ROSSINI IL SIGNOR BRUSCHINO

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最新更新 2025年08月09日

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GIOACHINO ROSSINI

IL SIGNOR BRUSCHINO






初演 1813年1月27日 ヴェネツィア,サン・モイゼ劇場
First performance Venezia, Teatro San Moisè, 27 January 1813

台本 ジュゼッペ・フォッパ
Libretto Giuseppe Foppa

原作 アリサン・ドゥ・シャゼおよびE・T・モーリス・ウリ《思いがけない息子》(1809)
Original Le Fils par hasard, par ruse et folie by Alissan de Chazet and E.T.M. Ourry

《ブルスキーノ氏》は、ロッシーニがヴェネツィアのサン・モイゼ劇場に書いた一連のファルサの最後の作品である。この直後にロッシーニは、同じヴェネツィアの大劇場、フェニーチェ劇場で《タンクレーディ》を初演、大成功を収めて人気作曲家となる。したがって《ブルスキーノ氏》はロッシーニの初期作の最後のものと言ってもよいのだが、しかし物語が軽いだけで音楽はすでに非常に高度なもので、これを初期作と言ってよいものか迷うほどである。

作曲

まず前置きが長くなるが、ロッシーニとサン・モイゼ劇場およびその興行主アントーニオ・チェーラ Antonio Cera の関係を整理しておこう。

ロッシーニはまだ18歳の時の1810年11月3日、サン・モイゼ劇場で《結婚手形》を初演、興行オペラデビューを果たした。予定した新作オペラが飛んでしまったことから、一座のプリマドンナ ローザ・モランディ Rosa Morandi の推薦でチェ―ラが若いロッシーニを抜擢したとされる。これは12回の公演とまずまずの結果を残せた。
チェ―ラはロッシーニに次作を依頼、《幸せな間違い》は1812年1月8日に初演され、2月11日のシーズン終了までに14回、その年の春のシーズンで再演、さらには秋のシーズンにボローニャのコルソ劇場 Teatro del Corso で上演(その後も1828年ごろまで各地でしばしば上演された)という大成功を収めた。

ロッシーニの恩人ともいえるチェ―ラは彼の成功を喜び、《幸せな間違い》初日の翌日1月9日付でボローニャのロッシーニの母アンナに宛てて、《幸せな間違い》が序曲から幕切れまで観客を熱狂させたと報告、ロッシーニは「イタリアの誇りになるだろう sarà un ornamento dell'Italia」と書いている。
そしてチェ―ラは抜かりなくロッシーニと新作ファルサ3作の契約を結んだ。
これほどに良好な関係だったチェ―ラとロッシーニだったが、それから1年で関係は修復不可能なまでに悪化してしまった。

契約の3作の最初の作品、《絹のはしご》 は1812年5月9日に初演され、6月11日までに12回(あるいはもう数回多く)の公演があったので、一応成功ではあった。ロッシーニも母に大成功と手紙を送っている。しかし後ろの8公演は前述の《幸せな間違い》再演とのダブルビルで、つまり《絹のはしご》だけでは公演が長く持たなかったようである。それを裏付けるように《絹のはしご》は他都市の劇場ではまったく取り上げられなかった。

この年の秋、ロッシーニは初めて大都市(当時はフランス傀儡のイタリア王国の首都)ミラノの大劇場スカラ座のために新作オペラを書くこととなった。《試金石》は 1812年9月26日にスカラ座で初演、53回の公演という大成功を収めた。《試金石》は1820年代末まで各地で上演が催される人気作になった。
この大成功にはイタリア中の劇場が注目したことだろう。そして実際、ヴェネツィアの筆頭歌劇場ラ・フェニーチェ劇場からカーニヴァルシーズンの依頼、それもオペラ・セリアの依頼がが舞い込むこととなる。

さてロッシーニはミラノで《試金石》を制作している時に高熱を出してドクターストップをかけられ、《試金石》の初演のみならず、ヴェネツィア入りも遅れてしまった。
秋のシーズンが開幕してもロッシーニがヴェネツィアに戻ってこないことに、チェ―ラは激怒した。ロッシーニはヴェネツィアに戻った直後の1812年10月30日付で母アンナに宛てた手紙でこう述べている。

到着するや否や 興行主のチェーラが私に文句を言い、私が義務を果たせなかったことに対して すべての損害と費用を支払うように要求しました[…]
Appena arrivato l'Impresario Cera mi ha fatto una protesta e voleva che io pagasi tutti i danni e spese per aver mancato al mio dovere [...]
(GIOACHINO ROSSINI LETTERE E DOCUMENTI VOLUME Ⅲa / FONDAZIONE ROSSINI PESARO / 2004)


もちろんチェ―ラはミラノのロッシーニに催促していたに違いない。そこでロッシーニは先手を打ち、親しくなったイタリア王国の内務大臣ルイージ・ヴァッカーリ Luigi Vaccari 1766―1819 に病気による遅延証明書を認めてもらい、それを、チェ―ラではなく、ヴェネツィア政府に提出して事態を解決した。
この 頭越し の解決に間違いなくチェ―ラは憤慨したろう。また、既にシーズンは終盤に入っていたので、ロッシーニが大急ぎで【注】書き上げた《成り行き泥棒》は、5回(11月24、26、28日、12月1、3日)だけの公演に留まり、しかも不評だった。
加えて、《試金石》で大都市での大成功を収めたロッシーニが報酬の増額を願い出たという話もある。実際、サン・モイゼ劇場の報酬が微々たるものだったのは間違いない。

《成り行き泥棒》初日の10日前、アリドリア海の県の新聞 Giornale dipartimentale dell'Adriatico 紙が、ラ・フェニーチェ劇場のカーニヴァルシーズンにロッシーニが新作オペラセリアを発表すると予告した。
ロッシーニはまだサン・モイゼ劇場にファルサを1作書く契約があるので、これは小劇場のファルサ《ブルスキーノ氏》と大劇場のオペラセリア《タンクレーディ》が競合することを意味した。
今や人気オペラ作曲家となったロッシーニが、もうサン・モイゼ劇場との契約を更新しないのは間違いない。そして彼が2作のどちらに注力するかは明らかだった。

これら一連のことは、チェ―ラからすれば、ロッシーニが恩を仇で返しているように思われたのだろう。こうして《ブルスキーノ氏》初演の頃までには、ロッシーニとチェ―ラは完全に不仲になったようだ。

肝心の《ブルスキーノ氏》の作曲についてはほとんど情報がない。
唯一といってよいものは、1812年12月7日付でヴェネツィアからボローニャの母アンナに宛てた手紙で、ロッシーニはこう書いている。

すぐに 出発してください そして 私の失敗への不安が あなたを遅らせることのないように。私の意志にもかかわらず 私は 素晴らしい音楽を 作りました。
Partite subito e non vi faccia tardare il timore d'Un mio fiasco malgrado la mia volonta ho fatto della buona musica.


この手紙からすると、《ブルスキーノ氏》は1813年1月27日の初演より1か月以上前にはかなり出来上がっていたようである。おそらく11月24日の《成り行き泥棒》の初日の直後に着手し、約2週間ほどで書き上げてしまったのだろう。そして12月7日付で母親にすぐヴェネツィアに来るよう促しているので、《ブルスキーノ氏》の初演が本来はもっと早く予定されていたのかもしれない(ただし初演が何らかの理由で予定よりずれこむことはしょっちゅうあることである)。
おそらくロッシーニは、ファルサの《ブルスキーノ氏》を先に仕上げておいてから、オペラセリアの大作《タンクレーディ》にじっくり取り組もうとしたのだろう。これについてはこれ以上は分からないが、結果的には《ブルスキーノ氏》は《タンクレーディ》の僅か10日前に初演されることになった。

注 先の母宛ての手紙に 私は 15日でファルサを書くことを請け合った Io mi sono impegnato di scrivere la Farsa in quindici giorni とある。初演の新聞評では11日とある。

初演

《ブルスキーノ氏》の初演は、1813年1月27日、ヴェネツィア サン・モイゼ劇場で行われた。

ガウデンツィオ
Gaudenzio
ニコラ・デ・グレチス
Nicola De Grecis
バス
basso

ソフィア
Sofia
テオドリンダ・ポンティッジャ
Teodolinda Pontiggia 【注】
ソプラノ
soprano

父ブルスキーノ
Bruschino il padre
ルイージ・ラッファネッリ
Luigi Raffanelli
バス
basso

息子ブルスキーノ
Bruschino il figlio
ガエターノ・ダル・モンテ
Gaetano dell Monte
テノール
tenore

フロルヴィッレ
Florville
トンマーゾ・ベルティ
Tommaso Berti
テノール
tenore

警察分署長
Commisario di Plizia
ガエターの・ダル・モンテ
Gaetano del Monte
テノール
tenore

フィリベルト
Filiberto
ニコラ・タッチ
Nicola Tacci
バス
basso

マリアンナ
Marianna
カロリーナ・ナーゲル
Carolina Nagher
ソプラノ
soprano


注 クリティカルエディションの解説では Maria Pontiggia となっているが、初演の出版台本では Teodolinda Pontiggia となっている。

公演は、カルロ・コッチャ Carlo Coccia 1782―1873 《マティルデ Matilde》との二本立てだった。

ニコラ・デ・グレチスは1773年生まれとされる。最も古い出演記録は1796年のカーニヴァルシーズンにローマで催されたスポンティーニ《女たちの片意地》初演のブロントローネ伯爵。1802年以降ジェノヴァやトリノなど北イタリアの都市で活動。1805年3―6月にはミラノ、スカラ座に出演。その後はローマのヴァッレ劇場やフィレンツェのココメロ劇場などで歌った。彼も1810年秋にヴェネツィア、サン・モイゼ劇場に出演したばかりで、ここでロッシーニ《結婚手形》 1810 のスルック、《絹のはしご》 1812 のジェルマーノ、そして《ブルスキーノ氏》 1813 のガウデンツィオを創唱した。非常に多くのオペラの初演に参加しており、その中にはサヴェーリオ・メルカダンテの出世作《エリーザとクラウディオ》 1821 ミラノ スカラ座 でのトリコタツィ侯爵も含まれる。最後の出演記録は1826年、ローマ。

テオドリンダ・ポンティッジャンは、1812/13年のカーニヴァルシーズンにサン・モイゼ劇場に出演し、《ブルスキーノ氏》のソフィーアを創唱。その後1813年夏から1815年夏までほとんどナポリで活動、ここでジョヴァンニ・シモーネ・マイル《コリントスのメデア》初演 1813 のクレウザを創唱した他、多くのオペラの初演に出演した。ちなみにロッシーニがナポリに拠点を移したのは1815年秋で、彼女はナポリでロッシーニのオペラを歌うことはなかった。

ルイージ・ラッファネッリ 1752―1821 は、1790年代から引退する1815年まで極めて活発に活動したバッソ・ブッフォ。トスカーナのピストイアの生まれ。確認できる最初期の出演記録は 1774年のカーニヴァル・シーズンに生地のアッカデミア・デイ・リズヴェリアーティ劇場 Teatro dell'Accademia dei Risvegliati でのニッコロ・ピッチンニ《抽象的なもの L'astratto》のドン・ティモテオ。以降フィレンツェ、リヴォルノ、プラートなどトスカーナの諸都市で活動。さらに活動はイタリア各地に広がった。1789年、ラッファネッリはパリに移り、1792年までムッシュ劇場 Théâtre de Monsieur で絶大な人気を博した。イタリアに戻ってからはヴェネツィアを本拠地にしつつ、ローマやミラノ、あるいは中都市でも活動した。記録に残る最後の出演は1815年。その前年の1814年にスカラ座の舞台監督(演出家)に就任、この地で1821年に亡くなった。ラッファネッリは極めて卓越した歌役者だったと伝えられており、それは彼が様々なオペラの初演に出演していることからも理解できる。ロッシーニのオペラの初演では、いずれもサン・モイゼ劇場で、この《結婚手形》 1810 のトビア・ミル、《幸福な間違い》 1812 のタラボット、《ブルスキーノ氏》 1813 の父ブルスキーノ を歌った。《ブルスキーノ氏》初演時には60歳という当時としてはかなりの大ベテランだった。

トンマーゾ・ベルティについての情報は乏しい。記録に残る最古の出演は、1804年8月、ミラノ スカラ座。その後イタリア各地で歌った。1811年秋にはボローニャのコルソ劇場に出演、ここでロッシーニ《ひどい誤解》のエルマンノを創唱した。1812年のカーニヴァルシーズンからヴェネツィアノサン・モイゼ劇場を拠点とし、ここで《成り行き泥棒》 1813 のアルベルト伯爵、《ブルスキーノ氏》 1813 のフロルヴィッレ を創唱した。いずれの役も難易度は高くない。最後の出演記録は1815年、ナポリのカーニヴァルシーズン。

ガエターノ・デル・モンテは四半世紀近くの長きに渡り、主として脇役テノールとして活動した人物。記録に残る最古の出演は1808年カーニヴァルシーズンのアンコーナ。1811年のカーニヴァルシーズンからヴェネツィアを拠点とし、エレテーニオ劇場、サン・モイゼ劇場、サン・ベネデット劇場、サン・ルカ劇場で活動した。その後もフィレンツェなど各地の劇場で歌い、最後の出演記録は1832年10月のボローニャ、《泥棒かささぎ》のイザッコとピッポだった。サン・モイゼ劇場での《絹のはしご》初演 1812 のドルモント、《成り行き泥棒》 1812 のドン・エウゼービオ、《ブルスキーノ氏》 1813 の息子ブルスキーノと警察分署長を創唱した。

ニコラ・タッチは20年も長く活躍したバス。最古の出演記録は1809年夏、フィレンツェ。1812年5月、サン・モイゼ劇場での《絹のはしご》初演でブランザックを、さらに翌1813年に《ブルスキーノ氏》のフィリベルトを創唱。ジェノヴァ、トリノ、フィレンツェで活動した後、、1820年10月からローマを拠点とし、1824、ヴァッレ劇場でのドニゼッティ《当惑した家庭教師》初演で事実上のタイトルロール ドン・グレゴーリオを創唱。その後はパレルモなどで活動、最後の出演記録は1832年秋、フィレンツェ。

カロリーナ・ナーゲルは、《絹のはしご》初演 1812 のルチッラ、《成り行き泥棒》 1812 のエルネスティーナを創唱した。


初演は大失敗に終わった。
1月30日付の アリドリア海の県の新聞 紙に公演評が載った。評者はフォッパの台本を非難したうえで、ロッシーニの音楽についてこう述べている。

[…]どうして作曲家が 極めて実りのない序曲において[…] オーケストラの灯り皿を叩く音を取り入れることを 思いついたのか 理解不能である、この下劣な試みを 初日の晩は この上なく熟練した団員たちが 演奏するのを 拒否した。[…] 何ら効果のない導入に、プリマドンナとテノールの居心地の悪いカノン風の二重唱が続く; それから 同じテノールと 男声主役たちの一人【= フィリベルト】の二重唱、これは短いというだけが取り柄だ。デ・グレチス氏のカヴァティーナは いつもの彼の熟達で演じられ、熱烈な喝采を受けた; 三重唱は 大半において 想像力を繰り広げ 観客を楽しませたが、それ以外では 歌手の方がオーケストラとぶつかり合う 大きな混乱を引き起こすだけだった。ラッファネッリのアリアも、六重唱も 同様で、いたずらに母音唱法やシンコペーションを多用して まったくの混乱を招いている。コールアングレのオブリガートを伴ったプリマドンナのアリアは バラバラの歌、絶え間ないアルペッジョ、高音に留まるかと思ったら、急に低音に急降下する 非常に難しい抑揚、いつまでも続くシンコペーションを 提供するばかりだった。彼女と デ・グレチス氏の二重唱は うんざりする単調さだった; このファルサ全体で 楽器の扱いは 活気がなく 表情に乏しい; 特異なことに、フィナーレにおいて、他の箇所とは異なり、作曲家は 本当の息子ブルスキーノの後悔に没頭して、繰り返されるカデンツァで Padre mio... io... io... io... son pentito... tito... tito... tito... tito に、葬送行進曲を与えた。この不格好なごたまぜの全体を 知性ある観客は 明らかな不満の態度で迎えた; そして 【観客は】 卓越した才能を実証した者に対しては 喝采と激励を打ち込むことができるのと同じくらい、昨秋のファルサ【= 《成り行き泥棒》】の虚しさから 埋め合わせされることを 期待していた、それは たった8日間で書かかれたけれど、そして 残念な結果に終わった。[…]
[...] è incomprensibile come un Maestro s'immagini in una sterilissima Sinfonia [...] d'innestar la battuta delle pianelle de' lumi dell'orchestra, basso avvilimento, cui rifiutaronsi la prima sera i valentissimi professori che la compongono. [...] Ad un'introduzione di nessun effetto, succede un duetto a canone, in cui prima donna e tenore son posti fuori di centro; indi un duetto tra lo stesso tenore e uno dei primi ch'ha il solo pregio della brevità. La cavatina del sig. De Grecis eseguita coll'ordinaria sua maestria, riscosse vivi applausi; il terzetto che un vasto campo apre alla fantasia, e nel cui giocoso dilettavasi il pubblico, altro non risulto che un'ammasso di confusioni in cui le parti cantanti fan le pugna coll'istrumentale. Tale è non meno l'aria di Raffanelli, o sestetto, cui per gioco s'addossarono i vocalizzi e le sincopi, e che rissulto in un vero pasticcio. L'aria della prima donna coll'accompagnamento del corno inglese non offre che un canto spezzato, un arpeggio continuo, un'intuonazione difficilissima, ch'ora ferma negli acuti, or ne' bassi precipita; ed una sincope eterna. Il duetto tra dessa e il signor De Grecis d'una monotonia disgustosa; l'instrumentale in complesso di questa farsa languidissimo e di nessun colorito; e per singolarità, nel finale, punto dissimile dal resto, il maestro si occupo moltissimo del pentimento del vero Bruschino figlio, appiccicando con una ripetuta cadenza, alle parole Padre mio…io… io…io… son pentito…tito…tito…tito…tito, una marcia lugubre. Il totale di questo mostruosissimo impasto fu accolto da' luminosi segni di disapprovazione di un pubblico intelligente; e che quanto seppe profonder i plausi e gl'incoraggiamenti suoi a chi esterno saggi di genio distinto, altrettanto attendevasi d'esser risarcito dal vuoto della farsa del decorso autunno, voluta scriversi in soli otto giorni, e d'infelice riuscita; [...]


正直なところ、これは明らかに悪意のある評にしか思えない。
評者の本音は引用した箇所の終わりの方にある。評者も観客も、《成り行き泥棒》が期待外れだった虚しさを新作が埋め合わせてくれる期待していたのだが、それが満たされず、不満が爆発したとある。
これは《ブルスキーノ氏》だけのことでなく、《成り行き泥棒》から続いた不満が爆発したのだろう。これが失敗に終わったのは、ロッシーニがスカラ座での成功にかまけて、サン・モイゼ劇場を軽んじた(そうサン・モイゼ劇場の観客には見えた)からに違いない。観客のやっかみが失敗の大きな原因だと思われる。
そして《ブルスキーノ氏》では、同じヴェネツィアの大劇場 ラ・フェニーチェ劇場にかまけてというやっかみまでも加わって、ロッシーニに対する敵意が増大していた、としか考えようがない。

《ブルスキーノ氏》の初演は、この初日の1月27日の1公演しかなかったとされることが多い。ただし ミケーレ・ジラルディ Michele Girardi の Rossini a Venezia: le farse per il Teatro Giustiniani di San Moise では、1月29日にも公演があったとしている。たしかに30日付の新聞評に 初日の晩 la prima sera とわざわざ書いているのは、二日目の公演があったもしくは予定されていた可能性を示唆している。ただ実際のところは分からない。

いずれにせよ、《ブルスキーノ氏》は初演の後、ほぼ封印作になってしまった。


クリティカルエディションの解説には、ロッシーニの生前に催された2つの公演を挙げている。

1844年6月2日、ミラノ カノッビアーナ劇場 での公演。この時はレチタティーヴォ中心に多くの手が入ったという。

1857年12月29日には、パリ プブ・パリジャン劇場 で公演があった。これはジャック・オッフェンバックによって改編された形態での公演で、ロッシーニは、公演に干渉することはなかったが、協力したり立ち会ったりすることはなかった。

ロッシーニの没後では、1874年秋に トリノで上演があった。

いずれにしても《ブルスキーノ氏》の19世紀中での上演は極めて稀だった。


ところで、《ブルスキーノ氏》は名のみ知られ作品になってしまったことで、後年、信憑性に乏しい噂話の類がいくつも出回った。
19世紀のいくつかのロッシーニの評伝には、《ブルスキーノ氏》にまつわる逸話がいくつか紹介されている。
例えば、チェ―ラは作曲不可能なほどのひどい台本を作らせてロッシーニに渡したが、ロッシーニはチェ―ラの目論見を見抜き、台本に素晴らしい音楽を付けた、とか、彼はヴァイオリン奏者が弓で譜面台のロウソク立てを叩くという奇怪な指示を書いた、など。
実際に作品にあたってみれば、台本は原作を大幅に圧縮したのでぎこちないところは多々あるが、作曲不可能といった代物ではない、むしろファルサとしてはよく出来た方の台本であることは一目瞭然だ。
灯り置きを叩く奇怪な奏法は、実際ロッシーニがそう楽譜に書いているのだが、これも多くの文章で、《絹のはしご》序曲のことと勘違いして書いている。これも《ブルスキーノ氏》が幻の作品になっていたからである。
ちなみに、1812年春にローマのロッシーニがヴェネツィアのチェ―ラに送ったとされる手紙があるそうだが、これも《絹のはしご》と《ブルスキーノ氏》を取り違えたような文面で、これは偽造品だとみなされている。

こういった情報については、今日ではもはや触れる必要はないだろう。

20世紀以降の上演

20世紀になってすぐ、1901年5月にボローニャ コンタヴァッリ劇場で上演があった。ガウデンツィオが エルネスト・ラヴァレッロ Ernesto Lavarello、ソフィーアが マッダレーナ・ティッチ Maddalena Ticci、父ブルスキーノが ジュゼッペ・ピロッティ Giuseppe Pirotti、息子ブルスキーノが フィリッポ・ボスダーリ Filippo Bosdari、警察の代理人(旧版ではこの表記)は レオーネ・コンティ Leone Conti、フィリベルトが ルイージ・クリスポルティ Luigi Crispolti、マリアンナが アメーリア・ズガルツィ・ロンキ Amelia Sgarzi Ronchi。指揮は ガンディーノ・アドルフォ Gandino Adolfo。
この中では マッダレーナ・ティッチ 1874―? が比較的知られており、1896年から1911年まで中北イタリアを中心に活動した。1905年にはサンフランシスコ、1909年にはロンドンでも歌った。
マッダレーナ・ティッチは 1896年のジョルダーノ《アンドレア・シェニエ》初演でベルシを歌った。

その数年後にRICORDI社が出版台本を市販しているので、どこか(しかも複数)で上演があったとは思われるものの、具体的な時期や劇場などは確認できなかった。

確認できたのは、1932年12月9日に米国、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場での公演。これが米国初演とある。METの上演記録。ガウデンツィオが エツィオ・ピンツァ、父ブルスキーノが ジュゼッペ・デ・ルカ、指揮が トゥッリオ・セラフィン と豪華な面々だった。驚くべきはこれがリヒャルト・シュトラウス《エレクトラ》(直前の12月3日にMET初演したばかりだった)との二本立てだったことで、この組み合わせでさらに12月19、28日、1月12日と上演があり、さらに1月24日に場所をブルックリン・アカデミー・オヴ・ミュージックに移して、ルイス・グルーエンバーグ《皇帝ジョーンズ》との二本立てでもう1回公演があった。これ以降METでは《ブルスキーノ氏》の上演はない。

1951年にはRAIミラノが放送用に収録している。ガウデンツィオが セスト・ブルスカンティーニ Sesto Bruscantini、ソフィーアが アルダ・ノニ Alda Noni、父ブルスキーノが アフロ・ポーリ Afro Poli、息子ブルスキーノが トンマーゾ・ソレイ Tommaso Soley、フロルヴィッレが アントーニオ・スプルッツォーラ・ゾーラ Antonio Spruzzola Zola、警察の代理人が ジューリオ・スカリンチ Giulio Scarinci、フィリベルトが クリスティアーノ・ダラマンガス Christiano Dalamangas、マリアンナが フェルナンダ・カドーニ Fernanda Cadoni。指揮は、1945年から1952年までRAIミラノ交響楽団の首席指揮者を務めていた カルロ・マリア・ジュリーニ Carlo Maria Giulini。

1954年には米国の VOX社によって初の商業録音が行われた。ガウデンツィオが レナート・カペッキ Renato Capecchi、ソフィーアが エルダ・リベッティ Elda Ribetti、父ブルスキーノが カルメロ・マウジェーリ Carmelo Maugeri、息子ブルスキーノが カルロ・ロッシ Carlo Rossi、フロルヴィッレが ルイージ・ポンティッジャ Luigi Pontiggia、警察の代理人が ワルテル・タロッツィ Walter Tarozzi、フィリベルトが イーヴォ・ヴィンコ Ivo Vinco、マリアンナが クラウディア・カルビ Claudia Carbi。指揮が エンニオ・ジェレッリ Ennio Gerelli、ミラノ・フィルハーモニー管弦楽団 Milano Philharmonic Orchestra (出演者は初版LP PL.8460 の表記による)。

英国初演は、1960年7月14日、グレーターロンドンの南南東の町 オーピントンにて、ケント・オペラ Kentish Opera による公演。なおスコットランド初演は、1969年9月4日、エジンバラ、国王劇場。

日本初演は、 1971年12月22日、東京、第一生命ホールにおける東京室内歌劇場公演ではないかと思われるが、これより前に公演がなかったかどうかは確認できなかった。公演は12月22、23、24日の3回。メノッティ《アマールと夜の訪問者たち》とのダブルビル。公演詳細は 昭和音楽大学オペラ研究所オペラ情報センター で検索を。

20世紀の上演は不明な点が多く、細かく見て行くことは断念する。

1985年、アッリーゴ・ガッザニーガ Arrigo Gazzaniga 校訂のクリティカルエディションの初版が成立、この年のロッシーニ・オペラ・フェスティヴァル ROF で初の公演。公演記録、出演者などはリンク先を。

このプロダクションは好評だったようで、3年後の1988年に再演されている。公演記録、出演者などはリンク先を。この公演はライブ録音されてCDになった ⇒ 参考資料。

さらに1997年にも再演されている。公演記録、出演者などはリンク先を。

ROFでは、2012年(これは演出が不評だった)と2021年にそれぞれ異なるプロダクションで上演された。

あらすじ

全1幕
ガウデンツィオの館の広間。青年フロルヴィッレが、ガウデンツィオに後見されている娘ソフィーアを待っている。彼女の侍女マリアンナが悪い知らせがあることを仄めかす。ソフィーアが現れ、二人はしばし再会を喜ぶ。フロルヴィッレは彼女と結婚したいのだが、ソフィーアは、まだ会ったこともないブルスキーノという男との結婚話があることを明かす。憤るフロルヴィッレ。人の来る気配にソフィーアとマリアンナが家の中に戻ると、館のそばの宿屋の主人、フィリベルトがガウデンツィオ家の人を呼びに来る。フロルヴィッレが用件を尋ねると、宿に滞在しているプルスキーノという若者が金を使い果たして借金があるので、屋根裏部屋に閉じこめている、その若者が父親へ助けを求る手紙をガウデンツィオに渡すために来たのだ、と答える。フロルヴィルレは、閉じ込められているブルスキーノ青年がソフィーアの許婚だと気付き、これはいいチャンスだと、自分もブルスキーノ家の一員、青年ブルスキーノの従兄弟だと名を騙り、フィリベルトに借金の半分を支払い、残りの半分も払うがそれまでその青年を閉じこめておいてほしいとフィリベルトに頼み、そして自分が息子ブルスキーノに成りすますことにする。
ガウデンツィオは、ブルスキーノ氏の手紙(フロルヴィレが左手で書いた偽物)を読むと、息子ブルスキーノが愚行をして回っているので捕まえてほしいとの依頼で、人相書きも同封されていた。息子ブルスキーノに成りすましたフロルヴィッレが連れて来られ(先の手紙は彼が書いたものなので、人相書きもフロルヴィッレのもの)、しかし後悔の素振りを見せるので、ガウデンツィオは彼に同情を寄せる。
痛風を患っている父ブルスキーノが暑さをぼやきながら登場。彼は息子の愚行に立腹するも、ガウデンツィオにとりなされ、息子に会って話を聞くことにする。ところがやって来たのは見ず知らずの青年。これは誰だ、とブルスキーノが言えば、意地を張るな、とガウデンツィオが怒り、両者の罵り合いになってしまう。
思わぬ事態に、ガウデンツィオはソフィーアにブルスキーノ氏の説得を願う。彼女はブルスキーノ氏に、花婿を下さいと切々と頼みと同時に、そうでないなら罰が下りますと付け加えます。
ガウデンツィオの依頼でやって来た警察分署長は、息子ブルスキーノの手紙を筆跡鑑定する。ところがガウデンツィオが提出した手紙は元々本当の息子ブルスキーノが書いたものなので、警察分署長はフロルヴィッレを本物の息子と断定、間違っているのはブルスキーノの方だと結論付ける。激しく混乱するブルスキーノ。そこにフィリベルトがやって来て、救いの手だとブルスキーノは喜ぶが、しかし『借金をしている人』はフロルヴィッレ=偽息子ブルスキーノであり、また彼の名はブルスキーノだと証言、ついにブルスキーノは正気を失う寸前に至ってしまう。だがブルスキーノはフィリベルトから、本物の息子ブルスキーノは宿に監禁されており、ブルスキーノを名乗っている青年は彼の従兄(それも嘘)と知り、何か企みが隠されていることに気付く。
一方、ガウデンツィオはソフィーアがフィリベルト=偽の息子ブルスキーノを気に入ってると知り、結婚がどういうものかを彼女に説明する。
自分の息子に成りすました青年の正体を不思議がるブルスキーノだったが、当のフロルヴィッレの独白から、彼がガウデンツィオのかつての政敵の息子だということを知る。するとプルスキーノはこれを利用してガウデンツィオに仕返しをすることを思いつく。彼はガウデンツィオに、偽息子が本当の息子だと認め、ソフィーアと結婚をさせる。そこへフィリベルトが本当の息子ブルスキーノを連れて来るので、今度はガウデンツィオが混乱する。ブルスキーノにフロルヴィッレの正体を明かされたガウデンツィオは、ソフィーアが仇敵の息子と結婚してしまったことに激怒する。しかしプルスキーノにたしなめられ、結局二人の結婚を認め、めでたし。

対訳付き音楽設計図

登場人物

ガウデンツィオ
Gaudenzio,
[ソフィーアの]後見人
tutore
バス
basso

ソフィーア
Sofia
ソプラノ
soprano

父ブルスキーノ
Bruschino il padre
バス
basso

息子ブルスキーノ
Bruschino il figlio
テノール
tenore

フロルヴィッレ
Florville,
ソフィーアの恋人
amante di Sofia
テノール
tenore

警察分署長
Commisario di Plizia
テノール
tenore

フィリベルト
Filiberto,
宿屋の主
locandiere
バス
basso

マリアンナ
Marianna,
[ソフィーアの]小間使い
cameriera
ソプラノ【注】
soprano


注 今日では一般的にメッゾソプラノが受け持つことが多い。

日本語訳は極力文学的色づけをしない直訳にしてある。
歌詞とト書きは、アッリーゴ・ガッザニーガ Arrigo Gazzaniga 校訂のクリティカルエディション総譜に記載されているものに従っている。

Sinfonia Allegro
2/2
D major

序奏を前に持った 展開部を欠いたソナタ形式。

序奏(とコーダを含め他4回)に取り入れられている第2ヴァイオリンの特殊な音については、楽曲解説を参照に。

N.1
Introduzione

Sofia
Marianna
Florville

Andante
6/8
G major
SCENA Ⅰ第1場
(Sala terrena che mette sul giardino immediatamente. Parco delizioso in distanza)(地面と同じ高さの【≒ 1階の】広間 それは庭に 直接 面している。遠くに 気持ちの良い大庭園)
(Florville dal parco, indi Marianna, poi Sofia, ambedue dalle stanze interne corrispondenti alla Sala)(大庭園からフロルヴィッレ、その次にマリアンナ、その後にソフィーア、二人とも 広間に通じている部屋から)

FLORVILLEフロルヴィッレ
Deh tu m'assisti amoreああ おまえ【= 愛の神】は 私を援助しなさい 愛の神よ
or che ritorno a lei.私が 彼女のところに戻っている今こそ。
Dona agli affetti miei私の情愛に 与えなさい
qual sospirai mercè.哀れみを それを 私は待ち望んだ【≒ 私の愛する気持ちに、かつて待望した【愛の神からの】情けを与えなさい】
Ma alcuno a me non vedo...しかし 私【の目】には 誰一人 私は見【え】ない…
Ah! un rio destin prevedo!ああ! 私は 悪意のある運命を 予見している。
Deh tu m'assisti amore / or che ritorno a lei.
amore を おまえ tu と呼びかけている命令文。この amore は頭文字が小文字だが、哀れみ mercè を授ける者なので、抽象的な 愛 や、あるいは 恋人 ではなく、愛の神と採るべき。

qual sospirai mercè.
この場合の sospirai < sospirare は、自動詞の 溜息をつく ではなく、他動詞の 待ち望む【溜息をつくほど思い願う】。ただし遠過去形なので、かつて待ち望んだ という意味になる。ここから、フロルヴィッレとソフィーアはある程度前に恋に落ちたが、その時は愛の神から哀れみがもたらされなかったことが理解できる。そして続くマリアンナとのやり取りから、その後に彼がソフィーアから離れなくてはならなくなり、ようやく戻ってきたことが察せられる。

Allegro
4/4
G major
(esce Marianna)(マリアンナが出て来る)

Marianna!..マリアンナ…

MARIANNAマリアンナ
Voi signore!あなた 貴君よ!

FLORVILLEフロルヴィッレ
V'è il nunzio mio arrivato?あなたに 私の通知【≒ 言伝】は届いたのか?

MARIANNAマリアンナ
Giunse, ma troppo tardi.それは届いた、しかしあまりも遅過ぎた。

FLORVILLEフロルヴィッレ
Tardi? che fu? Ch'è nato?遅い? 何だったのか【≒ 何があったのか】? 何が生じた【≒ 何がおきた】のか?

MARIANNAマリアンナ
Dalla padrona or ora主人の女【= マリアンナ】から まさに今
saprete i vostri guai.あなたは あなたの災難を知るだろう。
Il male è grande assai!不運は とても大きい!
Son quasi fuor di me!私は ほとんど 自制心を失っている【≒ 私は 危うく 冷静さを失うところだ】

FLORVILLEフロルヴィッレ
Ah tu tremar mi fai:ああ 君は 私を動揺させている:
son quasi fuor di me!私は ほとんど 自制心を失っている【≒ 私は 危うく 冷静さを失うところだ】

(Marianna rientra)(マリアンナは【部屋の中に】戻る)
Recitativo


4/4
G major
FLORVILLEフロルヴィッレ
Ferma... ascolta... che ad altri destinata止まりなさい… 聞きなさい… 他の人たちに
fosse Sofia! La sola idea di tantaソフィーアが 【↑】定められているのならば【≒ ソフィーアが 他の男と結婚することになっているとしたら】! たくさんの 【↓】宿命【≒ 不運】の 唯一の考えが
fatalità m'opprime!.. ogni momento私を圧迫する【≒ 途轍もない不幸を考えるだけで 私は苦しくなる】!… どの瞬間でも【≒ 絶えず】
cresce la mia impazienza... ella già viene...私の焦燥が増大している。
Ah diletta Sofia!..ああ いとしいソフィーアよ!…

(esce Sofia con Marianna che si mette osservando in disparte)(ソフィーアがマリアンナと共に出て来る その者は 身を置く 見守りながら 離れて【≒ マリアンナは 離れたところから見守る】)

SOFIAソフィーア
Florvil! mio bene!フロルヴィル! 私の恋人よ!


Andante
4/4
E-flat major
SOFIA E FLORVILLEソフィーアとフロルヴィッレ
Quant'è dolce a un'alma amante何と 甘美なことか 愛する者の魂には
riveder l'amato bene!最愛の恋人と再会することは!
D'un fedel sincero affetto誠実で 真摯な情愛で
più s'accende il vivo ardor.生き生きとした熱情は さらに多く点火する【≒ よりいっそう燃え上がる】
Si rammentano le pene苦悩が 思い出される
d'un'assenza tanto amara,大いに苦い【≒ あまりにつらい】不在の【苦悩が】
e l'immagine più caraそして 【↓】彼の恋人の 最もいとしい姿が
del suo ben si rende al cor.心に戻る。
SOFIAソフィーア
Son felice.私は 幸せだ。

FLORVILLEフロルヴィッレ
Son contento.私は 満足だ【≒ 嬉しい】

SOFIAソフィーア
Srai fido?君は 【これからも】誠実でいるだろうか?

FLORVILLEフロルヴィッレ
Ognor costante.いつでも 誠実だ。
A-B-A'の三部形式の二重唱。
《デメートリオとポリーヴィオ》第1幕のリジンガとシヴェーノの二重唱 Questo cor ti giura amore の再利用。
[Recitativo] Dop l'Introduzione

FLORVILLEフロルヴィッレ
A voi lieto ritornoあなたに 喜んで 私は戻っている
cara Sofia. L'odio del tutor vostro,いとしいソフィーアよ。あなたの後見人の憎しみは
morto di già mio padre, estinto è omai.私の父が もう 死んだので、今は消えた。
Chiedervi dunque io possoだから 私は あなたに求めることができる
in isposa e ottenervi...花嫁になることを【≒ あなたに 結婚を申し込むことができる】 そしてあなたを獲得することを…

SOFIAソフィーア
Ah! nol sperate.ああ! それを期待するな。

FLORVILLEフロルヴィッレ
E perché?それで どうして?

SOFIAソフィーア
Destinata io son per lettere私は 書状【≒ 契約書】によって 定められている
al figliuolo di certo息子に
signor Bruschino.ブルスキーノ氏 【↑】とかいう人の。

FLORVILLEフロルヴィッレ
O cieli! e lo vedeste?ああ 天よ! それで あなたは 彼に会ったのか?

SOFIAソフィーア
No, e il mio tutor nemmenoいいえ、しかも 私の後見人は
di persona il conosce. Esser dovea本人が直接に 彼を知り 【↑】さえもない【≒ 自身 彼を知りもしない】
arrivato costui. Ma, qual ei sia,その男は 到着した 【↑】はずである。しかし、彼がどんな者であれ、
serbo fida a voi sol quest'alma mia.この私の魂は あなただけに誠実なままでいる。

FLORVILLEフロルヴィッレ
E ciò mi basta. Troncherò a ogni pattoそして そのことは 私に十分である【≒ その言葉で 私は満足だ】。私は 断ち切るだろう どんな条件でも【≒ なんとしてでも】
il corso a tal contratto.そのような契約【≒ 結婚】への成り行きを。
Udite. Io per fortuna聞きなさい。私は 幸運にも
ignoto di persona個人的に 知られていない
sono al signor Gaudenzio tutor vostroあなたの後見人 ガウデンツィオ氏に
e ad ognun del Castello.そして 館の誰にも。

SOFIAソフィーア
È ver...それは 本当だ…

MARIANNAマリアンナ
Signori,貴君貴女よ、
vien qualcuno, rientriamo.誰かが来る、戻ろう。

FLORVILLEフロルヴィッレ
Ogni mio passo私のどんな歩みも
vi farò noto. Bastami che siate私は あなたに知らさせるつもりだ 【≒ 私の行動は すべて あなたに知らせよう】。私には十分だ あなたが
fida a me.私に誠実である 【↑】ことが 【≒ あなたが私に誠実であれば 私は満足だ】

MARIANNAマリアンナ
Lo sarò, non dubitate.私は そのことであるだろう 【≒ 私は 誠実でいる】、疑うでない。
(entra con Marianna)(マリアンナと共に【館に】戻る)



SCENA Ⅱ第2場
(Florville, poi Filiberto dal parco)(フロルヴィッレ、その後にフィリベルト 大庭園から)

FLORVILLEフロルヴィッレ
Vien qualcuno... s'attende誰かが来る… 期待される
questo Bruschino... Udiamo.そのブルスキーノが【≒ 件のブルスキーノだといいのだが】… 聞こう。
(si mette in disparte. Esce Filiberto che parla verso l'interno della scena)(離れて 身を置く。フィリベルトが出て来る その者は 舞台の内側【≒ 舞台袖】の方に話す)

FILIBERTOフィリベルト
Oh voglio certoああ 私は 確実に 欲している
che quel signor Bruschino me la paghi.あのブルスキーノ氏が 私に それを支払うであろうことを。
(s'avanza)(進み出る)
Non c'è nessun?誰もいないのか?

FLORVILLEフロルヴィッレ
(scoprendosi)(現れながら)
Che vuol?あなたは 何を欲しているのか?

FILIBERTOフィリベルト
Siete di casa?あなたは 家の【者】か?

FLORVILLEフロルヴィッレ
Sono l'agente del signor Gaudenzio.私は ガウデンツィオ氏の代理人だ。

FILIBERTOフィリベルト
Ottimo incontro! È alzato ancor?極上の出会いだ! 彼は もう 起床したか?

FLORVILLEフロルヴィッレ
Nol credo.私は それを信じていない【≒ 起きていないと思う】

FILIBERTOフィリベルト
Dirò frattanto a voi perché ne vengo.そうしている間に 私は あなたに言おう なぜ 私が 来ているか。
Io sono Filiberto locandiere私はフィリベルト 宿屋の主人だ
del vicino Castello. Da tre giorni館の近くの。3日前から
albergo un certo giovaneとある若者が泊っている
detto il signor Bruschino, il quale ha un padreブルスキーノ氏という名の、その者は 父を持っている
attacato di gotta通風に侵された
che Bruschino si chiama.その者は ブルスキーノと呼ばれている。
Ha fatto un debito彼は 借金を作った
di quattrocento franchi. Ha triste pratiche...400フランの。彼は 悲しい慣例を持っている【≒ 悪い習慣を身に着けている】
Oh infine io il tengo chiuso per cauzioneああ ついに 私は 彼を 担保として 閉じたままにしている【≒ 閉じ込めている】
dentro la mia soffitta.私の屋根裏部屋の中に。
(cava una lettera)(手紙を取り出す)
Ecco una letteraここに 手紙が
ch'ei diede a me perché al signor Gaudenzioそれを 彼は 私に与えた ガウデンツィオ氏に
ora la porti, ed egli poi la faccia今 私が それ【= 手紙】を持って行くように、そして 彼【= ガウデンツィオ】が その後に それ【= 手紙】
pervenire a suo padre! Ma v'accerto,彼の父に 早く着【↑】かせるように【≒ 彼は 手紙を まず私に渡して ガウデンツィオ氏に持って行かせ、そしてそれをガウデンツィオ氏が父ブルスキーノ氏にすぐ届けてもらうようにしている】! それはそうと 私は あなたにはっきりさせる
che non esce di là彼が あそこから出【られ】ないことを
se il suo debito in pria non pagherà.彼の借金を まず 支払わないと。

FLORVILLEフロルヴィッレ
Ah!.. (che pensier mi viene!)ああ!… (何という考えが 私にやって来ていることか!)
(affettando sommo rammarico)(最高の残念な気持ちを装いながら【≒ 極めて遺憾な素振りをして】)
Ah imprudente cugino!ああ 無分別な従弟!

FILIBERTOフィリベルト
Egli parente vostro!彼は あなたの親族なのか!

FLORVILLEフロルヴィッレ
Sì, Bruschinoそうだ、ブルスキーノだ
son io pure... ma... cielo!私もまた… しかし… 天よ!
S'ora il signor Gaudenzioもし 今 ガウデンツィオ氏が
lo venisse a sapere!..そのことを 知りに来るであろう 【↑】ならば【≒ やって来て そのことを知ったならば】!…

FILIBERTOフィリベルト
A me che importa!私にとって 何が重要なのだ【≒ 私には どうでもよい】

FLORVILLEフロルヴィッレ
Che guai! che guai!何という災難【≒ 厄介ごと】だ! 何という苦境だ!

FILIBERTOフィリベルト
Nascano pur.【災難は】どうぞ 生じなさい【≒ 厄介ごとが生じたっていい】

FLORVILLEフロルヴィッレ
Ah come,ああ
ah come mai da me fia rimediato?ああ いったい どうやって 私によって それは償われるだろうか?

FILIBERTOフィリベルト
Denari, e tutto è bello ed aggiustato.金 かね さ、それで すべては上々で そして 調整される【≒ 万事良しで 丸く収まる】
Chiedervi dunque io posso / in isposa e ottenervi...
chiedere qualcuna in sposa 女性に結婚を申し込む。

Nascano pur.
次のフィリベルトの台詞で分かる通り、彼は、厄介ごとが起こっても金で解決すれば良いという考えで、ここでは 厄介ごとが起きるなら起きたって構わないさ というようなことを言っている。

N. 2
Duetto [Florville - Filiberto]

Florville
Filiberto
Allegro
4/4
F major
FLORVILLEフロルヴィッレ
Io danari vi darò!私が 金を あなたに 与えるだろう!

FILIBERTOフィリベルト
È bruttissimo il futuro.未来は【≒ 先の話なんて】 とても嫌だ。

FLORVILLEフロルヴィッレ
Or qui a voi ne sborserò.今 ここで あなたに それについて 私は 支払おう。

FILIBERTOフィリベルト
Oh il presente è più sicuro.ああ 現在は より確実だ。

FLORVILLEフロルヴィッレ
Ma ad un patto!..しかし 協定で【≒ 一つだけ条件が】!…

FILIBERTOフィリベルト
Dica pure.どうぞ 言いなさい。

FLORVILLEフロルヴィッレ
Prima zitto!..何よりも 黙っている【≒ 内密に】!…

FILIBERTOフィリベルト
Zitto..黙っている…

Florville e Filiberto
Zitto!黙っている!

FLORVILLEフロルヴィッレ
[da sé][自分に]
(Ah se il colpo arrivo a fare,(ああ もし 私が 打撃をすることに届くならば【≒ 打撃に成功したならば】
la bandiera io stacco già.)私は 既に 旗を引き剥がしている【≒ 勝ったも同然】。)

FILIBERTOフィリベルト
[da sé][自分に]
(Ah se qui mi fo pagare(ああ もし ここで 私が 私に支払わせたならば
la bandiera io stacco già.)私は 既に 旗を引き剥がしている【≒ 勝ったも同然】。)

(Florville cava una borsa e dà denari a Filiberto)(フロルヴィッレは 財布を取り出し そしてフィリベルトに金 かね を支払う)

FLORVILLEフロルヴィッレ
Son luigi, giusti e bei.それらは ルイ金貨、正当な そして 美しい【≒ 本物の ピカピカの】

FILIBERTOフィリベルト
Oh mi fido.ああ 私は【あなたを】 信用している。
(numerandoli)(それらを数えながら)
Cinque... sei...5枚… 6枚…

FLORVILLEフロルヴィッレ
Debitor vi son del resto.私が あなたにとって 残りの債務者だ【≒ 残りの借金も 私 があなたに支払う】

FILIBERTOフィリベルト
Oh si vede l'uomo onesto.ああ 誠実な人が見られている【≒ 誠実な人に思われる】

FLORVILLEフロルヴィッレ
Ma il cugino stia serrato!だが 従弟は 閉じ込められたままでいるように!

FILIBERTOフィリベルト
Per tre anni imprigionato.3年間 監禁される。

FLORVILLEフロルヴィッレ
Quella lettera mi date.その手紙を 私に与えなさい。

FILIBERTOフィリベルト
Se ne serva, a lei m'inchino.それを取っておきなさい、 あなたに 私は従う。
(gli dà la lettera)(彼に 手紙を与える)

FLORVILLEフロルヴィッレ
Ehi, mi fido che a dovere...えい、私は信用している 【あなたが】ちゃんと…

FILIBERTOフィリベルト
Oh, le par signor Bruschino!ああ あなたには 【そのように】思われるのだ ブルスキーノ氏よ!

FLORVILLEフロルヴィッレ
(Ah che il colpo giunsi a fare!(ああ 何と 私は 打撃をする至ったことか!
La bandiera io stacco già!)私は 既に 旗を引き剥がしている【≒ 勝ったも同然】。)

FILIBERTOフィリベルト
(Ah se il resto mi fo dare(ああ もし残りを 私に与えさせたならば
la bandiera io stacco già!)私は 既に 旗を引き剥がしている【≒ 勝ったも同然】。)

(Filiberto parte)(フィリベルトは退場する)
La bandiera io stacco già!)
戦争において敵の旗を奪うことが勝利の証しであることから。

Recitativo Dopo il Duetto Florville - Filiberto

Florville
SCENA Ⅲ第3場
(Florville)(フロルヴィッレ)

FLORVILLEフロルヴィッレ
A noi. Su trasformiamoci私たちに【≒ 私たちの番だ ≒ 私の出番だ】。さあ 姿が変わるように【≒ 変装しよう】
in quel signor Bruschinoあの ブルスキーノ氏に
che ha da sposar Sofia...その者は ソフィーアと結婚するはず…
(fantasticando)(空想しながら)
Una lettera... sì... sappia Marianna手紙を… そうだ… マリアンナが知るように
il gran progetto. Orsù, spirito e core.大きな企てを。そら、精神【≒ 熱情】と心【≒ 勇気】を。
Tentiamo il colpo e ci protegga amore.打撃を試みよう そして 愛の神が 私たちを守るように。
(parte dal fondo)(奥から退場する)
A noi.
いろいろな採り方が可能だが、おそらく Tocca a noi. 私たちの番である。 の Tocca を省略したものだろう。noi と1人称複数なのは、ソフィーアとフロルヴィッレの二人のための行動だからではないか。実質的には
私の出番だ。
という意味である。

N.3
Cavatina Gaudenzio

Gaudenzio
Moderato
4/4
A major
SCENA &8547;第4場
(Gaudenzio, poi Florville con Marianna, indi Servitori)(ガウデンツィオ、その後にフロルヴィッレ マリアンナと共に、それから召使たち)

GAUDENZIOガウデンツィオ
Nel teatro del gran mondo広い世界という劇場では
cerca ognun la sua fortuna:誰もが 彼の幸運を探し求めている:
e, stia ben da capo a fondo,そして、頭から底まで【≒ 上から下まで ≒ すべてにおいて】うまくいっても、
l'uom contento mai non è.人は 決して満足しない。
Se la cerca nel denaro,もし 彼が 金 かね に それ【≒ 幸運 女性名詞】を探し求めると、
più ne acquista più ne vuole.彼は それ【≒ 金 かね】を手に入れるほど それを欲しがる。
Se la brama negli onoriもし 彼が 名誉に それ【≒ 幸運 女性名詞】を探し求めると、
tenta il vol di là dal sole.太陽の向こう側まで 飛行を試みる【≒ 太陽より高く 飛ぼうとする】
Sempre avanti, sempre avanti常に前へ、常に前へ
va scontento l'uom di sé.人は 自分に満足せずに 進む。
緩(カンタービレ)/急(カバレッタ)の二部形式のガウデンツィオのアリア。
緩(カンタービレ)

cerca ognun la sua fortuna:
この sua はもちろん 彼女の でもあるのだが、uomo が男性名詞であることから便宜的に 彼の にしておく。

(Allegro)
4/4
A major
Io cercai la mia fortuna私は 【かつて】私の幸運を探し求めた
in un certo non so che;何かあるものに それを私は知らない【≒ 私にも分からない何かに】
ma ho trovato poi l'intoppoしかし それから 私は 障害を見出し
che de' guai provar mi fé.それは 私に 災難を体験させた【≒ 私は 自分でもよく分からないものに幸福を探し求めたが、困難に出くわし ひどい目に遭った】
Eh!そら!
カンタービレの続きだが、この部分は事実上テンポ・ディ・メッゾ(中間部)の役目をなしている。

Allegro
4/4
A major
stiam di buon umore,楽しい機嫌【≒ 上機嫌】でいよう、
godiam di quel che viene,来るものを楽しもう、
e brilli in seno il coreそして 心が 胸の中で 輝くように
di gioia e di piacer.喜びで そして 楽しみで。
Eh stiamo allegramente, sì!そら 陽気でいよう、そうだ!
Godiam di quel che viene, allegramente.来るものを楽しもう、陽気に。
急(カバレッタ)

[Recitativo] Dopo la Cavatina Gaudenzio GAUDENZIOガウデンツィオ
Ho trovato a Sofia un buon partito私は ソフィーアに対する良い結婚相手を 見出した
nel giovane Bruschino. Ma contento若いブルスキーノに。だが 【↓】私は満足
io non sarò se pria non me la pagaしないだろう まず 私に対しての罰を受けなければ
quel signor di Florville.あの フロルヴィッレ氏が。

(si vedono dal fondo Marianna e Florville. Questo le dà una lettera)(奥から マリアンナとフロルヴィッレが出会う。この人【= フロルヴィッレ】)は 彼女に 手紙を与える)

FLORVILLEフロルヴィッレ
(Da brava!)(勇気を持って!)

MARIANNAマリアンナ
(Siete ben raccomandato.)(あなたは よく 推薦されている【≒ あなただけが頼りだ】。)
(entra)(【館の中に】)入る

FLORVILLEフロルヴィッレ
(Vo a dispormi per essere arrestato.)(私は 逮捕されるために 準備しに行く)
(parte velocemente dal fondo)(迅速に 奥から去る)

GAUDENZIOガウデンツィオ
Stupisco che Bruschino non si veda...私は ブルスキーノが見えないであろうことを 驚いている…

(esce Marianna e dà a Gaudenzio la lettera prima ricevuta da Florville)(マリアンナが出て来る そして ガウデンツィオに その前にフロルヴィッレから受け取った手紙を与える)

MARIANNAマリアンナ
Fu recata una lettera per voi.あなた宛ての手紙が 運ばれて来た。

GAUDENZIOガウデンツィオ
Chi mi scrive? leggiam.誰が 私に書いているのか? 読もう。
(apre e fa un moto di gran sorpresa)(開ける そして 大きな驚きの動作をする)
Bruschino il padre!父ブルスキーノだ!
(legge)(読む)
"Amico mi valgo d'altra mano a cagione d'un improvviso piccolo accesso di chiragra e di gotta, ma vi scrivo indispensabilmente. Mio figlio Bruschino (cui ho fatto tener dietro) invece di recarsi da voi, batte la campagna, e perde poco lodevolmente il suo tempo. Io vi scongiuro di farlo arrestare dai vostri servitori e tenerlo custodito presso di voi. E siccome egli non è conosciuto di persona da chicchessia [dei vostri], eccovi in due esemplari i suoi connotati. Vi torno a raccomandare la sollecitudine e mi segno _ Bruschino il padre"「友よ 私は別の手【≒ 左手】を利用している 突然の軽い発作のために 指通風の そして 通風の、だが 私は どうしても あなたに書く【必要がある】。私の息子ブルスキーノは(その者を 私は後を追わせた【≒ 尾行させた】)あなたのところに赴く代わりに、田舎を叩いて【≒ 田舎を調査して ≒ 田舎をぶらついて】、あまり称賛できないことに 彼の時間を失っている。私は あなたに嘆願する あなたの召使たちによって 彼が逮捕させられることを そして あなたのところで 彼が監視されたままにする【ことを】。そして 彼が [あなたのところの]誰一人から 個人的に知られていないので、ここにある あなたに 彼の人相を 2部で【≒ 息子の似顔絵を 2枚 同封する】。わたしは あなたに繰り返し 配慮を要請する そして私を署名する。 _ 父ブルスキーノ」
O gioventù imprudente! elà! sentite.ああ 無分別な青年期だ! そら、聞きなさい。

(escono servi)(召使たちが出て来る)

Uscite immantinente:即座に 出かけなさい:
cercate da per tutto e se trovate捜しなさい あらゆるところで そして もし 君たちが 見付けたならば
un giovane che abbia i connotati若者を その者は 人相を持っているであろう
che qui segnati trovansi,それ【≒ 人相 複数】は ここに 記入されている、
(dà una cartina ch'era inclusa nella lettera ad un servo)(小紙片を与える それは手紙の中に同封されていた)
arrestatelo, e a qualunque costo a me guidatelo.彼を逮捕しなさい、そして なんとしても 私【の元に】に 彼を誘導しなさい【≒ 連れて来なさい】

(i servi partono dal fondo)(召使たちは 奥から退場する)

Hai tu sentito?君は 聞いたのか?

MARIANNAマリアンナ
E come!もちろん!

GAUDENZIOガウデンツィオ
Taci colla padrona,【君の】主人の女【= ソフィーア】には黙っていなさい
perché se mai...なぜなら もし 万が一にも…
per bacco!.. i servitoriなんとまあ!… 召使たちが
(odesi rumore dal fondo)(奥から 物音が聞こえる)
mi conducono un uomo...男を 私に 連れてくる…
Che fosse lui!..彼ではないか!…

MARIANNAマリアンナ
Volesse il ciel!..天が望むように【≒ 神の配慮があるように】!…



SCENA Ⅴ第5場
(Detti. Florville che si fa condurre a forza dai servitori di Gaudenzio)(前の場の人たち。フロルヴィッレ その者は ガウデンツィオの召使たちによって 力づくで 連れて来させられる)

FLORVILLEフロルヴィッレ
Lasciatemi...私を放せ…
Che violenza!.. signore...何という暴行!… 貴君よ…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Una cosa alla volta.1回につき 一つのことを【≒ 一つ一つ 尋ねよう】
Siete Bruschino il figlio?あなたは 息子ブルスキーノか?

FLORVILLEフロルヴィッレ
Io!...私が!…
(affettando di sconcertarsi)(うろたえるふりをしながら)

GAUDENZIOガウデンツィオ
Io!.. non serve私が!… 役立っていない
nascondersi.自らを隠すことが【≒ 素性を隠そうとしても無駄だ】
(va confrontando coi connotati)(人相と比較しながら)

FLORVILLEフロルヴィッレ
Lo sono.私は 彼だ。

GAUDENZIOガウデンツィオ
A vostro padreあなたの父に
son giunti i vostri degni portamenti;あなたの立派な行為【≒ 愚行】が達し
e con questa sua letteraそして この彼の手紙で
m'ordinò di arrestarvi.彼は 私に あなたを逮捕するよう指図した。

FLORVILLEフロルヴィッレ
E voi di graziaそれで 失礼だが あなたは
chi siete?誰なのか?

GAUDENZIOガウデンツィオ
Io son Gaudenzio Strappapuppole.私はガウデンツィオ・ストラッパプッポレだ。

FLORVILLEフロルヴィッレ
Oh dio!.. quello!..ah che degno no non sonoああ 神よ!… あの男!… ああ なんと 私は 値しないことか
del vostro bel perdono...あなたの 立派な許しに…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Giuoco... amiche!...賭博… 女友達たち【≒ 愛人たち ≒ 女遊び】!…

FLORVILLEフロルヴィッレ
(fingendo desolazione)(悲嘆を装いながら)
Ah pentito io ne venia,ああ そのこと【= 賭博など】で 私は後悔させられた、
ragion per cui trovato fui qui.そのために 私が ここで 見付けられのは 道理だ【≒ 当然だ】

GAUDENZIOガウデンツィオ
(È ragione.)(それは 道理だ【≒ 当然だ】

FLORVILLEフロルヴィッレ
E al padre mio scriveaそれで 私の父に 私は書いた
implorando perdon.懇願する許しを。
(cava la lettera avuta da Filiberto e la dà a Gaudenzio che la scorre cogli occhi)(フィリベルトから手に入れた手紙を取り出し そして それを ガウデンツィオに与える その者は 両目で ざっと読む)
Leggete.読みなさい。

MARIANNAマリアンナ
(trovandi destramente vicina a Florville)(すばしこく フロルヴィッレの近くにいながら【≒ 素早く フロルヴィッレに近寄って】)
(È forse?..)(もしかして それは?…)

FLORVILLEフロルヴィッレ
(La lettera che il giovane Bruschino(手紙だ 若いブルスキーノが
a lui mandò per via del locandiere.)【= ガウデンツィオ】に送った 宿屋の主人を介して。)

GAUDENZIOガウデンツィオ
(Si vede ch'è pentito.) Entrate.(彼が後悔していることが見られる【≒ 彼は後悔しているようだ】)。

FLORVILLEフロルヴィッレ
E possoそれでは 私は できるのか
sperar... ah che non oso...期待することが… ああ 私が 思い切って【期待する】だなんて【でき】ない…
(finge piangere un poco)(少し泣くふりをする)

GAUDENZIOガウデンツィオ
(Mi commove!)(彼は 私の心を動かす!)

(Florvielle bacia la mano a Gaudenzio)(フロルヴィッレは ガウデンツィオの手にキスする)

Via via... chi sa!.. oh basta per adesso.もういい もういい… 誰が知っているのだ【= (フロルヴィッレの言葉に対して)どうかな】!… ああ 差し当たって今は もうたくさんだ。

FLORVILLEフロルヴィッレ
Tanta bontà mi trae fuor di me stesso.あまりに多くの善意が 私を 私自身から外へ 引っ張っている【≒ 多大な善意に 私は我を忘れてしまう】
(entra con Marianna e servitori)(マリアンナと召使たちと共に【館の中に】入る)


SCENA Ⅵ第6場
(Gaudenzio, poi Bruschino padre, un servitore, infine Florville)(ガウデンツィオ、その後に父ブルスキーノ、召使、最後にフロルヴィッレ)

GAUDENZIOガウデンツィオ
Buon giovane! Venia da per sé stesso...善良な青年だ! 彼は 自分自身で 【ここに】来た…
che ha fatto poi?.. suo padreところで 彼は何をしたのか?… 彼の父は
è un uom fiero piuttosto, puntiglioso,かなり厳格で、片意地だ、
ma dovrà perdonargli..しかし 彼は 彼【= 息子ブルスキーノ】を 大目に見なくてはならないだろう…

BRUSCHINOブルスキーノ
(di dentro. Gaudenzio si mette in ascolto)(内部で【≒ 舞台裏で】。ガウデンツィオは 聞くことに身を置く【≒ 聞く】)
Ho inteso, ho inteso...私は分かった、私は分かった…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Quest'è Bruschino il padre!..この男は 父ブルスキーノだ!…

BRUSCHINOブルスキーノ
(di dentro)(内部で【≒ 舞台裏で】)
Poco di buono!良からぬ男【≒ とんでもない奴】め

GAUDENZIOガウデンツィオ
(si mette un poco in disparte)(少し離れて身を置く)
Con chi l'ha? sentiamo.彼は 誰と あそこにいるのか? 聞こう。

(esce Bruschino con qualche impeto)ブルスキーノが出て来る いくらかの怒りを持って)

BRUSCHINOブルスキーノ
Andate un po' a far nascere dei figli!..ちょっと 子たちを生まれさせに行きなさい【≒ あなたも 子どもを儲けてみるがいい】!…
Uh che caldo!.. ecco i frutti che ne avete...うう なんという暑さだ!… ここに果実【≒ 結果】が あなたが それ【≒ 子たち 部分冠詞+名詞】を持つと…
Debiti... giuoco... uh!.. uh!..借金… 賭博… うう!… うう!…

GAUDENZIOガウデンツィオ
(avvicinandosi a Bruschino che non s'avvede di lui se non allora che s'urtano insieme)(ブルスキーノに近づきながら その者は彼【= ガウデンツィオ】に気付かない 共にぶつかる時を除いては【≒ お互いにぶつかり合うまで】)
Amico.友よ。

BRUSCHINOブルスキーノ
Avrà a sentirmi!..彼は 私【の話】を聞かなくてはならないだろう!…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Adagio un poco!..すこし静かに【≒ 落ち着いて】!…

BRUSCHINOブルスキーノ
Signor Gaudenzio mio!..私のガウデンツィオ氏よ!…
(s'abbracciano)(抱き合う)

GAUDENZIOガウデンツィオ
Signor Bruschino!ブルスキーノ氏よ!

BRUSCHINOブルスキーノ
Perdonatemi! Smonto私を許しなさい! 私は 下車している
ora di legno... uh che dolor!.. che caldo!..今 木材から【≒ 今 馬車から下りたところだ】… うう なんという苦痛だ!… なんという暑さだ!
Sento che il locandiere Filiberto,私は聞いている 宿屋の主 あるじ フィリベルトが、
che conosco assai bene, sparse qui attornoその者を 私はとてもよく知っている、ここの周辺に 撒き散らした【≒ 言いふらした】
gl'indegni portamenti恥ずべき行為を
di quel signor mio figlio, e ben vedete...あの私の息子氏の、そして あなたは よく見ている【≒ あなたも知る通り】
Uh! che caldo!.. voi già mi conoscete...うう! なんという暑さだ!… あなたは 既に 私を分かっている…
Mi va il sangue alla testa!..血が 私の頭に行っている【≒ 上っている】!…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Amico... allegri...友よ… 陽気に【≒ 喜びなさい】
È rimediato.彼は 治療された【≒ 更生した】

BRUSCHINOブルスキーノ
Sì?本当か?

GAUDENZIOガウデンツィオ
L'amico è in gabbia.【≒ 息子ブルスキーノ】は 鳥籠の中にいる

BRUSCHINOブルスキーノ
Che?何だって?

GAUDENZIOガウデンツィオ
L'ho qui in casa.私は 彼を ここの 家の中に持っている【≒ 彼を この家に留めている】

BRUSCHINOブルスキーノ
In casa!..家の中に!…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Ed ha operatoそして 作用した
la medicina, ed è tutto cambiato.薬が、それで すべてが変わった。

BRUSCHINOブルスキーノ
Troppo presto! Nol credo. È una finzione.あまりにも早すぎる! 私は それを信じない。それは 見せかけだ。
Uh che caldo!.. è una burla!うう なんという暑さだ!… それは 悪ふざけだ!

GAUDENZIOガウデンツィオ
Ma vi prego私は あなたに懇願する
di vederlo...彼に合うように…

BRUSCHINOブルスキーノ
Vederlo! oibò! non voglio彼に会うだって! ふぅ! 私は望まない
neppur sentirlo a nominar.彼が口に出すのを聞くのすら【≒ 彼の話すら聞きたくない】

GAUDENZIOガウデンツィオ
Per bacco!なんとまあ!
Farò io. Chi è di là?私がやろう。誰が そこにいるのか【≒ 誰か そこに いないか】

(esce un servitore)(召使が出て来る)

Venga il signor Bruschino suo figliuolo.ブルスキーノ氏 彼の息子が来るように【≒ ブルスキーノ氏の息子を呼んで来なさい】

(Il servitore parte)(召使は退場する)

BRUSCHINOブルスキーノ
Non voglio, dico!私は欲しない、【そう】私は言っている!

GAUDENZIOガウデンツィオ
Eh via,やれやれ、
non siate puntiglioso!片意地にならないように!

BRUSCHINOブルスキーノ
Io!.. uh vi perdeono.私が!… うう 私は あなたを許する【≒ あなたに 譲歩しよう】

GAUDENZIOガウデンツィオ
E, già che mostra vero pentimento,それで、既に 彼は 本当の後悔を見せているので、
si può...できる…

BRUSCHINOブルスキーノ
Cosa si può?何が できる?

GAUDENZIOガウデンツィオ
Far queste nozze.この結婚式が なされることが。

BRUSCHINOブルスキーノ
Nozze!.. uh che caldo!.. oibò!結婚式!…うう なんという暑さだ!… ふぅ!

GAUDENZIOガウデンツィオ
Che fece poi?ところで 彼は何をしたのか?
Gioventù, leggerezze... in confidenza,青年期、軽率【≒ 若者の過ちだ】… 打ち明け話では【≒ 打ち明けると≒ ここだけの話だが】
e noi che abbiamo fattoそれで 私たちは 何をしたのだろうか
in quei tempi?.. intendetemi?..当時?… あなたは 私【の言っていること 】を聞いているか?…

BRUSCHINOブルスキーノ
Uh! non me lo ricordo!うう! そのことを 私は 思い出さない【≒ そんなことは もう思い出せない】

GAUDENZIOガウデンツィオ
Or via, parliamoさあ 今、話し合おう
da uomini una volta e concludiamo.男たちで 一度 そして 決着を付けよう【≒ 男同士で 最初で最後の話し合いをしよう】
(Da brava!)
da bravo = bravamente。da + 形容詞で副詞句になる例。

(Siete ben raccomandato.)
raccommandare 推挙する,託す は 任せる,頼りにする の意味合いなので、ソフィーアと息子ブルスキーノの結婚を阻止するために、フロルヴィッレを頼りにしている、という意味だろう。

batte la campagna,
この場合の batte < battere は 調査する(叩いて調べながら歩き回る)。

Andate un po' a far nascere dei figli!.. / Uh che caldo!.. ecco i frutti che ne avete...
ブルスキーノが話しかけている相手(voi あなたは)は、直後にブルスキーノが 馬車から下りたばかり と言うので、御者ではないかと思われる。Avrà a sentirmi!.. の主語 lui 彼は も同様。

Smonto / ora di legno...
わざと 木材 と直訳しているが、昔はほとんどの乗り物が木製だったので、詩では legno で馬車や船を意味することがある。

N.4 Terzetto [Florville-Bruschino-Gaudenzio] Andante
4/4
C major
GAUDENZIOガウデンツィオ
Per un figlio già pentito既に 後悔している息子のために
parli a voi paterno affetto,父の情愛が あなたに 語るように、
ed il nodo sia compitoそして 絆が達成されるように【≒ 結ばれますように】
dal dovere e dall'amor.義務によって そして 愛によって。

BRUSCHINOブルスキーノ
Voi lo dite!.. lo volete!..あなたが それを言う! あなたが それを欲している!…
Bolle il sangue e bolle assai!血が沸いて そして それは 大いに沸き立っている!

GAUDENZIOガウデンツィオ
Da par vostro orsù cedete!…あなたに似つかわしく【≒ あなたらしく】 さあ 譲歩しなさい!…

FLORVILLEフロルヴィッレ
(Esce Florville e resta in disparte)(フロルヴィッレが出てきて そして離れて留まる)
(Faccia tosta e andiamo omai.)(硬い顔【≒ 面の皮を厚くして】 そして 今こそ行こう。)

BRUSCHINOブルスキーノ
(Bruschino resta fantasticando da sé. Gaudenzio s'avvede di Florville e lo fa avvicinare a Bruschino)(ブルスキーノは 自分一人で 夢想し続けている【≒ 考え耽っている】。ガウデンツィオは フロルヴィッレに気付き そして 彼を ブルスキーノに 近づけさせる)
(Uh che caldo!.. e lo degg'io..(うう なんという暑さだ!… そして 私は それをしなければならない…
indeciso è questo cor.)この心は 決心がつかない。

FLORVILLEフロルヴィッレ
(Tremo tutto... signor mio...(私は すっかり震えている… 私の貴君よ…
quasi oh dio! mi manca il cor.)私の心は ほとんど ああ 神よ! 欠けている【≒ 私は 気を失いそうだ】。)

GAUDENZIOガウデンツィオ
(Eh coraggio... ci son io...(さあ 勇気を【≒ 頑張れ】… 私は ここにいる【≒ 私も一緒だ】
non temte, fate cor.)恐れるでない… 勇気を出しなさい。)

BRUSCHINOブルスキーノ
(Bolle il sangue e bolle assai!(血が沸いて そして それは 大いに沸き立っている!
uh che caldo!.. indeciso è questo cor.)うう なんという暑さだ!… この心は 決心がつかない。)


Allegro
4/4
C major
FLORVILLEフロルヴィッレ
(sommessamente a Bruschino colla testa bassa)(ブルスキーノに低い声で 低い頭をして【≒ うなだれて】)
Caro padre, deh perdono!..愛する父よ、ああ 許しを!…
dell’error pentito io sono.私は 過ちを後悔している。

BRUSCHINOブルスキーノ
(gli solleva la testa, lo guarda ec.)(彼の頭を持ち上げて、彼を見詰めて などなど)
Chi è costui?この男は 誰だ?

GAUDENZIOガウデンツィオ
È vostro figlio!..彼は あなたの息子だ!…

FLORVILLEフロルヴィッレ
Son vostro figlio!..私は あなたの息子だ!…

BRUSCHINOブルスキーノ
Chi è costui?..この男は 誰だ?

FLORVILLE E GAUDENZIOフロルヴィッレとガウデンツィオ
Bruschino...ブルスキーノだ…

BRUSCHINOブルスキーノ
Un corno!角 つの【≒ そんな ばかな】

FLORVILLEフロルヴィッレ
(affettando disperazione)(失望を速めて)
Ah previdi il mio periglio!..(ああ 私は 私の危険を予想した【≒ 悪い予感がした】!…)

GAUDENZIOガウデンツィオ
(severamente a Bruschino)(ブルスキーノに 厳しく)
Ehi! scherzate!..おい! あなたはふざけている!…

BRUSCHINOブルスキーノ
(sbuffando)(鼻息を荒くしながら)
Uh!..うう!…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Arrossisco!私は 顔が赤くなっている【≒ 恥ずかしい思いをしている】

FLORVILLEフロルヴィッレ
(Pover uom! lo compatisco!)(かわいそうな人だ! 私は 彼を 気の毒に思う!)

GAUDENZIOガウデンツィオ
(come sopra)(上と同様に)
Ehi!..おい!…

BRUSCHINOブルスキーノ
Uh!..うう!…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Ebben?それでは?

BRUSCHINOブルスキーノ
Uh!.. che caldo!うう!… なんという暑さだ!
Io nol vidi in vita mia,私は 私の人生で 彼に会ったことがない。
io non so chi diavol sia.私は知らない 彼が いったい 誰であろうか。
Lo capite sì o no?あなたは そのことを理解したのか はい か いいえ か?

GAUDENZIOガウデンツィオ
Rinegate il figlio vostroあなたは あなたの息子を 否定している
per un stolido puntiglio!馬鹿げた片意地によって!
Ah che in voi ravviso un mostroああ 私は あなたの中に 怪物を認める
cui natura ha già in orror.それ【= 怪物】を 自然は 既に 恐怖に持っている【≒ その怪物を 万物は 本当に 忌み嫌っている。】

BRUSCHINOブルスキーノ
Cosa andate naturando?あなたは 何を創造していくのか?
Cosa andate barbottando?あなたは 何を ぶつぶつ言って行くのか?
Voi due pazzi mi sembrate;私には あなた方 二人は 頭がおかしくなったように見える;
e impazzir con voi non vo'.そして 私は あなた方と共に 頭がおかしくなることは望まない。
(per andare)(行こうとする)

(Florville lo trattiene e segli inginocchia dinanzi)(フロルヴィッレは 彼を引き留め そして 彼の前で跪く)

FLORVILLEフロルヴィッレ
Ah!ああ!

GAUDENZIOガウデンツィオ
Fermate!..止まりなさい!…

FLORVILLEフロルヴィッレ
Ah! padre!ああ! 父よ!

BRUSCHINOブルスキーノ
(s'inginocchia davanti a Florville)(フロルヴィッレの前に跪く)
Ah! figlio!..ああ! 息子よ!…

FLORVILLEフロルヴィッレ
Deh per grazia consolatemi!..ああ どうか 安心しなさい!…

BRUSCHINOブルスキーノ
Deh per grazia andar lasciatemi...ああ どうか 私を行かせなさい…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Su!..さあ!…

FLORVILLEフロルヴィッレ
Padre!父よ!

BRUSCHINOブルスキーノ
Figlio!息子よ!…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Ddiavolo!...悪魔め【≒ ちくしょう】!…
Su finitela in buon ora!..さあ 止めなさい 良い時に【≒ いい加減に止めないか】!…
Un corno!
corno 角 には 値打ちのないもの という意味がある。

Ah che in voi ravviso un mostro / cui natura ha già in orror.
avere in orrore qualcosa ―に恐れ戦く,―を忌み嫌う。già は、この場合は強調。

Più mosso
4/4
C major
(Levandosi tutti)(全員 立ち上がって)

BRUSCHINOブルスキーノ
Eh lasciatemi in malora!そら 私を 破滅に 行かせなさい!

GAUDENZIOガウデンツィオ
Eh vergogna, puntiglioso!そら 不名誉だ【≒ みっともない】、片意地め!

FLORVILLEフロルヴィッレ
Né cedete o padre ancora!そのことについて また譲歩しなさい ああ!

BRUSCHINOブルスキーノ
Uh che caldo! che oppressione!うう なんという暑さだ! なんという息苦しさ!

GAUDENZIOガウデンツィオ
Eh tornate alla ragione!そら 理性に戻りなさい【≒ 理性を取り戻しなさい】

FLORVILLEフロルヴィッレ
Deh tornate alla ragione!ああ 理性に戻りなさい【≒ 理性を取り戻しなさい】

BRUSCHINOブルスキーノ
Uh... dal velen mi strozzerei...うう… 毒で 息が詰まるのだが…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Rinegate vostro figlio!あなたは あなたの息子を否定している!

FLORVILLEフロルヴィッレ
Rinegate vostro figlio!あなたは あなたの息子を否定している!

BRUSCHINOブルスキーノ
Uh... va crepandomi il polmone!うう… 私の肺が 次第に裂けていく!

GAUDENZIOガウデンツィオ
Poverin! fa compassione!かわいそうな子だ! 彼は 哀れみを起こさせる!

FLORVILLEフロルヴィッレ
Ah signore! compassione!ああ 貴君よ! 哀れみを!
Poverin! fa compassione!
ト書が付けられていないが、これは明らかに(偽の)息子ブルスキーノに向けて発せられた台詞だろう。

(Più mosso)
4/4
C major
BRUSCHINOブルスキーノ
Voglio andar dal Commissario,私は 警察分署長のところに行きたい、

FLORVILLE E GAUDENZIOフロルヴィッレとガウデンツィオ
Venga pure il Commissario,どうぞ 警察分署長が 来るがいい。

BRUSCHINOブルスキーノ
qui venir lo fo a drittura,私は 彼を まっすぐに ここに来させる、

FLORVILLE E GAUDENZIOフロルヴィッレとガウデンツィオ
venga tosto a dirittura;彼が すぐさま まっすぐに 来るがいい;

BRUSCHINOブルスキーノ
uh che caldo! l'imposturaうう なんという暑さだ! 欺瞞 ぎまん は
smascherata resterà.仮面をはがされるようになるだろう【≒ 真相が解明されるようになるだろう】

FLORVILLE E GAUDENZIOフロルヴィッレとガウデンツィオ
smascherata l'impostura,欺瞞 ぎまん が 仮面をはがされるように【≒ 真相が解明されるように】
sì, fra poco resterà.なるだろう、そう、もうすぐ。

BRUSCHINOブルスキーノ
Poi vi fo mostrar a ditoその後に 私は あなた方を 指で示させる【≒ 指弾させる】

FLORVILLEフロルヴィッレ
Poi sarà mostrato a ditoその後に 指で示される【≒ 指弾される】だろう
qualchedun per la città.誰かが 町で。

GAUDENZIOガウデンツィオ
Poi vi fo mostrar a ditoその後に 私は あなたを 指で示させる【≒ 指弾させる】
da per tutta la città.町中どこでも。

BRUSCHINOブルスキーノ
da per tutta la città.町中どこでも。

(partono tutti)(全員 退場する)
Voglio andar dal Commissario,
commissario は伊和辞典では 警察分署長 とあり、これは警察の所轄の署長のことである。一方、クリティカルエディション総譜の登場人物一覧の英訳では、Police Sergeant 巡査部長 となっている。後の場面でブルスキーノやガウデンツィオが敬意を払っている様子が覗え、また筆跡鑑定ができる知識技術を持ち合わせているので、ここでは辞書のまま 警察分署長 を採用した。
なお古い台本、楽譜ではこの役は Delegato 代理人 となっている。

Poi sarà mostrato a dito / qualchedun per la città.
qualchedun < qualcheduno = qualcuno 誰か。息子ブルスキーノに成りすましているフロルヴィッレには、後で町で指さされて嘲られるのは、ブルスキーノかもしれないし自分かもしれない、と思っているようである。

[Recitativo] Dopo il Terzetto SCENA Ⅶ第7場
(Stanze nel Castello)(館の部屋)
(Marianna poi Gaudenzio)(マリアンナ その後にガウデンツィオ)

MARIANNAマリアンナ
Impaziente son io私は 辛抱できない
di saper ciò che nacque.発生したことを知るのに【≒ 何が起きたか 知りたくてたまらない】

(esce Gaudenzio)(ガウデンツィオが出てくる)

GAUDENZIOガウデンツィオ
Si può fare di peggio?もっとひどく することができるのか【≒ これ以上ひどいことなんて あるのか】

MARIANNAマリアンナ
(È riscaldato.)(彼は 熱くなっている【≒ 怒っている】。)

GAUDENZIOガウデンツィオ
Mai non l'avrei pensato.私は そんなことを 考えたことはなかった。
Fammi venir Sofia: poi se ritornaソフィーアを私【のところ】に来させなさい:それから もし 戻って来たら
quel snaturato del signor Bruschinoあの ブルスキーノ氏という非道者が
vienmelo a dir.私に そのことを 言いに来なさい。

MARIANNAマリアンナ
Vi servirò a puntino.私は きっちりと あなたに仕える。
(parte)(退場する)


SCENA Ⅷ第8場
(Gaudenzio, indi Sofia, poi Marianna)(ガウデンツィオ、その次にソフィーア、その後にマリアンナ)

GAUDENZIOガウデンツィオ
Sì, tentiamo...よし、試みてみよう。

SOFIAソフィーア
Signor...貴君よ…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Senti gran cosa!たいへんなことを 聞きなさい!

SOFIAソフィーア
E qual?それで どんなことを?

GAUDENZIOガウデンツィオ
Per un puntiglioある片意地者に関して
il padre... oimè che orror!.. rinega il figlio.父親が… ああ なんと恐ろしい!… 息子を否定している。

SOFIAソフィーア
Questo padre chi è?その父親は 誰だ?

GAUDENZIOガウデンツィオ
Il signor Bruschino!ブルスキーノ氏だ!

SOFIAソフィーア
Il padre del mio sposo?私の許婚 いいなずけ の父か?

GAUDENZIOガウデンツィオ
Appunto appunto.そのとおり、そのとおりだ。

SOFIAソフィーア
Ed è possibil mai!それで それは 決してありえない!

(esce Marianna)(マリアンナが出てくる)

MARIANNAマリアンナ
In questo puntoこの点に【≒ ちょうど今】
tornò il signor Bruschino.ブルスキーノ氏が 戻った。

GAUDENZIOガウデンツィオ
A tempo, a tempo.時間に、時間に【≒ ちょうどよい時に】
Pria che con questo padre snaturatoこの 片意地な父親に
io torni a contrastar, vo' che tu tenti私が 反対に戻る【≒ あの頑固者と また衝突する】 【↑】前に、私は欲している 君が試みることを
a ragion ricondurlo e al suo dovere.彼を 理性に引き戻すように そして 彼の義務に【引き戻すように】

SOFIAソフィーア
Io... signore...私が… 貴君よ…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Si tratta d'uno sposo.許婚にかかわっている。
Ei viene. Animo, via. Di là verrai,彼が来る。魂を【≒ しっかり】、さあ。君は あちらに行くだろう、
e l'esito del fatto mi dirai.そして 君は 出来事の結果を 私に話すだろう。
(parte con Marianna)(マリアンナと共に退場する)


SCENA Ⅷ第8場
(Sofia poi Bruschino introdotto da un servitore)(ソフィーア その後にブルスキーノ 召使に引き入れられた)

SOFIAソフィーア
Arte ci vuol. Tentiamo術 すべ が必要だ。試みよう
d'acquistarci uno sposo.私の許婚を獲得するために

(esce Bruschino senz'avvedersi di Sofia)(ブルスキーノが出てくる ソフィーアに気付くことなく)

BRUSCHINOブルスキーノ
Per baccone!.. uh che caldo!..なんとまあ!… うう なんという暑さだ!。
Ora signor Gaudenzio mio carissimo私の最も親愛なるガウデンツィオ氏よ
che viene il Commissario警察分署長が来る 【↑】今となっては
la man ci toccheremo.私たちは 私たちの手を触れ合うだろう。

SOFIAソフィーア
(A noi.)(私たちに【≒ 私たちの番だ ≒ 私の出番だ】
(si scopre e s'inchina a Bruschino)(姿を現し そして ブルスキーノに身を屈める【= お辞儀する】)

BRUSCHINOブルスキーノ
Padrona mia.私の 主人の女よ。

SOFIAソフィーア
Ella è il signor Bruschino.あなたは ブルスキーノだな。

BRUSCHINOブルスキーノ
Io... io...私は… 私は…

SOFIAソフィーア
Che crudeltà!なんという残酷さだ!

BRUSCHINOブルスキーノ
Perché mi chiamo私が 私を呼んでいるからか
Bruschino?ブルスキーノと【≒ 私の名前が ブルスキーノ【= 小乱暴者】だからか】

SOFIAソフィーア
Ah signor no.ああ 貴君よ いいえ。

BRUSCHINOブルスキーノ
Dunque?それでは?

SOFIAソフィーア
Perché
con esempio incredibile信じられない例のために
d'ostinazion... mi scusi...頑固であることの【≒ 信じ難い頑固者の見本だから】… 私を許しなさい…
(facendogli una riverenza)(彼に お辞儀をしながら)
di crudeltà... perdoni...残酷さの… 許しを…
di barbarie... ah signor!.. per un puntiglio野蛮な人の… ああ 貴君よ!… 片意地のために
riconoscer non vuol il proprio figlio.あなたは 自分自身の息子を 認めてくれない。

BRUSCHINOブルスキーノ
(Maledette le scuse ed i perdoni.)(忌々しい 詫びと許しだ【≒ 謝りながら 罵しるとは】。)
Signora mia, la supplico...私の貴女よ、私は あなたに懇願する【≒ お願いする】
Ella chi è?あなたは 誰なのか?

SOFIAソフィーア
La sposa destinata定められた花嫁【≒ 婚約者】
al suo figlio Bruschino.あなたの息子のブルスキーノの。

BRUSCHINOブルスキーノ
Si consoli.安心しなさい、
Si sposerà a mio figlio.あなたは 私の息子と結婚するだろう。

SOFIAソフィーア
E che, signore?それで どうして、貴君よ?

BRUSCHINOブルスキーノ
Sappia ch'è un impostore知りなさい ペテン師だ
quello che qui si crede mio figliolo.私の息子と信じられている あの男は。

SOFIAソフィーア
Uh!..うう!…

BRUSCHINOブルスキーノ
Oh!.. è così.おお!… それは そういうことだ。

SOFIAソフィーア
No, signor mio.いいえ、私の貴君よ。

BRUSCHINOブルスキーノ
Signora貴女よ、
noi lo vedremo or ora.私たちは そのことを まさに今 見るだろう【≒ すぐに分かるはずだ】

SOFIAソフィーア
Deh! non s'ostini più. Ceda...ああ! 意地を張るな。屈しなさい…

BRUSCHINOブルスキーノ
Uh! che caldo!うう! なんという暑さだ!

SOFIAソフィーア
Ceda a ragione.理性に 屈しなさい。

BRUSCHINOブルスキーノ
Or or non sto più saldo.まさに今 私は もはや 堅固なままでいない【≒ もうこれ以上 言い張れない】
(A noi.)
Recitativo Dopo il Duetto Florville - Filibertoの注を参照に。

Tentiamo / d'acquistarci uno sposo.
イタリア語では命令形に一人称単数形がないので、一人で ―しよう と言う場合は一人称複数形を用いる。ここで acquistarci と -mi でなく -ci なのは、Tentiamoの一人称複数形の活用と呼応しているからではなかろうか。

Perché mi chiamo / Bruschino?
bruschino は 形容詞 brusco 無作法な,乱暴な が名詞化されて縮小語尾がつけられたもので、小乱暴者 といった意味になる。なのでブルスキーノはソフィーアに
私が乱暴者という名前だから、君は私を 残酷 と呼ぶのか?
と 返している。

Or or non sto più saldo.
stare saldo 断固として自説を通す

N.5
Recitativo ed Aria Sofia

Ninetta
Fernando
(Recitativo)

Allegro
4/4
C Major
SOFIAソフィーア
Ah voi condur voleteああ あなたは 連れて行く【≒ 落とす】つもりだ
alla disperazione una figliouola絶望に 娘を
promessa a degno sposo. E non vi parlaふさわしい夫に約束された【≒ 似合いの婚約者のいる娘を 】。それで あなたに語らないのか
voce di sangue in petto?胸の中で 血の声が?
No, creder nol potrei...いいや、私は そのことを信じられないのだが…
Deh! piegatevi oh cielo! a' voti miei.ああ! 【あなたは】屈しなさい ああ 天よ! 私の願いに。
レチタティーヴォを伴ったカンタービレ(緩)/カバレッタ(急)の二部形式のアリア。
レチタティーヴォ。

Andante
4/4
F major
Ah donate il caro sposoああ いとしい許婚を与えなさい
ad un'alma che sospira.魂に それはため息をついている。
La mia calma, il mio riposo私の平静は、私の安らぎは
da voi sol dipenderà.あなただけによって決まる【≒ ただ あなた次第だ】
カンタービレ(緩)
Allegro
4/4
F major
Se crudele persisteteもし あなたが
a negarmi l'idol mio,私に対して 私の偶像を 【↑】あくまで否定し続ける 【↑】のなら、
voi la pena paghereteあなたは 処罰を支払う【≒ 報いを受ける】だろう
della vostra crudeltà.あなたの残酷さの。
テンポ・ディ・メッツォ(中間部)
(Allegro)
4/4
F major
Ma già sento la speranzaけれども 私は 既に 希望を感じている
che lusigna questo core.それ【= 希望】は この心を満足させる【≒ 喜ばせる】
Consolate un dolce amore,甘い愛を 安心させなさい、
ve lo chiedo per pietà.私は あなたに それを求める 後生だから。
カバレッタ(急)

2小節の省略可記号 Vi--deが2箇所ある。古い楽譜ではこの2小節×2が含まれていない。しかしたいへん印象的な音形なので、今日では省略されることはない。

[Recitativo] dopo l'Aria Sofia
SCENA Ⅹ第10場
(Bruschino, poi il Comissario introdotto de un servitore)(ブルスキーノ、その後に警察分署長 召使に引き入れられた)

BRUSCHINOブルスキーノ
Qui conviene finirla...ここで 終わりにしなければならない…

COMMISSARIO警察分署長
Addio signor Bruschino.こんにちは ブルスキーノ氏。

BRUSCHINOブルスキーノ
Oh signor Commissario vi son servo.ああ 警察分署長殿 私は あなたに仕える。
Che vi par? che ne dite?あなたには 何のように思われるのか【≒ どう思うのか】? それについて あなたは何を言うのか?

COMMISSARIO警察分署長
Oh niente.ああ 何もない【≒ 別に何も】

BRUSCHINOブルスキーノ
Niente!何もない!
Uh che caldo! a volere ch'io m'inghiottaうう なんという暑さだ! 望むのには 私が飲み込む【≒ 受け入れる】であろうことを 私の
un figlio, ch'è calato dalle nuvole?息子を、その者は雲から落ちてきた【≒ 降って湧いた私の息子を 私が受け入れるようにと【ガウデンツィオが】望むことについては】

COMMISSARIO警察分署長
Oh niente!ああ 何もない!

BRUSCHINOブルスキーノ
Oh niente: (e tocca via!)ああ 何もない か:(そして 行ってしまえ【≒ 消え去ってしまえ】!)

COMMISSARIO警察分署長
Chetatevi.静かにしなさい。
Tutto si scoprià. Tengo una letteraすべて 暴かれるだろう。私は 手紙を保有している
del figlio vostro colla qual mi pregaあなたの息子の 【そして】それ【= 手紙】で 彼【= 息子ブルスキーノ】は 私に懇願している
che m'interessi perché a lui perdono私が 関与するように【≒ とりなすように】と 彼【= 息子ブルスキーノ】に 許しを
diate di cor. Vedetala. Il carattereあなたが 与えるために。文字【≒ 筆跡】
è quel di vostro figlio?あなたの息子のそれ【= 筆跡】か?
(gli mostra una lettera)(彼に手紙を提示する)

BRUSCHINOブルスキーノ
Senza dubbio.疑いない【≒ 間違いない】

COMMISSARIO警察分署長
Ebben, questa farà che smascherataそれでは、これ【= 手紙】が させるだろう 仮面が剥がされる【≒ 真相が解明される】
la impostura si resti chiaramente.ように 欺瞞が 明白に。【≒ この手紙で 欺瞞は はっきりと 暴かれるだろう】

BRUSCHINOブルスキーノ
E se mai non bastasse?それで もし万が一 それが十分でなければ?

COMMISSARIO警察分署長
Oh niente!ああ 何もない!

BRUSCHINOブルスキーノ
Oh niente!ああ 何もない!
(Uh che caldo!)(うう なんという暑さだ!)


SCENA ⅩⅠ
(Detti. Gaudenzio con servitori, e successivamente Florville, Sofia e Filiberto)(前の場の人たち。ガウデンツィオ 召使たちと共に、そして続いてフロルヴィッレ、ソフィーアとフィリベルト)

GAUDENZIOガウデンツィオ
M'inchino. E perché mai tanto favore?私は 身を屈める【≒ 挨拶する】。 それで いったい どうして これほど多くの親切な行為を?

COMMISSARIO警察分署長
Son venuto a sciogliere l'imbroglio私は来た 混乱を解決するために
che avete con Bruschino.それを あなたは ブルスキーノと共に持っている【≒ あなたとブルスキーノ氏の間で起きたごたごたを解決しに来た】

BRUSCHINOブルスキーノ
E il bramo e il voglio.そして 私をそれを切望している、そして それを望んでいる。

COMMISSARIO警察分署長
Dov'è questo Bruschinoそのブルスキーノは どこにいるのか
che si dice suo figlio?その者は 彼の息子と言われている?

(esce Florville)(フロルヴィッレが出てくる)

FLORVILLEフロルヴィッレ
Eccolo a voi...ここに 彼が あなた方に…

BRUSCHINOブルスキーノ
È un impostor!..彼は 詐欺師だ!…

GAUDENZIOガウデンツィオ
(a Bruschino)(ブルスキーノに)
Tacete!黙りなさい!
(al Commissario)(警察分署長に)
È suo figlio.彼が 彼【= 父ブルスキーノ】の息子です。
La prova eccola qui.ほら ここに 証拠が。
(cava la lettera avuta già da Florville)(フロルヴィッレから受け取った手紙を取り出す)

COMMISSARIO警察分署長
Che carta è quella?それは 何の紙なのか?

GAUDENZIOガウデンツィオ
È questa una sua lettera.これは 彼【= フロルヴィッレ】の手紙だ。
(accennando a Florville)(フロルヴィッレを示しながら)
Che in oggi egli per lui m'ha consegnato.それを 今日 彼【= フロルヴィッレ】が 彼【= 父ブルスキーノ】に宛てて 私に届けた。
È vero?それは 真実かな【≒ そうだな】
(ai servitori che accennano di sì. Bruschino freme)(召使たちに その者たちは そうだ と身振りで示す)

COMMISSARIO警察分署長
Va benissimo.たいへん結構だ。
Ed io ne tengo un'altra di suo figlioそして 私は それについて 彼の息子の別のもの【≒ もう一つの手紙】を保有している
da lui riconosciuta.彼によると認められている【≒ 彼が書いたと証明されている】
Confrontiam il carattere,文字【≒ 筆跡】を比べてみよう、
e da questo confronto chiaramenteそうすれば この比較によって 明らかに
vedrem s'egli è suo figlio.私たちは 見るだろう【≒ 分かるだろう】 彼が 彼【= 父ブルスキーノ】の息子かどうか

GAUDENZIO E BRUSCHINOガウデンツィオとブルスキーノ
Ottimamente.最高に。

GAUDENZIOガウデンツィオ
Vediamo.見よう。

BRUSCHINOブルスキーノ
Sì, vediamo...そうだ、見よう…

(confrontano)(比較する)

GAUDENZIOガウデンツィオ
Ah!.. ah!..ああ!…ああ!…

COMMISSARIO警察分署長
Il carattere文字【≒ 筆跡】
è lo stesso in entrambe.両方とも 同じものだ。

BRUSCHINOブルスキーノ
Uh! che caldo!うう! なんという暑さだ!

GAUDENZIOガウデンツィオ
Finito ora è il puntiglio.今こそ 片意地は終わった。

FLORVILLEフロルヴィッレ
Chiara è la prova.証明は 明らかだ。

COMMISSARIO警察分署長
(accennando Florvile. Bruschino resta come uomo fuori di sé)(フロルヴィッレを示しながら。ブルスキーノは 正気でない人間のようなままでいる)
Quello è vostro figlio.あの男は あなたの息子だ。
Commissario の訳については、N.4 Terzetto [Florville-Bruschino-Gaudenzio] の注を参照に。

Oh niente.
別に 何も といった感じの素っ気ない返答。

(e tocca via!)
tocca via という言い方はイタリア語の辞書でもまったく見当たらない。
インターネット上で検索すると、1800年前後の古い伊独辞典では、tocca via! の独訳として fahr zu! が充てられている。fahr zu! は zufahren 乗り物に乗って―に向かって行く という意味で、命令文 fahr zu! で (乗り物を操る者に)急いで走れ! という意味になる。また別の伊独辞典には、
fahr zu, Kutscher! / tocca, tocca via, cocchiere!
という例文がある。Kutscher と cocchiere はどちらも (馬車の)御者。急いで行け、御者よ! という意味になる。
したがって、ここでの e tocca via! は 急いで行け! ≒ とっとと失せろ! と採ることができる。これは概ね andare via の命令形と同様の意味合いになるだろう。

(cava la lettera avuta già da Florville)
二つの手紙について整理する。
まずガウデンツィオが持って来た手紙は、息子ブルスキーノが父ブルスキーノに宛てて書き、フィリベルトに託した後、フロルヴィッレの手に渡ったもの。彼が息子ブルスキーノに成りすましてガウデンツィオの召使に預け、それがガウデンツィオに渡った。したがってその筆跡は息子ブルスキーノのもの。
一方、警察分署長が持って来たものは、息子ブルスキーノが警察分署長に協力を頼んで送ったもの、したがってこれも筆跡は息子ブルスキーノのもの。それを父ブルスキーノが見て 間違いない とお墨をつけた。

N.6
Aria Bruschino

Bruschino

Sofia
Florville
Comissario
Filiberto
Gaudenzio
Allegro
4/4
G major
BRUSCHINOブルスキーノ
Ho la testa o è andata via?..私は 頭を持っているのか それとも それは 行ってしまった【≒ 消え去った】のか?
Sono a questo o all'altro mondo?..私は この【世】にいるのか それとも別の世界【≒ あの世】にいるのか?
Ah! il cervel da cima a fondoああ! 脳が 頂きから底まで
sottosopra se ne va.ひっくり返って行ってしまう【≒ 脳が 上下逆になっている】

GAUDENZIOガウデンツィオ
(al Commissario)(警察分署長に)
Or signore tocca a voi.ああ 貴君よ あなたの番だ。

COMMISSARIO警察分署長
(autorevolmente)(権威を持って)
Io comando a voi Bruschino...私は ブルスキーノ あなたに命じる…

BRUSCHINOブルスキーノ
Deh vi prego un momentino...ああ 私は あなたに 懇願する ほんの一瞬…
il comando sospendete...命令を延期しなさい…
Debbo andar se permettete私は 行かなくてはならない もし あなたが許可するならば
a dar prove segnalate...人目を引く証拠を【あなたに】与えに【≒ 注目に値する証拠を差し出すために】
(per andare, è trattenuto da Sofia)(行こうとする、【しかし】ソフィーアに引き留められる)

SOFIAソフィーア
Deh signor mi consolate!ああ 貴君よ 私を安心させなさい!
Siete alfine persuaso?あなたは ついに 納得したのか?

BRUSCHINOブルスキーノ
Se lo son, mi caschi il naso.もし 私が そのようなこと【≒ 納得している】ならば、私の鼻が 落ちるように。

SOFIAソフィーア
Ahi che doglia provo in seno!ああ なんという苦痛を 私は 胸の中で 感じていることか!
Quasi o cielo io vengo meno私は 危うく ああ 天よ 気絶するところだ
per sì strana crudeltà.これほどに奇妙な残酷さによって。

BRUSCHINOブルスキーノ
Uh che caldo! che briccone!うう なんという暑さだ! なんという小悪党だ!
Vivo qui mi mangerei!私は ここで 生き生きと 私を食べるかもしれない【≒ ここで 自分自身を 厳しく叱りつけたいものだ】
Di velen, di convulsione毒で 発作【≒ 痙攣 けいれん】
salto e ballo adesso qua.今 ここで 私は 跳び上がり そして 飛び跳ねる。

SOFIA, FLORVILLE, COMMISSARIO E GAUDENZIOソフィーア、フロルヴィッレ、警察分署長とガウデンツィオ
No più strana ostinazione,もっと多く奇妙な頑固は、
no, di questa non si dà.いいや、これよりも 起きない【≒ この頑固よりも さらにおかしな頑固は ない】
Vivo qui mi mangerei!
mangiare vivo qlcu. 誰それを怒鳴りつける,厳しく叱責する。伊伊辞典では aggredire, rimproverare in modo violento e aspro と説明されている。この場合の mangiare は (口論で)やり込める、vivo は 激しい,強烈な の意味。

(Allegro)
4/4
G major
(Bruschino è per andare, allorché s'incontra in Filiberto. Egli vivamente lo abbraccia e torna indietro con lui, tutto contento)(ブルスキーノは行こうとする、フィリベルトと出あう時。 彼は 生き生きと 彼を抱きしめて そして 彼と共に 後方に戻る、すっかり満足して)

BRUSCHINOブルスキーノ
Ah che il cielo a me vi manda!ああ 天が 私に あなたを送ってくれたものだ!
Deh venite o Filiberto!ああ 来なさい ああ フィリベルトよ!

FILIBERTOフィリベルト
Perdonate o miei signori,許しなさい ああ 私の貴君たちよ、
s'ora un poco vi sconcerto...もし 今 少しばかり 私が あなた方を 当惑させても…

SOFIA E FLORVILLEソフィーアとフロルヴィッレ
(Egli qui! Siamo in periglio!)(彼が ここに! 私たちは危機にある!)

BRUSCHINOブルスキーノ
(al Commissario)(警察分署長に)
Ei che albergo diè a mio figlio彼は その者は 私の息子に 宿を与えた
ogni cosa schiarirà.どんなことも 明らかにするだろう。

COMMISSARIO警察分署長
(a Filiberto)(フィリベルトに)
Rispondetemi.私に 答えなさい。
ここから次の Primo tempo の前半までが中間部になっている。
Più lento
4/4
G major
FILIBERTOフィリベルト
Son qua.私は ここにいる。

COMMISSARIO警察分署長
Debitor suo figlio è a voi?彼の息子は あなたにとって 債務者であるか?

FILIBERTOフィリベルト
Perciò venni, sì signore.それゆえ 私は【ここに】来た、はい 貴君よ。

COMMISSARIO警察分署長
C'è qui il vostro debitore?ここに あなたの債務者はいるか?

FILIBERTOフィリベルト
Certo, è quello.もちろん、あの男だ。
(accenna Florville. Movimento in tutti)(フロルヴィッレを示す。全員に動き)

Sofia, Florville, Commissario e Gaudenzio
SOFIA, FLORVILLE, COMMISSARIO E GAUDENZIOソフィーア、フロルヴィッレ、警察分署長とガウデンツィオ
Oh!.. ed è?ああ!… そして 彼は?

FILIBERTOフィリベルト
Bruschino...ブルスキーノ…
Primo tempo
4/4
G major
COMMISSARIO警察分署長
Ha schiarito.【問題は】解決した。
(autorevolmente a Bruschino)(ブルスキーノに 権威を持って)
Avete torto!あなたが 間違っている。

BRUSCHINOブルスキーノ
(accennando Filiberto)(フィリベルトを示しながら)
Uh ch'ei pure caschi morto!うう どうか 彼【= フィリベルト】が 死んで落ちる【≒ 突然死ぬ】ように!
(Primo tempo)
4/4
G major
Uh che caldo! ho il cielo in testa!うう なんという暑さだ! 私は 頭に 空を持っている【≒ 空が 頭に落ちて来る ≒ とんでもない災難に出くわしている】
Uh perduto ho già il cervello!うう 私は 既に 脳を失った【≒ もう 正気を失った】
Non è desso... nol conosco...彼は 彼自身【= 息子ブルスキーノ 】ではない… 私は 彼を知らない…
non m'è figlio... non è quello...彼は 私の息子ではない… 彼【= 息子ブルスキーノ 】は あの男ではない…
Mai da me, se m'ammazzate,たとえ あなた方が 私を殺しても、私によって 決して
che sia tal s'accorderà.認められないだろう 彼が その人であるだろうと。

SOFIA, FLORVILLE, COMMISSARIO, GAUDENZIO E FILIBERTOソフィーア、フロルヴィッレ、警察分署長、ガウデンツィオとフィリベルト
Vergognatevi, finitela, sì,恥ずかしいと思いなさい、止めなさい【≒ いい加減にしなさい】、そうだ
vostro figlio è questo qua.ここの この男が あなたの息子だ。
ho il cielo in testa!
avere il cielo in testa という成句は辞書にもインターネット上にも見当たらない。しかし avere una tegola in testa 頭に瓦を持つ ≒ 頭にが瓦が落ちて来た で 不慮の災難に遭う という成句があり、ho il cielo in testa! はそれを誇張した言い方と理解した。

Più lento
4/4
G major
BRUSCHINOブルスキーノ
Dei tiranni i casi miei暴虐な神々よ 私の状況が
deh vi muovano a pietà.ああ あなた方を哀れみに動かすように【≒ 私の窮状に あなた方が 私を 不憫に思うように】

SOFIA, FLORVILLE, COMMISSARIO, GAUDENZIO E FILIBERTOソフィーア、フロルヴィッレ、警察分署長、ガウデンツィオとフィリベルト
Poverin, diventa matto.かわいそうな男だ、頭がおかしくなっている。
Primo tempo
4/4
G major
Vergognatevi, finitela,恥ずかしいと思いなさい、止めなさい【≒ いい加減にしなさい】
vostro figlio è questo qua.ここの この男が あなたの息子だ。

BRUSCHINOブルスキーノ
Uh che caldo!うう なんという暑さだ!
Mai da me, se m'ammazzate,たとえ あなた方が 私を殺しても、私によって 決して
che sia tal s'accorderà.認められないだろう 彼が その人であるだろうと。

(partono tutti confusamente dietro Bruschino e resta il solo Filiberto in iscena)(全員 混乱して 退場する ブルスキーノを従えて そして 舞台には フィリベルトだけが残る)
[Recitativo] Dopo l'Aria Bruschino
SCENA ⅩⅡ第12場
(Filiberto, poi Bruschino)(フィリベルト、その後にブルスキーノ)

FILIBERTOフィリベルト
Va tutto ben, ma io sono venutoすべて うまく行った、だが 私は来た
per esigere il resto del mio credito,支払いを受けるために 私の貸した金の残りを。
e nessuno mi paga.けれども だれも私に支払わない。

(esce Bruschino disperatamente)(ブルスキーノが 絶望して 出てくる)

BRUSCHINOブルスキーノ
Alla malora!..破滅に【≒ くたばれ】!…
Io voglio scappar via...私は 逃げ去りたい【≒ とっとと帰りたい】

FILIBERTOフィリベルト
Signor Bruschinoブルスキーノ氏よ
favorisca pagarmi支払ってくれないか
duecento franchi.200フランを。

BRUSCHINOブルスキーノ
Un'altra!.. Io! siete matto?別の【≒ もう一度 ≒ またか】!… 私が! あなたは 気が狂っているのか?

FILIBERTOフィリベルト
Me li deve suo figlio.あなたの息子が それらを 私に 借りている。

BRUSCHINOブルスキーノ
Il figlio mio!私の息子だって!
Voi siete fortunato!あなたは幸運だ!
Presto, andate, correte, egli è di là!急ぎなさい、行きなさい、走りなさい、彼は 向こうにいる。

FILIBERTOフィリベルト
Come di là se nella mia Locandaどうして あそこに【いる と あなたは言うのか】 私の宿の中に

è sequestrato?彼が 閉じ込められている 【↑】のに?

BRUSCHINOブルスキーノ
(con estremo stupore)(極度の驚きをもって)
Sequestrato!..閉じ込められているだって!…
Or non diceste?たった今 あなたは 言ったではないか?

FILIBERTOフィリベルト
Cosa?何と?

BRUSCHINOブルスキーノ
Che quel taleあの男が
era mio figlio?私の息子だった 【↑】と。

FILIBERTOフィリベルト
Oibò, ch'era Bruschino...ああ、彼はブルスキーノだったと…

BRUSCHINOブルスキーノ
Qual Bruschino?どのブルスキーノか?

FILIBERTOフィリベルト
Ei m'ha detto ch'è cugino彼は 私に言った 彼は 従兄である と
del di lei figlio, e che Bruschino ha nome.あなたの息子の、そして 彼は ブルスキーノの名を持っている と。

BRUSCHINOブルスキーノ
Ah!.. e adesso ov'è mio figlio?ああ!… それで 今 私の息子は どこにいるのか?

FILIBERTOフィリベルト
Sta nella mia Locanda...彼は 私の宿の中にいる…

BRUSCHINOブルスキーノ
Ah!.. e il cugino?ああ!… それで 従兄 【という奴】は?

FILIBERTOフィリベルト
M'ha imposto彼が 私に 命じた
che il tenga rinserrato...私が 彼が閉じ込められたままにしておくように と…

BRUSCHINOブルスキーノ
Briccone!..小悪党め!…

FILIBERTOフィリベルト
Chi?誰が?

BRUSCHINOブルスキーノ
Capisco...私は 理解している…
(in gran movimento)(大きな動きで)
Egli... venite... zitto!..彼が… 来なさい… 黙って!…
Ah cabalone! or sì che tu sei fritto!..ああ 大ペテン師め! 今からは そうだ 君が窮地に陥っているぞ!…
(parte velocemente con Filiberto)(速く【≒ 急いで】退場する フィリベルトと共に)


SCENA ⅩⅢ第13場
(Gaudenzio, poi Sofia)(ガウデンツィオ、その後にソフィーア)

GAUDENZIOガウデンツィオ
No, no. S'anche si stampaいいや、いいや。もし また 印刷しても【≒ 新聞で公表しても】
diran che non è vera. Ma... per bacco!彼ら【≒ 人々】は言うだろう それ【≒ 新聞】は真実ではない と。だが… なんとまあ!
Ho capito il pretesto. Del contratto私は 口実を理解した。契約 【≒ 婚約】
egli è certo pentito,【≒ ブルスキーノ氏】は きっと 後悔しているのだ、
ed io far queste nozze ho stabilito.ところが 私は この結婚式をすることを決めてしまった。

(esce Sofia)(ソフィーアが出てくる)

SOFIAソフィーア
Caro signor tutore...愛する 後見人氏よ…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Vieni a tempo.君は 良い時に来る【≒ ちょうど良い時に来た】
(Conviene pel buon ordine,好都合である 良い秩序のために【≒ 秩序を守るために】
ch'io scrutini la figlia onde sentire私が 娘を詳細に調べるであろうことは 聞く目的で
come la pensa circa il matrimonio.)結婚について 彼女がどのように考えているのか。)

SOFIAソフィーア
Siete in collera meco?あなたは 私に 怒っているのか?

GAUDENZIOガウデンツィオ
Oh! cosa dici?ああ! 君は 何を言うのか?_
Ti vo' tutto il mio bene.私は 君に 私の愛のすべてを望んでいる。

SOFIAソフィーア
Ah qual contento!ああ なんという満足【≒ 喜び】

GAUDENZIOガウデンツィオ
(Le si vede negli occhi la innocenza!)(彼女の両眼には 純真が見える!)
E per farti veder che t'amo assaiそして 君に見させる【≒ 分からせる】ために 私が 君を とても愛していることを
t'ho destinata sposa come sai...私は 君を 花嫁に定めた 君も知っている通り…

SOFIAソフィーア
Ma se il giovane poi non è il figliuoloけれど もし 【あの】若者が 結局 息子でなかったら
di quel signor Bruschino...あのブルスキーノ氏の…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Eh! non pensarci.ふーむ! そんなことは考えるでない。
(O che delicatezza!)(ああ なんという繊細さ!)
Qua. Rispondimi a tuono.ここに【来なさい】。大声で【≒ はっきりと】 私に答えなさい。
Il giovane hai veduto?【あの】若者を 見たのか?

SOFIAソフィーア
Signor sì.貴君よ はい。

GAUDENZIOガウデンツィオ
Ti piace?彼は 君に 気に入ったか?

(Sofia abbassa gli occhi)(ソフィーアは 両目を低くする【≒ 目を落とす】)

(che candor!) disposta sei(なんという純粋さ!) 君は 覚悟しているのか
a fare un matrimonio!結婚をする!

SOFIAソフィーア
Matrimonio? cioè?結婚ですって? というと?

GAUDENZIOガウデンツィオ
(Bella semplicità!) Tu ti confondi?(見事な無邪気さ!)君は 当惑しているのか?

SOFIAソフィーア
Matrimonio? cos'è?結婚ですって? それは何なのか?

GAUDENZIOガウデンツィオ
Senti e rispondi.聞きなさい そして 答えなさい。
Un'altra!
Un'altra volta の volta を省略したもの。

S'anche si stampa / diran che non è vera.
この1文は意味が分かりづらいが、vera が女性形なので、その節の主語を stampa 印刷物 ≒ 新聞 と採るならば、出版する ≒ 新聞で公表しても、人々は 新聞は真実でないと言うだろう、と理解した。

(Conviene pel buon ordine,
per un buon ordine 秩序を守るために。ソフィーアが好きでもない相手と結婚することにならないかどうか、という意味合い。

N.7
Duetto [Sofia-Gaudenzio]

Sofia
Gaudenzio
Andante
4/4
A major
GAUDENZIOガウデンツィオ
È un bel nodo che due coriそれ【= 結婚】は 素晴らしい絆だ それ【= 絆】は 2つの心を
stringe in tenero diletto,結び付ける 柔らかい【≒ 甘い 】喜びで、
che v'accende ognora il pettoそれ【= 喜び】は いつでも あなたの胸に火を点ける
del più vero e dolce ardor.最も 本当の そして 甘い 熱情で。

SOFIAソフィーア
All'idea di tanto beneそれほど大きな幸福についての見解に
io commossa, o ciel, mi sento:私は 心を揺り動かされていると、ああ 天よ、感じている【≒ 私は 感動している】
ma non so se sia il momentoしかし 私は知らない【≒ 私には分からない】 瞬間【≒ その時】なのかどうか
che mi chiami al nodo amor.愛の神が 私を 絆へと呼ぶであろう【時なのかどうか】

GAUDENZIOガウデンツィオ
Oh dei segni in voi avreteああ あなたは あなたの中に 印 しるし を持つだろう
per saper se siete al caso.知るために あなたが好機にあるかどうか【≒ あなたが機を捉えているかどうか分かる印を あなたの中に見出せるだろう】

SOFIAソフィーア
Deh quai sono a me spiegate,ああ 私に 説明しなさい それら【= 印】が何であるか、
e dirò se a segno ho il cor.そして 私は言うだろう 私が 印のある心を持っているかどうか【≒ 私の心に印があるかどうか 】

GAUDENZIOガウデンツィオ
Mia carina a me badate,私の可愛い娘よ 私に注目しなさい、
e dirò se a segno è il cor.そうすれば 私は言うだろう 心が 印がついているかどうか【≒ あなたの心に 印がついているかどうか】
che v'accende ognora il petto
ガウデンツィオは、二重唱の前におかれたレチタティーヴォではソフィーアを2人称単数親称 tu で呼び掛けていたのだが、二重唱では敬称の voi で呼びかけている。

Allegretto
6/8
D major
GAUDENZIOガウデンツィオ
Mirando un oggetto対象【≒ 相手】を見ると
ci nasce un affetto.彼に対して 情愛が芽生える。

SOFIAソフィーア
Oh questo m'è natoああ それは 私には 芽生えた
e già l'ho provato.そして 既に 私は それ【= 情愛】を感じた。

GAUDENZIOガウデンツィオ
Buon segno, buon segno!良い印だ、良い印だ。

SOFIAソフィーア
Pareva anche a me.私にも 【そのように】思われた。

GAUDENZIOガウデンツィオ
Da un palpito poiそれから 心拍によって
è il seno commosso.胸が 揺すられる【≒ 心臓がドキドキして 胸が震える】

SOFIAソフィーア
Signore, non posso貴君よ、私は
star quieta un momento.静かにしてい 【↑】られない 一瞬【といえども】

GAUDENZIOガウデンツィオ
Buon segno, buon segno!良い印だ、良い印だ。

SOFIAソフィーア
Pareva anche a me.私にも 【そのように】思われた。

GAUDENZIOガウデンツィオ
Poi nasce un ardore.それから 熱情が生まれる。

SOFIAソフィーア
Ardente son io.私は 燃え上っている。

GAUDENZIOガウデンツィオ
La brama v'accende.熱望が あなたに 火を点けている。

SOFIAソフィーア
Son tutta desio.私は すっかり 欲求である【≒ 欲求に満ち溢れている】

GAUDENZIOガウデンツィオ
Ma vien la prudenzaだが 冷静が来る
che ammorza l'ardore.それは 熱情を消す【≒ 【いずれ】気持ちが冷めて 熱い心に水を差す】

SOFIAソフィーア
Vien tardi signore,それ【= 冷静】は 遅れて来る 貴君よ、
al caso mi trovo.私は 【今】 好機にある【≒ 私は 機を捉えている】

GAUDENZIOガウデンツィオ
Lo vedo, lo vedo,私は そのことを見ている【≒ そう思う】、私は そのことを見ている、
ma vien la prudenza.しかし 冷静は来る【≒ 気持ちは 【いつか】冷めるものだ】
Allegro
3/4
A major
SOFIAソフィーア
Ah datemi lo sposoああ 私に 花婿を与えなさい
e datemelo subito;そして すぐに 私に彼を与えなさい。
per lui può sol di giubilo彼によってだけ 喜びに
quest'anima brillar.輝くことが 【↑】できる この魂は

GAUDENZIOガウデンツィオ
Sì sì, vi do lo sposoそうだ、そうだ、私は あなたに 花婿を与える。
Sì sì, vel darò subito;そうだ、そうだ、私は あなたに 彼を すぐに与えよう。
per lui può sol di giubilo彼によってだけ 喜びに
vostr'anima brillar.輝くことが 【↑】できる あなたの魂は

(partono)(【二人とも】退場する)
歌詞の繰り返しの中でソフィーアが
Io vo' lo sposo, io sono al caso.
私は 花婿が欲しい、私は 好機にある【≒ 機を捉えている】。
という歌詞を歌う。

[Recitativo] Dopo il Duetto Gaudenzio e Sofia
SCENA ⅩⅣ第14場
(Bruschino, poi Florville)(ブルスキーノ、その後にフロルヴィッレ)

BRUSCHINOブルスキーノ
Ah che scoperta! bravo il cabalone!ああ 【真実が】見出された! たいした大ペテン師だ!
Filiberto ora sa quel che ha da fare.フィルベルトは 今 知っている【≒ 心得ている】 彼がしなくてはならないことを
Ma chi diavolo è maiそれにしても いったい全体 誰なのか
costui? Vorrei saperlo... ei vien... sentiamo.あの男は? 私は 彼を知りたいのものだ… 彼が来る… 聞こう。
(si mette in disparte)(離れて 身を置く)

(esce Florville)(フロルヴィッレが出て来る)

FLORVILLEフロルヴィッレ
Sofia parlò col suo tutor. Smaniosoソフィーアは 彼女の後見人と話している。 私は 強く望んで
son d'affrettar le nozze.いる 結婚式を急いですることを。
Guai se scopre Gaudenzio che son figlioただではすまない もし ガウデンツィオが発見したら 私が息子であることを
di Florvil suo nemico!彼の仇敵 【父】フロルヴィルの

BRUSCHINOブルスキーノ
(Ah!.. ah!..)(ああ!…ああ!…)

FLORVILLEフロルヴィッレ
Che tardo?何を 私は遅れているのか【どうして 私は ぐずぐずしているのか】
Andiam a lei. Tranquillo non son io彼女【のところ】に行こう。 私は 落ち着いていない【≒ 安心していられない】
se imeneo non mi stringe all'idol mio.もし 結婚の神が 私を 私の偶像に結び付けないなら。
(parte)(退場する)

BRUSCHINOブルスキーノ
Trionfo! che scoperta! egli figliuolo勝利だ! なんという発見だ! 彼が 息子だったのだ
di quel nemico di Gaudenzio! bene!ガウデンツィオの あの仇敵の! いいぞ!
Or tocca a me. Convien farli sposi今度は 私の番だ。彼らを 花婿花嫁にさせなければならない
pria che con Filibertoフィリベルトと共に
venga mio figlio... ecco Gaudenzio qua.私の息子が 来るであろう 【↑】前に… そら ここに ガウデンツィオが。
Facciamo la commedia come va.喜劇をやろう それが行くように【≒ 進むがままに ≒ 成り行きに任せて】
N. 8
Finale

Sofia
Marianna
Florville
Bruschino figlio
Bruschino
Filiberto
Gaudenzio
Allegro
4/4
D major
SCENA ULTIMA最終場
(Tutti successivamente)(全員 逐次)

GAUDENZIOガウデンツィオ
Ebben, ragion, dovereそれでは、理性が、義務が
vi diero alfin consiglio?あなたに ついに 助言を与えたのか?
Riconoscete il figlio,あなたは 息子を認めるのか、
o s'ha da quistionar?それとも 口論しなくてはならないか?

BRUSCHINOブルスキーノ
Amico, che ho da dire?友よ、私は 何を言わなくてはならないのか?
In me son ritornato.私は 私の中に戻った【≒ 自分を取り戻した】
Io m'era puntigliato,私は 片意地だった、
ma vi prego perdonar.だが 私は あなたに 許すことを懇願する【≒ 許しを請う】

GAUDENZIOガウデンツィオ
Su, il figlio al sen stringete.さあ、息子を 胸に 抱きしめなさい。

BRUSCHINOブルスキーノ
Venga, sì, venga... oh dio!..彼は来るがいい、彼は来るがいい… ああ 神よ!…
(affettando smania affettuosa)

GAUDENZIOガウデンツィオ
Correte via Bruschino!..駆けつけなさい さあ ブルスキーノよ!…

(esce Florville)(フロルヴィッレが出て来る)

FLORVILLEフロルヴィッレ
Ah padre!..ああ 父よ!…

BRUSCHINOブルスキーノ
Ah figlio mio!ああ 私の息子よ!
(abbracciandolo)(抱きしめ合う)

GAUDENZIOガウデンツィオ
Sofia!..ソフィーアよ!…

(esce Sofia)(ソフィーアが出て来る)

SOFIAソフィーア
Signor...貴君よ…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Li vedi?君は 彼らを見ているか?

SOFIAソフィーア
Ah sì gran ben quest'alma,ああ これほどに大きな幸福を この魂は
no, non potea sperar.いいや 期待できなかった。

BRUSCHINOブルスキーノ
(vivamente a Gaudenzio)(生き生きと ガウデンツィオに)
Non perdansi i momenti,瞬間を失わないように【≒ 時間を無駄にしないように】
facciamoli contenti.彼らを 満足させよう【≒ 幸せにさせよう】

GAUDENZIOガウデンツィオ
Io prima e penso, e cribro...私は まず 考える、 そして 綿密に調べる【≒ まず よく考えて、それから検討したい】

BRUSCHINOブルスキーノ
Son figli di calibro!..彼らは 大きさのある子たちだ【≒ 並外れた子たちだ】!…
E poi d'amor paternoそしてそれから 父の愛に
ho un parossismo addosso.取りつかれた激発を 私は持っている【≒ 私は 父の愛が爆発している】
Sposateli sul fatto,彼らを結婚させなさい この場で、
tardare più non posso.私は さらに遅らせることはできない。

(Gaudenzio unisce Florville a Sofia)(ガウデンツィオは フロルヴィッレをソフィーアに結び付ける)

SOFIA E FLORVILLEソフィーアとフロルヴィッレ
Ah! sono appien felice!ああ! 私は すっかり幸福だ!
di più non so bramar.これよりさらに多くの【幸福を】 私は 切望する術を知らない。

BRUSCHINO E GAUDENZIOブルスキーノとガウデンツィオ
Ah! siate appien felici!ああ! あなた方は すっかり幸福であろう!
di più son so bramar.これよりさらに多くの【幸福を】 私は 切望する術を知らない。
vi diero alfin consiglio?
diero = diedero < dare の直接法現在3人称複数形 の古形。

o s'ha da quistionar?
s' = si 非人称のsi +動詞の直接法現在3人称単数形。人は が主語。

Sposateli sul fatto,
sul fatto 行為の上で ⇒ 何かをしている最中に ⇒ 現場で。

Allegro
3/4
B-flat major
(esce Marianna)(マリアンナが出て来る)

MARIANNAマリアンナ
È tornato Filiberto,フィリベルトが戻って来た、
e vi chiede di venire.そして 彼は あなたに求めている 【彼が ここに】来ることを。

GAUDENZIOガウデンツィオ
Ch'egli venga, il mio trionfo彼が 来るように、私の勝利が
deve farlo assai stupire.彼を とても驚かさせるに違いない。

(esce Filiberto)(フィリベルトが出て来る)

BRUSCHINOブルスキーノ
Ma!.. mio danno!.. ma!.. pazienza!..しかし!… 私の損害だ【≒ 私には残念だ】!… しかし!… 忍耐だ!…

SOFIA E FLORVILLEソフィーアとフロルヴィッレ
(Spinge troppo la imprudenza!)(彼【= フィリベルト】は 軽率な行動を押し進めている【≒ なんて軽はずみなことをしてくれるのか】!)

FILIBERTOフィリベルト
(a Florville accennandogli Bruschino)(フロルヴィッレに ブルスキーノを示しながら)
Or che il resto ei m'ha pagato【借金の】残りを 彼が 私に 支払った今
il cugin ho liberato.私は 【あなたの】従弟を 解放した。
D'abbracciarvi ei già sospira,彼は あなたを抱き締めることを待ち望んでいる。
nè lo posso più frenar.それについて 私は 彼を抑えられない。

FLORVILLEフロルヴィッレ
(sconcertato)(狼狽して)
Ci vedrem... non venga adesso.会おう… しかし 今は 彼が来ないように。

FILIBERTOフィリベルト
Ma però, con suo permesso,だがしかし 彼との約束で、
render debbo al padre il figlio.私は 息子【ブルスキーノ】を 父【ブルスキーノ】に 返さなければならない。

GAUDENZIOガウデンツィオ
(stupito a Filiberto)(驚いて フィリベルトに)
E che c'entra ciò con noi?それで そのことは 私たちと 何の関係があるのか?

FILIBERTOフィリベルト
V'è suo padre or qui fra voi.今 ここに あなた方の中に 彼の父がいる。

GAUDENZIOガウデンツィオ
E chi è?それで それは誰だ?

FILIBERTOフィリベルト
Il signor Bruschino!ブルスキーノ氏だ!

GAUDENZIOガウデンツィオ
Padre egli è di suo cugino?【= 父ブルスキーノ】が 彼【= 息子ブルスキーノ】の従弟の父親だって?
Che pasticcio è questo qua?これはいったい どんなパイ【≒ 何という混乱】なのか?

BRUSCHINOブルスキーノ
È un pasticcio saporito.それは 美味しいパイだ。
(alla quinta)(舞台袖で)
Vieni avanti disgraziato!前に来なさい ろくでなしめ!
D'abbracciarvi ei già sospira,
sospirare については、N. 1 Introduzione の注を参照に。

E che c'entra ciò con noi?
entrarci con... ―と関係がある

Che pasticcio è questo qua?
È un pasticcio saporito.
pasticcioはパイ料理のこと。何層にも折り重なった様子から 混ぜこぜ の意味で用いられる。次のブルスキーノの台詞 È un pasticcio saporito.はそれと本来のパイを掛けている。

Andante mosso
4/4
g minor (d minor)
(esce Bruschino figlio)(息子ブルスキーノが出て来る)

BRUSCHINO FIGLIO息子ブルスキーノ
Padre mio!.. sono pentito!私の父よ!… 私は 後悔している!

GAUDENZIOガウデンツィオ
Che vuol dir?あなたは 何を言いたいのか【≒ どういうことなのか】
前の部分の変ロ長調 ♭2つ を引き継いでト短調で書かれているのだが、実際には変ホ音がどれも♮ ナチュラルでホ音に戻されており、実質的に♭1つのニ短調になっている。
(Andante mosso)
4/4
D major
BRUSCHINOブルスキーノ
Che ho terminato私が 終了したということだ
con lui ogni mia paternità.【= 偽の息子ブルスキーノ = フィリベルト】と どんな 私の父であることも【≒ 私が 彼の父親であることを 完全に】

GAUDENZIOガウデンツィオ
(a Filiberto)(フィリベルトに)
Ei suo figlio!【= 息子ブルスキーノ】が 彼【= ブルスキーノ】の息子なのか?

FILIBERTOフィリベルト
Appunto.そのとおりだ。

GAUDENZIOガウデンツィオ
(accennando Florville)(フロルヴィッレを示しながら)
E questo?それでは この男は?

FILIBERTOフィリベルト
Suo cugino.【= 息子ブルスキーノ】の従兄だ。

GAUDENZIOガウデンツィオ
E voi diceste?だが あなたは言ったか【≒ あなたは【彼が 息子ブルスキーノだと】言わなかったか】

FILIBERTOフィリベルト
Vi diss'ch'egli è Bruschino,私は あなたに言った 彼はブルスキーノである と、
mai suo figlio.決して 彼の息子だとは【言わなかった】

GAUDENZIOガウデンツィオ
(irato a Florville)(怒って フィリベルトに)
E voi tacete?そして あなたは黙っているのか?
Dichiarate!.. rispondete!...はっきりと言いなさい!… 答えなさい!…

BRUSCHINOブルスキーノ
Dirò io com'è la cosa.私が言おう 事情がどのようであるか。
Egli amava vostra figlia,彼は あなたの【被後見人である】娘を愛した、
e per farla alfin sua sposaそして 彼女を ついに 彼の花嫁にするために
qual non è si è finto qua.彼は ここで 彼ではない者のふりをしていた。

GAUDENZIOガウデンツィオ
E chi siete?それで あなたは誰なのか?

FLORVILLEフロルヴィッレ
Un uom d'onore.名誉ある男だ。

BRUSCHINOブルスキーノ
Bagatelle!.. e come!.. è figlio取るに足らないことを【≒ 意味のないことを】!… それで どうして【≒ どうして そんなことを言うのか】!… 彼は 息子だ
di Florville il Senatore!上院議員 フロルヴィッレの!

GAUDENZIOガウデンツィオ
Di Florvil!.. del mio nemico!..フロルヴィルの! 私の仇敵の!…

FLORVILLEフロルヴィッレ
Padre mio!..私の父よ!…

GAUDENZIOガウデンツィオ
No!いいや!

BRUSCHINOブルスキーノ
Vergognoso!恥ずかしい【≒ みっともない】
(contraffacendo ciò che fece prima Gaudenzio a lui)(前にガウデンツィオが 彼【= ブルスキーノ】にしたことを 真似しながら)
Per un stolido puntiglio馬鹿げた片意地によって
rinegate adesso un figlio!あなたは あなたの息子を 否定している!

GAUDENZIOガウデンツィオ
Cospetton!..こんちくしょうめ!…

FLORVILLEフロルヴィッレ
(supplichevole assai a Gaudenzio)(大いに嘆願するように ガウデンツィオに)
È il padre estinto!..父は 死んだ!…

BRUSCHINOブルスキーノ
(come sopra)(上と同様に【= 前にガウデンツィオが 彼【= ブルスキーノ】にしたことを 真似しながら】)
Eh tornate alla ragione!..さあ 理性に戻りなさい【≒ 理性を取り戻しなさい】!…
Poverin! fa compassione!..かわいそうな子だ! 彼は 哀れみを起こさせる!

(Gaudenzio è concentrato in se stesso)(ガウデンツィオは 自分自身に没頭している)

SOFIA E FLORVILLEソフィーアとフロルヴィッレ
Colpa è amore dell'errore,愛の神が 間違いの責任だ【≒ 過ちは 愛の神のせいだ】
perdonate per pietà.許しなさい 後生だから。


BRUSCHINOブルスキーノ
(forte all'orecchio di Gaudenzio)(ガウデンツィオの耳に 強く)
Ehi, li avete già sposati.おい、あなたは もう 彼らを結婚させたのだ。

GAUDENZIOガウデンツィオ
Disgraziati!悪党どもめ!

SOFIA E FLORVILLEソフィーアとフロルヴィッレ
Padre amato! Perdon!..愛する父よ! 許しを!…

GAUDENZIOガウデンツィオ
Ah!..ああ!…
(li abbraccia)(彼らを抱き締める)

MARIANNA, BRUSCHINO, FILIBERTO E GAUDENZIOマリアンナ、ブルスキーノ、フィリベルトとガウデンツィオ
V'ha perdonato,彼は あなたたちを 許した、
ed in ben finita è già.そして それ【= 許し】は 既に 良い終わりにある【= 許されて万事めでたし】
Un uom d'onore.
伊和辞典では uomo d'onore は 紳士 とある。いずれにせよ、この場合は 貴族 あるいは 名門の一員 といった意味。

Stretta del Finale Ⅰ

Allegro
6/8
D Major
TUTTI全員
Quai portenti non opra l'amore愛は 何か奇跡を起こしはしない
se padrone si rende d'un cor!もし 心の主 あるじ に 自分からならなければ!
Tutti in giubilo dunque cantiamo,さあ 全員 喜びに歌おう、
viva sempre, sì, viva l'amor.万歳 これからもずっと、そうだ、愛の神 万歳!

参考資料


Il signor Bruschino / Gioachino Rossini / Edizione Critica, Partitura, a cura di Arrigo Gazzaniga, edizione in brossura / Fondazione Rossini, Ricordi / 2006 / ISBN 978-88-7592-820-9 / ISMN M-041-91398-8


Il signor Bruschino / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy, 1988

Il signor Bruschino / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy, 1997

Il signor Bruschino / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy, 2012

Dizionario Rossiniano / Eduardo Rescigno /


















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