖像画を 描く ことは;
ma se sopra vi faccio un pensiere,しかし 私が それについて 考えを 上に する 時【≒ しかし 私が そのことについて 考え過ぎると】
resto incerto... né so cosa far.私は 自信がない ままである… 何をすれば【よいのか】 も 分からない。
S'è pettegola oimè che malanno!もし 彼女が 中傷家の女ならば 悲しいかな なんという 不幸だ!
S'è volubile oimè che flagello!もし 彼女が 気が変わりやすけ れば 悲しいかな なんという 災いだ!
S'è capricciosa oimè che martello!もし 彼女が 移り気ならば 悲しいかな なんという 苦しみだ!
Oh per Bacco il ritratto a mia moglieああ なんとまあ 私の妻の 肖像画の
non mi fido nemmen d'abbozzar.下絵を描くこと すら 私は 自信がない。
1815年ローマ稿で新たに挿入されたジェロ―ニオのアリア。

Se ho da dirla avrei molto piacere
この la は漠然とした、ほとんど意味のない そのことを。Se ho da dirla avrei で 実を言うと,ここだけの話だが のような意味合い。

ma se sopra vi faccio un pensiere,
この sopra は 超過して のような意味合い。

(Allegretto)
2/2
D major
Cappellini, e cappelloni小さな帽子、そして 大きな帽子
scuffiettini, e scufiettoni,小さな ボンネット、そして 大きな ボンネット、
la carrozza alla bombé,丸型の四輪馬車、
li cavalli alla scudé,騎士風の馬々、
il ventaglio, il ventaglino,扇子、小さな 扇子、
piume bianche, piume nere,白い 羽根、黒い 羽根、
perrucchini, e perrucconi,小さい 鬘 かつら、そして 大きい 鬘、
ricciottini, e ricciottelli,軽い 巻き毛、そして 細かい 巻き毛、
conciature con capelli,ヘアセット、
al teatro, al ballo, al gioco,芝居に、舞踏会に、賭博【場】に、
la trottata, la campagna,駆け足、田舎
l'accademia, la commedia,学会、喜劇、
la farsetta, la tragedia,小笑劇、悲劇、
l'accademia, la commedia...学会、喜劇…
Ah Geronio di rabbia, d'inedia,ああ ジェローニオよ 怒りで、倦怠で【≒ うんざりして】、
in tal caso ti tocca a crepar.そのような 場合には おまえが くたばる 番だ。
scuffiettini, e scufiettoni,
scuffia = cuffia ボンネット。この場合は顎の下に紐を通すタイプのつばのない頭にぴったりとした帽子、頭巾帽 だと思われる。

la carrozza alla bombé,
bombé(フランス語の bombe に由来)は、昔の爆弾のように丸く膨らんだ形をした屋根付き、4席の四輪馬車。《ラ・チェネレントラ》第2幕 第11番 ダンディーニとマニーフィコの二重唱にも用いられている。

li cavalli alla scudé,
scudé は、インターネット上で閲覧できる DIZIONARIO PIEMONTESE ITALIANO, LATINO E FRANCESE 1830 VOLUME Ⅱ によると persona nobile, che serve in Corte a' Principi 貴人、その者は 宮廷で 君主たちに仕える とあり、おそらく scudiero 従者 と同義だろう。さて伊和辞典の scudiero の項には alla scudiera で 騎士風の,狩猟用の という意味が載っている。ここではそれに基づいて 騎士風の馬々 と訳す。おそらく 騎士が乗るような馬たち という意味ではないだろうか。

perrucchini, e perrucconi,
perucca = parrucca 鬘。

ricciottini, e ricciottelli,
他と違い、-ino と -ello はどちらも縮小語尾である。

conciature con capelli,
この conciatura は acconciatura と同義、髪を結うこと,セット。acconciature con capelli で ヘアセット の意味。

la trottata, la campagna,
trottata には 馬の速歩 と 人の速歩 すなわち 駆け足 の意味がある(もう一つ 勤勉な労働 の意味もあるがここには合わない)。ここでは後者で採る。


6/8
Dmajor
Che non possa trovarsene una,彼女は それらの【短所の】 一つを 自らに 見い出すことが できない、
ch'abbian tutte la loro magagna...すべての女たちが 彼女たちの 短所を 持っている にもかかわらず【≒ 女は皆 短所が あるもの なのに しかし うちの嫁は 自らに 一つの短所も 認めることが できない】…
Che non possa trovarsene una,
このChe + 接続法現在 の節は、Credo che... のような主節が省略されたものと理解した。
この ne は di quelle (magagne)、つまり上記の短所の― で una に繋がると理解した。

ch'abbian tutte la loro magagna...
この che + 接続法現在 は譲歩節と理解した。che は benché と同義。

Allegro con brio
6/8
D major
Ah! se nel mondo non vò della luna,ああ! もし 私が 月の 世界で【↓】見つけ ようと しないならば、
qui davver non la so ritrovar.ここでは 本当に彼女を 見つける 術を知らない【≒ 私が 月の世界で 見つけ ようとしないければ、地球上では 本当に あんな女を 見つけることは できない ≒ あんな女は 月でもなければ 見つかるまい】。
Allegro
2/2
D major
Cappellini, e cappelloni小さな帽子、そして 大きな帽子
scuffiettini, e scufiettoni,小さな ボンネット、そして 大きな ボンネット、
la carrozza alla bombé,丸型の四輪馬車、
li cavalli alla scudé,騎士風の馬々、
il ventaglio, il ventaglino,扇子、小さな 扇子、
piume bianche, piume nere,白い 羽根、黒い 羽根、
perrucchini, e perrucconi,小さい 鬘 かつら、そして 大きい 鬘、
ricciottini, e ricciottelli,軽い 巻き毛、そして 細かい 巻き毛、
conciature con capelli,ヘアセット、
al teatro, al gioco, al ballo,芝居に、賭博【場】に、舞踏会に、
la trottata, la campagna,駆け足、田舎
l'accademia, la commedia,学会、喜劇、
la farsetta, la tragedia...小笑劇、悲劇…
al teatro, al gioco, al ballo,
al ballo と al gioco の順番が入れ替わっている。


6/8
Dmajor
Che non possa trovarsene una,彼女は それらの【短所の】 一つを 自らに 見い出すことが できない、
ch'abbian tutte la loro magagna...すべての女たちは 彼女たちの 短所を 持っている にもかかわらず【≒ 女には皆 彼女たちの 短所が あるもの なのだが しかし 妻は 自らに 上記のような短所の 一つも 見出すことが できない】…
Primo Tempo
6/8
D major
Ah! se nel mondo non vò della luna,ああ! もし 私が 月の 世界で【↓】見つけ ようと しないならば、
qui davver non la so ritrovar.ここでは 本当に彼女を 見つける 術を知らない【≒ 私が 月の世界で 見つけ ようとしないければ、地球上では 本当に あんな女を 見つけることは できない ≒ あんな女は 月でもなければ 見つかるまい】。
[Aria di Fiorilla con cabaletta modificata]
N. 15a
[Aria di Fiorilla con cabaletta modificata]
(Allegro)
4/4
D major
FIORILLAフィオリッラ
L'infelice, che opprime sventura,不幸な者は、その者を 不運が 圧迫する、
più sostegno, conforto non ha.もはや 支援を、慰めを 有しない。

CORO合唱
Chi rovina a se stesso procura自分自身に 破滅を もたらす 者は
solo accusi la sua cecità.ただ その 無思慮を 非難するがいい。

FIORILLAフィオリッラ
Caro padre, madre amata,愛する 父よ、愛する母よ、
quale affanno sentirete,どのような 苦悩を あなたたちは 感じるだろうか、
quando sola, e disprezzata【↓】あなたたちが 再び見るであろう 時に 一人の、そして 嘲笑された
vostra figlia rivedreteあなたたちの 娘が
far ritorno sconsolata失意の 帰還を するのを
all'antica povertà?以前の 貧困に【≒ 一人で、そして 嘲笑された あなたたちの 娘が 悲嘆に暮れて かつての 貧困に 戻って来るのを あなたたちが 再び見る時 あなたたちは どれほど 悲しむだろうか】?

(Fiorilla parte da un lato, seguita dai servitori, che portano le robe; le Maschere dall'altro)(フィオリッラは 一方の側から 去る、召使いたちに ついて来られて、その者たちは 物々を 運ぶ; 仮面をつけた人たちは 別の【側から 去る】)
ローマ稿でのフィオリッラのアリアのカバレッタの別稿(ロッシーニ自身の手によるものかは分かっていない)。詩人の歌が無くなっているが、その他の歌詞は同じ。なお今日ではこれを採用する場合でも後半のみ差替えることが一般的。

参考資料

GIOACHINO ROSSINI IL TURCO IN ITALIA a cura di Margaret Bent, Riduzione per canto e pianoforte / FONDAZIONE ROSSINI PESARO / 1978, 1988, 2000

ROSSINI IL TURCO IN ITALIA / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy /

ROSSINI IL TURCO IN ITALIA / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy / 2007

ROSSINI IL TURCO IN ITALIA / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy / 2016

GIOACHINO ROSSINI LETTERE E DOCUMENTI VOLUME Ⅰ / FONDAZIONE ROSSINI PESARO / 1992

GIOACHINO ROSSINI LETTERE E DOCUMENTI VOLUME Ⅲa / FONDAZIONE ROSSINI PESARO / 2004

Dizionario Rossiniano / Eduardo Rescigno / Biblioteca Universale Rizzoli / 2002 / ISBN 88-17-12894-5 / 9788817128940


Selimbasso
D. Fiorillasoprano
D. Geroniobasso
D. Narcisotenore
Prosdocimo (Poeta)basso
Zaidamezzosoprano
Albazartenore











Blu-ray Disc
762604
814337016982

SelimErwin Schrottbasso
D. FiorillaOlga Peretyatkosoprano
D. GeronioNicola Alaimobasso
D. NarcisoRene Barberatenore
Prosdocimo (Poeta)Pietro Spagnolibasso
ZaidaCecilia Molinarimezzosoprano
AlbazarPietro Adaínitenore

Coro del Teatro della Fortuna M. Agostin
Maestro del CoroMirca Rosciani

Orchestra Filarmonica Gioachino Rossini
DirettoreSperanza Scappucci

Regia e SceneDavide Livermore
VideodesignD-WOK
CostumiGianluca Falaschi
Progetto luciNicolas Bovey

Teatro Rossini, Pesaro, Italy
2016

ロッシーニ・オペラ・フェスティヴァル ROF の2016年公演の収録。公演記録。2016年8月9、12、15、18日の4公演。
第1幕 第3bis番 ナルチーゾの追加カヴァティーナ Un vago sembiante と第2幕 第11bis番 ジェローニオの追加アリア N. 11bis Se ho da dirla avrei molto piacere を採用。また第15番 フィオリッラのアリア のカバレッタ L'infelice, che opprime sventura, の後半はローマ稿に差し替え。

DVD
BONGIOVANNI
AB 20019
8006078200191

SelimLorenzo Regazzobasso
D. FiorillaSilvia Dalla Benettasoprano
D. GeronioFrancesco Moracebasso
D. NarcisoDaniele Zanfardinotenore
Prosdocimo (Poeta)Giulio Mastrototarobasso
ZaidaConcetta D'Alessandromezzosoprano
TalindaMaria Pia Molinari
NarbutMatteo Marchetta

Coro Dodecantus
Maestro del coroMarina Malavasi

Orchestra di Padova e del Veneto
Maestro concertatore e direttore d'orchestraGiovanni Battista Rigon

RegiaFrancesco Micheli
Allestimento,
scene
e costumi
Maria Paola di Francesco
Maya Angeli
Giulia Mio
Valentina Caterini
Risada Panavija


Teatro Olimpico, Vicenza, Italy
June 2009

2009年6月、パッラーディオ建築の有名なヴィチェンツァのオリンピコ劇場での公演の収録。公演記録。6月8、9、10日の3公演。ただし10日はセリーム役が ルイージ・デ・ドナート Luigi De Donato に交代。
1820年ナポリ稿を用いた上演。ただしナポリ稿は楽譜は消失しており、残された出版台本から復元されたものなので、1820年に上演されたとおりなのかは分からない。それでもレチタティーヴォでなく語り、ジェローニオはナポリ語で歌い話すという特徴は再現されている。


SelimSimone Alaimobasso
D. FiorillaMyrtò Papatanasiusoprano
D. GeronioBruno de Simonebasso
D. NarcisoAntonino Siragusatenore
Prosdocimo (Poeta)Vincenzo Taorminabasso
ZaidaAntonella Nappamezzosoprano
AlbazarFederico Lepretenore

Orchestra e Coro del Teatro Carlo Felice
ConductorJonathan Webb
Chorus MasterCiro Visco

Stage DirectorEgisto Marcucci
RestageElisabetta Courir
Set DesignEmanuele Luzzati
Costume DesignSantuzza Calì
LightingLuciano Novelli

Teatro Carlo Felice, Genova, Italy
2009

ジェノヴァ、カルロ・フェリーチェ劇場での公演の収録。ブックレットには収録日の詳細がない。また公演記録も公式なものはインターネット上に見つからないが、NONSOLOCINEMAというサイトのカルロ・フェリーチェ劇場の2008―2009年シーズンの案内によると、公演日は2009年1月20、23、25、28、30、31日。ただしカメラが明らかにオーケストラピット上にあることがあるので、公演日でない日の収録もあるかもしれない。
第1幕 第3bis番 ナルチーゾの追加カヴァティーナ Un vago sembiante を採用。第2幕 第12番 アルバザールのアリアは省略。


CD
DYNAMIC
CDS 566
8007144605667

DVD
NAXOS
2.110259
747313525959

SelimMarco Vincobasso
D. FiorillaAlessandra Marianellisoprano
D. GeronioAndrea Concettibasso
D. NarcisoFilippo Adamitenore
Prosdocimo (Poeta)Bruno Taddiabasso
ZaidaElena Belfioremezzosoprano
AlbazarDaniele Zanfardinotenore
Pražský komorní sbor / Prague Chamber Chorus
Maestro del CoroPavel Vanek

Orchestra Haydn di Bolzano e Trento
Antonello Allemandi

RegiaGuido De Monticelli
ScenePaolo Bregni
CostumiSantuzza Cali
LuciGuido Mariani

Teatro Rossini, Pesaro, Italy
15-18 August 2007 (CD)
18 August 2007 (DVD)

ロッシーニ・オペラ・フェスティヴァル ROF 2007年8月の公演の収録。公演記録。公演は8月9、12、15、18、21日の5公演、ロッシーニ劇場。CDの収録日DVDの収録日は8月18日。
アレッサンドラ・マリアネッリはこの時まだ21歳くらい、ヒロインに大抜擢だった。たしかに彼女は美しい声で、歌も役作りも丁寧に準備した様子も窺えるのだが、男を惹き付けるフィオリッラの色香の点でどうしてもまだ娘っぽさが強く、上演の核にはなれなかった。彼女が若いためか、他の歌手にもベテランはいない。最も素晴らしいのは詩人のブルーノ・タッディア。彼は2001年、この音楽祭の若者公演の《ランスへの旅》でデビューして6年のまだ新進だったが、詩人のエキセントリックな性格を巧みに歌い演じている。ジェロ―ニオのアンドレア・コンチェッティ 42歳 は上々ではあるが、残念なことにこのプロダクションの初回(2002年)では採用されたジェロ―ニオの追加アリアを歌っていない。ナルチーゾのフィリッポ・アダミ 27歳くらい は、技術的には及第だが、癖の強い声に好みが分かれるだろう。マルコ・ヴィンコ 30歳 のセリームも悪くないが、やや喜劇役よりのセリームになっている。
アントネッロ・アッレマンディの指揮は、時々かなり速いテンポを採るが、手際よくまとめている。
グイード・デ・モンティチェッリの演出は、穏健な舞台作りで特に強い特色があるわけでもないが、しかし総じて良く纏めている。

CD
8.660183-84
730099618328

SelimNatale De Carolisbasso
D. FiorillaMyrtò Papatanasiusoprano
D. GeronioMassimiliano Gagliardobaritone
D. NarcisoAmedeo Morettitenore
Prosdocimo (Poeta)Piero Guarnerabaritono
ZaidaDamiana Pintimezzosoprano
AlbazarDaniele Zanfardinotenore

Orchestra e Coro del Teatro Marrucino di Chieti
Marzio Conti
Chorus-masterFabrizio D'Orazio

Teatro Marrucino , Chieti, Italy
October 20036

DVD
ARTHAUS MUSIK
100369
807280036992

SelimRuggero Raimondibasso
D. FiorillaCecilia Bartolisoprano
D. GeronioPaolo Rumetzbaritono
D. NarcisoReinaldo Maciastenore
Prosdocimo (Poeta)Oliver Widmerbaritono
ZaidaJudith Schmidmezzosoprano
AlbazarValeri Tsarevtenore

Chorus and Supernumerary Association of the Zurich Opera Haouse
Corus MasterErnst Raffelberger

Orchestra of the Zurich Opera Haus
ConductorFranz Welser-Möst

Stage DirectorCesare Lievi
Set and Costume DesignTullio Pericoli
Opernhaus Zürich, Zürich, Switzerland
April 2002

チューリヒ歌劇場での公演の収録。DVDには映像にもパッケージにも収録日の情報がない。公式な公演記録もまったく残っていない。一応、OPERABASEでの検索では公演は4月28日、5月1,3,5,7,9,12日となっている(このサイトの情報はちょくちょく間違っているが)。STAGE+などこの映像を取り扱っているいくつかのサイトでは収録日を2002年4月28日としており、これは初日である。
第2幕 第12番 アルバザールのアリアは省略。第15番 フィオリッラのアリア のカバレッタ L'infelice, che opprime sventura, は前半を省略し、後半はローマ稿に差し替え、しかも珍しい音域の低い方を歌っている(したがって高い変ニ音は出さない)。


SelimMichele Pertusibasso
D. FiorillaCecilia Bartolisoprano
D. GeronioAlessandro Corbellibaritone
D. NarcisoRamón Vargastenore
Prosdocimo (Poeta)Roberto De Candiabaritono
ZaidaLaura Polverellimezzosoprano
AlbazarFrancesco Piccolitenore

Orchestra e coro del Teatro alla Scala di Milano Riccardo Chailly

Sala Verdi, Concervatorio di Musica "Giuseppe Verdi", Milano, Italy
7-18 July 1997

DECCAによる商業録音。1997年3、4月、スカラ座での公演を基に、フィオリッラをDECCAの看板アーティスト、チェチーリア・バルトリに変更するなど数人を入れ替えて7月に録音したもの。

第2幕 第11bis番 ジェローニオの追加アリア N. 11bis Se ho da dirla avrei molto piacere を採用。第2幕 第12番 アルバザールのアリアは省略。レチタティーヴォは多めに省略。

CD
PHILIPS
434-128-2

SelimSimone Alaimobass-baritone
D. FiorillaSumi Josoprano
D. GeronioEnrico Fissorebaritone
D. NarcisoRaul Gimeneztenore
Prosdocimo (Poeta)Alessandro Corbellibaritone
ZaidaSusan Mentzermezzosoprano
AlbazarPeter Brondertenore

Ambrosian Opera Chorus
Chorus MasterJohn McCarthy

Academy of St-Martin-in-the-Fields
Neville Marriner

St. John's, London, UK
August 1991

第1幕 第3bis番 ナルチーゾの追加カヴァティーナ Un vago sembiante を採用。第2幕 第12番 アルバザールのアリアは省略。レチタティーヴォにやや多めのカット。

CD
SONY CLASSICAL
S2K 37859

SelimSamuel Rameybasso
D. FiorillaMontserrat Caballésoprano
D. GeronioEnzo Darabasso
D. NarcisoErnesto Palaciotenore
Prosdocimo (Poeta)Leo Nuccibaritone
ZaidaJane Berbiesoprano
AlbazarPaolo Barbacinitenore

Ambrosian Opera Chorus
Chorus MasterJohn McCarthy

National Philharmonic Orchestra
Riccardo Chailly


EMI Studio, Abbey Road, London, UK
August 1981

クリティカルエディションを用いた初めての商業録音。
豪華な歌手が集められている。中でも詩人のレオ・ヌッチが美声と伸びやかな歌と巧みな演技力で特に秀でている。
第2幕 第15番 フィオリッラのアリア のカンタービレに Vi--de の採用あり。レチタティーヴォは多めに省略。
初出LPでは余白にカバリエの歌うフィオリッラの差替えアリア Presto amiche, が収録されていたが、CDでは省かれてしまった。

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